シグナルとシグナレス

「シグナルとシグナレス」は、宮沢みやざわ賢治けんじの短編たんぺん童話どうわ。1923年ねん5月11日にちから23日にち（16日にち・19日にちは休載きゅうさい）まで、岩手いわて毎日新聞まいにちしんぶん（1933年ねん廃刊はいかん。現在げんざいの毎日新聞まいにちしんぶんとは無関係むかんけい）に11回かいに分わけて掲載けいさいされた。賢治けんじの数少かずすくない生前せいぜん発表はっぴょう童話どうわの一ひとつである。

概要がいよう

本線ほんせんの信号しんごう機きシグナルと、軽便鉄道けいべんてつどうの小ちいさな腕木うでき式しき信号しんごう機きシグナレスの、淡あわく切せつない恋こい物語ものがたり。賢治けんじ独特どくとくの暖あたたかいユーモアに満みち溢あふれた作品さくひんである。シグナルは東北本線とうほくほんせんの信号しんごう機きが擬人ぎじん化かされた男性だんせいのキャラクターで、シグナレスは釜石線かまいしせん（当時とうじは岩手いわて軽便鉄道けいべんてつどう）の信号しんごう機きが擬人ぎじん化かされた女性じょせいのキャラクターである。賢治けんじが居住きょじゅうしていた岩手いわて県けん花巻はなまき市しの花巻はなまき駅えきにはこのふたつの路線ろせんが乗のり入いれており、そこから着想ちゃくそうを得えた、と言いわれている。

また、信号しんごう機きたちが「蒸気じょうき機関きかん車しゃの父ちち」と呼よばれるジョージ・スチーブンソンの名前なまえを挙あげて、願ねがいをかなえられるよう祈いのりを捧ささげる描写びょうしゃがある。

その他た

シグナルの台詞せりふに「だから僕ぼくを愛あいしてください。さあ僕ぼくを愛あいするって言いってください」という一文いちぶんがある。この「愛あいする」という表現ひょうげんにつき、当時とうじの日本にっぽんの近代きんだい文学ぶんがくでは前例ぜんれいのなかった愛情あいじょう表現ひょうげんの用法ようほうであるという指摘してきがある（出典しゅってん：牧野まきの立雄りつお「恋愛れんあいと音楽おんがく -「シグナルとシグナレス」覚書おぼえがき」、至文しぶん堂どう『国文学こくぶんがく』2006年ねん9月がつ号ごう所収しょしゅう）。

関連かんれん項目こうもく

• 岡山おかやま不ふ衣ころも - 当時とうじ、岩手いわて毎日新聞まいにちしんぶんに在籍ざいせき。

外部がいぶリンク

• 『シグナルとシグナレス』：新字しんじ新しん仮名かめい - 青空あおぞら文庫ぶんこ