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マヌルネコ

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マヌルネコ
マヌルネコ
マヌルネコ Otocolobus manul
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 食肉しょくにく Carnivora
: ネコ Felidae
: ネコ Felinae
ぞく : マヌルネコぞく[4] Otocolobus
Brantz, 1842[5]
たね : マヌルネコ O. manul
学名がくめい
Otocolobus manulPallas, 1776)[5][6][7]
シノニム

Felis manul Pallas, 1776[8]

和名わみょう
マヌルネコ[8]
英名えいめい
Manul[3][5][7]
Pallas's cat[3][5][6][8]
分布域
分布ぶんぷいき

マヌルネコ (Otocolobus manul) は、哺乳ほにゅうつな食肉しょくにくネコ分類ぶんるいされる食肉しょくにくるいほんしゅのみでマヌルネコぞくOtocolobus構成こうせいする。別名べつめいモウコヤマネコ[9][10]

分布ぶんぷ

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分布ぶんぷいき

アフガニスタンイランインドヒマラヤ山脈ひまらやさんみゃく)、カザフスタンキルギス中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくネパールパキスタンブータンモンゴルこくロシア南部なんぶ[3]。1960年代ねんだい以前いぜんにはウズベキスタンタジキスタンでも報告ほうこくれいがあり、分布ぶんぷしている可能かのうせいもある[3]アゼルバイジャンアルメニアでは、絶滅ぜつめつしたとかんがえられている[3]

形態けいたい

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あたまどうちょう体長たいちょう)50 - 65センチメートル[8]尾長おなが21 - 31センチメートル[8]体重たいじゅうオス3.3 - 5.3キログラム、メス2.5 - 5キログラム[6]体毛たいもうなが密集みっしゅうしてえているので、丸々まるまるふとった立派りっぱ体型たいけいえる。このあつのおかげで、ゆきうわこおった地面じめんうえはらばいになったときからだやさずにすむ[7][9]からだだいだいみをびた灰色はいいろはらめんしろっぽい灰色はいいろ四肢しし黄土おうどしょくこし茶色ちゃいろ横縞よこじまはし[9]個体こたいによってはこの横縞よこじまあつのせいで判別はんべつできないこともある。には5 - 6ほんくろしま模様もようはいり、先端せんたんくろ[8][9]ほお白色はくしょくなががある[9]はしからほお黒色こくしょくしまはしる。あごからのどにかけても白色はくしょくで、からだ下面かめんでは密集みっしゅうした灰色はいいろがかったになる。ぶしうつるとわる。ふゆなつより灰色はいいろみがつよく、模様もよう不鮮明ふせんめいである[7]

左右さゆうみみかいはなれ、ひく位置いちにある[7][8]特徴とくちょうてきかおつきで、位置いちたかいところにあるので、がくたかく、まるみみひくはなれた位置いちいているようにえる[9]かお前方ぜんぽう位置いちする[7][8]位置いちたかいのは、かくせる場所ばしょすくない平坦へいたん砂漠さばくステップで、いわかげせていわうえからだけをして獲物えものねらうのにてきしているからだとかんがえられている[9]虹彩こうさい黄色きいろで、瞳孔どうこうまる収縮しゅうしゅくする[8][9]れつ門歯もんし上下じょうげ6ほん犬歯けんし上下じょうげ2ほんしょう臼歯きゅうし上下じょうげ4ほんだい臼歯きゅうし上下じょうげ2ほんけい28ほん[8]つめ非常ひじょうみじか[7]のネコ動物どうぶつくらべるとあしつめみじかく、臀部でんぶがややおおきい。

分類ぶんるい

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ヒョウ

Pardofelisぞく(アジアゴールデンキャットなど)

Caracalぞく(アフリカゴールデンキャット+カラカル+サーバル)

オセロットぞくLeopardus

オオヤマネコぞくLynx

チーターAcinonyx jubatus

ピューマぞくPuma

ネコぞくFelis

マヌルネコ Otocolobus manul

サビイロネコPrionailurus rubiginosus

マライヤマネコP. planiceps

ベンガルヤマネコP. bengalensis

スナドリネコP. viverrinus

Johnson et al.(2006)より、現生げんなましゅ系統けいとう簡略かんりゃくしたもの[11]

