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IUPAC命名 めいめい 法 ほう による物質 ぶっしつ 名 めい
(8S ,10S )-8-Acetyl-10-[(2S ,4S ,5S ,6S )- 4-amino-5-hydroxy-6-methyl-oxan- 2-yl]oxy-6,8,11-trihydroxy-1-methoxy- 9,10-dihydro-7H -tetracene-5,12-dione
臨床 りんしょう データ販売 はんばい 名 めい
Cerubidine, others Drugs.com
monograph MedlinePlus
a682289 胎児 たいじ 危険 きけん 度 ど 分類 ぶんるい
法的 ほうてき 規制 きせい
投与 とうよ 経路 けいろ
Exclusively intravenous . Causes severe necrosis if administered intramuscularly or subcutaneously 薬物 やくぶつ 動態 どうたい データ代謝 たいしゃ Liver 半減 はんげん 期 き 26.7 hours (metabolite) 排泄 はいせつ Biliary and urinary 識別 しきべつ CAS番号 ばんごう
20830-81-3 ATCコード
L01DB02 (WHO ) PubChem
CID: 30323 IUPHAR/BPS
7063 DrugBank
DB00694 ChemSpider
28163 UNII
ZS7284E0ZP KEGG
C01907 ChEBI
CHEBI:41977 ChEMBL
CHEMBL178 化学 かがく 的 てき データ化学 かがく 式 しき C 27 H 29 N O 10 分子 ぶんし 量 りょう 527.52 g/mol 563.99 g/mol (HCl salt)
C[C@H]1[C@H]([C@H](C[C@@H](O1)O[C@H]2C[C@@](Cc3c2c(c4c(c3O)C(=O)c5cccc(c5C4=O)OC)O)(C(=O)C)O)N)O
InChI=1S/C27H29NO10/c1-10-22(30)14(28)7-17(37-10)38-16-9-27(35,11(2)29)8-13-19(16)26(34)21-20(24(13)32)23(31)12-5-4-6-15(36-3)18(12)25(21)33/h4-6,10,14,16-17,22,30,32,34-35H,7-9,28H2,1-3H3/t10-,14-,16-,17-,22+,27-/m0/s1 Key:STQGQHZAVUOBTE-VGBVRHCVSA-N
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ダウノルビシン (daunorubicin)はダウノマイシン (daunomycin)とも呼 よ ばれる、がん の治療 ちりょう に化学 かがく 療法 りょうほう 薬 やく として用 もち いられる薬剤 やくざい である[ 1] 。具体 ぐたい 的 てき には急性 きゅうせい 骨髄 こつづい 性 せい 白血病 はっけつびょう (AML)、急性 きゅうせい リンパ性 せい 白血病 はっけつびょう (ALL)、慢性 まんせい 骨髄 こつづい 性 せい 白血病 はっけつびょう (CML)、カポジ肉腫 にくしゅ の治療 ちりょう に用 もち いられる[ 1] 。投与 とうよ 法 ほう は急速 きゅうそく 静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ または点滴 てんてき 静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ である[ 1] 。リポソーム 化 か 製剤 せいざい であるリポソームダウノルビシン (liposomal daunorubicin )も存在 そんざい する[ 1] 。
主 おも な副作用 ふくさよう は、脱毛 だつもう 、嘔吐 おうと 、 骨髄 こつづい 抑制 よくせい 、口内 こうない の炎症 えんしょう などである[ 1] 。その他 た の重度 じゅうど の副作用 ふくさよう には心 こころ 血管 けっかん 疾患 しっかん 、投与 とうよ 患部 かんぶ の壊死 えし などがあげられる[ 1] 。妊娠 にんしん 中 なか のヒトへの投与 とうよ は胎児 たいじ に害 がい を与 あた えるおそれがある[ 1] 。ダウノルビシンは、アントラサイクリン に属 ぞく する薬剤 やくざい である[ 2] 。作用 さよう 機 き 序 じょ はII型 がた トポイソメラーゼ の働 はたら きを阻害 そがい することで効果 こうか がある[ 1] 。
