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トキソプラズマしょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
トキソプラズマしょう
T. gondii
概要がいよう
診療しんりょう 感染かんせんしょうない科学かがく, 産婦人科さんふじんかがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 B58
ICD-9-CM 130
DiseasesDB 13208
MedlinePlus 000637
eMedicine med/2294
Patient UK トキソプラズマしょう
MeSH D014123

トキソプラズマしょう(トキソプラズマしょう、Toxoplasmosis)とは、トキソプラズマToxoplasma gondii)による原虫げんちゅう感染かんせんしょうである。世界中せかいじゅうられる感染かんせんしょうで、世界せかい人口じんこうの3ぶんの1が感染かんせんしていると推測すいそくされているが[1]ゆうびょうりつには地域ちいきおおきながある。健康けんこう成人せいじん場合ばあいには、感染かんせんしても徴候ちょうこうまるか、せいぜいすう週間しゅうかんのあいだかる風邪かぜのような症状しょうじょう程度ていどである。しかし臓器ぞうき移植いしょくエイズ患者かんじゃなど、免疫めんえき抑制よくせい状態じょうたいにある場合ばあいには重症じゅうしょうしていたることもあり、おもあつ日和見ひよりみ感染かんせんしょうといえる。重症じゅうしょうした場合ばあいには、脳炎のうえん神経しんけいけい疾患しっかんをおこしたり、はい心臓しんぞう肝臓かんぞう眼球がんきゅうなどに悪影響あくえいきょうをおよぼす。また、にんはつ感染かんせんすると胎児たいじ先天せんてんせいトキソプラズマしょう発症はっしょうする場合ばあいがある。予防よぼうするためのワクチンはない。

日本にっぽんでは家畜かちく伝染でんせんびょう予防よぼうほうにおいて届出とどけで伝染でんせんびょう指定していされている(対象たいしょうはめんひつじ山羊やぎぶた、いのしし)。なお、日本にっぽん獣医じゅうい学会がっかい提言ていげん法令ほうれいじょう名称めいしょうが「トキソプラズマびょう」から「トキソプラズマしょう」に変更へんこうされた[2]

病原びょうげんたい

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トキソプラズマはアピコンプレックスもんぞくする単細胞たんさいぼう生物せいぶつである。以下いかの3つの形態けいたいをとる。

栄養えいようがた
栄養えいようがた急増きゅうぞうちゅうたいタキゾイト)とばれており、細胞さいぼううち寄生きせいして無性むしょう生殖せいしょくにより急激きゅうげき増殖ぞうしょくする。消毒しょうどくえき胃酸いさんなどにたいする抵抗ていこうせいたないため、これを摂食せっしょくしても感染かんせんきにくい。しかしはな粘膜ねんまく外傷がいしょうから感染かんせんすることがある。
シスト
のう筋肉きんにく組織そしきなかあつ丈夫じょうぶかべつつまれた球形きゅうけいシストつくる。シストにはすうせんにおよぶなるぞうむしたいブラディゾイト)がふくまれており、無性むしょう生殖せいしょくによりゆっくりと増殖ぞうしょくしている。シストは室温しつおんでも数日すうじつ、4 ℃なら数ヶ月すうかげつ生存せいぞんしており、-12 ℃までの低温ていおんにもえるが、熱処理ねつしょり(56 ℃15ふん)や冷凍れいとう処理しょり(-20 ℃24あいだ)でかつできる。
オーシスト
おわり宿主しゅくしゅであるネコ動物どうぶつ感染かんせんすると、有性ゆうせい生殖せいしょくおこなってオーシスト形成けいせいされる。オーシストはくそ便びんちゅう排出はいしゅつされ、環境かんきょうちゅうすう日間にちかんかけて成熟せいじゅくし、数ヶ月すうかげつ以上いじょう生存せいぞんしている。消毒しょうどくえきたいする抵抗ていこうせいたかいが、シスト同様どうよう処理しょりかつできる。

感染かんせん経路けいろ

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トキソプラズマは人間にんげんふく幅広はばひろ温血動物おんけつどうぶつ寄生きせいするが、おわり宿主しゅくしゅネコ動物どうぶつである。人間にんげんへの感染かんせん経路けいろとしては、シストをふくんだ食肉しょくにくやオーシストをふくむネコの糞便ふんべん由来ゆらいする経口けいこう感染かんせんおもである。オーシストは耐久たいきゅうせいがあるので、直接ちょくせつ糞便ふんべん接触せっしょくしなくても、土壌どじょう経由けいゆして野菜やさいみず汚染おせんする場合ばあいがある。そのにんから胎児たいじへのけい胎盤たいばん感染かんせんがある。

