ナウエル DL 43

ナウエル DL 43

1944年ねん7月がつ9日にち、独立記念日どくりつきねんびのパレードで行進こうしんする121号車ごうしゃ。人物じんぶつは設計せっけい者しゃのアルフレッド・バイシ中佐ちゅうさ
性能せいのう諸しょ元もと
全長ぜんちょう	6.223m
全幅ぜんぷく	2.33m
全ぜん高こう	2.952m
重量じゅうりょう	35t
速度そくど	40km/h（整地せいち） （不ふ整地せいち）
行動こうどう距離きょり	250km
主砲しゅほう	75mm30口径こうけい（クルップ Model 1909）
副ふく武装ぶそう	12.7mm同軸どうじく機銃きじゅう、マドセン M1926 7.65mm機関きかん銃じゅう3挺てい
装甲そうこう	80mm - 25mm
エンジン	FMA-ロレーヌ・ディートリッヒ12 EB 450ps
乗員じょういん	5名めい

ナウエル DL 43（Tanque Nahuel DL 43）は、アルゼンチンの開発かいはつした中ちゅう戦車せんしゃである。

同国どうこく初はつの国産こくさん戦車せんしゃであり、M4中ちゅう戦車せんしゃの派生はせい型がた、コピーと誤あやまって認識にんしきされることも多おおいが、設計せっけいから製造せいぞうまでアルゼンチンが独自どくじに行いったものである。

開発かいはつ

アルゼンチンの戦車せんしゃは1両りょうのFIAT3000の導入どうにゅうから始はじまる。これは試験しけん導入どうにゅうであり採用さいようされなかったものの、続つづいてイギリスのMk.III軽けい戦車せんしゃの輸出ゆしゅつ型がたであるヴィッカース M1934を採用さいようし、1937年ねんには12両りょうを購入こうにゅうした。

160両りょうの戦車せんしゃが必要ひつようと見込みこんだ政府せいふは、チェコスロバキアのLT-38の導入どうにゅうを計画けいかくしたが、これはチェコスロバキア併合へいごうとそれに続つづく第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん勃発ぼっぱつにより中止ちゅうしされた。結果けっか、アルゼンチンは12両りょうのMk.III軽けい戦車せんしゃと1928年ねんに3個こ騎兵きへい連隊れんたいに配備はいびされたヴィッカース・クロスレイ装甲車そうこうしゃ6両りょう3個こ分隊ぶんたいという貧弱ひんじゃくな機甲きこう戦力せんりょくで第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんを迎むかえることになった。

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  Mk.III軽けい戦車せんしゃ。アルゼンチンへの輸出ゆしゅつ型がたヴィッカース M1934の砲塔ほうとうは筒つつ状じょうであった。
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  ヴィッカース・クロスレイ装甲車そうこうしゃ。アルゼンチンに導入どうにゅうされたのはこれと同どう系統けいとうの6x4型がた（後こう輪わがダブルタイヤ）である。(画像がぞうは日本にっぽん海軍かいぐんのもの)
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  ペルーが24両りょうを導入どうにゅうしたLTP（LT-38）。M3軽けい戦車せんしゃと合あわせて1944年ねんに編成へんせいされた機甲きこう師団しだんの中核ちゅうかくとなった。
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  M3軽けい戦車せんしゃ。ブラジルの数すう的てき主力しゅりょくであり、最終さいしゅう的てきに417両りょうが供与きょうよされた。M3・M4中ちゅう戦車せんしゃも供与きょうよされている。。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期き、アルゼンチンは中立ちゅうりつを保たもっていたが、これにより隣国りんごくであるブラジル、チリとは異ことなりアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくからの兵器へいき供与きょうよの対象たいしょう国こくとはなっていなかった。また、ヨーロッパ各国かっこくには輸出ゆしゅつに振ふり分わける余力よりょくが無なく、輸入ゆにゅうは不可能ふかのうであった。ブラジルは国境こっきょうにあるリオグランデ・ド・スル州しゅうに計けい230両りょうの戦車せんしゃ・装甲そうこう戦闘せんとう車両しゃりょうを集結しゅうけつさせており、戦車せんしゃの増強ぞうきょうの必要ひつよう性せいを感かんじたアルゼンチンは、軍需ぐんじゅ本部ほんぶ（スペイン語ご: DGFM : Dirección General de Fabricaciones Militares）の指揮しき下かで1942年ねんに独自どくじの戦車せんしゃ設計せっけいを開始かいしした。

