林はやし郁夫いくお (オウム真理教おうむしんりきょう)

オウム真理教おうむしんりきょう徒と

林はやし 郁夫いくお
誕生たんじょう	(1947-01-23) 1947年ねん1月がつ23日にち（77歳さい） 日本にっぽん・東京とうきょう都と品川しながわ区く
出身しゅっしん校こう	慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく医学部いがくぶ
ホーリーネーム	ボーディサットヴァ･クリシュナナンダ
配偶はいぐう者しゃ	林はやし りら
ステージ	正せい悟さとる師し
教団きょうだんでの役職やくしょく	オウム真理教おうむしんりきょう附属ふぞく医院いいん院長いんちょう 治療ちりょう省しょう大臣だいじん
入信にゅうしん	1989年ねん2月がつ
関係かんけいした事件じけん	公証こうしょう人じん役場やくば事務じむ長ちょう逮捕たいほ監禁かんきん致死ちし事件じけん 地下鉄ちかてつサリン事件じけん
判決はんけつ	無期むき懲役ちょうえき

林はやし 郁夫いくお（はやし いくお、1947年ねん1月がつ23日にち - ）は、元もとオウム真理教おうむしんりきょう幹部かんぶ。元もと医師いし。

教団きょうだんが省庁しょうちょう制せいを採用さいようした後のちは治療ちりょう省しょう大臣だいじんだった。地下鉄ちかてつサリン事件じけんの実行じっこう犯はん。ホーリーネームはクリシュナナンダ。

同どう教団きょうだん幹部かんぶであった同姓どうせいの林はやし泰男やすお（後のちに小池こいけに改姓かいせい）と縁戚えんせき関係かんけいはない。

来歴らいれき

生おい立たち

1947年ねん品川しながわ区く生うまれ。父親ちちおやが医師いし、母親ははおやが薬剤師やくざいしの開業医かいぎょういの家いえに生うまれる。幼少ようしょう期きから思おもいやりのある子こといわれ、人助ひとだすけがしたくて医師いしの道みちを選えらぶ。慶應義塾けいおうぎじゅく中等ちゅうとう部ぶ、慶應義塾けいおうぎじゅく高等こうとう学校がっこうを経へて、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく医学部いがくぶ卒業そつぎょう。専せん門もんは心臓しんぞう血管けっかん外科げか。

医師いし時代じだい

1978年ねん、アメリカデトロイトにあるサイナイ病院びょういん外科げか研究所けんきゅうじょに留学りゅうがく、1981年ねんに帰国きこく後ご、栃木とちぎ県けん済生会さいせいかい宇都宮うつのみや病院びょういん、茨城いばらき県けん那珂なか郡ぐん東海とうかい村むらの国立こくりつ療養りょうよう所しょ晴嵐せいらん荘そう病院びょういん、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく病院びょういんなどに勤務きんむ。慶應大学けいおうだいがく病院びょういんでは心臓しんぞう外科げか医いとして石原いしはら裕次郎ゆうじろうの手術しゅじゅつチームの一員いちいんでもあった。臨床りんしょう医いとして癌がんなどの死病しびょうの患者かんじゃと接せっするうちに、現代げんだい医学いがくや科学かがくが乗のり越こえられない「死し」に対たいして深ふかく考かんがえるようになる。

1977年ねん、桐山きりやま靖雄やすおの本ほんに感化かんかされ、阿含宗あごんしゅうの正式せいしきな信徒しんととなり、多おおくの知しり合あいを阿含宗あごんしゅうに勧誘かんゆうしていた。約やく10年ねん在籍ざいせきしたが、自身じしんの修行しゅぎょうの成果せいかが出でないと悩なやんでいた。

手術しゅじゅつは出来できても人ひとの心しんは救すくえないと悩なやんでいた。同時どうじに予防よぼう医学いがくの重要じゅうようさを認識にんしきするようになり、心臓しんぞう病びょうなどはストレスと深ふかくかかわっていると認識にんしきし、患者かんじゃにヨーガ、瞑想めいそう法ほう、呼吸こきゅう法ほうなどを紹介しょうかいしたりしていた。