食肉しょくにく

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おそらくほぼすべての哺乳類ほにゅうるい鳥類ちょうるいがトキソプラズマに感染かんせんする可能かのうせいがあり、したがって食肉しょくにく種類しゅるいによらず感染かんせんげんになりうる。とくにひつじにく豚肉ぶたにく鹿しかにくなど、こう頻度ひんどにシストが見付みつかるものもある。感染かんせん動物どうぶつ由来ゆらい食肉しょくにく生食なましょくしたり加熱かねつ不十分ふじゅうぶんだったりすると、感染かんせん原因げんいんとなる[3]食肉しょくにくそのものだけでなく、包丁ほうちょうまないたなどが汚染おせんされて、それが食材しょくざい汚染おせんすることもある。

たとえばネコの糞便ふんべんちゅうのオーシストが付着ふちゃくした物質ぶっしつ食餌しょくじとしてネズミべることで感染かんせんし、ネズミの体内たいない形成けいせいされたシストはネコがネズミにくことでまれる、という具合ぐあい生活せいかつたまき成立せいりつしているとかんがえられる。人間にんげんへの感染かんせん経路けいろとしては、ねこのトイレ掃除そうじ園芸えんげい砂場すなばあそびなどでいたオーシストがくちはいることがかんがえられる。

胎盤たいばん

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感染かんせん通常つうじょう腸管ちょうかんこるが、マクロファージ侵入しんにゅうりゅうって全身ぜんしんひろがることができる。このとき宿主しゅくしゅ妊娠にんしんしていると、胎盤たいばん経由けいゆして胎児たいじ伝染でんせんする場合ばあいがある。伝染でんせんのリスクは感染かんせん時期じきによってことなり、妊娠にんしん初期しょき感染かんせんでは低率ていりつで、しだいに増加ぞうか妊娠にんしん末期まっきではリスクは70%にたっする。ただし、胎児たいじ症状しょうじょう感染かんせん時期じきはやいほどじゅうあつしになる。

その

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臓器ぞうき移植いしょく輸血ゆけつによって感染かんせんしたれいられている。また実験じっけんなかあやまって注射ちゅうしゃしたり、飛沫しぶきはなはいって感染かんせんしたれいもある。

症状しょうじょう

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免疫めんえきけい正常せいじょう場合ばあい

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初感染しょかんせんでも、およそ8わり場合ばあい発熱はつねつもなくリンパぶしれる程度ていどでほとんど気付きづかれない。のこり2わり程度ていどでは、リンパぶしれや発熱はつねつ筋肉きんにくつう疲労ひろうかんつづ急性きゅうせい症状しょうじょうて、そのあとゆるやかに(1ヶ月かげつ程度ていどで)回復かいふくする。このあいだ患者かんじゃたんたま増加ぞうかしており、伝染でんせんせいたんかくだましょう徴候ちょうこうしめす。普通ふつう治療ちりょう必要ひつようがない場合ばあいおおい。しかし、まれに急性きゅうせい症状しょうじょうしめ患者かんじゃがいる。この場合ばあい脈絡みゃくらく網膜もうまくえん)、心臓しんぞうはいなどに病変びょうへんき、神経しんけいけい症状しょうじょう場合ばあいもある。血液けつえきなか原虫げんちゅうみとめられるむししょう(parasitemia)も長引ながびき、尿にょう唾液だえきのような体液たいえきにも原虫げんちゅう出現しゅつげんする。

いずれの場合ばあいでも組織そしきちゅうにシストがしょうじて慢性まんせい感染かんせん移行いこうする。シストの検出けんしゅつむずかしい。慢性まんせい感染かんせんになった場合ばあい治療ちりょうほう確立かくりつしていないが、とく症状しょうじょうるわけではないので問題もんだいになることはすくない。

