(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ピロデモス - Wikipedia コンテンツにスキップ

ピロデモス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
この記事きじの項目こうもく名めいには以下いかのような表記ひょうき揺ゆれがあります。
  • ピロデモス
  • フィロデモス

ガダラのピロデモス（フィロデモス、古希こき: Φιλόδημος Philodēmos 羅ら: Philodemus、前ぜん110年ねんごろ - 前ぜん30年ねんごろ[1]）は、古代こだいローマのエピクロス派はの哲学てつがく者しゃ・詩人しじん。散佚さんいつしていた著作ちょさくが18世紀せいきにヘルクラネウムのパピルス荘そうから出土しゅつどし[2]、21世紀せいきまで解読かいどくが続つづいている[3]。

人物じんぶつ

[編集へんしゅう]

ヘレニズム期きシリアのガダラ出身しゅっしん[4]。アテナイの「エピクロスの庭園ていえん」でシドンのゼノン（英語えいご版ばん）に学まなぶ[4]。第だい三さん次じミトリダテス戦争せんそうの難なんを避さけ[2]、前ぜん70年代ねんだいごろローマに移うつる[4]。そこでユリウス・カエサルの義父ぎふルキウス・カルプルニウス・ピソ・カエソニヌスに庇護ひごされる。そのピソの別荘べっそうがヘルクラネウムのパピルス荘そうであり、ピロデモスも寄居よりいしたと推測すいそくされる[4]。同地どうち近郊きんこうのナポリ（ネアポリス）で講義こうぎしたとも推測すいそくされる[5]。

関係かんけい

[編集へんしゅう]
「ローマ哲学てつがく」も参照さんしょう

同どう時代じだいのナポリには、エピクロス派はのシロン（英語えいご版ばん）を中心ちゅうしん人物じんぶつとして、詩人しじんホラティウスやウェルギリウスも関与かんよしたエピクロス派はのサークルがあり[4]、ピロデモスも関与かんよしたと推測すいそくされる[6]。エピクロス派はのルクレティウスも活動かつどう時代じだいは近ちかいが、関係かんけいは不明ふめいである[7]。

同どう時代じだいのキケロは、『ピソ弾劾だんがい』（羅ら: In Pisonem）68-72節せつで、ピロデモスを暗あんに罵倒ばとうしている[8]。

10世紀せいきごろ書かかれた詩学しがく書しょ『コワスラン論考ろんこう（英語えいご版ばん）』の喜劇きげき論ろんは、アリストテレス『詩学しがく』第だい2巻かんの喜劇きげき論ろんに由来ゆらいすると推測すいそくされるが、同書どうしょの喜劇きげき論ろん以外いがいの箇所かしょは、一説いっせつにはピロデモスに由来ゆらいするとされる[9]。

著作ちょさく

[編集へんしゅう]

出土しゅつどパピルス

[編集へんしゅう]
「パピルス荘そう」も参照さんしょう

ヘルクラネウムのパピルス荘そうから、多た分野ぶんやにわたる著作ちょさくのギリシア語ごパピルス写本しゃほんが発見はっけんされた。その多おおくは古代こだい哲学てつがくの貴重きちょうな資料しりょうとなっている[10]。18世紀せいき出土しゅつど当時とうじのパピルスは黒焦くろこげで解読かいどく困難こんなんだったが、その後ご解読かいどくが進すすみ、ピロデモスの著作ちょさくと判明はんめいした。

解読かいどくされた著作ちょさくの例れいとして、エピクロス派はの神学しんがく書しょ『神かみ々について[11]』『敬虔けいけんについて[12]』、類比るいひ的てき推論すいろん（アナロギア）を扱あつかった論理ろんり学がく書しょ『徴証ちょうしょうについて』[13]、倫理りんり学がく書しょ『怒いかりについて[10]』『死しについて[10]』『率直そっちょくな批判ひはんについて[14]』、文芸ぶんげい論ろん書しょ『詩しについて[10]』『音楽おんがくについて[10]』、修辞しゅうじ学がく書しょ『弁論べんろん術じゅつ[10]』などがある。

このうち『徴証ちょうしょうについて』には上記じょうきシドンのゼノン（英語えいご版ばん）[15]、『弁論べんろん術じゅつ』にはナウシパネス（英語えいご版ばん）（エピクロスの師しにして論敵ろんてき）[16]への言及げんきゅうがあり、これら言及げんきゅう対象たいしょうについての資料しりょうにもなっている。