オウム真理教おうむしんりきょうへの入信にゅうしん

1987年ねん、書店しょてんで麻原あさはら彰晃しょうこうの著書ちょしょと出会であう。信者しんじゃのヨーガやツァンダリー、インドの伝統でんとう医学いがく、オウム食しょくなどを用もちいた修行しゅぎょうメニューによる具体ぐたい的てきな成就じょうじゅ記事きじなどに強つよく衝撃しょうげきを受うけ、しだいに傾倒けいとうしていく。自みずから運転うんてんする自動車じどうしゃで交通こうつう事故じこの加害かがい者しゃになり、その自責じせきの念ねんに駆かられたことも入信にゅうしんの原因げんいんとされる。

1989年ねん2月がつ、オウム真理教おうむしんりきょうに入信にゅうしん。病院びょういんにオウムの療法りょうほうを持もち込こみ、患者かんじゃに塩水えんすいや湯ゆ、糸いとを飲のませたり、ジャンプさせたりするなどしたためトラブルにもなった。1990年ねん1月がつに晴嵐せいらん荘そう病院びょういんを退職たいしょくし、同年どうねん5月がつ、妻つま、子供こども達たちと共ともに一家いっか4人にんで出家しゅっけ信者しんじゃ（サマナ）になった。この際さいには目黒めぐろに所有しょゆうしていたマンションを売うった額がくを含ふくめた全ぜん財産ざいさんの8000万まん円えんと車くるま2台だいを布施ふせとして寄付きふし、地位ちいも名誉めいよもすべてなげうっての出家しゅっけであった。

出家しゅっけ生活せいかつ

その後ご教団きょうだんでは「師長もろなが」になり、中野なかの区くにあったオウム真理教おうむしんりきょう附属ふぞく医院いいん（AHI）の院長いんちょうに就任しゅうにん。出家しゅっけ当初とうしょの林はやしは東洋とうよう医学いがくや瞑想めいそうも取とり入いれて末期まっきがんなどの難病なんびょう治療ちりょうに取とり組くむことを志こころざしていたが、まるで違ちがう現実げんじつが林はやしを待まち受うけていた。1993年ねんに池田いけだ大作だいさくサリン襲撃しゅうげき未遂みすい事件じけんでサリン中毒ちゅうどくになった新実にいみ智光ともみつを治療ちりょうし、オウム真理教おうむしんりきょうがサリンを保有ほゆうしていることを知しる。1994年ねんには治療ちりょう省しょう大臣だいじんとなる。教団きょうだんの犯罪はんざいに従事じゅうじする信者しんじゃの指紋しもん消去しょうきょ手術しゅじゅつ、信者しんじゃの記憶きおく消けし（ニューナルコ）などに携たずさわる。その他た、鹿島かしまとも子こ長女ちょうじょ拉致らち監禁かんきん事件じけんやピアニスト監禁かんきん事件じけんの被害ひがい者しゃに対たいし、チオペンタールナトリウムを打うったり殴打おうだするなどしている。「教団きょうだんは毒どくガス攻撃こうげきを受うけている」という麻原あさはらの嘘うそも1995年ねんの暮くれまで信しんじていた。林はやしの性格せいかくは暴力ぼうりょく的てきになり、部下ぶかの女性じょせい看護かんご師しや妻つまも殴なぐるようになった。

地下鉄ちかてつサリン事件じけんの実行じっこう

殺人さつじんにはためらいを覚おぼえていたものの、必死ひっしに信仰しんこう心しんを保たもとうとしていた林はやしは地下鉄ちかてつサリン事件じけんの実行じっこう犯はんとなる。1995年ねん3月がつ20日はつか、帝都ていと高速度こうそくど交通こうつう営団えいだん（営団えいだん地下鉄ちかてつ）千代田ちよだ線せんに林はやしが散布さんぷしたサリンによって地下鉄ちかてつ職員しょくいん2人にんが死亡しぼうし、231人にんに重軽傷じゅうけいしょうを負おわせた。なお、事件じけん前日ぜんじつの3月がつ19日にちには、公証こうしょう人じん役場やくば事務じむ長ちょう逮捕たいほ監禁かんきん致死ちし事件じけんでレンタカーを借かりる際さいに書類しょるいに指紋しもんを残のこした松本まつもと剛つよしの指紋しもんの除去じょきょ手術しゅじゅつを教団きょうだん付属ふぞく医院いいんで行おこなっている。

