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手足てあしこうびょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
手足てあしこうびょう
11ヶ月かげつ男児だんじくちまわりの典型てんけいてき病変びょうへん
概要がいよう
診療しんりょう 感染かんせんしょうない科学かがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 B08.4
ICD-9-CM 074.3
DiseasesDB 5622
MedlinePlus 000965
eMedicine derm/175
Patient UK 手足てあしこうびょう
MeSH D006232
KEGG 疾患しっかん H01326

手足てあしこうびょう(てあしくちびょう、えい: Hand, foot and mouth disease; HFMD)は、コクサッキーウイルスなどが原因げんいんとなってこるウイルスせい疾患しっかんである。病名びょうめいひらあしうら口内こうない水疱すいほう発生はっせいする英語えいご病名びょうめい直訳ちょくやく由来ゆらいする。乳児にゅうじ幼児ようじによくられる疾患しっかんであるが、成人せいじんにもられる。乳児にゅうじではまれに死亡しぼうすることがある。夏季かき中心ちゅうしん流行りゅうこう[1]汗疹あせも間違まちがえられやすい。

解説かいせつ

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原因げんいんとなるウイルスには、ピコルナウイルスうちエンテロウイルスぞくぞくするコクサッキーウイルスA16[2]おもで、にA4, 5, 9, 10、B2[3], 5、またエンテロウイルス71がた原因げんいんとなる[4][5]

家畜かちく感染かんせんしょうである口蹄疫こうていえきこす口蹄疫こうていえきウイルスもピコルナウイルス一種いっしゅであるが、ヒトにおいては発症はっしょうしない。

感染かんせん経路けいろ

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感染かんせんしゃはな咽頭いんとうからの分泌ぶんぴつぶつ便びんなどによる接触せっしょく感染かんせんである。飛沫しぶき感染かんせんこる。

潜伏期せんぷくきあいだ

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感染かんせんから発症はっしょうまでの期間きかんは3にちから5にち程度ていどとされる[4]

症状しょうじょう

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手足てあしこうびょう症状しょうじょうとしてはつぎのようなものがある。

初期しょき症状しょうじょうとして発熱はつねつ咽頭いんとうつうがある。1 - 2にちにはてのひらあしそこひざうらあし臀部でんぶ[6]などにいたみをともな水疱すいほうせいおか疹がしょうじ、口内こうないにも水疱すいほう出現しゅつげんする。これが7 - 10日間にちかんつづく。ただし、つねすべての徴候ちょうこう出現しゅつげんするとはかぎらない。

おおくの場合ばあい、1週間しゅうかんから10にち程度ていど自然しぜん治癒ちゆするが、まれに急性きゅうせいずいまくえん合併がっぺい急性きゅうせい脳炎のうえんしょうじる。エンテロウイルス71の感染かんせん症例しょうれいでは、のウイルスを原因げんいんとする場合ばあいより頭痛ずつう嘔吐おうとなどの中枢ちゅうすう神経しんけいけい合併症がっぺいしょう発生はっせいりつたか[6]。また、コクサッキーウイルスA16感染かんせん症例しょうれいでは心筋しんきんえん合併がっぺい報告ほうこくがある[6]出産しゅっさん直前ちょくぜんにん感染かんせんした場合ばあいは、まれてくる新生児しんせいじ感染かんせんするおそれがある。ウイルスがた EV71[7]では重症じゅうしょうした場合ばあいずいまくえん脳炎のうえん急性きゅうせい弛緩しかんせい麻痺まひをおこし急性きゅうせい脳炎のうえんともな中枢ちゅうすう神経しんけい合併症がっぺいしょうによる死亡しぼうれいおおいと報告ほうこくされている[6]

治癒ちゆ症状しょうじょうとして、1ヶ月かげつから2ヶ月かげつつめ変形へんけいつまかぶと脱落だつらくしょうじるれい報告ほうこくされている[8]

治療ちりょう

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手足てあしこうびょうのための特別とくべつ治療ちりょうほうはない。抗生こうせい物質ぶっしつ外用がいよう副腎ふくじん皮質ひしつステロイドざいもちいない。ただれた部位ぶいねついたみといった個々ここ症状しょうじょうは、対症療法たいしょうりょうほうによって緩和かんわする。ただし、中枢ちゅうすう神経症しんけいしょうじょう発生はっせいした場合ばあい入院にゅういん加療かりょう必要ひつようである。

