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Qねつ

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Qねつ(きゅーねつ、Q fever)とは、ひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょうの1つ。ニュージーランドのぞぜん世界せかい発生はっせいられる。Qねつという病名びょうめいは、英語えいごの「不明ふめい (Query) ねつ」に由来ゆらいしている。1935ねんオーストラリア屠畜場とちくじょう従業じゅうぎょういんあいだ原因げんいん不明ふめい熱性ねっせい疾患しっかん流行りゅうこうしたのが、最初さいしょ報告ほうこくである。日本にっぽんにおいても年間ねんかん30れい程度ていどのヒトの症例しょうれい報告ほうこくがある。獣医じゅういがく領域りょういきではコクシエラしょうともばれる。

病原びょうげんたい

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Coxiella burnetii

へんせい細胞さいぼうない寄生きせいたいであるレジオネラコクシエラコクシエラぞくコクシエラきん (Coxiella burnetii) によって発症はっしょうする。感染かんせんりょくがたいへんつよく、たった1個いっこんだだけでも感染かんせん発病はつびょうこす可能かのうせいがある。自然しぜんかいにおいてはウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの動物どうぶつ体内たいない存在そんざいする。65℃、30ふんでは完全かんぜんかつされるが、62℃、30ふんおよび63℃、30ふんでは一部いちぶ病原びょうげんせいうしなわない。また、乾燥かんそうつよいため、塵埃じんあいとも空気くうきちゅう存在そんざいする可能かのうせいたかい。実験じっけん室内しつない感染かんせんしやすく、危険きけんクラス3に指定していされている。

感染かんせん

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ヒトには、コクシエラきん感染かんせんしている家畜かちくペット糞便ふんべんちちたまごなどをつうじて感染かんせんするが、まれ保菌ほきんダニのくそちり吸入きゅうにゅう咬傷こうしょうなどからも感染かんせんする。ただし、鳥類ちょうるいあらわせい感染かんせん日本にっぽん国外こくがいでは食肉しょくにく解体かいたい処理しょりじょう羊毛ようもう処理しょりじょうちちにく加工かこうじょうなどでの爆発ばくはつてき集団しゅうだん発生はっせい(パンデミック)が記録きろくされている。病原びょうげんたい宿主しゅくしゅからの完全かんぜん消失しょうしつ容易よういではなく、症状しょうじょう回復かいふく長期間ちょうきかんもうないけい細胞さいぼうなまざんする。

症状しょうじょう

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感染かんせんしゃの50%はあらわせい感染かんせんまり、のこりの50%で急性きゅうせいのQねつ発病はつびょうする。2 - 4しゅう潜伏期せんぷくきのち高熱こうねつ(37℃-40℃)、頭痛ずつう悪寒おかん筋肉きんにくつう咽頭いんとうつう全身ぜんしん倦怠けんたいかんなどのインフルエンザよう症状しょうじょう出現しゅつげんし、そのうちの20%が肺炎はいえん肝炎かんえん症状しょうじょうていする。これらの症状しょうじょうは1 - 2週間しゅうかん改善かいぜんし、良好りょうこうである。急性きゅうせいのQねつ死亡しぼうりつは1 - 2%で、回復かいふくした場合ばあい終生しゅうせいにわたる免疫めんえき獲得かくとくする。また、回復かいふくしたのち慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐん類似るいじした症状しょうじょうていすることがある。子供こどもがこの病気びょうき発症はっしょうした場合ばあいきこもり勘違かんちがいされることおおく、発見はっけんおくれることもある。

慢性まんせいのQねつは、6かげつ以上いじょうにわたる感染かんせんがみられるもので、急性きゅうせいのQねつくらべて症状しょうじょうおもい。急性きゅうせいQねつから慢性まんせいQねつ移行いこうする頻度ひんどは5%程度ていどとされている。慢性まんせいのQねつでは、慢性まんせい肝炎かんえん骨髄こつづいえんしんないまくえんをおこすことがおおく、不良ふりょうである。慢性まんせいのQねつになりやすいのは、心臓しんぞう弁膜べんまくしょうのあるひと臓器ぞうき移植いしょくけているひとがん慢性まんせい腎臓じんぞうびょうかかっているひとなどである。

