サモラ・マシェル

サモラ・マシェル Samora Moisés Machel
モザンビーク 初代しょだい 大統領だいとうりょう
任期にんき	1975年ねん6月25日にち – 1986年ねん10月19日にち
出生しゅっしょう	(1933-09-29) 1933年ねん9月29日にち ポルトガル領りょう東ひがしアフリカ、ガザ州しゅう
死去しきょ	(1986-10-19) 1986年ねん10月19日にち（53歳さい没ぼつ） 南みなみアフリカ共和きょうわ国こく、レボンボ山脈さんみゃく
政党せいとう	モザンビーク解放かいほう戦線せんせん
配偶はいぐう者しゃ	グラサ・マシェル

サモラ・マシェル（ポルトガル語ご: Samora Moisés Machel、1933年ねん9月29日にち - 1986年ねん10月19日にち）は、モザンビーク共和きょうわ国こくの革命かくめい家か、政治せいじ家か、軍人ぐんじん。同国どうこくの初代しょだい大統領だいとうりょう。モザンビーク軍ぐん最高さいこう司令しれい官かん。階級かいきゅうは元帥げんすい。

生おい立たち

1933年ねん、ポルトガル領りょう東ひがしアフリカ（現在げんざいのモザンビーク）ガザ州しゅうのMadragoa（現在げんざいのChilembene）に住すむ農家のうかに生うまれた。1942年ねん、ポルトガルの言語げんごと文化ぶんかで教おしえるカトリック宣教師せんきょうしの学校がっこうに入学にゅうがくした。4年生ねんせいまで無事ぶじに学まなんだものの、マシェルは中等ちゅうとう教育きょういくを修了しゅうりょうすることはできなかった。1954年ねん、マシェルは首都しゅとロレンソ・マルケス（現在げんざいのマプト）で看護かんごの勉強べんきょうを始はじめた。マシェルは看護かんご助手じょしゅ養成ようせい所しょ卒業そつぎょうの学歴がくれきで、彼かれによれば看護かんご助手じょしゅになりたくて養成ようせい所しょに入はいったわけではなく、その当時とうじモザンビークの植民しょくみん地ち住民じゅうみんに許ゆるされていた最高さいこうの教育きょういくとは、小学校しょうがっこうを終おえたあと、白人はくじんの監督かんとく下かで下働したばたらきの仕事しごとをするための看護かんご助手じょしゅの養成ようせい所しょに行いく事ことであり、愚民ぐみん化か政策せいさくであった。ロレンソ・マルケスにあるミゲル・ボンバルダ病院びょういんでの正規せいきの訓練くんれんを全すべて行おこなうための資金しきんが確保かくほできなかったため、病院びょういんで補助ほじょ者しゃとして働はたらくことで夜学やがくの学費がくひを稼かせいでいた。病院びょういんでの勤務きんむは、マシェルが民族みんぞく主義しゅぎ闘争とうそうに参加さんかするために国くにを離はなれるまで続つづけられた。

解放かいほう闘争とうそう

病院びょういんでの勤務きんむを続つづける中なかで、マシェルは次第しだいにマルクス主義まるくすしゅぎに引ひきつけられるようになり、病院びょういん内ないで同おなじ仕事しごとをしている黒人こくじんの看護かんご士しが白人はくじんの看護かんご士しより給与きゅうよが低ひくいという事実じじつに抗議こうぎするなど、政治せいじ的てきな活動かつどうをはじめた。マシェルは後のちに、モザンビークの貧困ひんこん層そうに対たいする医療いりょうの悪あく待遇たいぐうについて「富裕ふゆう層そうの飼かっている犬いぬは、ワクチン、薬くすり、医療いりょうの面めんにおいて、彼かれらの富とみを支ささえる労働ろうどう者しゃたちよりも上等じょうとうのものを享受きょうじゅしている」と語かたっている。

1962年ねん、マシェルはモザンビーク解放かいほう戦線せんせん（FRELIMO）に加くわわり、翌よく1963年ねんに国外こくがいで軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけた。1964年ねんにモザンビークに戻もどると、ゲリラ部隊ぶたいを率ひきいてモザンビーク北部ほくぶでポルトガルに対たいする攻撃こうげきを行おこなった。その後ご、1970年ねんまでにマシェルはFRELIMO軍ぐんの最高さいこう司令しれい官かんになった。マシェルは最終さいしゅう的てきな目標もくひょうとして、人々ひとびとに「武力ぶりょく闘争とうそうを革命かくめいに変かえる方法ほうほうを理解りかい」させることと、「新あらたな社会しゃかいを作つくり上あげるためには新あらたな精神せいしん状態じょうたいを作つくり上あげること」が必要ひつよう不可欠ふかけつであることを理解りかいさせることだと語かたっている。

