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ベータ関数かんすう (物理ぶつりがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

量子りょうしろんにおいて、ベータ関数かんすう(ベータかんすう、えい: beta function)とは、あるエネルギースケールにたいする結合けつごう定数ていすう依存いぞんせい決定けっていする関数かんすうである。エネルギースケールを 結合けつごう定数ていすう とすると、ベータ関数かんすうつぎのように定義ていぎされる。

慣用かんようてきに、エネルギースケールの変化へんかともな結合けつごう定数ていすう変化へんかすることを結合けつごう定数ていすうはし結合けつごう定数ていすうのrunning)といい、そのような結合けつごう定数ていすうはし結合けつごう定数ていすう(running coupling constant)とぶ。量子りょうしろんにおけるスケール依存いぞんせいぐんによって記述きじゅつされる。

スケール不変ふへんせい

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一般いっぱんに、結合けつごう定数ていすうがあるをとりベータ関数かんすうがゼロになるとき、その理論りろんスケール不変ふへんになる。このときの結合けつごう定数ていすうぐん固定こていてんばれ、固定こていてんにおいてベータ関数かんすうかたむきがまけ場合ばあいむらさきがい固定こていてんせい場合ばあいあかがい固定こていてんとなる。スケール不変ふへん量子りょうしろんすべてはきょうかたち不変ふへんであり、そのような理論りろんきょうかたちじょう理論りろんばれる。

ベータ関数かんすう計算けいさんれい

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ベータ関数かんすう結合けつごう定数ていすう十分じゅうぶんちいさいと仮定かていすることで摂動せつどうろんによって計算けいさんされる。このとき、ベータ関数かんすう結合けつごう定数ていすう級数きゅうすう展開てんかいされ、高次こうじこう無視むしされる。この展開てんかいファインマン・ダイアグラムにおけるループ計算けいさん対応たいおうしている。

以下いかでは、摂動せつどうろんもちいたベータ関数かんすう計算けいさんれいげる。

量子りょうし電磁でんじ力学りきがく

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量子りょうし電磁でんじ力学りきがく(QED)における1ループベータ関数かんすう

あるいは

となる。ここで、微細びさい構造こうぞう定数ていすうである。

このベータ関数かんすうつねせいをとるので、エネルギースケールの増加ぞうかたいして結合けつごう定数ていすう増加ぞうかする。つまり、QEDにおける電磁でんじ相互そうご作用さようこうエネルギーがわつよくなり、ていエネルギーがわでゼロに近付ちかづく。実際じっさいQEDでは、ある有限ゆうげんのエネルギーにおいて結合けつごうつよさは無限むげんだい発散はっさんし、このエネルギースケールをランダウ・ポールぶ。ランダウ・ポールは摂動せつどうろんもちいたためしょうじた人為じんいてき結果けっかであり、この領域りょういきにおいては摂動せつどうろん適用てきようできない。

量子りょうししょく力学りきがく

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量子りょうししょく力学りきがく(QCD)において、クォークフレーバーかずとすると1ループベータ関数かんすう

あるいは

となる。ここで、である。

このベータ関数かんすうは、範囲はんいにおいてはまけをとるので、エネルギースケールの増加ぞうかたいして結合けつごう定数ていすう減少げんしょうする。つまり、QCDにおけるつよ相互そうご作用さようていエネルギーがわつよくなり、こうエネルギーがわでゼロに近付ちかづく。この現象げんしょうはQCDの漸近ぜんきんてき自由じゆうせいとしてられており、ていエネルギーがわでは結合けつごうつよくなるため、摂動せつどうろん適用てきようできなくなることをしめしている。

SU(N)ヤン=ミルズ理論りろん

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より一般いっぱんしたゲージ理論りろんとしてSU(N)ヤン=ミルズ理論りろんのベータ関数かんすう計算けいさんされている。このとき、QCDはN=3の場合ばあいとしてあつかわれる。

最低さいてい(1ループ)の結果けっかは1973ねんデイビッド・グロスフランク・ウィルチェック[1]および、H. デビッド・ポリツァー[2]によって導出みちびきだされた。3にんは、この功績こうせき漸近ぜんきんてき自由じゆうせい発見はっけん)により2004ねんノーベル物理ぶつりがくしょう受賞じゅしょうした[3]。 また、どう時期じきヘーラルト・トホーフトおな結果けっか導出みちびきだしていたが、これは論文ろんぶんとして出版しゅっぱんされていない[4]

こう次項じこうについては1974ねんに2ループ[5]、1980ねんに3ループ[6]、1997ねんに4ループ[7]計算けいさんされている。

3ループまでのベータ関数かんすう計算けいさん結果けっか以下いかしめす。ただし、てんμみゅー2における結合けつごう定数ていすうαあるふぁ(μみゅー2)についてのベータ関数かんすうβべーた各項かくこう係数けいすうβべーた0,βべーた1,βべーた2

定義ていぎする。3ループ以降いこう計算けいさん結果けっか条件じょうけん依存いぞんするが、以下いかではMSスキームによる結果けっかしめす。

ここで、 はフェルミオンの表現ひょうげんにおける生成せいせい規格きかく定数ていすう はそれぞれフェルミオンとゲージじょう表現ひょうげんにおけるカシミア演算えんざんであり、nfはフェルミオンのフレーバーすうである。

基本きほん表現ひょうげんとして変換へんかんするフェルミオンをかんがえると である。 ゲージじょう随伴ずいはん表現ひょうげんとして変換へんかんするので である。

標準ひょうじゅん模型もけい

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標準ひょうじゅん模型もけいでは、ゲージ結合けつごう定数ていすう以外いがいに、フェルミオンヒッグスじょう相互そうご作用さよう湯川ゆかわ相互そうご作用さよう)による結合けつごう定数ていすう、ヒッグスじょう自己じこ相互そうご作用さようによる結合けつごう定数ていすう存在そんざいし、それと対応たいおうするベータ関数かんすう計算けいさんされている。

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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論文ろんぶん
参考さんこう文献ぶんけん
  • Michael E. Peskin; Daniel V. Schroeder (1995). An Introduction to Quantum Field Theory. Westview Press. ISBN 0201503972 

関連かんれん項目こうもく

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