オーストラリアのMarmionらの報告ほうこくによれば、慢性まんせい移行いこうすると慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐんさま症状しょうじょうあらわれる、post Q fever fatigue syndrome(QFS)とばれる症状しょうじょうあらわれる。

QFSは、慢性まんせい疲労ひろう微熱びねつ平熱へいねつ - 37℃前半ぜんはん)、頭痛ずつう関節かんせつつう筋肉きんにくつう寝汗ねあせ、アルコールたいしょう睡眠すいみん障害しょうがい集中しゅうちゅうりょく精神せいしんりょく欠如けつじょ理性りせいうしなったいかりなどの精神せいしんてき症状しょうじょうがあらわれ、すうげつからすう年間ねんかん継続けいぞくする状態じょうたいになる。QFSの症状しょうじょうは、さとし所見しょけんではリンパぶし腫脹しゅちょうみとめられず、炎症えんしょう所見しょけんみとめられないか軽微けいびであるため、一般いっぱんてき感染かんせんしょう認識にんしきされず原因げんいん不明ふめいとされることがある。

よくうつしょうじょうていする症例しょうれい多数たすう報告ほうこくされているが、Qねつとの因果いんが関係かんけい科学かがくてき証明しょうめいされてはいない。しかしながら、まれ念慮ねんりょから遺書いしょ作成さくせいしたり、検査けんさによりQねつ陽性ようせいとの結果けっかのち自殺じさつした症例しょうれい報告ほうこくされており、今後こんご検討けんとう課題かだいともなっている。

診断しんだん

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A:感染かんせんしゃ
B:感染かんせんしゃXせん写真しゃしん

原因げんいん不明ふめい発熱はつねつ肺炎はいえん肝炎かんえんはQねつうたが所見しょけんである。確定かくてい診断しんだん病原びょうげんたい分離ぶんりおよび検出けんしゅつまたは血清けっせいがくてき診断しんだん間接かんせつ蛍光けいこう抗体こうたいほう(IF)、酵素こうそ抗体こうたいほう(ELISA)など)による。病原びょうげんたい分離ぶんり治療ちりょうぜん血液けつえきをマウス,ラット、モルモット、発育はついく鶏卵けいらんあるいはBGM細胞さいぼう接種せっしゅしておこなう。

通常つうじょう急性きゅうせいQねつでは、IgM抗体こうたい上昇じょうしょうつづいてIgG抗体こうたい上昇じょうしょうみとめるが、QFSの場合ばあい抗体こうたい反応はんのう一定いってい経過けいかしめさないことがおおい。日本にっぽんにおけるIFAの陽性ようせい抗体こうたいは、抗体こうたいが4ばい以上いじょう上昇じょうしょうとされており、集団しゅうだん感染かんせん基準きじゅんとするQねつ先進せんしんこく各国かっこくどう基準きじゅんである。これらの検査けんさ熟練じゅくれんようするために検査けんさ機関きかんすくなく、Qねつ・QFS検出けんしゅつ障壁しょうへきとなっており、相当そうとうすう患者かんじゃ潜在せんざいすることを示唆しさすることができる。2014ねん現在げんざい日本にっぽんにおける法定ほうてい伝染でんせんびょうさだめられている(診断しんだんいたるととど義務ぎむしょうじる)にもかかわらず、診断しんだん必要ひつよう検査けんさ保険ほけん収載しゅうさいされておらず、1まんえん以上いじょう自己じこ負担ふたん必要ひつようとなる。

治療ちりょう予防よぼう

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急性きゅうせいQねつ治療ちりょうにおいてはテトラサイクリンけい抗菌こうきんやくだいいち選択せんたくやくであるがニューキノロンけい使用しようすることもあり、大抵たいてい投与とうよ2 - 3にち以内いない解熱げねつするが、長期ちょうきした場合ばあいはリファンピシンなどと併用へいようされる。βべーた-ラクタムけい抗菌こうきんやくやアミノグリコシドは無効むこうである。Qねつ再燃さいねん慢性まんせい予防よぼうするため、症状しょうじょう改善かいぜんしたのちも3 - 4週間しゅうかんほど継続けいぞく投与とうよすることがのぞましい。動物どうぶつ治療ちりょうにもテトラサイクリンけい抗生こうせい物質ぶっしつ使用しようされる。治癒ちゆした場合ばあい免疫めんえき獲得かくとくする。

