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グロス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

グロス(グロスうけ)は、日本にっぽんテレビアニメシリーズで採用さいようされている制作せいさくシステム、下請したうけの1つ。

グロスとは英語えいごgross(=全体ぜんたいの、by the gross=まとめて)に由来ゆらいし、テレビアニメシリーズで「アニメーション制作せいさく」もしくはたんに「制作せいさく」「製作せいさく」とクレジットされるアニメ制作せいさく会社かいしゃ元請もとうけとなり、下請したうけの制作せいさく会社かいしゃに1ぶんまるごと制作せいさくまかせること。

概要がいよう

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グロスけの制作せいさく会社かいしゃはそのはなしすうかんしてはぜん責任せきにんって制作せいさく管理かんりおこない、元請もとうけの制作せいさく会社かいしゃ完成かんせいしたフィルムビデオ納品のうひんする。グロスけの制作せいさく会社かいしゃったはなしすうたいしてのみ「制作せいさく協力きょうりょく」などとクレジットされるのが通例つうれいである。

テレビシリーズは30ふん作品さくひんつきに4ほん作成さくせいしなければならないため、元請もとう会社かいしゃすべての制作せいさく工程こうていうとなると、社内しゃない大量たいりょうのスタッフをかかえなければならず、その負担ふたん莫大ばくだいなものとなる。そこで日本にっぽんのテレビアニメでは、歴史れきしてき分業ぶんぎょうシステムが発展はってんして、社内しゃないのスタッフ以外いがいにも、外部がいぶ作画さくがスタジオ、美術びじゅつスタジオ、撮影さつえい会社かいしゃ音響おんきょう制作せいさく会社かいしゃなどに外注がいちゅうおこなうのが通例つうれいとなっている。通常つうじょう元請もとうけした制作せいさく会社かいしゃ制作せいさく管理かんりおこなって、それぞれの部門ぶもん制作せいさく進行しんこうわれるスタッフが連絡れんらくしている。なかには内部ないぶ制作せいさくしゃかかえずに、プロデュースと企画きかく営業えいぎょう制作せいさく管理かんりのみをおこな人材じんざいのみという元請もとう会社かいしゃもある。こうして、一般いっぱんてきなテレビアニメでは、作画さくがなどを4つから5つのチームに分散ぶんさんしてローテーションをみ、しゅうに1ほんのスケジュールをたもっている。

そうした外注がいちゅうプロダクションのなかには、下請したうけをこなしているうちに制作せいさく能力のうりょく整備せいびして、テレビシリーズまるごとは無理むりだが、1単位たんいでなら制作せいさく責任せきにんてるというところも登場とうじょうしてきた。そこでグロスけがおこなわれるようになった。

脚本きゃくほん発注はっちゅうまでは元請もとうけ、それ以降いこう演出えんしゅつから作画さくが背景はいけい美術びじゅつ仕上しあげ、撮影さつえいまで映像えいぞう完成かんせい工程こうていをグロスけした会社かいしゃおこない、音声おんせいをつける作業さぎょう以降いこう音響おんきょう制作せいさく会社かいしゃのスタッフがおこなうのが通例つうれいである。背景はいけい美術びじゅつ部門ぶもん撮影さつえい部門ぶもんたない会社かいしゃ場合ばあい、それぞれの専門せんもんプロダクションにさらに外注がいちゅうおこなうか、元請もとうけがおこなうことになるが、まごけの制作せいさく管理かんりもグロスけした会社かいしゃおこなう。

なお、じゅん大手おおて小規模しょうきぼのスタジオがグロスけをすることが主流しゅりゅうとされているが、あしプロダクション東宝とうほうの『かいすぐるゾロ』をスタジオジブリが、シンエイ動画どうがの『クレヨンしんちゃん』をProduction I.G京都きょうとアニメーションうように大手おおて制作せいさく会社かいしゃうこともある(下請したう時代じだいからつづ制作せいさく協力きょうりょく参加さんかしているケースがおおい)。また基本きほんてきには元請もとう中心ちゅうしん会社かいしゃでも、テレビシリーズ期間きかん仕事しごとるためにグロスけをすることもおおい。

特殊とくしゅれいでは、『たのしいムーミン一家いっか 冒険ぼうけん日記にっき』や『ウマむすめ プリティーダービー』Season2のように、制作せいさく会社かいしゃ制作せいさくスタッフが交代こうたいしたのち元々もともと制作せいさく会社かいしゃ制作せいさくスタッフがグロスあつかいで一部いちぶかい制作せいさく担当たんとうするというものや、『ロボタン (だい1さく)』や『臨死りんし!!江古田えこだちゃん (だい2さく)』のように元請もとうけとなるスタジオが存在そんざいせず、すべてグロスけで制作せいさくされているものや、『ゾイドジェネシス』や『まよねこオーバーラン!』のように建前たてまえじょう元請もとうけは存在そんざいするが、事実じじつじょうすべてグロスさき制作せいさくされるケースもある。