事件じけん直後ちょくご、林はやしは麻原あさはらが「地下鉄ちかてつの騒さわぎでオウムが疑うたがわれてるのは心外しんがいだ」と発言はつげんしたことで麻原あさはらに対たいして不信ふしん感かんを抱だいたと言いう。逮捕たいほ後ごも麻原あさはらの「シヴァ神しんにポアされて良よかったね。マントラを1万まん回かい唱となえなさい」などの発言はつげんでさらに不信ふしん感かんを持もったと言いわれ、これが後こうの全面ぜんめん自供じきょうの伏線ふくせんになったと言いわれている。

地下鉄ちかてつサリン事件じけん3日にち前まえの尊師そんし通達つうたつで「正せい悟さとる師し」に昇格しょうかくしていた。

逃亡とうぼう・逮捕たいほ

3月22日にち、警察けいさつは教団きょうだんへの強制きょうせい捜査そうさに踏ふみ切きり、松本まつもとを全国ぜんこく指名しめい手配てはいした。3月24日にちから、松本まつもとや治療ちりょう省しょうの部下ぶからと共ともに北陸ほくりく方面ほうめんに逃走とうそうを開始かいし。石川いしかわ県けん穴水あなみず町まちの貸かし別荘べっそうを偽名ぎめいで契約けいやくし、松本まつもとに顔かおの整形せいけい手術しゅじゅつや再度さいどの指紋しもん除去じょきょ手術しゅじゅつ等とうを行おこなった。4月7日にち、教団きょうだんとの連絡れんらく役やくで逃走とうそうを支援しえんしていた治療ちりょう省しょうの部下ぶかが、林はやしの潜伏せんぷく先さきの近ちかくで石川いしかわ県けん警察けいさつの職務しょくむ質問しつもんを受うけ、逮捕たいほされた。このことをテレビニュースで知しると、貸かし別荘べっそうから逃亡とうぼうした。4月8日にち、松本まつもとと2人ふたりで石川いしかわ県けん金沢かなざわ市し方面ほうめんに向むかう途中とちゅうで、林はやしも警察官けいさつかんに発見はっけんされ、職務しょくむ質問しつもんで自転車じてんしゃの盗難とうなんが発覚はっかくし、占有せんゆう離脱りだつ物ぶつ横領おうりょう罪ざいで逮捕たいほされた。松本まつもとは山中さんちゅうに身みを隠かくし、京阪けいはん方面ほうめんを転々てんてんとしながら逃走とうそうを続つづけていたが、5月18日にち、東京とうきょう都と足立あだち区く内うちの路上ろじょうで警視庁けいしちょうに逮捕たいほ監禁かんきん罪ざいで逮捕たいほされた。