ダウノルビシンは1970年 ねん 4月 がつ に日本 にっぽん で承認 しょうにん を取得 しゅとく した[ 3] :1 。米国 べいこく で薬剤 やくざい として承認 しょうにん されたのは1979年 ねん である[ 1] 。世界 せかい 保健 ほけん 機関 きかん の必須 ひっす 医薬品 いやくひん リスト に掲載 けいさい されており、最 もっと も効果 こうか 的 てき で安全 あんぜん な医療 いりょう 制度 せいど に必要 ひつよう とされる医薬品 いやくひん である[ 4] 。開発途上国 かいはつとじょうこく での卸売 おろしうり 価格 かかく は20mgのバイアル1本 ほん につき約 やく $5.79~$37.18米 あめりか ドルである[ 5] 。英国 えいこく の国民 こくみん 保健 ほけん サービス にかかる費用 ひよう は20mgバイアル1本 ほん につき約 やく £55.00ポンドである[ 2] 。もとはストレプトマイセス属 ぞく から分離 ぶんり された[ 6] 。
急性 きゅうせい 白血病 はっけつびょう (慢性 まんせい 骨髄 こつづい 性 せい 白血病 はっけつびょう の急性 きゅうせい 転化 てんか を含 ふく む)[ 7]
投与 とうよ 法 ほう は急速 きゅうそく 静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ または点滴 てんてき 静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ である。広範 こうはん な組織 そしき 壊死 えし を引 ひ き起 お こす可能 かのう 性 せい があるため、筋肉 きんにく 内 ない や皮下 ひか に投与 とうよ してはならない。また、神経 しんけい 系 けい に大 おお きな損傷 そんしょう を与 あた えて死 し に至 いた る可能 かのう 性 せい があるため、髄 ずい 腔内(脊柱 せきちゅう 管内 かんない )に投与 とうよ してはならない。ダウノルビシンは、網膜剥離 もうまくはくり 手術 しゅじゅつ 後 ご の一般 いっぱん 的 てき な合併症 がっぺいしょう である増殖 ぞうしょく 性 せい 硝子 がらす 体 たい 網膜 もうまく 症 しょう を予防 よぼう する目的 もくてき で硝子 がらす 体内 たいない (眼 め 内 ない )に使用 しよう されたことがあるが、有効 ゆうこう 性 せい は認 みと められておらず、現時点 げんじてん では他 た の眼科 がんか 領域 りょういき では使用 しよう されていない[ 8] 。
重大 じゅうだい な副作用 ふくさよう は、心筋 しんきん 障害 しょうがい (0.1~5%未満 みまん )、心不全 しんふぜん (0.1%未満 みまん )、骨髄 こつづい 抑制 よくせい (5%以上 いじょう )、ショック(0.1%未満 みまん )、ネフローゼ症候群 しょうこうぐん (0.1%未満 みまん )である[ 7] 。
血 ち 中 ちゅう からの消失 しょうしつ は3相性 あいしょう であり、半減 はんげん 期 き はそれぞれ、0.0351±0.0157hr、1.82±2.01hr、15.8±8.4hrである[ 7] 。
ダウノルビシンは速 すみ やか(1時間 じかん 以内 いない )に肝臓 かんぞう で代謝 たいしゃ され、ダウノルビシノール(活性 かっせい あり)になり、さらに肝 きも で代謝 たいしゃ される[ 9] [ 3] :19 。
排泄 はいせつ は尿 にょう 中 ちゅう および糞 くそ 中 ちゅう へなされる。24時 じ 間 あいだ で尿 にょう 中 ちゅう に排泄 はいせつ される薬剤 やくざい は11.8±5.1%であるが[ 7] 、糞 くそ 中 ちゅう への排泄 はいせつ 量 りょう は確認 かくにん されていない。
ドキソルビシン 同様 どうよう 、ダウノルビシンはDNAにインターカレーション し、高分子 こうぶんし の生 なま 合成 ごうせい を阻害 そがい する[ 10] [ 11] 。これは、転写 てんしゃ のためにDNA超 ちょう らせん 構造 こうぞう を弛緩 しかん させる酵素 こうそ トポイソメラーゼII の進行 しんこう を阻害 そがい するものである。ダウノルビシンは、複製 ふくせい のためにDNA鎖 くさり を切断 せつだん した後 のち のトポイソメラーゼII複 ふく 合体 がったい を安定 あんてい 化 か させ、DNAの二 に 重 じゅう らせんの再 さい 封鎖 ふうさ を防 ふせ ぎ、複製 ふくせい のプロセスを停止 ていし させる。DNAに結合 けつごう すると、ダウノマイシンはそのダウノサミン残 ざん 基 もと をDNAの副 ふく 溝 みぞ に向 む けてインターカレートする。また、5'側 がわ でA/T塩基 えんき 対 たい に挟 はさ まれた2つの隣接 りんせつ するG/C塩基 えんき 対 たい を最 もっと も好 この む。結晶 けっしょう 構造 こうぞう 解析 かいせき の結果 けっか 、ダウノマイシンは、8°の巻 ま き戻 もど し角度 かくど と、隣接 りんせつ する塩基 えんき 対 たい や2番目 ばんめ に隣接 りんせつ する塩基 えんき 対 たい などのコンフォメーションの乱 みだ れを引 ひ き起 お こすことが判明 はんめい した[ 12] 。また、インターカレーションにより、ヒストン のクロマチン からの脱 だつ 離 はなれ を誘発 ゆうはつ することも明 あき らかとなった[ 13] [ 14] 。
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