タイタンの妖女ようじょ

タイタンの妖女ようじょ The Sirens of Titan
作者さくしゃ	カート・ヴォネガット
国くに	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
言語げんご	英語えいご
ジャンル	SF小説しょうせつ
刊本かんぽん情報じょうほう
出版しゅっぱん年月日ねんがっぴ	1959年ねん
日本語にほんご訳やく
訳者やくしゃ	浅倉あさくら久志ひさし（1972年ねん）
ウィキポータル 文学ぶんがく ポータル 書物しょもつ

『タイタンの妖女ようじょ』（タイタンのようじょ、The Sirens of Titan）は、1959年ねんに出版しゅっぱんされたカート・ヴォネガットのSF小説しょうせつ。2冊さつ目めの小説しょうせつにあたり、自由じゆう意志いし、全能ぜんのう、人類じんるいの歴史れきし全体ぜんたいの目的もくてきといった問題もんだいを扱あつかっている。1973年ねん、星雲せいうん賞しょう長編ちょうへん部門ぶもんを授賞じゅしょう。

あらすじ

主人公しゅじんこうのマラカイ・コンスタントは、カリフォルニア州しゅうハリウッド生うまれの22世紀せいきのアメリカの富豪ふごうである。大変たいへんな幸運こううんの持もち主ぬしで、彼かれはそれを父親ちちおやの財産ざいさんを殖ふやすことに使つかったが、他たには彼かれの人生じんせいで大たいしたことはしていない。彼かれは、地球ちきゅうから火星かせいへ旅たびし、記憶きおくを消けされ、火星かせい軍ぐんの一いち兵士へいしとして地球ちきゅうとの惑星わくせい間あいだ戦争せんそうの準備じゅんびをする。しかし出陣しゅつじんの際さいに水星すいせいへむかってしまい、そこで3年間ねんかんを過すごした後のち、地球ちきゅうに戻もどって神かみの不興ふきょうのしるしとしてさらし者ものになり、最後さいごには、土星どせいの衛星えいせいタイタンで彼かれの幸運こううんに責任せきにんを持もつウィンストン・ナイルス・ラムフォードと会あう。

ラムフォード自身じしんはニューイングランドの裕福ゆうふくな家系かけいの出だしで、個人こじん用ようの宇宙船うちゅうせんを建造けんぞうするほどの富とみを持もち、宇宙うちゅう探検たんけん家かとなる。地球ちきゅうと火星かせいの間あいだを旅たびしている時ときに、ラムフォードとその飼かい犬いぬのカザックを載のせた宇宙船うちゅうせんは「時間じかん等とう曲きょく率りつ漏斗ろうと」（クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム）として知しられる現象げんしょうに飛とび込こみ、ラムフォードとカザックは量子力学りょうしりきがくにおいて波なみが有ゆうする確かく率りつと同様どうような「波動はどう現象げんしょう」になる。彼かれらは、太陽たいようからベテルギウスに至いたる螺旋らせんに沿そって存在そんざいし、地球ちきゅうのような惑星わくせいがその螺旋らせんを横切よこぎると、一時いちじ的てきにその惑星わくせいで実体じったい化かする。

漏斗ろうとに入はいった時ときに、ラムフォードは過去かこと未来みらいを知しるようになった。小説しょうせつを通つうじて、彼かれは未来みらいを予言よげんする。そして、わざと嘘うそを言いっているのでない限かぎり、その予言よげんは必かならず真実しんじつとなる。

このような状態じょうたいに置おかれたラムフォードは、火星かせい人じんによる侵略しんりゃく後ごの地球ちきゅうを団結だんけつさせるために「徹底的てっていてきに無関心むかんしんな神かみの教会きょうかい」を創立そうりつする。また、様々さまざまな惑星わくせいで実体じったい化かし、火星かせい人じんの侵略しんりゃくを煽動せんどうする。彼かれは、拡散かくさんしたイメージではなく、実体じったいのある人間にんげんとして存在そんざいすることができる唯一ゆいいつの場所ばしょであるタイタンで、故障こしょうした宇宙船うちゅうせんを修理しゅうりするために小ちいさな金属きんぞく部品ぶひんを求もとめているトラルファマドール星ぼし（『スローターハウス5』をはじめとするヴォネガットの他ほかの小説しょうせつにも登場とうじょうする）からの探検たんけん者しゃ、サロと友人ゆうじんになる。

トラルファマドール星ほし人じんの探検たんけん者しゃ、サロは、実じつは何なん千せん年ねんも前まえにトラルファマドール星ぼしから遠とおく離はなれた銀河ぎんがへのメッセージを届とどけるために作つくられたロボットで、その宇宙船うちゅうせんは「そうなろうとする万有ばんゆう意志いし」 (Universal Will to Become, UWTB) で推進すいしんする。

