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ケースレス弾薬だんやく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
H&K G11小銃しょうじゅう使用しようされる4.73x33mmケースレス弾薬だんやく分解ぶんかい状態じょうたいしめす。内容ないようひだりからみぎに、固体こたい発射はっしゃやく雷管らいかん弾丸だんがん弾丸だんがん固体こたい発射はっしゃやく中心ちゅうしんじくじょう保持ほじするプラスチックせいキャップ

ケースレス弾薬だんやく(ケースレスだんやく)とは、薬莢やっきょうはいしたしょう火器かき弾薬だんやく一種いっしゅである。典型てんけいてきなものは雷管らいかん発射はっしゃやく発射はっしゃたいをユニットとしてまとめている。ケースレス弾薬だんやくは、通常つうじょう真鍮しんちゅうてつつくられる薬莢やっきょうはいすることで重量じゅうりょう軽減けいげんおよび弾薬だんやくコストの軽減けいげんこころみている。またそれだけではなく、発射はっしゃしたのちそら薬莢やっきょうを抽筒し、はいさいかちする必要ひつようせいはぶくことで連発れんぱつ形式けいしき火器かき作動さどう単純たんじゅんしている[1]

歴史れきし

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広義こうぎのケースレス弾薬だんやくあたらしい概念がいねんではない。初期しょきのいくつかのかみせい薬莢やっきょう設計せっけいでは発火はっかしやすい「薬莢やっきょう」をもちい、これらは発射はっしゃ動作どうさのちくすり室内しつないおおきな残留ざんりゅうぶつのこさなかった。最初さいしょ軍用ぐんようそうしき小銃しょうじゅうであるドライゼげきはりじゅうもちいた弾薬だんやくかみせい薬莢やっきょうで、発射はっしゃやく雷管らいかん、そしてサボけた弾丸だんがんから構成こうせいされた。初期しょきかみせい薬莢やっきょう発射はっしゃ別途べっと雷管らいかん必要ひつようとしており、ドライゼげきはりじゅう弾薬だんやく設計せっけいはそうしたかみせい薬莢やっきょう変革へんかくしたものだった。また、この弾薬だんやく金属きんぞく薬莢やっきょう広範こうはん採用さいよう先行せんこうした。

1848ねんウォルター・ハント特許とっきょけんロケットボール発射はっしゃたいにおいて、ケースレス弾薬だんやく連発れんぱつじゅうはつ採用さいようされた。黒色こくしょく火薬かやくもちいた発射はっしゃやくが、特別とくべつ成形せいけいされたミニエーだん英語えいごばん後部こうぶのくぼみに充填じゅうてんされていた。ハントはこうした弾薬だんやくをレバーアクション作動さどう試作しさく連発れんぱつ小銃しょうじゅうもちいた。後世こうせいスミス&ウェッソンしゃつくられたボルカニック弾薬だんやくはロケットボールに雷管らいかんくわえ、レバーアクション作動さどう設計せっけい改善かいぜんした。類似るいじ弾薬だんやくボルカニック・リピーティング・アームズ英語えいごばんしゃにより、ボルカニック小銃しょうじゅうようとして使つかわれた。

だい世界せかい大戦たいせんちゅう、ドイツは実用じつようてき軍用ぐんようケースレス弾薬だんやく研究けんきゅう開発かいはつするため、集中しゅうちゅうてき計画けいかく開始かいしした。これは金属きんぞく不足ふそくとく薬莢やっきょう製造せいぞうするためのどう不足ふそくしょうじたことから余儀よぎなくされたものだった。ドイツは若干じゃっかん成功せいこうをおさめたものの、戦争せんそうちゅうにケースレス弾薬だんやく量産りょうさんするには十分じゅうぶんでなかった[2]

さんいち弾丸だんがん(榴弾りゅうだん)

どう時期じき日本にっぽんだい口径こうけい航空こうくう機関きかんほうとしてさんいち開発かいはつした。この砲弾ほうだん前述ぜんじゅつのロケットボール発射はっしゃたい同様どうよう弾頭だんとうつつじょうになっており、そうやくはそこにめられ、独立どくりつした薬莢やっきょうたない構造こうぞうだった。開発かいはつ当時とうじから後年こうねんまで、日本にっぽんではあまりケースレス弾薬だんやくかえりみられることがなかったため、「ロケットだん類似るいじ」としょうされることがおおかった(そうやく燃焼ねんしょう砲身ほうしんない終了しゅうりょうするため、ロケットだんではない)。ホ301は先行せんこう量産りょうさん段階だんかいわったものの、少数しょうすうながらしき単座たんざ戦闘せんとう鍾馗しょうき搭載とうさいされ、実戦じっせん投入とうにゅうされB-29撃墜げきつい戦果せんかげている。

