ボストン包囲ほうい戦せん

ボストン包囲ほうい戦せん（ボストンほういせん、英えい: Siege of Boston、1775年ねん 4月がつ19日にち - 1776年ねん 3月17日にち）は、アメリカ独立どくりつ戦争せんそうの開戦かいせん直後ちょくごに大陸たいりく軍ぐんがボストンを包囲ほういし、イギリス軍ぐんの動うごきを封ふうじ込こめた包囲ほうい戦せんである。包囲ほういとしては部分ぶぶん的てきなものであったが、大陸たいりく軍ぐんを組織そしき化かし13植民しょくみん地ちの結束けっそくを高たかめるために重要じゅうような役割やくわりを果はたした。アメリカ、イギリス双方そうほうとも当事とうじ者しゃ達たちの態度たいどと性格せいかくを形作かたちづくる切きっ掛かけとなった。包囲ほうい戦中せんちゅうの大おおきな戦闘せんとうはバンカーヒルの戦たたかいのみである。

初期しょきの経過けいか[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「ボストン方面ほうめん作戦さくせん」を参照さんしょう

包囲ほういは1775年ねん 4月がつ19日にちのレキシントン・コンコードの戦たたかいの終おわった夜よるに始はじまった。アメリカ植民しょくみん地ち兵へい（このときはまだ大陸たいりく軍ぐんは結成けっせいされていない）がイギリス軍ぐんをボストン市内しないに追おい込こみ、ボストン市しが位置いちする半島はんとうの付つけ根ねを占領せんりょうした。

最初さいしょは、マサチューセッツ民兵みんぺいの指揮しき官かんアートマス・ウォード将軍しょうぐんが包囲ほうい戦せんの指揮しきを執とった。ウォードは作戦さくせん本部ほんぶをケンブリッジに置おき、部隊ぶたいを分わけて、チャールズタウン・ネック、ロクスベリー、ドーチェスター高地こうちに配置はいちした。この時ときのアメリカ植民しょくみん地ち兵へいは6,000名めいから8,000名めいであり、対たいするイギリス軍ぐんはトマス・ゲイジ将軍しょうぐんに率ひきいられる約やく4,000名めいの正規せいき兵へいであった。

伝統でんとう的てきな言葉ことばの定義ていぎに従したがえば、イギリス軍ぐんは「包囲ほうい」されていなかった。港みなとをイギリス海軍かいぐんが支配しはいしており、補給ほきゅう物資ぶっしは船ふねで運はこばれ陸揚りくあげされた。それにもかかわらず、ボストンの町まちと軍隊ぐんたいは食料しょくりょうが不足ふそくし、物価ぶっかが急速きゅうそくに跳はね上あがった。もう一ひとつ重要じゅうようなことは、アメリカ植民しょくみん地ち軍ぐんが市内しないで起おこっていることについて大方おおかたの情報じょうほうを掴つかんでいたことに対たいし、ゲイジの方ほうは「反乱はんらん軍ぐん」に関かんする有効ゆうこうな情報じょうほうを得えられなかったことである。

5月がつ10日とおか、ニューヨーク植民しょくみん地ち北部ほくぶにあるイギリス軍ぐんのタイコンデロガ砦とりでを、アメリカ植民しょくみん地ち軍ぐんのイーサン・アレンとベネディクト・アーノルドが陥おとしいれ、大量たいりょうの大砲たいほうと火薬かやくを手てに入いれた。このことが後こうのボストン包囲ほうい戦せんの結果けっかに大おおきな影響えいきょうを及およぼすことになった。

5月がつ10日とおかは、第だい二に次じ大陸たいりく会議かいぎがフィラデルフィアで初はじめて開催かいさいされた日ひでもあり、イギリス軍ぐんに対たいする独立どくりつ革命かくめいの継続けいぞくと、ボストン包囲ほうい軍ぐんに対たいする支援しえんについての議論ぎろんを始はじめた。

バンカーヒルの戦たたかい[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「バンカーヒルの戦たたかい」を参照さんしょう