サロは、宇宙船うちゅうせんの小ちいさな部品ぶひんが壊こわれたため、太陽系たいようけいタイタンで足止あしどめされている。彼かれはトラルファマドール星ぼしに助たすけを求もとめ、仲間なかまのトラルファマドール星ほし人じんは、地球ちきゅう人類じんるいの文明ぶんめいが交換こうかん部品ぶひんを製造せいぞうすることができるように、人類じんるいの歴史れきしを操作そうさする。ストーンヘンジや万里ばんりの長城ちょうじょうやクレムリンはすべて、トラルファマドール星ほし人じんの幾何きか学がく的てきな言語げんごで、彼かれらの進捗しんちょく状じょう況きょうをサロに知しらせるためのメッセージである。

交換こうかん部品ぶひんはひとつの角かくが丸まるめられ、2つ小しょう穴あながあけられた小ちいさな金属きんぞく片へんだと分わかる。それを届とどけるために人間にんげんの歴史れきしが操作そうさされてしまったトラルファマドール星ぼしのメッセージは、点てんがひとつ。トラルファマドール語ごで「よろしく」という意味いみだった。

金属きんぞく片へんはコンスタントとその息子むすこのクロノ（ラムフォードの元もと妻つまとの間あいだに生うまれた）によってサロの元もとへ届とどけられる。そのとき太陽たいよう黒点こくてんがラムフォードの螺旋らせんを乱みだし、彼かれとその飼かい犬いぬカザックは別々べつべつに広大こうだいな宇宙うちゅうのどこかへと送おくられる。その直前ちょくぜんにラムフォードとサロとの間あいだで行おこなわれていた口論こうろんは、ラムフォードが消きえたため未み解決かいけつになり、取とり乱みだしたサロは自分じぶんを分解ぶんかいしてしまい、コンスタントとクロノはタイタンに取とり残のこされる。クロノはタイタンの鳥とりと一緒いっしょに生活せいかつすることを選えらぶ。32年ねん後ご、クロノの母ははは亡なくなり、コンスタントはサロをどうにか再ふたたび組くみ立たてる。

サロはコンスタントを地球ちきゅうのインディアナ州しゅうインディアナポリスに還かえし、コンスタントはそこで死しを迎むかえる。

解説かいせつ

タイトルは、サロがタイタンの泥炭でいたんを彫刻ちょうこくした像ぞうに由来ゆらいする。この像ぞうは3人にんの美うつくしい女性じょせいの姿すがたをしており、ラムフォードの水泳すいえいプールに沈しずめられた。コンスタントはこれをタバコの宣伝せんでんのデザインに使つかい、あからさまな商業しょうぎょう主義しゅぎによってその恐おそろしいほどの美うつくしさをけがそうとした。

この本ほんはヴォネガットの後のちの著作ちょさくの基本きほん的てきな要素ようそをすべて含ふくんでいるのではないかと言いわれることがある。例たとえば、ラムフォードの過去かこ、現在げんざい、未来みらいを見通みとおす力ちからは、『スローターハウス5』でビリー・ピルグリムが時ときの中なかに解とき放はなたれるのと似にている。

日本語にほんご訳やく

• タイタンの妖女ようじょ （1972年ねん 浅倉あさくら久志ひさし訳わけ 早川書房はやかわしょぼう・ハヤカワ・SF・シリーズ3287）
• タイタンの妖女ようじょ （1977年ねん 浅倉あさくら久志ひさし訳やく 早川書房はやかわしょぼう・ハヤカワ文庫ぶんこSF262 ISBN 978-4150102623 ）
• タイタンの妖女ようじょ （2009年ねん 浅倉あさくら久志ひさし訳やく 早川書房はやかわしょぼう・ハヤカワ文庫ぶんこSF1700 ISBN 978-4150117009 ）表紙ひょうしイラストは和田わだ誠まこと、解説かいせつは太田おおた光ひかり。

文化ぶんか的てき影響えいきょう

• スコットランド出身しゅっしんのシンガーソングライター、アル・スチュワートのアルバム『Modern Times』に「Sirens of Titan」という曲きょくが収録しゅうろくされている。
• 爆笑ばくしょう問題もんだいの所属しょぞく事務所じむしょである「タイタン」は、太田おおた光ひかりがヴォネガットを尊敬そんけいしていることから、代表だいひょう作さくである当とう作品さくひんより名なづけられた。なお、日本語にほんご訳やく2009年版ねんばんに太田おおたが解説かいせつを寄よせている。
• 平沢ひらさわ進すすむ率ひきいるテクノポップ・バンドP-MODELのアルバム『big body』に「時間じかん等とう曲きょく率りつ漏斗ろうと館かんへようこそ」、『ONE PATTERN』に「ハーモニウム」という曲きょくが収録しゅうろくされている。
• セント・ギガ開局かいきょくにあたり、本ほん作さくのハーモニウムのメッセージにヒントを得えたステーションコールが採用さいようされている。

外部がいぶリンク

• VONNEGUT.com - 公式こうしきサイト（英語えいご）