取調とりしらべ・自供じきょう

警視庁けいしちょうに移送いそうされた林はやしは取とり調しらべにおいて「警察けいさつとオウム真理教おうむしんりきょうとの戦たたかいだ」と発言はつげんし、断食だんじきを宣言せんげんするなどの戦闘せんとう的てき姿勢しせいがあった。林はやしは重要じゅうよう人物じんぶつだとみなされておらず、取調とりしらべに当あたったのは警視庁けいしちょう第だい三さん機動きどう捜査そうさ隊たいからの応援おうえんで捜査そうさ第だい一いち課かに来きていた警部補けいぶほと部長ぶちょう刑事けいじであった。もともと暴力団ぼうりょくだん捜査そうさの担当たんとうが長ながいこの警部補けいぶほはオウム問題もんだいに詳くわしい滝本たきもと太郎たろう弁護士べんごしの元もとを何なん度ども訪おとずれ、洗脳せんのう状態じょうたいにある信者しんじゃに対たいする接せっし方かたなどのアドバイス（麻原あさはらを呼よび捨すてにしない、医師いしであった林はやしに対たいしては「先生せんせい」と呼よぶ等ひとし）を受うけて、独自どくじの方法ほうほうで取とり調しらべを行おこなっていた。林はやしは「先生せんせいという呼よび方かたはやめてほしい。私わたしはもう医師いしではない。そんな風ふうに思おもわれるのは面おもはゆい」と拒こばんだが、「実際じっさいにあなたは人ひとの命いのちを救すくってきた。立派りっぱな仕事しごとをされてきたので敬意けいいを込こめて呼よばせてもらいます」と取調とりしらべ中ちゅうは常つねに林はやしは「先生せんせい」と呼よばれ続つづけていた。後ごの自供じきょうは「オウムが解体かいたいされた後のちの信徒しんとたちを救すくってほしい」との求もとめに応おうじたものであった。なお、後のちに林はやしは法廷ほうていにおいて弁護人べんごにんから「先生せんせい」と呼よばれたときに「私わたしは先生せんせいじゃないから」と感情かんじょうを顕あらわにしている。

教団きょうだんの幹部かんぶでもある弁護士べんごしの接見せっけん後ごには黙秘もくひ権けんを行使こうししていたが、昇格しょうかくをちらつかせながら口止くちどめさせようとする弁護士べんごしの姿勢しせいに疑問ぎもんを抱いだき始はじめ、4月がつ23日にちの村井むらい秀夫ひでお刺殺しさつ事件じけん後のちには動揺どうようを見みせた。5月6日にちに別べつの事件じけんでの取とり調しらべを終おえたあと、突然とつぜん「私わたしがサリンを撒まきました」と述のべ、地下鉄ちかてつサリン事件じけんの全面ぜんめん自供じきょうを始はじめた。取調とりしらべ担当たんとうの警部補けいぶほたちは、林はやしが地下鉄ちかてつサリン事件じけんに関与かんよしていたことを全まったく予想よそうしておらず、「先生せんせい、嘘うそだろう」「誰だれかをかばっているの」と問とい直なおした。この供述きょうじゅつにより警察けいさつは同月どうげつ16日にち教団きょうだん施設しせつへの強制きょうせい捜査そうさを実施じっし。隠かくし部屋へやに潜ひそんでいた麻原あさはらが逮捕たいほされ、教団きょうだん解体かいたいへとつながる。

また公判こうはん中なか、被害ひがい者しゃの駅員えきいんが自分じぶんが撒まいたサリンを片付かたづけたために死亡しぼうしたことについて「私わたしは本来ほんらい人じんを助たすける医者いしゃでありながら、そういう人達ひとたちに比くらべて」と号泣ごうきゅうするなど、林はやしの涙なみだながらの裁判さいばんは傍聴ぼうちょう人じんの心しんを大おおきく揺ゆさぶり、「慟哭どうこくの裁判さいばん」とも言いわれた。

その後ご、オウム真理教おうむしんりきょうの各種かくしゅ事件じけんに対たいしての捜査そうさに協力きょうりょく的てきな点てんや、公判こうはんの中なかで、遺族いぞく・被害ひがい者しゃ側がわが「改悛かいしゅんの情じょうがある」として、必かならずしも死刑しけいを求もとめなかったこと、サリン散布さんぷの実行じっこう犯はんであることを捜査そうさ側がわが充分じゅうぶんに関知かんちしていない段階だんかいで自みずから告白こくはくした点てん、罪つみの呵責かしゃくに喘あえいでいる点てんなどを考慮こうりょし、検察けんさつは林はやしの全面ぜんめん自供じきょうにより地下鉄ちかてつサリン事件じけんの全容ぜんようが明あきらかになったことが自首じしゅに相当そうとうするとの判断はんだんを下くだした。このため検察けんさつは死刑しけいではなく無期むき懲役ちょうえきを求刑きゅうけいしたが、無む差別さべつ大量たいりょう殺人さつじん事件じけんの実行じっこう犯はんに対たいし検察けんさつ側がわが自発じはつ的てきに求刑きゅうけいを軽減けいげんするのは極きわめて異例いれいのことである。