現代げんだいのケースレス弾薬だんやく

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現代げんだいのケースレス弾薬だんやく多量たりょう固形こけい発射はっしゃやく構成こうせいされる。当初とうしょニトロセルロースかたまり薬莢やっきょう形状けいじょう成形せいけいしており、弾丸だんがんとなるべく可燃かねんせい雷管らいかん収容しゅうようする空洞くうどうもうけ、これらは予定よてい場所ばしょ接着せっちゃくされた。完成かんせいした実包じっぽうには、粉末ふんまつじょう火薬かやくもちいたブースター発射はっしゃやく内部ないぶ収容しゅうようされており、発射はっしゃやく点火てんか補助ほじょし、弾丸だんがん最初さいしょ推力すいりょくくわえるとも推測すいそくされる[1]

またおおくのケースレス弾薬だんやくでは全長ぜんちょうみじかくするためテレスコープ形状けいじょう採用さいようされており、これはかさばる弾丸だんがん薬莢やっきょうつつじょう部分ぶぶん内部ないぶおさめ、弾薬だんやく全長ぜんちょう短縮たんしゅくしている。全長ぜんちょう短縮たんしゅくされた弾薬だんやくは、じゅう作動さどうさいして弾薬だんやく装填そうてんしなおすための動作どうさ距離きょりめることができ、これはよりたか発射はっしゃ速度そくどや、ちょう射程しゃていにおける標的ひょうてきへの複数ふくすうだん命中めいちゅう可能かのうせいがもっとおおきくなることを容認ようにんする。薬莢やっきょうくなることで、ことにしょう口径こうけい小銃しょうじゅう分野ぶんや大幅おおはば実包じっぽう重量じゅうりょうかるくできる。れいとしては、オーストリアの発明はつめいフーバート・ウゼルがVoere VEC-91よう開発かいはつしたケースレス弾薬だんやくは、どう口径こうけい通常つうじょう弾薬だんやくくらべて重量じゅうりょうやく3ぶんの1である[3][4][5]

薬莢やっきょう固体こたい発射はっしゃやくえることが単純たんじゅん作業さぎょうおもえる一方いっぽうで、ただたん弾薬だんやく構成こうせい要素ようそ同一どういつつとめるやりかたよりも、金属きんぞく薬莢やっきょうおおくの機能きのう付与ふよしている。もし薬莢やっきょう代替だいたいされるのであれば、これらのおおくの機能きのう代替だいたいされねばならない。ケースレス弾薬だんやくはそうした欠点けってんのぞかれたわけではなく、また現行げんこうのケースレス弾薬だんやくがもっと広範こうはん成功せいこうおさめていない理由りゆうはこれらの欠点けってんによる。

たい熱性ねっせい

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軍用ぐんようとしてとく懸念けねんされた最初さいしょだい問題もんだい弾薬だんやくねつたいする感度かんどで、こうした状況じょうきょうにはしばしば連続れんぞく射撃しゃげきふくまれた。現代げんだい火薬かやくおも材料ざいりょうであるニトロセルロースは、摂氏せっしやく170という比較的ひかくてき低温ていおん発火はっかする。金属きんぞく薬莢やっきょう機能きのうひとつにはヒートシンクげられる。発砲はっぽうのちに抽筒されるとき、すべての金属きんぞくせい薬莢やっきょうは、発射はっしゃやく燃焼ねんしょうからしょうじる熱量ねつりょうのうちの相当そうとうりょうり、ねつくすり室内しつないたくわえられるスピードをおそくする。薬莢やっきょう断熱だんねつ作用さようあたえ、くすりしつ内壁ないへきたくわえられたねつから発射はっしゃやく保護ほごする。

こうした機能きのうあたえる薬莢やっきょう場合ばあい、ニトロセルロースをもちいるケースレス弾薬だんやくは、薬莢やっきょうもちいる弾薬だんやくよりも相当そうとうはやコックオフはじまり、くすり室内しつない残留ざんりゅうしたねつによって暴発ぼうはつする。

ねつ問題もんだい解決かいけつにあたっての通常つうじょう処置しょちは、より高温こうおん点火てんか温度おんど発射はっしゃやくえてたい熱性ねっせい増強ぞうきょうするもので、普通ふつう適切てきせつ燃焼ねんしょう効率こうりつあたえられるようあきらしつ爆薬ばくやく慎重しんちょう調製ちょうせいしている[1][4]ヘッケラー&コッホしゃはディナミット・ノーベルしゃ協力きょうりょくし、比較的ひかくてきたい熱性ねっせいたかいケースレス弾薬だんやく生産せいさんすることで対応たいおうした。

閉鎖へいさ

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薬莢やっきょうによって付与ふよされるまたべつ重要じゅうよう機能きのうとは、くすりしつ後部こうぶ密閉みっぺいである。薬莢やっきょうもちいる弾薬だんやく発射はっしゃさいし、圧力あつりょく金属きんぞく薬莢やっきょう膨張ぼうちょうさせ、これがくすりしつ密閉みっぺいする。燃焼ねんしょうガスがくすりしつ後方こうほうからすのを防止ぼうしし、また相当そうとうりょうのサポートをボルトにあたえることも実験じっけんではしめされた。この密閉みっぺい薬莢やっきょう関与かんよしない場合ばあい火器かき設計せっけいには、くすりしつ後方こうほう密閉みっぺいするべつ手段しゅだんかんがえなければならない。この問題もんだいはまた、ドライゼげきはりじゅうでも直面ちょくめんしていた。フランスせいシャスポーじゅうではゴムせいシールをボルトへ追加ついかし、くすりしつからのガス漏洩ろうえい問題もんだい解決かいけつした[6]

