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ダウノルビシン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
IUPAC命名めいめいほうによる物質ぶっしつめい
臨床りんしょうデータ
販売はんばいめい Cerubidine, others
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682289
胎児たいじ危険きけん分類ぶんるい
法的ほうてき規制きせい
投与とうよ経路けいろ Exclusively intravenous. Causes severe necrosis if administered intramuscularly or subcutaneously
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
代謝たいしゃLiver
半減はんげん26.7 hours (metabolite)
排泄はいせつBiliary and urinary
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
20830-81-3 チェック
ATCコード L01DB02 (WHO)
PubChem CID: 30323
IUPHAR/BPS 7063
DrugBank DB00694 チェック
ChemSpider 28163 チェック
UNII ZS7284E0ZP チェック
KEGG C01907  チェック
ChEBI CHEBI:41977 チェック
ChEMBL CHEMBL178 チェック
化学かがくてきデータ
化学かがくしきC27H29NO10
分子ぶんしりょう527.52 g/mol
563.99 g/mol (HCl salt)
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ダウノルビシン(daunorubicin)はダウノマイシン(daunomycin)ともばれる、がん治療ちりょう化学かがく療法りょうほうやくとしてもちいられる薬剤やくざいである[1]具体ぐたいてきには急性きゅうせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょう(AML)、急性きゅうせいリンパせい白血病はっけつびょう(ALL)、慢性まんせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょう(CML)、カポジ肉腫にくしゅ治療ちりょうもちいられる[1]投与とうよほう急速きゅうそく静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃまたは点滴てんてき静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃである[1]リポソーム製剤せいざいであるリポソームダウノルビシンliposomal daunorubicin)も存在そんざいする[1]

おも副作用ふくさようは、脱毛だつもう嘔吐おうと骨髄こつづい抑制よくせい口内こうない炎症えんしょうなどである[1]。その重度じゅうど副作用ふくさようにはこころ血管けっかん疾患しっかん投与とうよ患部かんぶ壊死えし などがあげられる[1]妊娠にんしんなかのヒトへの投与とうよ胎児たいじがいあたえるおそれがある[1]。ダウノルビシンは、アントラサイクリンぞくする薬剤やくざいである[2]作用さようじょIIがたトポイソメラーゼはたらきを阻害そがいすることで効果こうかがある[1]

ダウノルビシンは1970ねん4がつ日本にっぽん承認しょうにん取得しゅとくした[3]:1米国べいこく薬剤やくざいとして承認しょうにんされたのは1979ねんである[1]世界せかい保健ほけん機関きかん必須ひっす医薬品いやくひんリスト掲載けいさいされており、もっと効果こうかてき安全あんぜん医療いりょう制度せいど必要ひつようとされる医薬品いやくひんである[4]開発途上国かいはつとじょうこくでの卸売おろしうり価格かかくは20mgのバイアル1ほんにつきやく$5.79~$37.18あめりかドルである[5]英国えいこく国民こくみん保健ほけんサービスにかかる費用ひようは20mgバイアル1ほんにつきやく£55.00ポンドである[2]。もとはストレプトマイセスぞく から分離ぶんりされた[6]

効能こうのう効果こうか

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急性きゅうせい白血病はっけつびょう慢性まんせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょう急性きゅうせい転化てんかふくむ)[7]

投与とうよ経路けいろ

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投与とうよほう急速きゅうそく静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃまたは点滴てんてき静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃである。広範こうはん組織そしき壊死えしこす可能かのうせいがあるため、筋肉きんにくない皮下ひか投与とうよしてはならない。また、神経しんけいけいおおきな損傷そんしょうあたえていた可能かのうせいがあるため、ずい腔内(脊柱せきちゅう管内かんない)に投与とうよしてはならない。ダウノルビシンは、網膜剥離もうまくはくり手術しゅじゅつ一般いっぱんてき合併症がっぺいしょうである増殖ぞうしょくせい硝子がらすたい網膜もうまくしょう予防よぼうする目的もくてき硝子がらす体内たいないない)に使用しようされたことがあるが、有効ゆうこうせいみとめられておらず、現時点げんじてんでは眼科がんか領域りょういきでは使用しようされていない[8]

副作用ふくさよう

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重大じゅうだい副作用ふくさようは、心筋しんきん障害しょうがい(0.1~5%未満みまん)、心不全しんふぜん(0.1%未満みまん)、骨髄こつづい抑制よくせい(5%以上いじょう)、ショック(0.1%未満みまん)、ネフローゼ症候群しょうこうぐん(0.1%未満みまん)である[7]

薬物やくぶつ動態どうたい

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ちゅうからの消失しょうしつは3相性あいしょうであり、半減はんげんはそれぞれ、0.0351±0.0157hr、1.82±2.01hr、15.8±8.4hrである[7]

ダウノルビシンはすみやか(1時間じかん以内いない)に肝臓かんぞう代謝たいしゃされ、ダウノルビシノール(活性かっせいあり)になり、さらにきも代謝たいしゃされる[9][3]:19

排泄はいせつ尿にょうちゅうおよびくそちゅうへなされる。24あいだ尿にょうちゅう排泄はいせつされる薬剤やくざいは11.8±5.1%であるが[7]くそちゅうへの排泄はいせつりょう確認かくにんされていない。