通常つうじょう感染かんせんしょうなおるまで自宅じたく安静あんせいにすることが病気びょうきくるしむ子供こどもにとってもっと大切たいせつなことである。熱冷ねつさましは高熱こうねつげるのに役立やくだち、みずやぬるまによる入浴にゅうよくもまた、乳幼児にゅうようじねつげるのに役立やくだつ。

感染かんせんしょうほう5るい感染かんせんしょう小児科しょうにか定点ていてん報告ほうこく対象たいしょう疾患しっかん[9]であるが、学校がっこう感染かんせんしょうにはふくまれていないので、とうえん登校とうこう可否かひは、患者かんじゃ本人ほんにん症状しょうじょう状態じょうたいによって判断はんだんすればよいとかんがえられる[6]

一度いちど感染かんせんすると終生しゅうせい免疫めんえき獲得かくとくされるが、原因げんいんとなるウイルスは複数ふくすうあるため、なんかかることがある[10]

予防よぼう

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手足てあしこうびょう有効ゆうこうワクチン存在そんざいしない。実用じつよう目指めざしたEV71(手足てあしこうびょう)ワクチン開発かいはつすすめられている[6]手洗てあらいとうがい励行れいこうする。オムツの適切てきせつ処理しょりやこまめな手洗てあらい、タオルを共有きょうゆうしないなどの配慮はいりょ必要ひつよう[11]

CA16やEV71などのエンテロウイルスはアルコール(消毒しょうどく)にたいする抵抗ていこうせいたかいので、せっけんと流水りゅうすいによる手洗てあらいを基本きほんとする[12]手指しゅし以外いがいのウイルスに汚染おせんされた表面ひょうめん消毒しょうどくには、ねつすい(98℃15ふん–20ふんおおくの場合ばあいは80℃での10ふん洗浄せんじょうでも)、500–1,000ppm(特別とくべつ場合ばあいには5,000ppm)つぎ塩素えんそさんナトリウムえき場合ばあいによりアルコール製剤せいざい選択せんたくする[12]

国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょによる日本にっぽん全国ぜんこくやく3000の小児科しょうにか定点ていてん医療いりょう機関きかん報告ほうこくした2020ねん7がつ13にちから19にちまでの手足てあしこうびょう患者かんじゃ報告ほうこくすうは、だい流行りゅうこうした2019ねんのおよそ100ぶんの1、過去かこ10ねんもっとすくなかった2016ねんの5ぶんの1以下いかとなり、どう時期じきコロナウイルス感染かんせんしょう流行りゅうこうによる手洗てあらとう対策たいさく感染かんせんしょう流行りゅうこう対策たいさくにも効果こうかおよぼしているとみられている[13]

記録きろくされた流行りゅうこう

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  • 1975ねんブルガリアでEV71による死亡しぼうれい報告ほうこく
  • 1978ねんハンガリーでEV71による死亡しぼうれい報告ほうこく
  • 1997ねんマレーシアサラワクで、ほんしょう(EV71分離ぶんり症例しょうれいあり)の発生はっせいにより34にん子供こどもたちが死亡しぼうした。
  • 1998ねん台湾たいわん手足てあしこうびょう流行りゅうこう。78めい小児しょうに死亡しぼう死亡しぼうれいの92%からEV71が検出けんしゅつされた。
  • 2008ねん4がつ中国ちゅうごく安徽あんきしょうでEV71により19めい児童じどう死亡しぼうしたと報道ほうどうされた[15]
  • 2008ねん5がつ中国ちゅうごくやく25,000にん感染かんせんしゃ報道ほうどう[16]
  • 2010ねん4がつカンボジア手足てあしこうびょう流行りゅうこう。52めい小児しょうに死亡しぼう。この症例しょうれい入院にゅういんしたのは74にんで、うちEV71が原因げんいん特定とくていできなかったケースをふくめると61にん死亡しぼうした。