以前いぜんは、イエネコの長毛ながもうしゅペルシャ原種げんしゅかんがえられていた[7]のちにイエネコのふくまれる系統けいとうのうちクロアシネコやジャングルキャット・スナネコなどよりも、初期しょき分岐ぶんきしたしゅとみなされるようになった[7]。 2006ねん発表はっぴょうされた分子ぶんし系統けいとう解析かいせきでは、ベンガルヤマネコぞくとLeopard cat linegeを形成けいせいするというせつ提唱ていしょうされている[3]。ベンガルヤマネコぞく共通きょうつう祖先そせんとは、5,900,000ねんまえ分岐ぶんきしたと推定すいていされている[3]

英名えいめいPallas's catは、ほんたね発見はっけんしたPeter Simon Pallasに由来ゆらいする[7][8]

毛色けいろ模様もようちがいから3亜種あしゅけるせつもあるが[12]分子ぶんし系統けいとうがくてき根拠こんきょはない[4]以下いか亜種あしゅ分類ぶんるい分布ぶんぷは、IUCN SSC Cat Specialist Group (2017) にしたが[5]

Otocolobus manul manul (Pallas, 1776)
アフガニスタン、イラン、カザフスタン、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく甘粛かんせいしょう)、パキスタン、モンゴルこく中央ちゅうおうアジア、シベリア南部なんぶ
亜種あしゅO. m. ferrugineusはシノニムとされる。
Otocolobus manul nigripectus (Hodgson, 1842)
ネパール、ブータン、チベット、カシミール地方ちほう

生態せいたい

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標高ひょうこう450 - 5,073メートルにある、岩場いわばおお草原そうげんやステップ・はん砂漠さばくなどに生息せいそくする[6]昼夜ちゅうやわず活動かつどうするが、捕食ほしょくしゃなどをけるためりはおも薄明はくめい薄暮はくぼおこな[6]危険きけんかんじるとうごかずにをかがめて、地面じめん腹這はらばいになる[6]

おもナキウサギるい・アレチネズミるいやハタネズミるいなどのかじるい・イワシャコるいなどの鳥類ちょうるいなどをべるが、ノウサギるいやマーモットるいわかししべることもある[7]。トランスバイカル地方ちほう西部せいぶの502くそ内容ないようぶつ調査ちょうさでは、89 %にナキウサギるい、44 %に小型こがたかじるい、3 %にジリスるい、2 %にノウサギるい鳥類ちょうるいふくまれていたという報告ほうこくれいもある[7]獲物えものおとてずゆっくりしのる、草本そうほんなか移動いどうしてした獲物えもの捕食ほしょくする(おも春季しゅんき夏季かき)、獲物えものあなくちせをおこなう(おも冬季とうき)といった方法ほうほうりをおこな[6]妊娠にんしん期間きかんは66 - 67にちや74 - 75にちという報告ほうこくれいがある[7]おもに4 - 5月に出産しゅっさんする[7]おもに2 - 4とうようじゅうむが、8とうようじゅうんだれいもある[7]野生やせいでの平均へいきん寿命じゅみょうは5ねんで、最大さいだい10ねんほどきる[6]飼育しいくでは15ねん11かげつ記録きろくがある[13]

子猫こねこ
チューリッヒ動物どうぶつえん英語えいごばん

マヌルネコは独特どくとく威嚇いかく行動こうどうをとる。片方かたがた上唇うわくちびるをつりふるわせて、おおきな犬歯けんしをむきしにするのである[7]

人間にんげんとの関係かんけい

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名前なまえのマヌル(manul)はモンゴル由来ゆらい[7]、「ちいさい野生やせいネコ」の[8]ぞくめいOtocolobusは「みみみじかい」の[10]

毛皮けがわ利用りようされることもある[3]。モンゴルやロシアでは、脂肪しぼう内臓ないぞう薬用やくようになるとしんじられている[3]

