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シュート (植物しょくぶつ)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

シュートえい: Shoot)とは、くきとそのうえにできる多数たすうからなる単位たんいであり、維管たば植物しょくぶつ地上ちじょうをなす主要しゅよう器官きかんである[1]なえじょう[1][2][3](びょうじょう[2])、じょう[1](がじょう)、じょう[3](ようじょう)、えだじょう[4](しじょう)ともばれる。普通ふつう、シュートというかたりもちいられる[3]

構造こうぞう

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シュートのしき。1. いただき、2. ふし、3. 、4. ふしあいだ、5. 腋芽えきが、6. くき

もとのシュート(主軸しゅじく)からぶんえだしたえだびると、そのえだべつのシュートである[1][3]。シュートはふしとそれにつづふしあいだかえ構造こうぞうとみられ、ふしあいだながさはさまざまである。ふしあいだなが場合ばあいいちじるしい伸長しんちょう成長せいちょう結果けっかである[1]

シュートはてき肥大ひだい成長せいちょうしたり、ジャガイモなどの塊茎かいけいウチワサボテンなどのひらたくきなど様々さまざま変形へんけいすることがある[1]。また、はな生殖せいしょくシュートである。シュートは分裂ぶんれつ組織そしきからつくられる[1]

シュートいただき分裂ぶんれつ組織そしき

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シュートいただき分裂ぶんれつ組織そしき(Shoot apical meristem, SAM)、またくきいただき分裂ぶんれつ組織そしきとは、維管たば植物しょくぶつのシュートの先端せんたん存在そんざいするいただきはし分裂ぶんれつ組織そしきである[5]いただき腋芽えきがあるいはてい不定ふてい関係かんけいなくシュートをす。

シュートいただき分裂ぶんれつ組織そしき構造こうぞうは、シダ植物しょくぶつ大葉おおばるい単一たんいつたんいただきがた裸子植物らししょくぶつ単純たんじゅんくきいただきがた被子植物ひししょくぶつふくくきいただきがたの3種類しゅるいがある。

シュートいただき

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シュートいただきくきいただき、Shoot apex)とは、シュートいただき分裂ぶんれつ組織そしきとその周辺しゅうへんのことである[6]栄養えいよう成長せいちょう存在そんざいする栄養えいようシュートいただきと、生殖せいしょく成長せいちょう存在そんざいする生殖せいしょくシュートいただきの2種類しゅるいがある。

栄養えいようシュートいただき組織そしき培養ばいようそとうえへんとしてもちいることでくきいただき培養ばいよう応用おうようされる。

ファイトマー

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ファイトマー(Phytomer)はシュートを構成こうせいする腋芽えきがふしあいだをまとめたセットである[7]イネ植物しょくぶつでは、基部きぶから形成けいせいされる不定ふていふくめることもある。

ファイトマーはシュートいただき連続れんぞくてき形成けいせいされ、植物しょくぶつたい基本きほん単位たんいであるファイトマーが連続れんぞくしたものとかんがえられる[5]植物しょくぶつたい体制たいせい形態けいたい変化へんかをもたらすのはファイトマーの減少げんしょう付加ふか変異へんいなどとかんがえられるため、植物しょくぶつ発生はっせい成長せいちょう解析かいせき進化しんか研究けんきゅうなどにも使つかわれる重要じゅうよう概念がいねんである[5]

地上ちじょう成長せいちょうするシュートのかたちはそれぞれの植物しょくぶつ特徴とくちょうづけている。同一どういつのシュートであっても、成長せいちょうとともにタイプが変化へんかするものがある。また、2つのタイプをあわつものも存在そんざいする。

ロゼット

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カタクリ生葉いくは少数しょうすう

地上ちじょうくきがないもしくはごくみじかく、すべぎわのみじかくきから生葉いくはである。ロゼットの中心ちゅうしんにはいただきがある。

バラ模様もようで、一生いっしょうロゼットのもの
一生いっしょうをロゼットでごし、花序かじょをつけるときのみ花茎かけいをたてる。
オオバコタンポポなど[8]
バラ模様もようではないが、生葉いくはだけのもの
生葉いくは少数しょうすうでバラ模様もようにはえないが、これもシュートのかたちとしてはロゼットの一種いっしゅである[8]
  • カタクリ - 生葉いくはは1まいもしくは2まいで、地上ちじょうくき花茎かけいのみ。
  • カンアオイ - 地表ちひょうのすれすれにみじかくきい、1-2まいく。
  • ヤブラン - ほそ叢生そうせいする。
ぶしてき変化へんかするもの
発芽はつがロゼットでごし、のちに直立ちょくりつする。
ヒメジョオンメマツヨイグサなどにみられる[9]
経年けいねんてき変化へんかするもの