地裁ちさい判決はんけつ

1998年ねん5月、東京とうきょう地裁ちさいで無期むき懲役ちょうえきの判決はんけつが下くだる。検察けんさつ側がわも林はやし側がわも控訴こうそせず、一いち審しんで確定かくていした。現在げんざい、千葉刑務所ちばけいむしょに服役ふくえき中ちゅう。その後ご、地下鉄ちかてつサリン事件じけんの他ほかの4人にんの散布さんぷ役やくはいずれも死刑しけいが確定かくていし、2018年ねん7月がつに全員ぜんいんが執行しっこうされたことから、地下鉄ちかてつサリン事件じけんの散布さんぷ役やくの中なかでは唯一ゆいいつの存命ぞんめい者しゃとなった。

死刑しけいを免まぬかれた理由りゆうとして山室やまむろ惠めぐみ裁判さいばん長ちょうは「自己じこの記憶きおくに従したがい、ありのままに供述きょうじゅつしていることが認みとめられる。極刑きょっけいが予想よそうされるなか、臆おくすることなく決定的けっていてきに不利ふりな事項じこうにまで及およんでおり、覚悟かくごしたうえでの胸中きょうちゅうの吐露とろであって、被告人ひこくにんの反省はんせい、悔悟かいごの情じょうは顕著けんちょである」とした。その他た、麻原あさはらが科学かがく技術ぎじゅつ省しょうの4人にん以外いがいに治療ちりょう省しょうの林はやしを実行じっこう犯はんに選えらんだことを「いささか不自然ふしぜんであり、被告人ひこくにんの信仰しんこう心しんに付つけ入いった利用りよう」とし、麻原あさはらの指示しじがなければ実行じっこう役やくにはならなかったとした。また、地下鉄ちかてつサリン事件じけんで亡なくなった地下鉄ちかてつ職員しょくいんの妻つまが証人しょうにんとして出廷しゅっていした際さい、林はやしを「許ゆるしてもいい」という証言しょうげんをしたことも大おおきな影響えいきょうを与あたえたとされる。他たの信者しんじゃらの裁判さいばんに証人しょうにんとして出廷しゅっていし、有罪ゆうざい判決はんけつを引ひき出だすことに貢献こうけんしてきた林はやしであったが、この無期むき判決はんけつには極刑きょっけいを希望きぼうする警察けいさつ関係かんけい者しゃから不満ふまんの声こえも上あがったという。坂本さかもと堤つつみ弁護士べんごし一家いっか殺害さつがい事件じけんの実行じっこう犯はんのメンバーとして死刑しけい判決はんけつが下くだった早川はやかわ紀代のりよ秀しゅうも「私わたしが命令めいれいしたわけでもなく私わたしがこの手てで殺ころしたわけでもないのに、死刑しけいかと言いう思おもいがあります。林はやしは自分じぶんの手てでも2人ふたりを殺ころしていますが、死刑しけいを求刑きゅうけいすらされず無期むき判決はんけつです。いったいこの差さは何なになのでしょうか」と手記しゅきを遺のこしていた。山室やまむろ裁判さいばん長ちょう自身じしんも退官たいかん後ご、判決はんけつは林はやしへの同情どうじょうによるものではなく、「いま、あの当時とうじに戻もどることができても、あの判決はんけつしかないと思おもっています」としながらも「自分じぶんの下くだした判決はんけつが正ただしかったのか、正ただしくなかったのか、これほど自問自答じもんじとうし続つづけた裁判さいばんはほかにありません」と心情しんじょうを吐露とろしている。

なお、林はやしは単純たんじゅんな反はんオウムに転向てんこうしたわけではなく、麻原あさはらの子こどもの就学しゅうがく拒否きょひ問題もんだいやオウム信者しんじゃ住民じゅうみん票ひょう不ふ受理じゅり問題もんだいなどが起おきていた2000年ねんに出廷しゅっていした際さいには、「あまりにも一方いっぽう的てき、あまりにフェアでない。何なにもかも悪わるい、何なにもかも危険きけんと、そのように世論せろんが誘導ゆうどうされて」いると行政ぎょうせい等とうの対応たいおうを批判ひはんしている。

