クロロゲンさん

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クロロゲンさん
クロロゲン酸の構造式
IUPACめい(1S,3R,4R,5R)-3-{[3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル]オキシ}-1,4,5-トリヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボンさん
別名べつめい5-カフェオイルキナさん
分子ぶんししきC16H18O9
分子ぶんしりょう354.31
CAS登録とうろく番号ばんごう327-97-9
形状けいじょう固体こたい
密度みつどそう1.28 g/cm3, 固体こたい
融点ゆうてん208 °C
SMILESO[C@@H]2[C@H](O)C[C@](O)(C[C@H]2OC (=O)\C=C/c1ccc(O)c(O)c1)C(O)=O

クロロゲンさん(クロロゲンさん、chlorogenic acid)は、植物しょくぶつかいひろ存在そんざいするポリフェノールであり、桂皮けいひさん誘導体ゆうどうたいカフェさんフェルラさんひとし)とキナさんエステル化合かごうぶつ総称そうしょうである[1]コーヒーせいまめからはじめてたんはなされ[2]ねつ不安定ふあんていあぶせんじ容易よういコーヒーさんキナさん分解ぶんかいする[3][4]

コーヒーせいまめにはクロロゲン酸類さんるいが5%–10%と、とりわけおおふくまれている。コーヒーせいまめふくまれるクロロゲン酸類さんるいは、3-カフェオイルキナさん(3-CQA)、4-カフェオイルキナさん(4-CQA)、5-カフェオイルキナさん(5-CQA)、3-フェルロイルキナさん(3-FQA)、4-フェルロイルキナさん(4-FQA)、5-フェルロイルキナさん(5-FQA)、ジカフェオイルキナさん(di-CQA)からなる化合かごうぶつである[5][6]。カフェインとともにコーヒー抽出ちゅうしゅつえき冷却れいきゃくみとめられる白濁はくだく原因げんいんとされる。コーヒー抽出ちゅうしゅつえき味覚みかくにおける影響えいきょう複雑ふくざつである(濃度のうどその条件じょうけんしぶさんおよびあましめす)。抽出ちゅうしゅつ時間じかんながすぎたときあらわわれるざつあじ原因げんいんとされる。

てつ(III) イオンの存在そんざいみどりがかった黒色こくしょく化合かごうぶつとなる。アルカリ条件下じょうけんか橙色だいだいいろていする。ラジカル捕捉ほそくのうつため、こう酸化さんか作用さよう期待きたいされている。

生理せいり作用さよう[編集へんしゅう]

試験管しけんかんない実験じっけん動物どうぶつ実験じっけんでは血糖けっとう上昇じょうしょう抑制よくせい効果こうかみとめられているが[7]ひと対象たいしょうにした信頼しんらいせいたか研究けんきゅう[8][9]有効ゆうこうせい確認かくにんされていない[1] 辛味からみおさえる作用さようる。

しょくやく区分くぶん[編集へんしゅう]

しょくやく区分くぶんでは、「もっぱ医薬品いやくひんとして使用しようされる成分せいぶん本質ほんしつ (原材料げんざいりょう)」にも「医薬品いやくひんてき効能こうのう効果こうかひょうぼうしないかぎ医薬品いやくひん判断はんだんしない成分せいぶん本質ほんしつ (原材料げんざいりょう)」(医薬品いやくひん)にも該当がいとうせず、医薬品いやくひんてき効能こうのう効果こうか表示ひょうじすることができない[1]。ただしコーヒーのように『あきらか食品しょくひん医薬品いやくひん該当がいとうしないことがあきらかに認識にんしきされる食品しょくひん)』であれば効能こうのう表示ひょうじしてもくすりほうきゅう薬事やくじほうには違反いはんしない[10]。しかし「がんなおる」「血糖けっとうがる」「血液けつえき浄化じょうかする」といった誇大こだい医薬品いやくひんてき効果こうか効能こうのう表示ひょうじ店頭てんとう説明せつめいかいにおける口頭こうとうでの説明せつめいふくむ)をおこなうと、景品けいひん表示法ひょうじほう健康けんこう増進ぞうしんほう規制きせい対象たいしょうとなる[11][12][13]