トキソプラズマの慢性まんせい感染かんせん宿主しゅくしゅ影響えいきょうあたえるという研究けんきゅう報告ほうこくがいくつかある。

  1. 疫学えきがくてき研究けんきゅうにより、トキソプラズマ陽性ようせいだと男児だんじまれやすいという結果けっかられている[4]
  2. トキソプラズマに感染かんせんしたマウスはネコのフェロモンおそれなくなる(ねこ尿にょうにおいにせられるようになる)。これはネコをおわり宿主しゅくしゅとする原虫げんちゅうにとっては都合つごうがいいとおもわれる。くわしい機構きこうはわかっていないが、ドーパミンりょうおおくなっていることと関係かんけいがあるかもしれない[5][6]
  3. トキソプラズマの慢性まんせい感染かんせんによりヒトの行動こうどう人格じんかくにも変化へんかるとする研究けんきゅう報告ほうこくもあり、男性だんせいはん社会しゃかいてき女性じょせい社交しゃこうまとになる、男性だんせいはリスクをおそれなくなる・集中しゅうちゅうりょく散漫さんまんとなる・規則きそくやぶる・独断どくだんてきはん社会しゃかいてき猜疑さいぎてき嫉妬しっとふかい・女性じょせいこのましくない、女性じょせい社交しゃこうてき・ふしだら・男性だんせいびをうる、などの傾向けいこうられる[7]近年きんねん研究けんきゅうによっててんかんアルツハイマーびょうパーキンソンびょう統合とうごう失調しっちょうしょう双極そうきょくせい障害しょうがいパーソナリティ障害しょうがい間欠かんけつせい爆発ばくはつせい障害しょうがいなどおおくの精神せいしん疾患しっかん人格じんかく変化へんか[8]がんとのあいだ関連かんれんがあることが徐々じょじょあきらかになってきた[9][10][11]大学生だいがくせいにおいても経営けいえい起業きぎょうなどビジネスけい専攻せんこうする傾向けいこうられ、社会しゃかいじんでも起業きぎょう経験けいけんしゃ感染かんせんりつたか[8]

免疫めんえき抑制よくせい状態じょうたい場合ばあい

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免疫めんえき抑制よくせい状態じょうたい患者かんじゃ罹患りかんすると中枢ちゅうすう神経しんけいけい障害しょうがい肺炎はいえん心筋しんきんえんこすこともあり、よりおもあつ疾患しっかんこしやすい。

トキソプラズマ陽性ようせいエイズ患者かんじゃは、Tリンパだまが200以下いかになると予防よぼうをしないかぎりトキソプラズマ脳症のうしょう発症はっしょうする。これはシストちゅうなるぞうむしたい活性かっせいし、りゅうって全身ぜんしんひろがりのういたるためである。病状びょうじょう潜行せんこうせいになるときもあり、この場合ばあい突然とつぜん脳症のうしょう発症はっしょうする。のうおかされると、神経症しんけいしょうじょう急速きゅうそく進行しんこうする。症状しょうじょう部位ぶいおうじてさまざまで、かた麻痺まひ失語しつご視野しや狭窄きょうさく眠気ねむけ不安ふあんかんなど。まれだが延髄えんずいおかされた場合ばあいは、たい麻痺まひこる。

先天せんてんせいトキソプラズマしょう

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免疫めんえきけい正常せいじょうでも妊娠にんしんしている場合ばあいには特別とくべつ注意ちゅうい必要ひつようになる。にんむししょうになると、原虫げんちゅう胎盤たいばん移行いこうして胎児たいじへの感染かんせん成立せいりつし、先天せんてんせいトキソプラスマしょういた可能かのうせいがあるためである。

トキソプラズマは胎児たいじりゅうってのうふく全身ぜんしん臓器ぞうき移行いこうする[12]。 ほぼぜんれい母親ははおや妊娠にんしんちゅう初感染しょかんせん起因きいんするが、さい感染かんせんうたが症例しょうれい報告ほうこくされている[13] [14] [15]