発射はっしゃやく弾丸だんがんつつまれたかたちつ、いわゆるテレスコープがたのケースレスだんもまた、銃身じゅうしんはし推進すいしん阻害そがいされる問題もんだい対処たいしょしなければならない。この問題もんだい対処たいしょすべくブースター発射はっしゃやくもちいられる。ブースター発射はっしゃやく先行せんこうして燃焼ねんしょうし、弾丸だんがん圧力あつりょくあたえて薬莢やっきょうからるようにいる。また薬莢やっきょう本体ほんたい燃焼ねんしょうする以前いぜんに、銃身じゅうしん弾丸だんがん[5]

脆弱ぜいじゃくせい

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ケースレス弾薬だんやくは、薬莢やっきょう本体ほんたいおも発射はっしゃやくからるという要因よういんによって制限せいげんけ、また構造こうぞう特性とくせい燃焼ねんしょう特性とくせい従属じゅうぞくする。おも問題もんだいひとつは抜弾である。ケースレス弾薬だんやくそら薬莢やっきょうすという必要ひつようせい根絶こんぜつした一方いっぽうで、不発ふはつたま除去じょきょする場合ばあいであれ、銃器じゅうきから抜弾するのであれ、発射はっしゃしない弾薬だんやくられねばならない。金属きんぞくせい薬莢やっきょう場合ばあい、リムや薬莢やっきょう後端こうたん部分ぶぶんつくられた抽筒ようみぞによってこの機能きのうあたえられる。「Activ」ブランドの散弾さんだんじゅう実包じっぽうのような、完全かんぜんプラスチックされた薬莢やっきょうであっても、うす金属きんぞくせいのリングがリム部分ぶぶんまれてはいさいかち補助ほじょになっている[2][4][5]

現代げんだいのケースレスだん使用しようする銃器じゅうき

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1968ねん最初さいしょのケースレス弾薬だんやく採用さいようした銃器じゅうきが、空気くうきじゅうのメーカーであるデイジーしゃ実際じっさい量産りょうさんされた。これは.22口径こうけい(5.5mm)の信管しんかんいていないてい威力いりょくケースレス弾薬だんやくデイジー V/L小銃しょうじゅうもちいたものである。この小銃しょうじゅう基本きほんてきにスプリングピストンの空気くうきじゅうだったが、V/L弾薬だんやくもちいたさいには、ピストンによって圧縮あっしゅくされたエネルギーが薬莢やっきょう後方こうほう空気くうき加熱かねつし、これは発射はっしゃやく点火てんかするのに充分じゅうぶんなもので、発射はっしゃエネルギーの大半たいはんした。1969ねんアルコール・タバコ・火器かきおよ爆発ばくはつぶつ取締とりしまりきょく(ATF)がこのじゅう空気くうきじゅうではなく火器かきであると認定にんていしたのち、デイジー V/L小銃しょうじゅう機構きこう放棄ほうきされた。またデイジーしゃには量産りょうさん許可きょかりなかった[7]

いく種類しゅるいかのアサルトライフルではケースレス弾薬だんやく採用さいようした。このたね有名ゆうめい兵器へいきひとつには、ヘッケラー&コッホしゃによって生産せいさんされたH&K G11がある。この小銃しょうじゅうくすりしつ閉鎖へいさおよび加熱かねつ問題もんだいのために量産りょうさんはいることがかったが、このじゅうはいくつかの試作しさく段階だんかいならびにフィールドテストをていた。最終さいしゅうてきにはG11は放棄ほうきされ、より安価あんか従来じゅうらいがた銃器じゅうきであるH&K G36えらばれた。

商業しょうぎょうようとして最初さいしょ電子でんししき射撃しゃげき制御せいぎょ装備そうびし、ケースレス弾薬だんやくもちいた小銃しょうじゅうはVoere VEC-91である[3]

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ a b c Meyer, Rudolf; Ko"hler, Josef; Homburg, Axel (2007). Explosives. Wiley-VCH. ISBN 978-3-527-31656-4 
  2. ^ a b Barnes, Frank C.. Skinner, Stan. ed. Cartridges of the World, 10th Ed.. Krause Publications. p. 8. ISBN 0-87349-605-1 
  3. ^ a b Voere”. 2008ねん6がつ13にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2014ねん2がつ2にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c Margiotta, Franklin D. (1997). Brassey's Encyclopedia of Land Forces and Warfare. Brassey's. ISBN 9781574880878 
  5. ^ a b c DiMaio, Vincent J.M. (1998). Gunshot Wounds. CRC Press. ISBN 978-0-8493-8163-8 
  6. ^ Ackley, P.O. (1962). Handbook for Shooters & Reloaders vol I. Plaza Publishing. ISBN 978-99929-4-881-1 
  7. ^ Fjestad, S. P.. Blue Book of Gun Values, 13th Ed.. Blue Book Publications 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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