コーヒーから抽出ちゅうしゅつしたクロロゲン酸類さんるい(5-カフェオイルキナさんとして)を関与かんよ成分せいぶんとし、「からだ脂肪しぼうになるほうてきする」「血圧けつあつたかめのほうてきする」という保健ほけん用途ようと表示ひょうじができる特定とくてい保健ほけんよう食品しょくひん許可きょかされている[14][15][6]

コーヒーボタンボウフウゴボウから抽出ちゅうしゅつしたクロロゲンさん関与かんよ成分せいぶんとした健康けんこう食品しょくひんが、機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひんとしてとどけられている。機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひんとは、くに審査しんさおこなわず、事業じぎょうしゃみずからの責任せきにんにおいて機能きのうせい表示ひょうじおこなうもので、「からだ脂肪しぼうになるほうてきする」「はだ水分すいぶんりょうたかめ、乾燥かんそう緩和かんわする機能きのうがあることが報告ほうこくされている」「食後しょくご血糖けっとう上昇じょうしょうゆるやかにする機能きのう報告ほうこくされている」などの表示ひょうじをしている[16][17][18]機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひんかんしては、利益りえき相反あいはんによるバイアス可能かのうせいなどが指摘してきされている[19][20]

安全あんぜんせい[編集へんしゅう]

サプリメントなど濃縮のうしゅくぶつとして摂取せっしゅする場合ばあい安全あんぜんせいかんしては、信頼しんらいできる十分じゅうぶん情報じょうほう見当みあたらないため、とくにん授乳じゅにゅう小児しょうに自己じこ判断はんだんでのサプリメントの摂取せっしゅひかえること[1]

物性ぶっせい[編集へんしゅう]

  • みず溶。アルコール、アセトンにえき溶。
  • しぶみをつ(てい濃度のうどでは酸味さんみ)。
  • 味覚みかく修飾しゅうしょく物質ぶっしつみず甘味あまみあたえる。ただしよわい)。