ブエノス・アイレスのエステバン・デ・ルカ工廠こうしょう（Arsenal "Esteban de Luca"）で設計せっけいを指揮しきするアルフレッド・バイシ（Alfredo Aquiles Baisi）中佐ちゅうさは、木製もくせいモックアップの作成さくせいから着手ちゃくしゅした。モックアップは45日にちで作成さくせいされ、これを元もとに2ヶ月かげつかけて試作しさく車両しゃりょうを作成さくせいした。当時とうじ、一貫いっかんした工程こうていをこなせる軍需ぐんじゅ産業さんぎょうは存在そんざいせず、国くにと民間みんかんの共同きょうどう作業さぎょうとなり、80社しゃが関かかわった。

75mm砲ほうの採用さいよう、同数どうすうの転てん輪わと3組くみのサスペンションなどにM4中ちゅう戦車せんしゃの影響えいきょうを受うけた設計せっけいは1943年ねんに完成かんせいし、この戦車せんしゃはナウエル DL 43と命名めいめいされ、2両りょうが1944年ねん6月がつ4日にちに公開こうかいされた。この時とき、トランスミッションの試験しけん中ちゅうであったためエンジンは搭載とうさいせず、砲撃ほうげきと旋回せんかいのみの披露ひろうであった。

1945年ねんには第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが終結しゅうけつ、大量たいりょうの余剰よじょう戦車せんしゃが市場いちばにあふれ安価あんかで入手にゅうしゅ可能かのうとなったことで、M4中ちゅう戦車せんしゃとファイアフライ中ちゅう戦車せんしゃが導入どうにゅうされ、国産こくさん戦車せんしゃの生産せいさんはごく少数しょうすうで打うち切きられたが、その後ごも改良かいりょうは続つづけられた。

名称めいしょう

ナウエルは、マプチェ語ごで大型おおがたのネコ科か動物どうぶつを指さす。

DL 43の43は1943年ねんに、DLはDiente de León（ライオンの歯は）に由来ゆらいする。これは、当時とうじアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの報道ほうどうで『歯はの無ないライオン』とアルゼンチンが揶揄やゆされていたことに対たいするものである。

機構きこう

短期間たんきかんの開発かいはつであり、当時とうじのアルゼンチン国内こくないでまかなえる技術ぎじゅつを元もとにしていることによる特色とくしょくがある。

車体しゃたい

乗員じょういんは5名めいで、車体しゃたい部分ぶぶんに操縦そうじゅう手しゅと機銃きじゅう手しゅ兼けん無線むせん手しゅ、砲塔ほうとうに車くるま長ちょう、装填そうてん手しゅ、砲手ほうしゅが搭乗とうじょうした。後ごの改装かいそうで4名めいでの運用うんようが可能かのうとなっている。

エンジンはFMA（後ごのFAdeA）が1931年ねんからライセンス生産せいさんしていた航空機こうくうき用ようの水冷すいれいW型がた12気筒きとうエンジンであるFMA-ロレーヌ・ディートリッヒ12 EBを使用しようしている。ラジエーターは車体しゃたい後方こうほうにあり、油圧ゆあつ式しきのギアは5段階だんかい（前方ぜんぽう4段だん、後進こうしん1段だん）であった。履くつ帯たいは76枚まいの鋼鉄こうてつ製せいであり、30度どまでの登坂とさかが可能かのうであった。M4中ちゅう戦車せんしゃと同様どうように、転うたて輪わは片側かたがわ6個こ、2個こ一いち組くみのサスペンションで保持ほじされており、サスペンションはVVSS（垂直すいちょく渦巻うずまきスプリングサスペンション）である。

砲塔ほうとう側面そくめんには小ちいさな窓まどがあり、外部がいぶの確認かくにんに用もちいられた。1947年ねんには前方ぜんぽう視察しさつ窓まどが追加ついかされている。砲塔ほうとうリングは鉄道てつどうの技術ぎじゅつを用もちい、ニッケル鋼こう製せいの砲塔ほうとうは鋳造ちゅうぞうにより製造せいぞうされた。通信つうしん機器ききはテレフンケンの機器ききをライセンス生産せいさんしたものであったが、後のちにシグナールのWS-19に更新こうしんされている。

装甲そうこうは65度どの傾斜けいしゃが付つけられた車体しゃたい前面ぜんめんと砲塔ほうとう前面ぜんめんが最もっとも厚あつく80mm、砲塔ほうとう側面そくめんが65mm、車体しゃたい前面ぜんめん下部かぶは55mm、車体しゃたい側面そくめんが50mm、最もっとも薄うすい車体しゃたい底面ていめん部分ぶぶんでも25mmが確保かくほされた。