独立どくりつ

マシェルの掲かかげた目標もくひょうはほどなく達成たっせいされた。FRELIMOの部隊ぶたいは植民しょくみん地ち支配しはいの力ちからを弱よわめさせ、1974年ねんにポルトガルでカーネーション革命かくめいが勃発ぼっぱつすると、ポルトガルはモザンビークから撤退てったいした。マシェルの革命かくめい政府せいふは政府せいふを引ひき継つぐとともに、1975年ねん6月25日にちの独立どくりつとともに初代しょだい大統領だいとうりょうに就任しゅうにんした。

大統領だいとうりょう就任しゅうにん後ご、内政ないせい面めんではポルトガル人じんの農園のうえんと財産ざいさんの国有こくゆう化かを行おこない、またFRELIMO政権せいけんによって学校がっこうや診療しんりょう所しょを建設けんせつするなど、マルクス主義まるくすしゅぎの実践じっせんを速すみやかに導入どうにゅうした。さらにマシェルは、ローデシア（現在げんざいのジンバブエ）や南みなみアフリカで少数しょうすう派は白人はくじん政権せいけんと戦たたかっている革命かくめい家かたちのために、モザンビークでの訓練くんれんおよび活動かつどうを認みとめた。

しかし、FRELIMO政権せいけんが建設けんせつした学校がっこうや診療しんりょう所しょは、反はん政府せいふ勢力せいりょくのモザンビーク民族みんぞく抵抗ていこう運動うんどう（RENAMO）による報復ほうふくによって破壊はかいされ、鉄道てつどうや水力すいりょく発電はつでん施設しせつも妨害ぼうがいを受うけた。モザンビークの経済けいざいはこうした略奪りゃくだつ行為こういに苦くるしみ、ソビエト連邦れんぽうを中心ちゅうしんとした海外かいがいからの援助えんじょが始はじまった。こうした状況じょうきょうにもかかわらず、マシェルは在任ざいにん中ちゅう高たかい支持しじを得え続つづけていた。1975-1976年ねんのレーニン平和へいわ賞しょうも受賞じゅしょうしている。

航空機こうくうき事故じこ

詳細しょうさいは「1986年ねんモザンビークTu-134墜落ついらく事故じこ」を参照さんしょう

1986年ねん10月19日にち、ザンビアでの国際こくさい会議かいぎを終おえて帰国きこく途中とちゅうのマシェルが乗のったツポレフTu-134（機体きたい記号きごうC9-CAA）がレボンボ山脈さんみゃくに墜落ついらくした。乗員じょういん乗客じょうきゃく44人にんのうち、マシェルを含ふくむモザンビーク政府せいふの大臣だいじん、職員しょくいんら34人にんが死亡しぼうし、生存せいぞん者しゃは10人にんだった。モザンビークでは、この墜落ついらく事故じこに当時とうじの南みなみアフリカ政府せいふが関与かんよしているという疑うたがいが広ひろまったが、その証拠しょうこは何一なにひとつ見みつからなかった。

墜落ついらく事故じこの後のち、モザンビークと南みなみアフリカの両国りょうこく政府せいふは、国際こくさい民間みんかん航空こうくう機関きかんの関与かんよにより国際こくさい的てきな調査ちょうさ委員いいん会かいを設置せっちすることで合意ごういした。シカゴ条約じょうやくによると、墜落ついらくの起おこった場所ばしょである南みなみアフリカ政府せいふが調査ちょうさを主導しゅどうすることになっている。しかし南みなみアフリカ政府せいふは、飛行機ひこうきの所有しょゆう者しゃであるモザンビークと、製造せいぞう者しゃであるソ連それんに協力きょうりょくを強しいた。結局けっきょく、モザンビークとソ連それんは、同等どうとうの立場たちばで参加さんかする感触かんしょくを得えられなかったため、初期しょきの段階だんかいで協力きょうりょく関係かんけいを解消かいしょうした。

