省庁しょうちょう制せい (オウム真理教おうむしんりきょう)

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ここでは、宗教しゅうきょう団体だんたいオウム真理教おうむしんりきょうに1994年ねん6月がつ20日はつか[1]に導入どうにゅうされた内部ないぶ組織そしきである省庁しょうちょう制せい（しょうちょうせい）について述のべる。

国家こっか転覆てんぷくを企くわだてているのではないかと言いった多方面たほうめんからの批判ひはんを浴あびたことと、組織そしきの温存おんぞんを図はかるため、教団きょうだん代表だいひょうである麻原あさはら逮捕たいほ後ごに「省庁しょうちょう制せい」は廃止はいしされた。

省庁しょうちょう制せい導入どうにゅうのねらい[編集へんしゅう]

教団きょうだんでは当初とうしょ「部ぶ班はん制せい」が採とられていた。「総務そうむ部ぶ」「広報こうほう部ぶ」「戦たたかえ真理しんりの戦士せんし部ぶ[注ちゅう 1]」「科学かがく班はん」「編集へんしゅう班はん」「デザイン班はん」「被服ひふく班はん」「生活せいかつ班はん」「医療いりょう班はん」 などがあり、修行しゅぎょうに専念せんねんするときに一時いちじ的てきに所属しょぞくする「修行しゅぎょう班はん」もあった。教団きょうだんの組織そしき化かはそれほど進すすんでおらず、麻原あさはら彰晃しょうこうが直接ちょくせつ各部かくぶ班はんの決裁けっさいをしていた。林はやし郁夫いくおによると、オウム真理教おうむしんりきょう附属ふぞく医院いいんの患者かんじゃの治療ちりょうについても麻原あさはらにお伺うかがいをたてていたという[2][3]。しかし、組織そしきが拡大かくだいしたことで麻原あさはらの負担ふたんが重おもくなり、決裁けっさい権けんや人事じんじ権けんを教団きょうだん幹部かんぶに委譲いじょうするために省庁しょうちょう制せいが導入どうにゅうされた。

省庁しょうちょう制せい導入どうにゅう後ごは上意下達じょういかたつの組織そしきとしての充実じゅうじつが図はかられた反面はんめん、麻原あさはらとサマナ個人こじんとの霊的れいてきな繋つながりが薄うすれ、「尊師そんし」は遠とおい存在そんざいになっていったという[4]。

省庁しょうちょう間あいだでは歌合戦うたがっせん、大だい食くい、洗面せんめん器きに何分なにぶん顔がおをつけていられるかなどの競争きょうそうが行おこなわれ、最下位さいかいだと掃除そうじをさせられた。科学かがく技術ぎじゅつ省しょうはよく下位かいだったので、数学すうがくと物理ぶつりを種目しゅもくにいれようかという話はなしもあった[5]。

省庁しょうちょう制せい発足ほっそく式しき[編集へんしゅう]

1994年ねん6月27日にち午前ごぜん0時じから、教団きょうだんの関連かんれん会社かいしゃ、株式会社かぶしきがいしゃマハーポーシャ経営けいえいの飲食いんしょく店てんであるうまかろう安やすかろう亭ちん阿佐ヶ谷あさがや店てんにおいて、ラーメン、餃子ぎょうざ、チャーハンを食たべながら「省庁しょうちょう制せい発足ほっそく式しき」が開ひらかれ、各かく「省庁しょうちょう」の「大臣だいじん」や「次官じかん」約やく100人にんが集あつまり、麻原あさはらの前まえで決意けつい表明ひょうめいを行おこなった[6]。

この内うちの何人なんにんかは、当日とうじつ夜よるに長野ながの県けん松本まつもと市しに赴おもむき、松本まつもとサリン事件じけんを起おこすことになった。

オウム真理教おうむしんりきょうの「省庁しょうちょう」一覧いちらん[編集へんしゅう]

オウム真理教おうむしんりきょうの「国家こっか元首げんしゅ」神聖しんせい法皇ほうおう（しんせいほうこう）である麻原あさはら彰晃しょうこうの下したに各かく省庁しょうちょうが置おかれ、大臣だいじん[注ちゅう 2]（長官ちょうかん）が「省しょう務つとむ」を統括とうかつした。ここでは江川えがわ紹子『オウム真理教おうむしんりきょう追跡ついせき2200日にち』p.22に基もとづいているが、資料しりょうにより各かく省庁しょうちょうの大臣だいじん・長官ちょうかんは若干じゃっかん差異さいもある。