1944年ねんのパレードでは、塗装とそうは暗くらめのオリーブ系けい、砲塔ほうとう両りょうサイドにはアルゼンチンのラウンデルが記しるされ、前方ぜんぽう両りょうサイドに「D.L. 43」のロゴと飛とびかかるナウエルのイラストがあった。

武装ぶそう

主砲しゅほうのクルップ製せい75mm L30 M1909は、アルゼンチン陸軍りくぐんが用もちいた野砲やほうであり、大量たいりょうのストックが存在そんざいしていた。より威力いりょくの高たかいボフォース製せい75mmL40を採用さいようする案あんもあったが、こちらは保有ほゆう数すうが少すくなく実現じつげんには難なんがあった。

車体しゃたいの固定こてい機銃きじゅうとして採用さいようされたマドセン M1926 7.65mm機関きかん銃じゅうは、アルゼンチン陸軍りくぐんの標準ひょうじゅん的てきな軽けい機関きかん銃じゅうであった。3挺てい全すべてが車体しゃたい前方ぜんぽうに固定こていされており、12.7mm同軸どうじく機銃きじゅうと合あわせて砲塔ほうとうから独立どくりつして全ぜん周しゅうを狙ねらえる機銃きじゅうは存在そんざいしなかった。車体しゃたい機銃きじゅうは、1945年ねんのパレードで公開こうかいされた型かたでは、前方ぜんぽう右側みぎがわの1挺ていのみに減へらされている。

側面そくめん・後方こうほうを防御ぼうぎょする火器かきを持もたない設計せっけいのため、防御ぼうぎょは乗員じょういんの携行けいこう火器かきに委ゆだねられていた。乗員じょういんは、拳銃けんじゅうや短たん機関きかん銃じゅうで武装ぶそうしたが、これもまた国産こくさんされているバジェステル＝モリナとアルコン M-1943であった。

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  エンジンとして使用しようされたロレーヌ15Eb
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  主砲しゅほうとして使用しようされたM1909の原型げんけいM1903
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  車体しゃたい機銃きじゅうとして使用しようされたマドセン機関きかん銃じゅう

改装かいそう

1947年ねん、機甲きこう学校がっこうの校長こうちょうであったホセ・マリア・エピファニオ・ソーサ・モリナ大佐たいさ（José María Epifanio Sosa Molina、当時とうじの国防こくぼう相しょうJosé Humberto Sosa Molinaの兄弟きょうだい）によって近代きんだい化か改装かいそうが行おこなわれることになった。改装かいそう作業さぎょうはエステバン・デ・ルカ工廠こうしょうにおいて、フリオ・アルベルト・カセレス（Julio Alberto Cáceres）大尉たいいの下した2両りょう1組くみを担当たんとうする隊たいを2隊たい編成へんせいして進すすめられることになっていた。これは、緊急きんきゅう事態じたい発生はっせい時じに他方たほうの組くみで対処たいしょするためである。

この改装かいそうによって、無線むせん機きがWS-19に交換こうかんされ、ハッチの改修かいしゅうと共ともに操縦そうじゅう手しゅ用ようの視察しさつ窓まどが設もうけられた。

運用うんよう

実戦じっせんにおける運用うんよう記録きろくは残のこされていない。公開こうかい日びからほどなく行おこなわれた独立記念日どくりつきねんび（1944年ねん7月がつ9日にち）のパレードにおいて10両りょうが、翌年よくねんには12両りょうが行進こうしんしている。生産せいさん総数そうすうは、12両りょう（木製もくせいモックアップを除のぞく）または16両りょうとされている。

1960年ねんには全車ぜんしゃ退役たいえきし、ブエノス・アイレスで解体かいたいされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• Sigal Fogliani, Ricardo Jorge, Nahuel DL 43 - Tanques Argentinos (desde sus orígenes hasta 1950), Editorial Dunken, Buenos Aires, 2004, ISBN 987-020788X.
• Sigal Fogliani, Ricardo Jorge, Blindados Argentinos, de Uruguay y Paraguay, Ayer y Hoy Ediciones, Buenos Aires, ISBN 987-95832-7-2.

外部がいぶリンク

• Mundo S.G.M.＞Nahuel DL 43. ※2019年ねん9月がつ17日にち閲覧えつらん
• taringa.net＞Nahuel DL 43- Tanque Medio Argentino ※2019年ねん9月がつ17日にち閲覧えつらん
• archive.todey|las maquinas de laguerra＞Nahuel D.L.43 |※lasmaquinasdelaguerra.blogspot.jp よりアーカイブ ※2019年ねん9月がつ17日にち閲覧えつらん