妊娠にんしん初期しょき
胎児たいじ伝染でんせんするリスクはひくいものの伝染でんせんしたときの症状しょうじょうじゅうあつしになる。原虫げんちゅう中枢ちゅうすう神経しんけいけい発達はったつ影響えいきょうして、頭蓋骨ずがいこつ形成けいせい異常いじょう頭蓋とうがいない石灰せっかいみずあたましょう大頭おおとしょうのうしつ膨大ぼうだいなどをこし、流産りゅうざん死産しざん、または出産しゅっさんすうヶ月かげつ死亡しぼうするか、精神せいしん運動うんどう障害しょうがいしょうじる場合ばあいおおい。神経症しんけいしょうじょうとしてひきつけ、緊張きんちょう弛緩しかん異常いじょう反射はんしゃが、そして成長せいちょう不全ふぜん脈絡みゃくらく網膜もうまくえんなどがられる。
妊娠にんしん中期ちゅうき
4ヶ月かげつ以降いこう感染かんせんでは、内臓ないぞうとく消化しょうかけい影響えいきょうる。黄疸おうだん脾臓ひぞう肝臓かんぞう肥大ひだい粘膜ねんまくからの出血しゅっけつなどがおおく、しばしば不良ふりょうとなる。
妊娠にんしん後期こうき
出生しゅっしょうには症状しょうじょうあきらかでないこともおおい。はやくに気付きづかれる症状しょうじょうとしては、いろ素性すじょう脈絡みゃくらく網膜もうまくえん難聴なんちょう、ひきつけや精神せいしん運動うんどう発達はったつおくれ、頭蓋とうがい肥大ひだいなどがげられる。すうねんたってから病変びょうへん見付みつかって先天せんてんせいトキソプラズマしょう診断しんだんされることもある。
感染かんせん診断しんだん
母体ぼたい感染かんせんしたことを診断しんだんするには、免疫めんえきがくてき方法ほうほうもちいる。(理論りろんてきには血液けつえきちゅうやリンパぶしから原虫げんちゅう検出けんしゅつすることもできるが、一般いっぱん困難こんなんである。)そこで妊娠にんしんがわかったときにはあらかじめトキソプラズマ抗体こうたい調しらべておくのである。はじめから陽性ようせいであればすでに初感染しょかんせんんでいるので胎児たいじへの影響えいきょうはないとかんがえられる。はじめは陰性いんせいであったのに陽転ようてんした場合ばあいには先天せんてんせいトキソプラズマしょう発症はっしょうするおそれがある。早期そうき薬剤やくざい投与とうよによって先天せんてんせいトキソプラズマしょう発症はっしょうおさえることが出来できるので早期そうき診断しんだん重要じゅうようである。治療ちりょうおもスピラマイシンもちいる。通常つうじょうもちいられるサルファ剤さるふぁざいにんには禁忌きんきである。

予防よぼう

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  • 調理ちょうり前後ぜんごにはよくあら
  • 園芸えんげいねこ世話せわをするときにはゴム手袋てぶくろなどを着用ちゃくようする
  • 生食なましょく滅菌めっきん牛乳ぎゅうにゅうけ、加熱かねつ燻製くんせい塩蔵えんぞうがしっかりされた食品しょくひんをとる
  • 24時間じかん以上いじょう冷凍れいとうした食品しょくひん使つか
  • 野菜やさい果物くだものすいあらってからべる
  • ねこはできるだけ部屋へやいにし、生肉せいにくあたえたりりをさせたりしない
  • 肉類にくるい十分じゅうぶん加熱かねつべる
  • にんは、生肉せいにくはもちろん、十分じゅうぶん加熱かねつしていないにくべない

もしねこ外出がいしゅつせず、かつ生肉せいにくべないのであれば、ねこから感染かんせんするリスクはたかくない。 ゴム手袋てぶくろなどを着用ちゃくようしてねこのトイレを毎日まいにち清潔せいけつたもち、適宜てきぎゴム手袋てぶくろ消毒しょうどくする。 どこで食事しょくじをしているかわからないようなネコは、ちかづけない。

生肉せいにく動物どうぶつ、ネコの糞便ふんべん汚染おせんされる可能かのうせいがあるものなどをあつか職業しょくぎょういている場合ばあいは、注意ちゅうい必要ひつようである。しし医師いし繁殖はんしょくとその補佐ほさ食肉しょくにく処理しょりじょう工場こうじょう肉屋にくや従業じゅうぎょういん検査けんさいん農家のうか造園ぞうえん研究けんきゅう施設しせつ衛生えいせい試験場しけんじょう技師ぎし医師いし保健ほけん衛生えいせい関連かんれん専門せんもんなどが該当がいとうする。

にんにおける注意ちゅうい事項じこう

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先天せんてんせいトキソプラスマしょうふせぐために、にんにおいてはとく厳重げんじゅう予防よぼうさく必要ひつようである[16]