農地のうち開発かいはつ牧草ぼくそうへの転換てんかん放牧ほうぼく採掘さいくつなどによる生息せいそく破壊はかいおよび分断ぶんだん違法いほう狩猟しゅりょうやマーモットるいあやまって狩猟しゅりょうわなによるこん放牧ほうぼくによって増加ぞうかした牧羊ぼくようけん野犬やけんによる捕食ほしょくなどにより、生息せいそくすう減少げんしょうしている[3]ほんしゅ獲物えものおよびあな提供ていきょうするナキウサギるいかじるいは、家畜かちくとの競合きょうごう感染かんせんしょう防止ぼうしなどの理由りゆうから駆除くじょすすめられており、これらの減少げんしょうによる影響えいきょう懸念けねんされている[3]おおくの生息せいそく法的ほうてき狩猟しゅりょう規制きせいされ毛皮けがわ国際こくさいてき商取引しょうとりひきも1980年代ねんだいには規制きせいされているが、おおくの生息せいそく密猟みつりょうおこなわれているとかんがえられている[3]。モンゴルのみ一部いちぶ狩猟しゅりょうしゃ狩猟しゅりょう許可きょかされ、毛皮けがわ中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく密輸みつゆされている[3]。1977ねんに、ネコ単位たんいでワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIに掲載けいさいされている[2]

飼育しいくでは、とくようじゅうトキソプラズマしょう感染かんせんしてしまうことがおおいとされる[6]

ほうによって保護ほごされるまえは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく、モンゴルこく、アフガニスタン、ソビエト連邦れんぽう毛皮けがわをとるために狩猟しゅりょう対象たいしょうとされた。かじるい捕食ほしょくするため、殺鼠剤さっそざい使用しようほんたね生存せいぞん影響えいきょうあたえているかもしれない。

欧州おうしゅう飼育しいく繁殖はんしょく方法ほうほう確立かくりつされているが[14]感染かんせんしょうによる死亡しぼうりつたかく、飼育しいくでの繁殖はんしょく困難こんなんである。生息せいそく高地こうちのため病原菌びょうげんきんすくなく、免疫めんえきりょくひくいためとかんがえられている。現在げんざいでは動物どうぶつえんでの繁殖はんしょくこころみられており、近親きんしん交配こうはいけて繁殖はんしょく目指めざため世界せかいてき動物どうぶつえん連携れんけいしている。 日本にっぽんでは東山ひがしやま動植物どうしょくぶつえんで1999ねんにマヌルネコの国内こくないはつ繁殖はんしょく成功せいこうしている。

繁殖はんしょくちかられているのはおもにロシアであり、2014ねん同国どうこくのノボシビルスク動物どうぶつえんからどうえんまれためすかく1ひき米国べいこく動物どうぶつえん移送いそうされている。日本にっぽんでは2016ねんに2さいゆうのマヌルネコ1ひき埼玉さいたまけんこども動物どうぶつ自然しぜん公園こうえんおくられている[15]

2019ねん雌雄しゆう1ひきずつを飼育しいくしていた那須なすどうぶつ王国おうこくで8ひきどもがまれたが、1ひき死産しざん母親ははおや体調たいちょうおもわしくなかったことから人工じんこう哺育ほいくちゅうに5ひき感染かんせんしょう死亡しぼう[16]。2ひき(雌雄しゆうかく1ひき)がのこって成長せいちょうし、2020ねん繁殖はんしょくのため神戸こうべどうぶつ王国おうこくうつされた[17]

2021ねん3がつ28にち上野動物園うえのどうぶつえん飼育しいくされているつがいのあいだどもがまれたことが確認かくにんされた。2021ねん9がつ現在げんざい、2ひき性別せいべつ不明ふめい)が元気げんきそだっている。子育こそだてはめすおこなっている。親子おやことも、公開こうかいはされていない[18][19]日本にっぽんでは旭山あさひやま動物どうぶつえん王子おうじ動物どうぶつえんでも飼育しいくされている。

