タイワンマス

タイワンマス
保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類ぶんるい
界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 脊索せきさく動物どうぶつ門もん Chordata 亜あ門もん : 脊椎動物せきついどうぶつ亜あ門もん Vertebrata 綱つな : 条じょう鰭ひれ綱つな Actinopterygii 目め : サケ目め Salmoniformes 科か : サケ科か Salmonidae 亜あ科か : サケ亜あ科か Salmoninae 属ぞく : タイヘイヨウサケ属ぞく Oncorhynchus 種たね : タイワンマス O. formosanus
学名がくめい
Oncorhynchus formosanus (Jordan & Oshima, 1919)
和名わみょう
タイワンマス
英名えいめい
Formosa landlocked salmon

タイワンマス(Oncorhynchus formosanus)は、サケ目めサケ科かOncorhynchus属ぞくに分類ぶんるいされる魚類ぎょるい。以前いぜんは台湾たいわん料理りょうりの珍味ちんみとされていたが、いまは保護ほご動物どうぶつであり、主おもに大だい甲きのえ渓けいに存続そんぞくしている。

名称めいしょう

日本語にほんごの漢字かんじ表記ひょうきは「台湾たいわん鱒ます」であり、台湾たいわん語ごでは桜さくらに見みえる紋様もんようから「桜花おうか鉤かぎ吻鮭」と名なを付つける。

分布ぶんぷ

1930年代ねんだいには七なな家いえ湾わん渓けい・武たけ陵りょう渓けい・司つかさ界かい蘭らん渓けい・有ゆう勝かつ渓けい・南湖なんご渓けい・合歡ねぶ渓けいの大だい甲きのえ渓けい上じょう流域りゅういきの6支流しりゅうに分布ぶんぷしていたとされる。1980年代ねんだいには七なな家いえ湾わん渓けいにのみ分布ぶんぷするようになった。台湾たいわんの西側にしがわ台湾たいわん海峡かいきょうに向むかって流下りゅうかする大だい甲きのえ渓けいの雪ゆき霸国立こくりつ公園こうえん内ないの標高ひょうこう1800mから2000mの最上さいじょう流域りゅういきにのみ限かぎられる。1930年ねん頃ごろには南湖なんご渓けい、耳みみ無む渓けいなどのほか数カ所すうかしょで生息せいそくしていたとされるが、現在げんざいでは七なな家いえ湾わん渓けいの約やく5kmの区間くかんのみになっている。

形態けいたい

吻端から尾鰭おびれ中央ちゅうおうの切きれ込こみまでの長ながさは（尾お叉また長ちょう）30センチメートル。ヤマメなどよりもやや小ちいさく、黒くろっぽい体からだ色しょく。体側たいそく面めんのに9個この斑紋はんもんが入はいり、背面はいめんに11 - 13個この黒くろい斑点はんてんが入はいる。体からだの側面そくめんには、側線そくせん状じょうに9個この黒くろ斑まだら（パーマーク）があり、背面はいめんよりのは11 - 13個この黒点こくてんがある。

分類ぶんるい

サクラマスの亜種あしゅとする説せつもある。

北半球きたはんきゅうに生息せいそくするサケ科かの魚類ぎょるい中ちゅうで最もっとも低てい緯度いどの地帯ちたい（亜熱帯あねったい地域ちいき）に位置いちする台湾たいわんに生息せいそくすることから、学術がくじゅつ的てきにも貴重きちょうな魚類ぎょるいである。1917年ねんに青木あおき赳たけし雄ゆうにより発見はっけんされ、直属ちょくぞくの上司じょうしの大島おおしま正満まさみつと魚類ぎょるい学者がくしゃのデイビッド・スター・ジョーダンにより、1919年ねんに論文ろんぶん発表はっぴょうされ、後のちに記載きさいされた。

約やく5万まん年ねん前まえの氷こおり期きに台湾たいわん海峡かいきょうを寒流かんりゅうが南下なんかしていた頃ころには遡上そじょうしていたが、何なんらかの理由りゆうで陸封りくふうされて残のこったと考かんがえられている。

生態せいたい

幼魚ようぎょ

生息せいそく域いきの年とし平均へいきん水温すいおんは11℃前後ぜんこう、夏場なつばでも16 - 19℃（平均へいきん17℃）。生息せいそく域いきの年とし平均へいきん水温すいおんは11℃前後ぜんこう、夏場なつばでも16℃から19℃で20℃を超こえない環境かんきょうである。すべてが河川かせん残留ざんりゅう型がた（陸封りくふう型がた）で、水温すいおん15℃以下いかの台湾たいわんの河川かせんにのみ分布ぶんぷする。

産卵さんらん期きは10月がつ中旬ちゅうじゅんから11月がつ中旬ちゅうじゅんで、成熟せいじゅく雌めすの孕卵数すうは200 - 500粒つぶ、卵たまご化か水温すいおんは12℃以下いかが必須ひっす条件じょうけん。