まず、十分じゅうぶん加熱かねつしていないにくべることは危険きけんである。なまハム、ローストビーフ、レアステーキ、にくのパテ(とおしていないパテ、加熱かねつ不十分ふじゅうぶんなパテ)、なまサラミ、なまベーコン、ユッケ、馬刺ばさし、鳥刺とりさし、鹿しかし、エゾシカのレアステーキ、くじらし、ヤギし、加熱かねつ不十分ふじゅうぶんなジビエ(野生やせい鳥獣ちょうじゅう)料理りょうりひとしはトキソプラズマをふく可能かのうせいがあるとされる。また、つちいじりをすることは危険きけんである。にわはたけ公園こうえん砂場すなばでは、ネコがトキソプラズマをふくんだくそをしている可能かのうせいがある。ネコのくそふくまれたからの感染かんせんふせぐために、作業さぎょうちゅう手袋てぶくろ眼鏡めがねやマスクを装着そうちゃくすること、作業さぎょう十分じゅうぶん手洗てあらいをすること、 収穫しゅうかくしたものはよく洗浄せんじょうしてからべることが大切たいせつとされる。

ネコの飼育しいくにも危険きけんともなう。はいきんするのは「トキソプラズマにはじめて感染かんせんして週間しゅうかん以内いないのネコ」だけだが、感染かんせんのネコがおおい。ネコに感染かんせんさせないため、ねこそとさない、ねこ生肉せいにくをあたえない、(なりねこ子猫こねこにかかわらず)他所よそねこ接触せっしょくさせない、といった工夫くふう必要ひつようである。ネコからの感染かんせんふせぐため、ねこくそにふれない(ネコのトイレ掃除そうじにんにさせない)、ねこのトイレ掃除そうじ頻繁ひんぱんおこなう(1にち2かい)、ねこくそ密閉みっぺいしててる、といった工夫くふう必要ひつようである。

疫学えきがく

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トキソプラズマはぜん人類じんるいの30-50%に感染かんせんしているとかんがえられている[17]成人せいじんでの抗体こうたい陽性ようせいりつは、アジアではすくなく、アメリカではやく11%[18]北欧ほくおうイギリスで30%以下いかヨーロッパ南部なんぶ湿潤しつじゅんアフリカで20-50%、ヨーロッパ西部せいぶでは50-70%にたっする。フランスとくおおいことがられており、抗体こうたい陽性ようせいりつ全体ぜんたいで80%をえ、にんかぎっても54%と高率こうりつである。これはなまちかにくこのしょく習慣しゅうかんがあることと関係かんけいしている。ドイツやく80%)・オランダ(80%ちょう)・ブラジル(67%)もおおくにとしてられている。日本にっぽんでは、地域ちいきがあるが10%前後ぜんごとなっている。

1948ねんアルバート・サビンとフェルドマン(H.A.Feldman)により、トキソプラズマ感染かんせんさんされた抗体こうたいアルカリ性あるかりせいメチレンブルーで染色せんしょく定量ていりょう確認かくにんする色素しきそ試験しけん(Sabin–Feldman dye test)が開発かいはつされた[19]

ヒト以外いがい動物どうぶつにおけるトキソプラズマしょう

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日本にっぽんではめんひつじヤギブタイノシシのトキソプラズマしょう家畜かちく伝染でんせんびょう予防よぼうほうにおいて届出とどけで伝染でんせんびょう指定していされている。畜場ちくじょうほうにおいて感染かんせん食肉しょくにくぜん廃棄はいき対象たいしょうとなる。トキソプラズマしょう以外いがいでのぜん廃棄はいき対象たいしょうとなる寄生虫きせいちゅうびょうピロプラズマしょうトリパノソーマしょう旋毛せんもうむししょうゆうかぎ嚢虫しょうがある。治療ちりょうにはマクロライドけい抗生こうせい物質ぶっしつサルファやくスルファモイルダプソンピリメサミンなどが使用しようされる。

