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タテゴトアザラシ(竪琴海豹、Pagophilus groenlandicus)は、哺乳綱食肉目アザラシ科タテゴトアザラシ属に分類されるアザラシ。
北大西洋、北極海
繁殖地によって北海個体群、ヤンマイエン島とグリーンランドの東の氷上で繁殖する西氷(the West Ice)個体群、ニューファンドランド島付近で繁殖する北西大西洋個体群の3つに分けられている。北西大西洋個体群が最も大きく、他の二つの個体群とは遺伝的に異なる。
体長オス190cm、メス180cm。体重オス135kg、メス120kg。メスよりもオスの方が大型になる。成体の体毛は灰色で、暗色のアルファベットの「U」の字を逆にしたような斑紋が入ることがある。この斑紋が竪琴のように見えることが和名や英名の由来[1]。斑紋は個体により変異があり、メスや幼体では不鮮明。
生後14日程までの幼体は全身が白い体毛で覆われる。その後灰色の体毛に生え変わる。幼体の体毛は流氷の上では保護色になる。
海洋や氷河の上等に生息する。大規模な群れを形成し生活することもある。北海個体群と西氷個体群は、獲物を追ってバレンツ海、ノルウェー海、グリーンランド海、デンマーク海峡まで移動する。2000年の個体群数は北海が30万頭、西氷が36.1万頭と推定されている。天敵としてはサメ、シャチ、ホッキョクグマの他、一部の地域ではセイウチが挙げられる。
食性は動物食で、魚類、甲殻類、軟体動物等を食べる。
繁殖形態は胎生で、2-3月に1回に1匹の幼体を流氷の上等で出産する。雌は5-6年、雄は6-7年で成熟する。
人間との関係[編集]
全ての個体群が狩猟対象になっている。狩猟は主にカナダ、ノルウェー、ロシア、グリーンランドで盛んである。イヌイットはほとんど丸ごと食料、燃料、衣料、工芸品などに利用するが、膀胱だけは海に流す習慣がある。商業捕海豹に携わるハンターは毛皮だけを取って残りは遺棄することがほとんどである。特に幼体の毛皮は珍重され乱獲された。
1800年代初頭に商業捕海豹が始まる以前の北西大西洋個体群の大きさは不明であるが、いくつかのシミュレーションモデルによると300万-400万頭と推定されている。第二次世界大戦の終わりには個体群数300万頭とされているが、1950年代から1970年代の間にカナダの商業捕海豹のためにその50%から66%に減少した。捕獲高割当と保全政策が功を奏し、外部の専門家の監査を受けた1999年の調査結果によれば520万頭にまで回復した。
カナダの水産海洋省は年に32.5万頭の捕獲を許可しており、先住民(ファースト・ネーション、イヌイット、メティ)にはこれとは別に1万頭が割り当てられる。動物愛護団体はカナダにおける狩猟が必要以上に残酷で、割当量よりも多くのアザラシが殺されており、期待されている経済効果も疑わしいと主張しており、ブリジット・バルドー、モリッシー、ポール・マッカートニー、パメラ・アンダーソンらセレブリティーも関与する論争を巻き起こしている。
商業捕海豹保護論者は、捕海豹が停止されれば本種の個体群数が増加し、地域の漁業に大打撃を与えると主張している。
ニューファンドランド島では、本種のひれをパイにしたフリッパーパイ(flipper pie)という伝統料理を復活祭に作って食べる習慣がある。アカディア人は本種の脂で揚げ菓子やビスケット(クッキー)を作っていた。
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