直立ちょくりつはすじょう

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チゴユリ
チヂミザサ下部かぶ画像がぞう左下ひだりした)が匍匐ほふく上部じょうぶはすじょうしている。
直立ちょくりつ直立ちょくりつくき)もしくははすじょうはすじょうくき)するもの
チゴユリシロザイタドリなど[10]
下部かぶ匍匐ほふく上部じょうぶはすじょうするもの
チヂミザサフッキソウなど[10]

匍匐ほふくせい

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ギョウギシバ匍匐ほふくしている。
匍匐ほふくえだ匍匐ほふくくき、ストロン)をのばすもの
匍匐ほふくえだとは、ふしからろす匍匐ほふくするシュートのこと。
チドメグサシロツメクサなど[11]
直立ちょくりつ(またははすじょう)するシュートをともな匍匐ほふくせいシュートをもつもの
複数ふくすうのタイプがかさなって個体こたい形作かたちづくられている。
  • シバ - 匍匐ほふくくき直立ちょくりつくきわさっている。
  • ギョウギシバ - 下部かぶ匍匐ほふくするシュート、はすじょうするシュート。
  • カキドオシ - 直立ちょくりつ(またははすじょう)するシュートと匍匐ほふくえだわさっている。
  • ラショウモンカズラ - シュートははじめはすじょうし、彎曲わんきょくしてさきう。匍匐ほふく鱗片りんぺんじょうである。このシュートに直立ちょくりつはなをつけるシュートがともなう。
走出はしりでえだ(ランナー)をすもの
走出はしりでえだとは、途中とちゅうからろさない匍匐ほふくせいのシュートのこと[11]
  • ユキノシタ - ははかぶから走出はしりでえだしたさきにロゼットをつくり、それが子株こかぶとなる。
  • オミナエシ - はる直立ちょくりつシュートから走出はしりでえだばし、あきにその先端せんたんからロゼットをつくり、よくはる直立ちょくりつシュートとなる。直立ちょくりつシュートは結実けつじつれる。

シュートのぶんえだ

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シュートがび、ぶんえだして植物しょくぶつたいかたち形成けいせいされてゆく。シュートのかたぶんえだ様式ようしきには植物しょくぶつによるまりがある。

二又ふたまたぶんえだ

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二又ふたまたぶんえだ(Dichotoous branching,Dichotomy)、また、またぶんえだまたじょうぶんえだとは、じく先端せんたん勢力せいりょくひとしい2つのじくかれるぶんえだほうである[12]。維管たば植物しょくぶつでは、もっと原始げんしてきぶんえだ様式ようしきであるとかんがえられる。シダ植物しょくぶつ大葉おおばるいのシュートにられる。1かいごとにぶんえだめん直交ちょっこうする十字じゅうじじょう二又ふたまたぶんえだと1平面へいめんぶんえだかえ平面へいめんじょう二又ふたまたぶんえだがある[12]

たんじくぶんえだ

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たんじくぶんえだ (Monopodial branching)、また、がわかたぶんえだ(Lateral branching)とは、 主軸しゅじく発達はったつして1ほんじくをつくり、そのがわかたがわじくをつくるぶんえだほうである[13]種子しゅし植物しょくぶつでは、がわえだ腋芽えきがから発達はったつするので、えだじょがわえだ配置はいち)はじょおなじになる[13]。シダ植物しょくぶつ場合ばあい葉腋ようえき位置いちがわえだ形成けいせいされるものはすくなく、えだじょじょおなじにならない[13]。この成長せいちょう様式ようしきたんじく成長せいちょうという[14]

かりじくぶんえだ

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かりじくぶんえだ(Sympodial branching)、あるえだとくによく発達はったつし、そのえだ主軸しゅじくであるようにえるぶんえだほうである[15]花序かじょきひげの形成けいせいによって主軸しゅじく成長せいちょうまるあるいは先端せんたんれ、腋芽えきが成長せいちょうぐことをかえしながらびる[16]

かりじくぶんえだのうち、いただき成長せいちょうまると2腋芽えきが成長せいちょうして二又ふたまたじょうえだとなるものをにせ二又ふたまたぶんえだという。ハダカホオズキアオキなど[16]

シュートけい

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シュートけい(Shoot system)とは、単一たんいつくきぶんえだからはじまるくきがわえだ集団しゅうだんのことである[17]なえじょうけいともばれる。ようから成長せいちょうしたくき主軸しゅじく)はをもち、その葉腋ようえきにできた腋芽えきがからがわえだ成長せいちょうする[17]。その主軸しゅじくがわえだをまとめてシュートけいぶ。植物しょくぶつたいはシュートけいけいからなる[3][17]