事故じこ調査ちょうさ

マーゴ委員いいん会かい

南みなみアフリカ政府せいふは、マシェルの乗のった飛行機ひこうきの墜落ついらくを調査ちょうさするために、裁判官さいばんかんのセシル・マーゴを代表だいひょうとする調査ちょうさ委員いいん会かいを設置せっちした。委員いいん会かいの調査ちょうさは、ロター・ニースリング将軍しょうぐんが現場げんばから回収かいしゅうされたコックピットボイスレコーダー（ブラックボックス）の引渡ひきわたしを妨害ぼうがいしたため、数すう週間しゅうかん遅おくれた。マーゴ委員いいん会かいは調査ちょうさの終了しゅうりょうにあたり、機体きたいは飛行ひこうに耐たえるもので整備せいびもきちんとなされており、手抜てぬきや第三者だいさんしゃの関与かんよを示しめす証拠しょうこは全まったく無なかったと結論けつろんづけている。調査ちょうさ報告ほうこく書しょの中なかで委員いいん会かいは、以下いかのように述のべている。

「

事故じこの原因げんいんは、フライトクルーが降下こうか進入しんにゅうの機器ききを手順てじゅん通どおりに用もちいなかったことであり、さらに暗闇くらやみといくらかの雲くもの中なかで、最低限さいていげん維持いじすべき高度こうどを保たもたずに有ゆう視界しかい飛行ひこう方式ほうしきでの降下こうかを続つづけたことと、対地たいち接近せっきん警報けいほう装置そうちの警告けいこくを無視むししたことも付つけ加くわえられる。

」

この事故じこに関かんするマーゴ報告ほうこく書しょは、国際こくさい民間みんかん航空こうくう機関きかんでも承認しょうにんされた。

ソ連それんの報告ほうこく書しょ

一方いっぽう、ソ連それん側がわは、南みなみアフリカによって自身じしんの専門せんもん的てき知識ちしきや経験けいけんが傷きずつけられたと主張しゅちょうする反対はんたい意見いけんを出だした。その中なかでは、南みなみアフリカの保安ほあん部隊ぶたいが共謀きょうぼうし、イスラエルの情報じょうほう機関きかんから提供ていきょうされた技術ぎじゅつを用もちいて偽にせのナビゲーションビーコン信号しんごうに故意こいに交換こうかんされたという説せつを述のべている。ソ連それんの報告ほうこく書しょでは、飛行機ひこうきを丘おかに誘導ゆうどうした37度どの右みぎ旋回せんかいに着目ちゃくもくした。これは、乗務じょうむ員いんが着陸ちゃくりくに向むけて地面じめんと並行へいこうに飛行ひこうしていると誤信ごしんして、地表ちひょう接近せっきんの警告けいこくを読よみ誤あやまったというマーゴ報告ほうこく書しょの調査ちょうさ結果けっかを否定ひていするものである。

真実しんじつ和解わかい委員いいん会かいの報告ほうこく書しょ

マシェルの死しから12年ねん後ご、南みなみアフリカでは民主みんしゅ的てきに選えらばれた政権せいけんによってアパルトヘイトは廃止はいしされたが、同時どうじに真実しんじつ和解わかい委員いいん会かい（TRC）によってマシェルの死しに関かんする特別とくべつな調査ちょうさが明あかるみに出でた。この委員いいん会かいの調査ちょうさでは、過去かこの二ふたつの報告ほうこく書しょのどちらを支持しじするかについて決きめ手てとなる証拠しょうこがないとしている。しかしながら、委員いいん会かいによって集あつめられた状況じょうきょう証拠しょうこから、マーゴ報告ほうこく書しょの内容ないようにいくつかの疑問ぎもんを呈ていすることとなった。

• ボタ元もと外相がいしょうや多数たすうの上級じょうきゅう防衛ぼうえい職員しょくいんが墜落ついらくの前日ぜんじつ、陸軍りくぐん情報じょうほう部ぶ共用きょうようしているシークレットセキュリティポリスの基地きちがあるSkwamansで会合かいごうを行おこなっていたと元もと陸軍りくぐん情報じょうほう部ぶ職員しょくいんが証言しょうげんしている。その夜よる、ボタ元もと外相がいしょうらは小型こがた飛行機ひこうきなどで基地きちを去さり、墜落ついらく事故じこが起おきた後のちに再ふたたび戻もどってきている。
• 飛行機ひこうきは、24時じ間あいだ体制たいせいで非常ひじょうに精巧せいこうなPlessey AR3-Dレーダーシステムによる監視かんしを行おこなっている特別とくべつ制限せいげん区域くいきに進入しんにゅうしているが、コースを外はずれ南みなみアフリカの領空りょうくうに入はいっているにもかかわらず何なんの警告けいこくも無なかった。
• 南みなみアフリカの国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ（SSC）はその議事ぎじ録ろくで、1984年ねん1月がつ以降いこう、いかにしてRENAMOがFRELIMO政権せいけんを倒たおすかを検討けんとうしていたことを残のこしている。この中なかにはジャック・ビュヒナー将軍しょうぐんやクレイグ・ウィリアムソン少佐しょうさの名前なまえも見みられる。