関連かんれん項目こうもく

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ねこからひとにうつる感染かんせんしょうとしては、パスツレラしょうねこひっかきびょうなどがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Montoya J, Liesenfeld O (2004). “Toxoplasmosis”. Lancet 363 (9425): 1965–76. doi:10.1016/S0140-6736(04)16412-X. PMID 15194258. https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2804%2916412-X/fulltext. 
  2. ^ 家畜かちく伝染でんせんびょう疾病しっぺい名称めいしょう変更へんこうについて”. 農林水産省のうりんすいさんしょう消費しょうひ安全あんぜんきょく. 2021ねん12月26にち閲覧えつらん
  3. ^ 中島なかじま秀幸ひでゆき, 中野なかの正大せいだい, 矢野やの明彦あきひこ症例しょうれい報告ほうこく 母親ははおや馬肉ばにく生食なましょく感染かんせん原因げんいんかんがえられた重症じゅうしょう先天せんてんせいトキソプラズマしょうの1男児だんじれい」『小児科しょうにか診療しんりょうだい73かんだい6ごう診断しんだん治療ちりょうしゃ、2010ねん6がつ、1046-1049ぺーじCRID 1521136280489100800ISSN 03869806NAID 40017128118 
  4. ^ Bad blood between boys and girlsEurekAlert! - Science News
  5. ^ Parasite "Brainwashes" Rats Into Craving Cat Urine, Study FindsNational Geographic News April 3, 2007
  6. ^ ロバート・サポルスキーのうあやつむし」『日経にっけいサイエンス』2003ねん6がつごう
  7. ^ Dangerrrr: cats could alter your personalityTimes OnlineSeptember 21, 2003
  8. ^ a b 寄生虫きせいちゅう:トキソプラズマ感染かんせん起業きぎょう志向しこうつよく? べいだい調査ちょうさ - 毎日新聞まいにちしんぶん
  9. ^ Ngô, H. M., Zhou, Y., Lorenzi, H., Wang, K., Kim, T. K., Zhou, Y., ... & McLeod, R. (2017). Toxoplasma Modulates Signature Pathways of Human Epilepsy, Neurodegeneration & Cancer”. Scientific Reports (Nature Publishing Group UK London) 7 (1): 11496. doi:10.1038/s41598-017-10675-6. https://doi.org/10.1038/s41598-017-10675-6. 
  10. ^ Coccaro, Emil F; Lee, Royce; Groer, Maureen W; Can, Adem; Coussons-Read, Mary; Postolache, Teodor T (2016). Toxoplasma gondii infection: relationship with aggression in psychiatric subjects”. The Journal of clinical psychiatry (Physicians Postgraduate Press, Inc.) 77 (3): 21105. https://legacy.psychiatrist.com/jcp/toxoplasma-gondii-infection-relationship-aggression/. 
  11. ^ キャスリン・マコーリフ ちょ西田にしだ美緒子みおこ やくしんあやつ寄生きせい生物せいぶつ : 感情かんじょうから文化ぶんか社会しゃかいまで』(はつ)インターシフト、2017ねん4がつ15にちISBN 4772695559 
  12. ^ H. R. Pratt-Thomas. “Systemic Infantile Toxoplasmosis*”. Am J Pathol. 22 (4): 779. PMID 19970891. 
  13. ^ Fortier B. “Spontaneous abortion and reinfection by Toxoplasma gondii”. Lancet 17 (8764): 444. PMID 1678099. 
  14. ^ Valdes V (2011). “[Congenital toxoplasmosis due to maternal reinfection during pregnancy]”. Arch Pediatr 18 (7): 761-3. doi:10.1016/j.arcped.2011.04.011. PMID 21600743. 
  15. ^ Elbez-Rubinstein A. “Congenital toxoplasmosis and reinfection during pregnancy: case report, strain characterization, experimental model of reinfection, and review”. J Infect Dis 199 (2): 280-5. doi:10.1086/595793. PMID 19032062. 
  16. ^ 先天せんてんせいトキソプラスマしょう&サイトメガロウイルス感染かんせんしょう 患者かんじゃかい「トーチのかい
  17. ^ Jaroslav Flegr et al (2014). “Toxoplasmosis – A Global Threat. Correlation of Latent Toxoplasmosis with Specific Disease Burden in a Set of 88 Countries”. PLoS One. [1]
  18. ^ Jones JL, Kruszon-Moran D, Sanders-Lewis K, Wilson M (2007). “Toxoplasma gondii infection in the United States, 1999-2004, decline from the prior decade”. Am J Trop Med Hyg 77 (3): 405–10. PMID 17827351. 
  19. ^ セービン』 - コトバンク

外部がいぶリンク

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