くき

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くき明確めいかく区別くべつされる植物しょくぶつにおいては、シュートはくきからなるふくあい器官きかんとみなされる。また、くき区別くべつむずかしい植物しょくぶつについては、べつ見方みかた歴史れきしてき提唱ていしょうされてきた。

フィトンせつ
フィトンせつとは、シダ植物しょくぶつたん子葉しよう植物しょくぶつなどのくきみじか植物しょくぶつたい提唱ていしょうされた、くき基部きぶあつまりとかいするせつである[1]
1790ねんドイツヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテにより基本きほんてきなフィトンせつ原則げんそくかんがされ、のち1841ねんフランス植物しょくぶつ学者がくしゃシャルル・ゴーディショー=ボープレによって提唱ていしょうされた[18]
部分ぶぶんシュートせつ
部分ぶぶんシュートせつとは、本来ほんらいシュートであり、その性質せいしつ完成かんせいせずにわったものとするせつである[1]
1930ねんイギリス植物しょくぶつ学者がくしゃアグネス・アーバー(Agnes Arber)によって提唱ていしょうされた。
包囲ほういせつ
包囲ほういせつとは、基部きぶくきまわりをつつんでいるとなすせつである[1]
1851ねん、ドイツの植物しょくぶつ学者がくしゃであるヴィルヘルム・ホフマイスターによって提唱ていしょう
しゅうくきせつ
しゅうくきせつは、進化しんかてき同等どうとう二又ふたまたぶんえだかれる2つのじくがほぼひとしい二又ふたまたぶんえだ)をしていたじくげん中軸ちゅうじく主軸しゅじく)とはらようがわえだ)に分化ぶんかし、はらよう中軸ちゅうじくにまとわりついてしゅうくきとなり、さらにそのしゅうくき中軸ちゅうじくわさってくきをつくるとかんがえるせつ[1]
1903ねんにドイツの植物しょくぶつ学者がくしゃヘンリー・ポトニエ提唱ていしょう
かわせつ
かわせつは、本来ほんらいくきまわりがてき部分ぶぶんがわ)につつまれてシュートがつとかんがえるせつ[1]
1922ねんエディス・レベッカ・ソーンダース(Edith Rebecca Saunders)が提唱ていしょう包囲ほういせつしゅうくきせつながれをむ。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.642g-643「シュート」
  2. ^ a b 旺文社おうぶんしゃ 生物せいぶつ事典じてん よんていばん』p.363「なえじょう
  3. ^ a b c d e 岩瀬いわせ大野おおの(2004) p.16
  4. ^ 植物しょくぶつがく概論がいろん』(2005)
  5. ^ a b c 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.644b 「シュートいただき分裂ぶんれつ組織そしき
  6. ^ 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.644a「シュートいただき
  7. ^ 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.1179c「ファイトマー」
  8. ^ a b 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.22「ロゼット」
  9. ^ a b c 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.26-27「シュートのタイプの時間じかんてき変化へんか
  10. ^ a b 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.23
  11. ^ a b 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.24-25
  12. ^ a b 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.1204f「二又ふたまたぶんえだ
  13. ^ a b c 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.885d「たんじくぶんえだ
  14. ^ 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.32「たんじく成長せいちょう
  15. ^ 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.215b 「かりじくぶんえだ
  16. ^ a b 岩瀬いわせ大野おおの(2004)p.33-34「かりじく成長せいちょう
  17. ^ a b c 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』P.643g-644「シュートけい
  18. ^ (ロシア Морфология растений - ソビエトだい百科ひゃっか事典じてん植物しょくぶつ形態けいたいがく項目こうもく

参考さんこう文献ぶんけん

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  • いわおいさお倉谷くらたにしげる斎藤さいとうしげる也・塚谷つかたに裕一ひろいち へん岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてんだい5はん岩波書店いわなみしょてん、2013ねんISBN 4-00-080314-X 
  • 岩瀬いわせとおる大野おおの啓一けいいち ちょ野外やがい観察かんさつハンドブック 写真しゃしん植物しょくぶつ用語ようご全国ぜんこく農村のうそん教育きょういく協会きょうかい、2004ねんISBN 4-88137-107-X 
  • 八杉やすぎ貞雄さだお可知かち直毅なおき 監修かんしゅう旺文社おうぶんしゃ 生物せいぶつ事典じてん よんていばん旺文社おうぶんしゃ、2003ねんISBN 978-4010751435 
  • 職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ総合そうごうだい学校がっこう能力のうりょく開発かいはつ研究けんきゅうセンター へん植物しょくぶつがく概論がいろん職業しょくぎょう訓練くんれん教材きょうざい研究けんきゅうかい、2005ねんISBN 978-4786310515 

関連かんれん項目こうもく

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