2010年代ねんだいには『アカデメイア派はの歴史れきし』の解読かいどくが進展しんてんした[17]。

その他た

[編集へんしゅう]

『ギリシア詞華集しかしゅう』に30篇へん余あまりの恋愛れんあい詩しが収録しゅうろくされている。同書どうしょ日本語にほんご訳者やくしゃの沓掛くつかけ良彦よしひこは、その詩しを優雅ゆうがで軽妙けいみょうと評ひょうしている[18]。

ディオゲネス・ラエルティオスは『ギリシア哲学てつがく者しゃ列伝れつでん』で、ピロデモスの『哲学てつがく者しゃ総覧そうらん』を原はら資料しりょうとして度々どど参照さんしょうしている[19]。この『哲学てつがく者しゃ総覧そうらん』は現存げんそんしないが、上記じょうき『アカデメイア派はの歴史れきし』などがその一部いちぶである可能かのう性せいがある[1]。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b Blank, David (2019), “Philodemus”, in Zalta, Edward N., Stanford Encyclopedia of Philosophy (Spring 2019 ed.), Metaphysics Research Lab, Stanford University, https://plato.stanford.edu/archives/spr2019/entries/philodemus/ 2022年ねん6月がつ9日にち閲覧えつらん。 
  2. ^ a b 國くに方かた 2019, p. 87.
  3. ^ “噴火ふんかで黒くろこげ古代こだいローマ巻物まきもの Ｘ線せんで解読かいどく ポンペイ近ちかく３００本ほん 哲学てつがく者しゃが執筆しっぴつか”. SankeiBiz（サンケイビズ）. 2022年ねん6月がつ22日にち閲覧えつらん。
  4. ^ a b c d e 小池こいけ 2007, p. 104.
  5. ^ ロング 2009, p. 273.
  6. ^ 近藤こんどう智彦ともひこ 著ちょ「ローマに入はいった哲学てつがく」、伊藤いとう邦武くにたけ；山内やまうち志朗しろう；中島なかじま隆博たかひろ；納富のうとみ信しん留とめ 編へん『世界せかい哲学てつがく史し 2』筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま新書しんしょ〉、2020年ねん。ISBN 9784480072924。 46頁ぺーじ。
  7. ^ ロング 2009, p. 282.
  8. ^ 山沢やまさわ孝たかし至いたり訳やく「ピーソー弾劾だんがい」『キケロー選集せんしゅう2』岩波書店いわなみしょてん、2000年ねん、ISBN 978-4000922524
  9. ^ 三浦みうら洋ひろし「解説かいせつ」、アリストテレス『詩学しがく』光文社こうぶんしゃ古典こてん新訳しんやく文庫ぶんこ、2019年ねん、ISBN 9784334753979 343頁ぺーじ
  10. ^ a b c d e f 近藤こんどう 2011, p. 38f.
  11. ^ ロング 2003, p. 71.
  12. ^ 納富のうとみ信しん留とめ『ギリシア哲学てつがく史し』筑摩書房ちくましょぼう、2021年ねん。ISBN 9784480847522。 67-69頁ぺーじ。
  13. ^ ロング 2003, p. 29;43.
  14. ^ “古代こだいの黒焦くろこげ巻物まきもの、著者ちょしゃは快楽かいらくを追おう哲学てつがく者しゃ”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2022年ねん6月がつ23日にち閲覧えつらん。
  15. ^ ロング 2003, p. 29.
  16. ^ 小池こいけ 2007, p. 69.
  17. ^ “Ancient Greek Scroll's Hidden Contents Revealed Through Infrared Imaging” (英語えいご). NPR.org. https://www.npr.org/2019/10/04/767309531/ancient-greek-scrolls-hidden-contents-revealed-through-infrared-imaging 2022年ねん7月がつ2日にち閲覧えつらん。 
  18. ^ 沓掛くつかけ 2015, p. 索引さくいん5f.
  19. ^ ディオゲネス・ラエルティオス著しる、加来かく彰あきら俊しゅん訳わけ『ギリシア哲学てつがく者しゃ列伝れつでん』 下巻げかん、岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ〉、1994年ねん。ISBN 9784003366332。202;342頁ぺーじ（10.3;訳注やくちゅう）

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ピロデモス&oldid=97581514」から取得しゅとく