作用さようじょ

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ドキソルビシン同様どうよう、ダウノルビシンはDNAにインターカレーションし、高分子こうぶんしなま合成ごうせい阻害そがいする[10][11]。これは、転写てんしゃのためにDNAちょうらせん構造こうぞう弛緩しかんさせる酵素こうそトポイソメラーゼII進行しんこう阻害そがいするものである。ダウノルビシンは、複製ふくせいのためにDNAくさり切断せつだんしたのちのトポイソメラーゼIIふく合体がったい安定あんていさせ、DNAのじゅうらせんのさい封鎖ふうさふせぎ、複製ふくせいのプロセスを停止ていしさせる。DNAに結合けつごうすると、ダウノマイシンはそのダウノサミンざんもとをDNAのふくみぞけてインターカレートする。また、5'がわでA/T塩基えんきたいはさまれた2つの隣接りんせつするG/C塩基えんきたいもっとこのむ。結晶けっしょう構造こうぞう解析かいせき結果けっか、ダウノマイシンは、8°のもど角度かくどと、隣接りんせつする塩基えんきたいや2番目ばんめ隣接りんせつする塩基えんきたいなどのコンフォメーションのみだれをこすことが判明はんめいした[12]。また、インターカレーションにより、ヒストンクロマチンからのだつはなれ誘発ゆうはつすることもあきらかとなった[13][14]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i daunorubicin hydrochloride”. The American Society of Health-System Pharmacists. 8 January 2017てんオリジナルよりアーカイブ。8 December 2016閲覧えつらん
  2. ^ a b British national formulary : BNF 69 (69 ed.). British Medical Association. (2015). pp. 581–583. ISBN 9780857111562 
  3. ^ a b ダウノマイシンせいちゅうよう20mg インタビューフォーム”. PMDA. 2021ねん5がつ22にち閲覧えつらん
  4. ^ WHO Model List of Essential Medicines (19th List)”. World Health Organization (April 2015). 13 December 2016てんオリジナルよりアーカイブ。8 December 2016閲覧えつらん
  5. ^ Daunorubicin”. International Drug Price Indicator Guide. 8 December 2016閲覧えつらん
  6. ^ Lin, Guo-Qiang; You, Qi-Dong; Cheng, Jie-Fei (2011) (英語えいご). Chiral Drugs: Chemistry and Biological Action. John Wiley & Sons. p. 120. ISBN 9781118075630. オリジナルの2016-12-21時点じてんにおけるアーカイブ。. https://books.google.ca/books?id=Zgx13oMZaYUC&pg=PA120 
  7. ^ a b c d ダウノマイシンせいちゅうよう20mg 添付てんぷ文書ぶんしょ”. www.info.pmda.go.jp. PMDA. 2021ねん5がつ22にち閲覧えつらん
  8. ^ Mortensen, ME (1992). “Inadvertent intrathecal injection of daunorubicin with fatal outcome”. Med Pediatr Oncol 20 (3): 249–253. doi:10.1002/mpo.2950200315. PMID 1574039. 
  9. ^ 小川おがわ浩司こうじ, 松崎まつざき道男みちお, 宮下みやした裕子ゆうこ, 本村もとむら茂樹しげき, 伊藤いとうあきら, 大久保おおくぼ隆男たかお, 丸田まるたいちろう, 児玉こだま文雄ふみおDaunorubicinの白血病はっけつびょう患者かんじゃにおける体内たいない動態どうたい」『CHEMOTHERAPY』だい35かんだい5ごう日本にっぽん化学かがく療法りょうほう学会がっかい、1987ねん5がつ、398-410ぺーじdoi:10.11250/chemotherapy1953.35.398ISSN 0009-3165NAID 130004195609 
  10. ^ “Interference by doxorubicin with DNA unwinding in MCF-7 breast tumor cells”. Mol Pharmacol 45 (4): 649–56. (April 1994). PMID 8183243. 
  11. ^ “Effect of adriamycin on DNA, RNA, and protein synthesis in cell-free systems and intact cells”. Cancer Res 36 (8): 2891–5. (August 1976). PMID 1277199. オリジナルの2009-02-05時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090205063327/http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/36/8/2891. 
  12. ^ G J Quigley; A H Wang; G Ughetto; G van der Marel; J H van Boom & A Rich (December 1980). “Molecular structure of an anticancer drug-DNA complex: daunomycin plus d(CpGpTpApCpG)”. PNAS 77 (12): 7204–7208. Bibcode1980PNAS...77.7204Q. doi:10.1073/pnas.77.12.7204. PMC 350470. PMID 6938965. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC350470/. 
  13. ^ “Drug-induced histone eviction from open chromatin contributes to the chemotherapeutic effects of doxorubicin”. Nature Communications 4: 1908. (2013). Bibcode2013NatCo...4.1908P. doi:10.1038/ncomms2921. PMC 3674280. PMID 23715267. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3674280/. 
  14. ^ “Chemical profiling of the genome with anti-cancer drugs defines target specificities”. Nature Chemical Biology 11 (7): 472–80. (2015). doi:10.1038/nchembio.1811. PMID 25961671.