出典しゅってん

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  1. ^ 手足てあしこうびょう西日本にしにほん中心ちゅうしん季節外きせつはずれの流行りゅうこう コロナ対策たいさく免疫めんえき獲得かくとくない可能かのうせい”. 日刊にっかんスポーツ (2021ねん11月13にち). 2021ねん11月18にち閲覧えつらん
  2. ^ 北村きたむら明子あきこ, 成澤なりさわただし, はやし明男あきお ほか、「手足てあしこうびょう病因びょういんウイルスのかた同定どうてい RT-PCRと特異とくいプローブによる臨床りんしょう検体けんたいからの遺伝子いでんし検出けんしゅつ同定どうてい」『感染かんせんしょうがく雑誌ざっし』 1997ねん 71かん 8ごう p.715-723, doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.71.715
  3. ^ 正木まさき明夫あきお, 中山なかやま亜希あきだい, 岩井いわい雅恵まさえ, 滝澤たきざわつよしそく、「原著げんちょ】コクサッキーウイルスB2がたによるとかんがえられた手足てあしこうびょうさま発疹はっしんしょう集団しゅうだん発生はっせい (PDF) 」『小児しょうに感染かんせん免疫めんえき』 2008ねん 20かん 3ごう p.301-305, 日本にっぽん小児しょうに感染かんせんしょう学会がっかい
  4. ^ a b 感染かんせんしょうがく』(改訂かいていだい4)診断しんだん治療ちりょうしゃ、2009ねんISBN 978-4-7878-1744-0 
  5. ^ 篠原しのはら美千代みちよ, 内田うちだ和江かずえ, 島田しまだ慎一しんいち ほか、「コクサッキーウイルスA16がたおよびエンテロウイルス71がた検査けんさほう検討けんとう」『感染かんせんしょうがく雑誌ざっし』 1999ねん 73かん 8ごう p.749-757, doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.73.749, 日本にっぽん感染かんせんしょう学会がっかい
  6. ^ a b c d e f 手足てあしこうびょうとは”. 国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょ感染かんせんしょう疫学えきがくセンター. 2019ねん7がつ18にち閲覧えつらん
  7. ^ 西村にしむらじゅんひろし清水しみず博之ひろゆき、「エンテロウイルス71受容じゅようたいとしてのP-selectin glycoprotein ligand-1の同定どうてい」 『ウイルス』 2009ねん 59かん 2ごう p.195-204, doi:10.2222/jsv.59, 日本にっぽんウイルス学会がっかい
  8. ^ 渡部わたなべ裕子ゆうこ, 難波なんば千佳ちか, 藤山ふじやま幹子みきこ ほか、「原著げんちょ手足てあしこう病後びょうごつま変形へんけいつま脱落だつらく集団しゅうだん発生はっせい」『日本にっぽん皮膚ひふ学会がっかい雑誌ざっし』 2011ねん 121かん 5ごう p.863-867, doi:10.14924/dermatol.121.863, 日本にっぽん皮膚ひふ学会がっかい
  9. ^ 感染かんせんしょうほうもとづく医師いし届出とどけでのおねが 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
  10. ^ I.C.T. Monthly 阪大はんだい病院びょういんI.C.T 感染かんせん制御せいぎょ (PDF) (2015ねん8がつ
  11. ^ “「手足てあしこうびょう流行りゅうこう拡大かくだい 過去かこ10ねん最多さいたに”. NHK WEB. (2019ねん7がつ16にち). https://web.archive.org/web/20190716060758/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190716/k10011994531000.html 2019ねん7がつ18にち閲覧えつらん 
  12. ^ a b 手足てあしこうびょうについて”. ヨシダ製薬せいやく (2010ねん8がつ2にち). 2019ねん7がつ9にち閲覧えつらん
  13. ^ 手足てあしこうびょうは19ねんの100ぶんの1 なつ流行りゅうこうする感染かんせんしょう激減げきげん コロナ予防よぼう効果こうか 毎日新聞まいにちしんぶん (2020ねん7がつ28にち) 2020ねん7がつ29にち閲覧えつらん
  14. ^ エンテロウイルス71がた感染かんせん原因げんいん急死きゅうししたとかんがえられた3症例しょうれい大阪おおさか 国立こくりつ感染かんせん しょう情報じょうほうセンター 病原びょうげん微生物びせいぶつ検出けんしゅつ情報じょうほう
  15. ^ 川越かわごえはじめ (2008ねん4がつ28にち). “手足てあしこうびょう児童じどう19にん死亡しぼう 中国ちゅうごく安徽あんきしょう”. MSN産経さんけいニュース. 2008ねん5がつ6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  16. ^ 手足てあしこうびょう感染かんせんさらに拡大かくだい 死者ししゃ32にん中国ちゅうごく”. CNN (2008ねん5がつ9にち). 2008ねん5がつ11にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん5がつ9にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 浦野うらのたかし、『手足てあしこうびょう検査けんさ技術ぎじゅつ Vo.12 (5), 1984/5/1, pp.394-400, doi:10.11477/mf.1543203028

外部がいぶリンク

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