産卵さんらんから約やく20日はつかで発はつ眼めし、11月末まつには孵化ふかする。1年ねんで体長たいちょう約やく14cmとなり、雄ゆうは当歳とうさい魚ぎょから成熟せいじゅくし、雌めすは2年ねん目めから成熟せいじゅく開始かいしし産卵さんらんをする。4年ねん程度ていどの寿命じゅみょうと考かんがえられている。

人間にんげんとの関係かんけい

サラマオマス (Saramao masu) とも呼よばれる（タイヤル族ぞくサラマオ村落そんらくの鱒ます」の意い）。中国語ちゅうごくご名めいとして桜花おうか鉤かぎ吻鮭などがある。中国ちゅうごく語ごでは桜花おうか鉤かぎ吻鮭という。

日本にっぽんによる台湾たいわん統治とうち時代じだい以前いぜんより原住民げんじゅうみんは食料しょくりょうとして利用りようしていたが、小ちいさな魚さかな体たいを残のこすため目め合あいの大おおきな網あみを使用しようする、成熟せいじゅく雌めすは川かわに戻もどすなどの配慮はいりょしていた。1938年ねんには、台湾たいわん総督そうとく府ふは、この魚さかなの希少きしょう性せいを認みとめ天然記念物てんねんきねんぶつとして保護ほごするため、「他たのサケ科か魚類ぎょるいの放流ほうりゅうの禁止きんし」、「繁殖はんしょく期きの漁獲ぎょかくの禁止きんし」、「河岸かわぎしから300m以内いないの樹木じゅもくの伐採ばっさいや地形ちけいの変更へんこうの禁止きんし」、「一部いちぶの支流しりゅうでの禁漁きんぎょ」などの施策しさくを実施じっしした。しかし、その後ごの発電はつでん用ようダムや砂防さぼうダムの建設けんせつ、流域りゅういき山林さんりんの開発かいはつにより1980年代ねんだいから1990年代ねんだい初はじめにかけ急速きゅうそくに減少げんしょうし、数すう百ひゃく尾びまで数かずが減少げんしょうしたとされる。貯砂ダムや砂防さぼうダム建設けんせつにより、生息せいそく数すうが激減げきげんしたと考かんがえられている。特とくに支流しりゅうに建設けんせつされた砂防さぼうダムが親おや魚ぎょの移動いどうを妨さまたげた事ことが、減少げんしょうの大おおきな原因げんいんになったと考かんがえられている。台湾たいわんでは1983年ねんに絶滅ぜつめつ危惧きぐ種しゅとして扱あつかわれるようになった。生息せいそく地ちは1992年ねんに雪ゆき覇は国家こっか公園こうえんに指定していされ、1998年ねんに七なな家いえ湾わん渓けいが自然しぜん保護ほご区くに指定していされた。

台湾たいわんにおける保護ほごへの動うごき

• 1984年ねん 「珍ちん貴とうと稀有けう動物どうぶつ」に指定してい
• 1989年ねん 台湾たいわんの農業のうぎょう委員いいん会かいは野生やせい動物どうぶつ保護ほご法ほうにもとづいて絶滅ぜつめつ危惧きぐ種しゅに指定してい
• 1997年ねん 雪ゆき霸国立こくりつ公園こうえん内ないの大だい甲きのえ渓けい上流じょうりゅう部ぶにタイワンマス保護ほご所しょが建設けんせつされ、同時どうじに生息せいそく環境かんきょうの改善かいぜんを行おこない、魚道ぎょどうの整備せいびや放流ほうりゅう事業じぎょうの結果けっか、2002年ねんには4000尾び程度ていどまで回復かいふくした。
• 2001年ねん 台湾たいわんの最高さいこう紙幣しへい2,000台湾たいわん元もと札さつのデザインに採用さいよう。
• 2006年ねん 雪ゆき覇は国家こっか公園こうえんタイワンマス生息せいそくセンター運営うんえい開始かいし
• 2020年ねんには10000尾び程度ていどまで回復かいふくした。

出典しゅってん

• タイワンマスのこと

外部がいぶリンク

• 礫つぶて段だん礫つぶて列れつ理論りろんを適用てきようした台湾たいわんマス生息せいそく河川かせんにおける魚道ぎょどうの基礎きそ設計せっけい (PDF) - 寒かん地ち土木どぼく研究所けんきゅうじょ
• Robert J. BEHNKE, 「A Note on Oncorhynchus formosanum and Oncorhynchus masou」『魚類ぎょるい学がく雑誌ざっし』 1959年ねん 7巻かん 5-6号ごう p.151-152, doi:10.11369/jji1950.7.151, NAID 130004019408 （英文えいぶん）