このTRC報告ほうこく書しょでは、偽にせのビーコン問題もんだいと南みなみアフリカ政府せいふからの警告けいこくがなかったという疑問ぎもんについて、適切てきせつな機関きかんによるさらなる調査ちょうさが必要ひつようであると結論けつろん付つけている。

TRCの所有しょゆうする警察けいさつのビデオには、ボタ外相がいしょうとボータ大統領だいとうりょうが墜落ついらく現場げんばに立たち、亡なくなったマシェルやその他たの人々ひとびとを「非常ひじょうに良よき友とも」と表現ひょうげんし、それゆえに南みなみアフリカにとっても悲劇ひげきであるとジャーナリストたちに語かたる場面ばめんがある。

2006年ねんの調査ちょうさ

2006年ねん2月がつ10日とおかのメール・アンド・ガーディアン電子でんし版ばんは、南みなみアフリカ政府せいふがマシェルの死しについて調査ちょうさを再開さいかいする予定よていだと報ほうじた。保安ほあん相しょうのチャールズ・ンカクラは、議会ぎかい内ないでリポーターに対たいして「我々われわれは、この件けんを徹底的てっていてきに調査ちょうさすることを確実かくじつにすることをモザンビークの人々ひとびとに対たいして負おっている。この件けんの扱あつかいについては議論ぎろんが進行しんこう中ちゅうだ」と語かたっている。

この調査ちょうさには、南みなみアフリカの全すべての法ほう執行しっこう機関きかんがモザンビークの同どう機関きかんと協力きょうりょくして関与かんよするものと予想よそうされた。しかし、その後ご2年ねん近ちかくが経過けいかしても調査ちょうさから新あらたな事実じじつは浮うかび上あがってきていない。

グラサ・マシェル

マシェルの未亡人みぼうじんグラサ・マシェルは墜落ついらくが事故じこでないことを確信かくしんし、夫おっとを殺あやめた人物じんぶつを探さがし出だすことに生涯しょうがいを捧ささげた。1998年ねん、グラサは当時とうじ南みなみアフリカの大統領だいとうりょうであったネルソン・マンデラと再婚さいこんした。一いち国こくの王公おうこうと死別しべつまたは離婚りこんした妃ひが後のちに別べつの国くにの王公おうこうの妃ひとなった例れいは歴史れきし上じょう珍めずらしくないが、二ふたつの共和きょうわ制せいの国くにの大統領だいとうりょう夫人ふじんを経験けいけんしたのはこれまでのところこのグラサ・マシェルが唯一ゆいいつの例れいとなっている。

記念きねん碑ひ

1999年ねん1月がつ19日にち、南みなみアフリカのネルソン・マンデラと、マンデラの夫人ふじんとなったグラサ、そしてモザンビークの大統領だいとうりょうのジョアキン・アルベルト・シサノによって飛行機ひこうきの墜落ついらくした場所ばしょに記念きねん碑ひが建たてられた。モザンビークの建築けんちく家かJose Forjazによってデザインされた記念きねん碑ひは、墜落ついらくで亡なくなった人数にんずうと同おなじ35個この鋼管こうかんで構成こうせいされ、南みなみアフリカ政府せいふが150万まんランド（約やく30万まんドル）を出だしている。なお、この墜落ついらくではソ連それんの乗務じょうむ員いん4人にんと、マシェルに同行どうこうした2人ふたりのキューバ人じん医師いし、ザンビアとザイールの在ざいモザンビーク大使たいしの8人にんの外国がいこく人じんが亡なくなっている。

脚注きゃくちゅう

公職こうしょく
先代せんだい （創設そうせつ）	モザンビーク大統領だいとうりょう 初代しょだい：1975 - 1986	次代じだい ジョアキン・アルベルト・シサノ