出典しゅってん

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  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 28 August 2020)<https://cites.org/eng> (downroad 09/07/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Otocolobus manul. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (download 09/07/2020)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n Ross, S., Barashkova, A., Dhendup, T., Munkhtsog, B., Smelansky, I., Barclay, D. & Moqanaki, E. 2020. Otocolobus manul. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T15640A162537635. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T15640A162537635.en. Downloaded on 07 September 2020.
  4. ^ a b 水口みずぐち博也ひろや秋山あきやま知伸とものぶ 編著へんちょ「ネコ分類ぶんるいリスト」『世界せかい一番いちばんうつくしい野生やせいネコ図鑑ずかんまことぶんどう新光しんこうしゃ、155-157ぺーじ
  5. ^ a b c d e IUCN SSC Cat Specialist Group, "Genus Otocolobus," Cat News, Spacial Issue 11, 2017, Pages 21-22.
  6. ^ a b c d e f g h i Luke Hunter 「マヌルネコ」山上やまかみ圭子けいこやく野生やせいネコの教科書きょうかしょ今泉いまいずみ忠明ただあき監修かんしゅう、エクスナレッジ、2018ねん、40-43ぺーじISBN 978-4-7678-2513-7
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Mel Sunquist and Fiona Sunquist, "Manul Otocolobus manul (Pallas, 1776)," Wild Cats of the World, University of Chicago Press, 2002, Pages 219-224.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l 成島なりしま悦雄えつお 「ネコ分類ぶんるい」『世界せかい動物どうぶつ 分類ぶんるい飼育しいく2 (食肉しょくにく)』今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい1991ねん、150-171ぺーじ
  9. ^ a b c d e f g h 今泉いまいずみ忠明ただあき 「マヌルネコ」『野生やせいネコの百科ひゃっか最新さいしんばん]』 データハウス、2004ねん、46-47ぺーじISBN 978-4-88718-772-6
  10. ^ a b 増井ますい光子みつこ「マヌルネコ」『標準ひょうじゅん原色げんしょく図鑑ずかん全集ぜんしゅう 20 動物どうぶつ II』はやし壽郎としおしる保育ほいくしゃ、1968ねん、60ぺーじ 
  11. ^ Warren E. Johnson, Eduardo Eizirik, Jill Pecon-Slattery, William J. Murphy, Agostinho Antunes, Emma Teeling, Stephen J. O'Brien, "The Late Miocene Radiation of Modern Felidae: A Genetic Assessment," Science, Volume 311, Number 5757, 2006, Pages 73-77.
  12. ^ Mel E. Sunquist & Fiona C. Sunquist, “Family Felidae (Cats),” In: Don E. Wilson & Russell A. Mittermeier (eds.), Handbook of the Mammals of the World, Volume 1: Carnivores, Lynx Edicions, 2009, Pages 54-168.
  13. ^ Richard Weigl (2005). Longevity of Mammals in Captivity; from the Living Collections of the World, Kleine Senckenberg-Reihe, Band 48, Page 85.
  14. ^ 動物どうぶつえんを100ばいたのしむ!飼育しいくいんおしえるどうぶつのディープなはなし』、2023ねん7がつ10日とおか発行はっこう大渕おおふちのぞみきょうみどり書房しょぼう、P46。
  15. ^ 中山なかやましん (2016ねん9がつ4にち). “希少きしょう動物どうぶつ マヌルネコ ロシアから“婿入むこいり””. 毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ. 2016ねん9がつ4にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2016ねん9がつ4にち閲覧えつらん
  16. ^ マヌルネコ誕生たんじょう記録きろく : 王国おうこくタウン : オフィシャル・ブログ : 那須なすどうぶつ王国おうこく”. www.nasu-oukoku.com. 那須なすどうぶつ王国おうこく(2019ねん6がつ28にち). 2021ねん5がつ24にち閲覧えつらん
  17. ^ マヌルネコのども、神戸こうべにおし ふさふさで人気にんき朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル(2020ねん1がつ28にち). 2021ねん5がつ24にち閲覧えつらん
  18. ^ マヌルネコの繁殖はんしょく 2021/06/10(08/23更新こうしん”. 東京とうきょうズーネット(2021ねん8がつ23にち). 2021ねん10がつ25にち閲覧えつらん
  19. ^ マヌルネコの繁殖はんしょく”. 東京とうきょうズーネット(2021ねん9がつ4にち). 2021ねん10がつ25にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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