5月25日にち、ゲイジは約やく4,500名めいの増援ぞうえん部隊ぶたいと3人にんの将軍しょうぐん、ウィリアム・ハウ、ジョン・バーゴイン、ヘンリー・クリントン各かく少将しょうしょうを迎むかえた。ゲイジは活路かつろを開ひらく作戦さくせんを立たて始はじめた。

6月14日にち、大陸たいりく会議かいぎの決議けつぎでアメリカ植民しょくみん地ち軍ぐん（大陸たいりく軍ぐん）が正式せいしきに組織そしき化かされ、翌日よくじつジョージ・ワシントンが総そう司令しれい官かんに指名しめいされた。6月15日にち、大陸たいりく会議かいぎの安全あんぜん委員いいん会かいは、イギリス軍ぐんがドーチェスター高地こうちとチャールズタウンの基地きちを攻撃こうげきする計画けいかくでいることを察知さっちした。委員いいん会かいはウォード将軍しょうぐんに伝令でんれいを送おくり、バンカーヒルなどの高台たかだいで防御ぼうぎょを固かためるよう指示しじした。ウォードはイズラエル・パットナム将軍しょうぐんとウィリアム・プレスコット大佐たいさにバンカーヒルの防衛ぼうえいを命めいじた。

6月17日にちに行おこなわれたバンカーヒルの戦たたかいの結果けっか、ハウ将軍しょうぐんの指揮しきしたイギリス軍ぐんがチャールズタウン半島はんとうを抑おさえた。イギリス軍ぐんは目的もくてきを果はたしたが、ボストン包囲ほういを破やぶることまではできなかった。大陸たいりく軍ぐんは半島はんとうの付つけ根ねをまだ抑おさえていた。イギリス軍ぐんは約やく1,000名めいの死傷ししょう者しゃが出でて、それ以降いこうの大陸たいりく軍ぐんに対たいする攻撃こうげきを控ひかえるようになった。包囲ほうい戦せんは手詰てづまり状態じょうたいとなった。

膠着こうちゃく状態じょうたい[編集へんしゅう]

7月がつ3日にち、ワシントンが到着とうちゃくし結成けっせいされたばかりの大陸たいりく軍ぐんの指揮しきに就ついた。兵士へいしや補給ほきゅう物資ぶっしが遠とおくメリーランドからも送おくられてきた。塹壕ざんごうがドーチェスター・ネックに掘ほられ、ボストンの方向ほうこうに拡張かくちょうされた。ワシントンはイギリス軍ぐんが兵へいを引ひいていたチャールズタウン半島はんとうのバンカーヒルとブリーヅヒルを占領せんりょうさせた。しかし、この行動こうどうもイギリス軍ぐんとの睨にらみ合あいに何なんの変化へんかももたらさなかった。

膠着こうちゃく状態じょうたいの打破だはと、包囲ほうい戦せんに倦うんできた兵士へいしに対たいする対策たいさくを兼かねて、カナダ侵攻しんこう作戦さくせんが計画けいかくされ、8月がつ16日にち第だい1遠征えんせい隊たいが西側にしがわルートから、9月25日にち第だい2遠征えんせい隊たいが東側ひがしがわルートから発進はっしんした。このカナダ遠征えんせいの結果けっかは、大陸たいりく軍ぐんの損失そんしつの他ほかに何なんの成果せいかも得えられないままに、1776年ねん秋あきに終了しゅうりょうした。

その後ご何なんの変化へんかもなかったが、ヘンリー・ノックスがワシントンに、タイコンデロガ砦とりでで捕獲ほかくした大砲たいほうを持もってくれば戦局せんきょくを変かえられると提案ていあんした。ワシントンはノックスを大佐たいさに任命にんめいし、大砲たいほう移送いそうの任務にんむを与あたえた。その移送いそうは牛うしに曳ひかせたソリを使つかい、経路けいろはタイコンデロガ砦とりでを出でてハドソン川がわの西岸せいがんを下くだってオールバニーに至いたり、そこで川かわを渡わたって東ひがしに進すすんでバークシャーを経由けいゆしてボストンに入はいるものだった。[1]総そう延長えんちょうは約やく300マイル (480 km)あり、12月5日にちに出発しゅっぱつして56日間にちかんを要ようした。1日にちあたりの平均へいきん行程こうていは5.4マイル (8.6 km)、つまり普通ふつうの徒歩とほ行程こうていならば2時じ間あいだで着つく距離きょりを1日にちかけて進すすんだことになる。総そう重量じゅうりょう60トンにもなる大砲たいほうを載のせたソリで凍こおりついたコネチカット川がわを渡わたったこともあった。1776年ねん 1月がつ24日にちにケンブリッジに帰還きかんした。