異性いせいたい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d カフェーさん - 素材そざい情報じょうほうデータベース<有効ゆうこうせい情報じょうほう>(国立こくりつ健康けんこう栄養えいよう研究所けんきゅうじょ
  2. ^ 岸本きしもと憲明のりあき, 藤田ふじた藤樹とうじゅおっと利用りようコーヒーせいまめ資源しげんからクロロゲン酸類さんるいたんはなれ」『近畿大学きんきだいがく資源しげん再生さいせい研究所けんきゅうじょ報告ほうこくだい7ごう近畿大学きんきだいがく資源しげん再生さいせい研究所けんきゅうじょ、2006ねん3がつ、29-39ぺーじNAID 120005729884 
  3. ^ Role of roasting conditions in the level of chlorogenic acid content in coffee beans: correlation with coffee acidity”. PubMed. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  4. ^ 中林なかばやし敏郎としお, 真野まの三蔵さんぞうコーヒーの品質ひんしつかんする化学かがくてき研究けんきゅう : (だい3ほう)あぶせんじちゅうのクロロゲン酸類さんるい質的しつてきおよび量的りょうてき変化へんか」『日本にっぽん食品しょくひん工業こうぎょう学会がっかいだい22かんだい11ごう日本にっぽん食品しょくひん科学かがくこう学会がっかい、1975ねん、549-553ぺーじdoi:10.3136/nskkk1962.22.549ISSN 0029-0394NAID 1300037880452021ねん8がつ20日はつか閲覧えつらん 
  5. ^ 紙谷かみたに雄志ゆうし, 岩井いわい和也かずや, 福永ふくなが泰司やすじ, 木村きむら良太郎りょうたろう, 中桐なかぎりさとしだつカフェインコーヒーまめ抽出ちゅうしゅつぶつとうしつ分解ぶんかい酵素こうそ阻害そがい活性かっせいとクロロゲン酸類さんるい寄与きよ」『日本にっぽん食品しょくひん科学かがくこう学会がっかいだい56かんだい6ごう日本にっぽん食品しょくひん科学かがくこう学会がっかい、2009ねん6がつ、336-342ぺーじdoi:10.3136/nskkk.56.336ISSN 1341027XNAID 10024855674 
  6. ^ a b ヘルシアWコーヒー とうブラック、特定とくてい保健ほけんよう食品しょくひん”. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  7. ^ 立石たていし絵美えみ, かんたてひつじさる, 奥田おくだたくどうラットにおける食後しょくご血糖けっとうおよぼすコーヒーまめねつすい抽出ちゅうしゅつぶつ影響えいきょう」『栄養えいようがく雑誌ざっしだい62かんだい6ごう日本にっぽん栄養えいよう改善かいぜん学会がっかい、2004ねん、323-327ぺーじdoi:10.5264/eiyogakuzashi.62.323ISSN 0021-5147NAID 130003667809 
  8. ^ 信頼しんらいできるたしかな情報じょうほうとは”. 国立こくりつ健康けんこう栄養えいよう研究所けんきゅうじょ. 2021ねん7がつ30にち閲覧えつらん
  9. ^ その情報じょうほうは「たしかな情報じょうほう」ですか?”. 国立こくりつ健康けんこう栄養えいよう研究所けんきゅうじょ. 2021ねん7がつ30にち閲覧えつらん
  10. ^ あきらか食品しょくひん」とは?” (PDF). 北海道ほっかいどう薬剤師やくざいしかい. 2021ねん7がつ25にち閲覧えつらん
  11. ^ 誇大こだい表示ひょうじ禁止きんし”. 東京とうきょう福祉ふくし保健ほけんきょく. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  12. ^ 健康けんこう食品しょくひんかんする景品けいひん表示法ひょうじほうおよ健康けんこう増進ぞうしんほうじょう留意りゅうい事項じこうについて” (PDF). 消費しょうひしゃ、 (2016ねん6がつ30にち). 2021ねん7がつ23にち閲覧えつらん
  13. ^ 医薬品いやくひんてき効能こうのう効果こうかについて”. 東京とうきょう健康けんこう福祉ふくしきょく. 2021ねん7がつ23にち閲覧えつらん
  14. ^ コーヒー - 素材そざい情報じょうほうデータベース<有効ゆうこうせい情報じょうほう>(国立こくりつ健康けんこう栄養えいよう研究所けんきゅうじょ
  15. ^ ヘルシアコーヒーとうブラック、特定とくてい保健ほけんよう食品しょくひん”. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  16. ^ ヘルシア クロロゲンさんちから コーヒー風味ふうみ機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひん届出とどけで情報じょうほう検索けんさく”. 消費しょうひしゃちょう. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  17. ^ SOFINA iP クロロゲンさん飲料いんりょうEX、機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひん届出とどけで検索けんさく”. 消費しょうひしゃちょう. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  18. ^ UCC珈琲こーひー生活せいかつプラス ワンドリップコーヒー”. 消費しょうひしゃちょう. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  19. ^ 機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひん制度せいどたいする意見いけんしょ”. 東京とうきょう弁護士べんごしかい (2016ねん1がつ13にち). 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  20. ^ 機能きのうせい表示ひょうじ食品しょくひん制度せいどにおける機能きのうせいかんする科学かがくてき根拠こんきょ検証けんしょうとどられた研究けんきゅうレビューのしつかんする検証けんしょう事業じぎょう 報告ほうこくしょ” (PDF). 消費しょうひしゃちょう. 2021ねん8がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]