オーストラリアでは、ヒトようのQねつのワクチンが開発かいはつされ、しし医師いしなどの職業しょくぎょうてきにQねつ感染かんせんするリスクがたかいとかんがえられる人々ひとびと使用しようされ、予防よぼう成果せいかをあげている。以前いぜんにQねつ感染かんせんしたことがあるひとでは、ワクチンの注射ちゅうしゃ部位ぶいはげしい局所きょくしょ反応はんのうこすことがあるため、接種せっしゅまえ皮膚ひふテストがおこなわれる。

Qねつ感染かんせんしょう予防よぼうおよ感染かんせんしょう患者かんじゃたいする医療いりょうかんする法律ほうりつ感染かんせんしょうほう)における4るい感染かんせんしょうさだめられており、診断しんだんした医師いしただちに最寄もよりの保健所ほけんじょとど必要ひつようがある。

Coxiella burnetiiの小型こがた細胞さいぼうは、乾燥かんそう消毒しょうどくやくなどに抵抗ていこうりょくいちじるしくつよく、ねつによる殺菌さっきんについては、手指しゅし住環境じゅうかんきょうないでの殺菌さっきん困難こんなんである。家庭かてい飼育しいくする愛玩あいがん動物どうぶつからの感染かんせんふせぐためには、飼育しいくいた以前いぜんにその動物どうぶつ検査けんさ必要ひつようである。

患者かんじゃかかえる困難こんなん

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Qねつ診断しんだんにはQねつ限定げんていしての検査けんさおこなわなければならず、一般いっぱん検査けんさ診察しんさつではQねつ検出けんしゅつができない。急性きゅうせいには、不明ふめいねつとして処理しょりされることがおおい。ひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょう医療いりょう現場げんばではマイナーであり、医師いし選択肢せんたくしとしても希薄きはくである。QFSにいたっている場合ばあい感染かんせん発症はっしょうから期間きかんがあるため、患者かんじゃ本人ほんにん動物どうぶつとの接触せっしょく原因げんいんとはかんがえにくい。そのため、うつびょうなど疾患しっかん誤診ごしんされやすい。Qねつ患者かんじゃがQねつ診断しんだん治療ちりょうけるためには、患者かんじゃ本人ほんにんまたは家族かぞくがQねつたいしての知識ちしきち、担当たんとう医師いし診断しんだん指導しどうなどを否定ひていしなければならない。

Qねつ検査けんさ治療ちりょうおこなっている医療いりょう機関きかんは、日本にっぽん全国ぜんこくにおいても東京とうきょう都内とない大阪おおさか府内ふないに4施設しせつのみであり、居住きょじゅうによっては、検査けんさ治療ちりょうけるために体調たいちょうわる状態じょうたい遠方えんぽうまで移動いどうしなければならない。そのうえ、Qねつ検査けんさ健康けんこう保険ほけん対象たいしょうがいとなっており、相当そうとう経済けいざいてき負担ふたんいられる。

食品しょくひん衛生えいせい管理かんり

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Coxiella burnetiiかつするため、ちちおよ乳製品にゅうせいひん成分せいぶん規格きかくとうかんする省令しょうれいちちとう省令しょうれい)において「生乳せいにゅうまたはなま山羊やぎちち使用しようして食品しょくひん製造せいぞうする場合ばあいは、その食品しょくひん製造せいぞう工程こうていちゅうにおいて、生乳せいにゅうまたはなま山羊やぎちち保持ほじしきにより63で30分間ふんかん加熱かねつ殺菌さっきんするか、またはこれと同等どうとう以上いじょう殺菌さっきん効果こうかゆうする方法ほうほう加熱かねつ殺菌さっきんしなければならない」とされている。

その

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オウム真理教おうむしんりきょうもと幹部かんぶ遠藤えんどう誠一せいいちが、教団きょうだんない呼吸こきゅう困難こんなんうったえる信者しんじゃ多数たすう発生はっせいしたさい、Qねつ誤診ごしんしたこともあった。はやし郁夫いくおさい検査けんさして誤診ごしん判明はんめいしたが、麻原あさはら彰晃しょうこうべいぐんによる生物せいぶつ兵器へいき攻撃こうげきけ、Qねつ罹患りかんしたと主張しゅちょうしていた。

関連かんれん法規ほうき

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出典しゅってんおよ脚注きゃくちゅう

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外部がいぶリンク

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