ドーチェスター高地こうちの要塞ようさい化か[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「ドーチェスター高地こうちの要塞ようさい化か」を参照さんしょう

数すう週間しゅうかん後ごの3月5日にち、ワシントンは1夜やのうちに59門もんの大砲たいほうと数すう千せんの兵士へいしを、ボストンを臨のぞむドーチェスター高地こうちに配置はいちするという離はなれ業わざをやってのけた。ワシントンは、この日ひがボストン虐殺ぎゃくさつ事件じけんの起おこった日ひ（1770年ねん）であることを告つげ、兵士へいしを励はげました。冬ふゆの最中さいちゅうのことであり、ドーチェスター高地こうちの凍こおった土どを掘ほることができなかったので塹壕ざんごうは掘ほらず、兵士へいしは丸太まるたや大だい枝えだなど手てに入はいるあらゆる物ものを使つかって砦とりでを造つくり上あげた。ゲイジ将軍しょうぐんはワシントンの砦とりでを見みて、自軍じぐんだったらそれを作つくるために何なん週間しゅうかんも要ようするだろうと思おもった。ハウ将軍しょうぐんは砦とりでへの攻撃こうげきを命めいじたが、その日ひは吹雪ふぶきのために思おもい留とどまった。雪ゆきが晴はれた後のち、ハウの副官ふっかんが正面しょうめん攻撃こうげきをやる愚おろかさを主張しゅちょうしたので、ハウはバンカーヒルの戦たたかいでの損害そんがいを思おもい起おこし、攻撃こうげきを止とめた。イギリス艦隊かんたいはそれまで貴重きちょうな存在そんざいであったが、水深すいしんの浅あさい港みなとに停泊ていはくしていて操船そうせんが限かぎられているうえに、大陸たいりく軍ぐんの大砲たいほうがドーチェスター高地こうちから艦隊かんたいに向むけられていては、もはやその価値かちを失うしなっていた。

ボストンの解放かいほう[編集へんしゅう]

イギリス軍ぐんはワシントンに文書ぶんしょを送おくった。それは、イギリス軍ぐんがボストン市しを明あけ渡わたし、抵抗ていこう無なく撤退てったいを許ゆるされるのであれば、町まちを破壊はかいしないというものであった。ワシントンは同意どういし、1776年ねん 3月17日にち、イギリス軍ぐんは船ふねでノバ・スコシアのハリファックスに向むけて撤退てったいした。ボストン包囲ほうい戦せんは終おわり、アメリカ植民しょくみん地ちの士気しきが上あがった。民兵みんぺい達たちは帰郷ききょうし、4月がつ、ワシントンは大陸たいりく軍ぐんの主力しゅりょくを率ひきいてニューヨーク防衛ぼうえいに向むかった。

逸話いつわ[編集へんしゅう]

ワシントンはタイコンデロガ砦とりでで得えた大砲たいほうをボストン港こうのイギリス艦隊かんたいに向むけて、いつでも砲弾ほうだんを発射はっしゃできるかのように据すえたが、実際じっさいには砲弾ほうだんや火薬かやくがほとんど無なかった。ワシントンはこけおどしで革命かくめい勃発ぼっぱつの地ちの成功せいこうを勝かち取とった。

1901年ねん以降いこう、マサチューセッツ州しゅうサフォーク郡ぐんは3月がつ17日にちを解放かいほう記念きねん日びとして休日きゅうじつにし、祝いわってきた。