後のちに、サリン事件じけんで亡なくなった被害ひがい者しゃの名前なまえを毎日まいにち念仏ねんぶつで唱となえていると報道ほうどうされた。一方いっぽうで刑務所けいむしょではヨガを組くんでいるという。

周辺しゅうへん人物じんぶつ

妻つま：りら

1949年ねん東京とうきょう都と大田おおた区く生うまれの麻酔ますい科か医い。松本まつもとの指紋しもん除去じょきょ手術しゅじゅつを林はやしと共ともに行いったことで逮捕たいほ・起訴きそされた（懲役ちょうえき1年ねん、執行しっこう猶予ゆうよ3年ねん）。

郁夫いくおとは1980年ねん7月がつ24日にちに結婚けっこんした。郁夫いくおが阿含宗あごんしゅうの前身ぜんしんである観音かんのん慈恵じえ会かいに入信にゅうしんしていた為ため、挙式きょしきは仏式ぶっしきであった。結婚けっこん後ごは専業せんぎょう主婦しゅふをしていたが、その後ご一家いっかでオウム真理教おうむしんりきょうに出家しゅっけする。出家しゅっけ後ごは熊本くまもと県けんの教団きょうだん施設しせつ、教団きょうだん付属ふぞく医院いいん、上九一色かみくいしき村むらの第だい六ろくサティアンにて治療ちりょうにあたる。AHI（教団きょうだん付属ふぞく病院びょういん）で手てに負おえない患者かんじゃは兄あにの所ところに連つれて行いき治療ちりょうに当あたらせた。郁夫いくおとはAHI以外いがいで会あうことはなく、第だい六ろくサティアンにそれぞれ個室こしつを与あたえられていた。麻原あさはらの「新婚しんこん旅行りょこうに行いけ」の命令めいれいで郁夫いくおと共ともにアメリカに向むかい、LSDなどの薬物やくぶつの調査ちょうさに当あたったことがある。郁夫いくおは教団きょうだんで権力けんりょくを持もつようになった1994年ねんから、この妻つまに対たいし度々たびたび暴力ぼうりょくを振ふるっていた。その後ご医師いし登録とうろくされ現在げんざいは医師いしとして活動かつどうしている。

1981年ねん、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・デトロイト市しにて長女ちょうじょ誕生たんじょう、現在げんざい医師いしとして活動かつどうしている。1987年ねん、茨城いばらき県けん東海とうかい村むらにて長男ちょうなん誕生たんじょう。現在げんざい医師いしとして活動かつどうしている。

教団きょうだん付属ふぞく医院いいん婦長ふちょう

宮崎みやざき県けん資産しさん家か拉致らち事件じけんでの営利えいり略取りゃくしゅ罪ざい、林はやしによる松本まつもとの指紋しもん除去じょきょ手術しゅじゅつを補助ほじょし、北陸ほくりくへの逃亡とうぼうを幇助ほうじょしたことでの麻薬まやく及および向こう精神せいしん薬やく取締とりしまり法ほう違反いはんおよび犯人はんにん蔵匿ぞうとく罪ざいで逮捕たいほ・起訴きそされた（懲役ちょうえき2年ねん4ヶ月かげつ）。1965年ねん3月がつ茨城いばらき県けん生うまれ。1985年ねん5月に看護かんご婦ふ国家こっか試験しけん（現在げんざいの呼称こしょうは「看護かんご師し」）に合格ごうかくし、20歳さいで地元じもとの晴嵐せいらん荘そう病院びょういん循環じゅんかん器き科かに配属はいぞくされた。そこで医長いちょうを務つとめていた林はやしと出会であい、次第しだいに不倫ふりん関係かんけいとなる。林はやしに「見学けんがくに行いこう」と薦すすめられ、1989年ねん4月がつにオウム真理教おうむしんりきょうに入信にゅうしん。その後ご末期まっきがんの多おおい病棟びょうとうに配属はいぞくされ、死しについて考かんがえはじめる。林はやしに相談そうだんすると出家しゅっけを薦すすめられたため、1990年ねん5月に出家しゅっけ。なお不倫ふりん関係かんけいは1990年ねんで終おわり、その後ごは林はやしの片腕かたうでとなり教団きょうだん内ないで治療ちりょうに当あたる。1993年ねん頃ころから教団きょうだんのやり方かたに疑問ぎもんを持もつようになるが、林はやしの説得せっとくにより思おもい留とどまった。が、この頃ころから林はやしは暴力ぼうりょく的てきになり、この婦長ふちょうを殴なぐることもあった。