演出えんしゅつから作画さくが仕上しあげ、美術びじゅつ撮影さつえいまですべ自社じしゃないおこなえる体制たいせい構築こうちくしている制作せいさく会社かいしゃ京都きょうとアニメーションufotableなど一部いちぶかぎられる[1][2][3]。ただし、京都きょうとアニメーションやufotableはテレビアニメにおいてともにグロスけをしないぜんはなしすう元請もとうけ体制たいせい構築こうちくしているが、スケジュールの都合つごうにより一部いちぶ作業さぎょう系列けいれつスタジオや制作せいさくスタジオにも委託いたくしており、TVシリーズにおいてぜんはなしすうぜん工程こうていを1つのスタジオのみで制作せいさくできる制作せいさく会社かいしゃ現状げんじょうのアニメーション制作せいさくのスケジュールのなかでは存在そんざいしない。ただし、OVAやプロモーションビデオ、ゲーム作品さくひん収録しゅうろくされる短編たんぺんアニメーションなどについては京都きょうとアニメーション、ufotableともに完全かんぜんないせい制作せいさくした実績じっせきがある。

歴史れきし

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テレビアニメの草創そうそう分業ぶんぎょうシステムは確立かくりつしておらず、むしプロダクション東映動画とうえいどうがでは、作画さくがから美術びじゅつ撮影さつえいまでのぜん工程こうてい社内しゃないでこなす前提ぜんてい出発しゅっぱつした。しかししゅうに1ほんのスケジュールをこれまでのアニメ映画えいがづくりと同様どうよう体制たいせいおこなうことは過酷かこく労働ろうどうへとつながり、様々さまざま問題もんだいしょうじた。スタッフから過労かろうまでした『鉄腕てつわんアトム』でははやくもスタジオ・ゼロ大西おおにしプロなどに作画さくが作業さぎょう発注はっちゅうしている。そのむしプロダクションからは、サンライズマッドハウス、アートフレッシュ、グループ・タックナックといったプロダクションがまれた。東映動画とうえいどうがでも長編ちょうへん映画えいが時代じだいのベテランスタッフが退社たいしゃして、チルドレンズ・コーナートップクラフト、ハテナプロ、ネオメディア、日動にちどうしんプロといったスタジオを設立せつりつ東映動画とうえいどうがのテレビアニメを外注がいちゅうプロダクションとしてささえた。草創そうそうのプロダクションからは、さらにプロダクションが次々つぎつぎまれていく。

元請もとう会社かいしゃなかには、外注がいちゅうスタジオとして誕生たんじょうし、グロスけで経験けいけんかさねるうちに元請もとうけにまで成長せいちょうした会社かいしゃおおい。演出えんしゅつかかえる作画さくがスタジオだった亜細亜堂あじあどうスタジオジュニオマジックバス撮影さつえい会社かいしゃだったぎゃろっぷトランス・アーツ仕上しあ会社かいしゃだったスタジオディーンイージー・フイルム京都きょうとアニメーションシャフトスタジオ雲雀ひばりなどである。プロデューサーなど制作せいさく管理かんりスタッフが独立どくりつしてつくったスタジオは、最初さいしょからグロスけをおこなったり、元請もとうけとなったりする場合ばあいもある。

1990年代ねんだい終盤しゅうばんになると、深夜しんやたい放送ほうそうされるテレビアニメがOVAてきメディアミックスによるビデオリリースを前提ぜんていとして登場とうじょうした。それらは13程度ていど放送ほうそう1クール)がおおいため、元請もとうけの負担ふたんちいさくなっており、グロスけをおもにしていた制作せいさく会社かいしゃ元請もとうけとしてデビューする機会きかいえてきた。

その用法ようほう

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グロスけという用語ようごはそのに、映像えいぞう業界ぎょうかい音楽おんがく制作せいさく業界ぎょうかいなどにももちいられる。意味いみはアニメ制作せいさくにおけるものとほぼているが、形態けいたい業種ぎょうしゅによってことなる。

テレビドラマなどでは、『にも奇妙きみょう物語ものがたり』のように、メインとなる制作せいさく会社かいしゃ共同きょうどうテレビ)のほかに、東映とうえいおよ子会社こがいしゃセントラル・アーツ)、日活にっかつ大映だいえいテレビ東宝とうほうカノックスなどの様々さまざま映画えいが会社かいしゃ制作せいさくプロダクションなどに各回かくかい制作せいさく発注はっちゅうしていたという事例じれいがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 呪術じゅじゅつまわりせん』と『おにめつ』、アニメをくらべてえた制作せいさくサイドの「決定的けっていてきちがい」現代げんだいビジネス 2021ねん1がつ21にち
  2. ^ 世界せかいとりこにしたアニメ『おにめつ』はどうつくられたのか ufotableにしかできない作画さくがとCGの融合ゆうごう 後編こうへんAREA JAPAN 2020ねん9がつ30にち
  3. ^ 原口はらぐちただしひろしなつ再訪さいほう」『アニメージュ』徳間書店とくましょてん、2006ねん7がつごう