ボゼ

ボゼは、鹿児島かごしま県けんトカラ列島れっとうの悪石島あくせきじまに伝つたわる来訪らいほう神しん行事ぎょうじである。奇き祭さいとして知しられている。

概要がいよう

ボゼは盆ぼんの終おわりに現あらわれるとされる仮面かめん装束しょうぞくで、その出現しゅつげん理由りゆうには諸説しょせつあるが、盆ぼん行事ぎょうじの幕まくを引ひくことで、人々ひとびとを死霊しりょう臭しゅうの漂ただよう盆ぼんから新あらたな生せいの世界せかいへ蘇よみがえらせる役目やくめを持もつと指摘してきする研究けんきゅう者しゃもいる。また、盆ぼん時期じきには先祖せんぞの霊れいとともに悪霊あくりょうも現世げんせいにやって来くるので、その悪霊あくりょうを追おい払はらうものとする説せつもある。

かつてはトカラ列島れっとうの中之島なかのしまにもボゼが現あらわれたというが、現在げんざいではボゼ祭まつりの風習ふうしゅうは悪石島あくせきじまにだけ伝つたわっている。

行事ぎょうじ

盆ぼんの最終さいしゅう日び翌日よくじつにあたる旧暦きゅうれき7月がつ16日にちに、若者わかものが赤土あかつちと墨すみで塗ぬられた異形いぎょうの面めんを被こうむり、ビロウの葉はの腰蓑こしみのを巻まき、手首てくびや足あしにシュロの皮かわをあててボゼに扮ふんし、手てには男根だんこんを模もしたボゼマラという長ながい棒ぼうを持もつ。日本にっぽんには他たに男性だんせい器き状じょうの物ものを持もつ祭まつりとして、奈良なら県けん飛鳥あすか座ざ神社じんじゃの「恩田おんだ祭まつり」や茨城いばらき県けんの「平たいら三さん坊ぼう」がある。

午後ごごに島内とうないの聖地せいちとされるテラ（墓地ぼちに隣接りんせつする広場ひろば）を出発しゅっぱつした3体たいのボゼは、島しまの古老ころうの呼よび出だしと太鼓たいこの音おとに導みちびかれ、島民とうみんが盆踊ぼんおどりに集あつまっている公民館こうみんかんの前まえの広場ひろばを訪おとずれる。主おもに女おんな子供こどもを追おい回まわし、子供こども達たちは異様いような姿すがたに悲鳴ひめいをあげて逃にげ惑まどい、辺あたりは笑わらい声ごえと叫さけび声ごえにつつまれ騒然そうぜんとなる。あまりの恐怖きょうふに泣なき出だす子供こどもすらいることもある。ボゼはボゼマラを持もったまま人々ひとびとに迫せまり、その先端せんたんについた赤あかい泥水どろみずを擦こすりつける。こうすることで悪霊あくりょう祓ばらいの利益りえきがあり、女性じょせいは子宝こだからに恵めぐまれるという。

こうした騒さわぎが10～15分ふん続つづいた後のち、太鼓たいこの音おとが六ろく調ちょうのリズムに変かわると、ボゼが広場ひろばの中央ちゅうおうに集あつまり踊おどり始はじめる。そして再度さいどの太鼓たいこの合図あいずで再ふたたびボゼたちは子供こどもたちを追おい回まわしながら、その場ばを走はしり去さる。

ボゼがテラへと戻もどって来きた後のち、顔かおを覆おおっていた面めんはそこで跡形あとかたもなく壊こわされる。一方いっぽうで残のこされた公民館こうみんかんでは、悪霊あくりょうを祓はらわれた人々ひとびとが安堵あんどと笑わらいに満みち、酒さけや料理りょうりを楽たのしみながら夜よるが更ふけてゆく。

文化財ぶんかざい指定してい

1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）3月22日にちに、指定してい名称めいしょう十島としま村むら悪石島あくせきじまの盆踊ぼんおどりとして、鹿児島かごしま県けんの無形むけい民俗みんぞく文化財ぶんかざいに指定していされた。

2017年ねん（平成へいせい29年ねん）3月3日にちには、悪石島あくせきじまのボゼ（あくせきじまのボゼ）として国くにの重要じゅうよう無形むけい民俗みんぞく文化財ぶんかざいに指定していされた。また2018年ねん（平成へいせい30年ねん）11月29日にちに、10件けんの来訪らいほう神しん行事ぎょうじからなる「来訪らいほう神しん：仮面かめん・仮装かそうの神かみ々」のひとつとして、国連こくれん教育きょういく科学かがく文化ぶんか機関きかん(UNESCO)の無形むけい文化ぶんか遺産いさんへの登録とうろく（代表だいひょう一覧いちらん表ひょう記載きさい）が決定けっていした。

外部がいぶリンク

• 鹿児島かごしま県けんホームページ（悪石島あくせきじま盆踊ぼんおどり）
• 全国ぜんこく観みるなび（悪石島あくせきじまのボゼ祭まつり）