関連かんれん項目こうもく

• オウム真理教おうむしんりきょう事件じけん
• オウム真理教おうむしんりきょうの年表ねんぴょう
• オウム真理教おうむしんりきょうの歴史れきし
• 公証こうしょう人じん役場やくば事務じむ長ちょう逮捕たいほ監禁かんきん致死ちし事件じけん（逮捕たいほ監禁かんきん致死ちし罪ざい）
• 地下鉄ちかてつサリン事件じけん（殺人さつじん罪ざい・殺人さつじん未遂みすい罪ざい）
• 信者しんじゃ犯人はんにん蔵匿ぞうとく（公証こうしょう人じん役場やくば事務じむ長ちょう逮捕たいほ監禁かんきん致死ちし事件じけん犯人はんにんの指紋しもんを除去じょきょし、石川いしかわ県けんに蔵匿ぞうとくした）（犯人はんにん蔵匿ぞうとく罪ざい）
• ピアニスト監禁かんきん事件じけん（女性じょせい信者しんじゃに麻酔ますい剤ざいを注射ちゅうしゃするなどしてコンテナに監禁かんきん）（監禁かんきん罪ざい）
• 鹿島かしまとも子こ長女ちょうじょ拉致らち監禁かんきん事件じけん（元もとダンサーの長女ちょうじょを麻酔ますい剤ざいを使つかって拉致らちし、教団きょうだん施設しせつに監禁かんきん）（監禁かんきん罪ざい）
• 麻酔ますい剤ざい密造みつぞう事件じけん（宗教しゅうきょう儀式ぎしきやスパイチェックに使つかうため麻酔ますい剤ざいを密造みつぞう）（薬事やくじ法ほう違反いはん）

著書ちょしょ

• 林はやし郁夫いくお『オウムと私わたし』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、1998年ねん9月がつ。ISBN 4167656175。 

林はやし郁夫いくおを演えんじた俳優はいゆう

• 高杢たかもく禎彦よしひこ（元もとチェッカーズ） - 『オウムVS警察けいさつ 史上しじょう最大さいだいの作戦さくせん』（2004年ねん、日本にほんテレビ）
• 平田ひらた満みつる - 『告白こくはく―私わたしがサリンをまきました―オウム10年ねん目めの真実しんじつ』（2004年ねん、TBS）
• 小市こいち慢太郎ろう - 『地下鉄ちかてつサリン事件じけん 15年ねん目めの闘たたかい〜あの日ひ、霞ヶ関かすみがせきで何なにが起おこったのか〜』（2010年ねん、フジテレビ）
• 岡部おかべたかし - 『直撃ちょくげき!シンソウ坂上さかがみ 緊急きんきゅうドラマ!オウム終おわらせた男おとこ』（2018年ねん、フジテレビ）
• 水越みずこしとものり - 『THE 重大じゅうだい事件じけん Vol.2「土谷つちたに正実まさみ サリンを造つくった男おとこ」』（2022年ねん、Hulu）

参考さんこう文献ぶんけん

• 佐さ木き隆三りゅうぞう『オウム法廷ほうてい連続れんぞく傍聴ぼうちょう記き』小学館しょうがくかん、1996年ねん。ISBN 4-09-379221-6。 
• 佐さ木き隆三りゅうぞう『慟哭どうこく』講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ〉、2008年ねん8月がつ。ISBN 9784062760430。