オウム真理教おうむしんりきょうの「省庁しょうちょう」と「省しょう務つとむ」
省庁しょうちょう名めい 長なが
（事実じじつ上じょうの長ちょう）		 省しょう務つとむ 規模きぼ[7]
（'94年ねん6月がつ）
法皇ほうおう官房かんぼう 松本まつもと麗華れいか
（石川いしかわ公一こういち）		 神聖しんせい法皇ほうおう直属ちょくぞく機関きかんで各種かくしゅイニシエーションや省庁しょうちょう間あいだの調整ちょうせいを担当たんとう[8] 約やく30人にん
法皇ほうおう内ない庁ちょう 中川なかがわ智正ともまさ 神聖しんせい法皇ほうおうの身みの回まわりの世話せわを担当たんとう[8] 7人にん
究きわむ聖せい音楽おんがく院いん 石井いしい紳しん一郎いちろう 教団きょうだんの音楽おんがくを担当たんとう[9] 7人にん
科学かがく技術ぎじゅつ省しょう 村井むらい秀夫ひでお 旧きゅうCSI[注ちゅう 3]、教団きょうだんの兵器へいき開発かいはつを担当たんとう[11] 約やく260人にん
第だい一いち厚生省こうせいしょう 遠藤えんどう誠一せいいち 旧きゅうCMI[注ちゅう 4]、細菌さいきん兵器へいきや違法いほう薬物やくぶつの製造せいぞう開発かいはつを担当たんとう[13] 約やく30人にん
第だい二に厚生省こうせいしょう 土谷つちたに正実まさみ 旧きゅうCMI、化学かがく兵器へいきや違法いほう薬物やくぶつの製造せいぞう開発かいはつを担当たんとう[14]。遠藤えんどうとの不仲ふなかにより旧きゅう厚生省こうせいしょうから分離ぶんり
自治省じちしょう 新実にいみ智光ともみつ 旧きゅうSPS[注ちゅう 5]、教団きょうだんの警備けいび、信徒しんとの懲罰ちょうばつ、スパイ摘発てきはつを担当たんとう[16] 約やく90人にん
諜報ちょうほう省しょう
（CHS）
[注ちゅう 6]		 麻原あさはらの四よん女じょ
（井上いのうえ嘉浩よしひろ）		 教団きょうだんの非合法ひごうほう活動かつどうに必要ひつような情報じょうほう収集しゅうしゅう、非合法ひごうほう活動かつどうを担当たんとう[18] 約やく10人にん
治療ちりょう省しょう 林はやし郁夫いくお オウム真理教おうむしんりきょう附属ふぞく医院いいん（AHI）[注ちゅう 7]を担当たんとう[18] 約やく60人にん
外務省がいむしょう 上祐じょうゆう史浩ふみひろ 教団きょうだん外がいの交渉こうしょうを担当たんとう[20] 3人にん
法務省ほうむしょう 青山あおやま吉伸よしのぶ 教団きょうだんの訴訟そしょう関係かんけい事務じむを担当たんとう[8] 約やく10人にん
商務省しょうむしょう 越川こしかわ真一しんいち マハーポーシャ等とう教団きょうだん関連かんれん会社かいしゃの経営けいえいを担当たんとう[21] 約やく35人にん
大蔵省おおくらしょう 石井いしい久子ひさこ 教団きょうだんの経理けいり、物品ぶっぴん購入こうにゅうを担当たんとう[22] 約やく40人にん
建設省けんせつしょう 早川はやかわ紀代のりよ秀しゅう 旧きゅうCBI[注ちゅう 8]、教団きょうだん施設しせつの建設けんせつや用地ようち買収ばいしゅうを担当たんとう[23] 約やく100人にん
文部省もんぶしょう 杉浦すぎうら茂しげる 出家しゅっけ信者しんじゃの子弟していの教育きょういくや教典きょうてんの翻訳ほんやくを担当たんとう[24] 約やく110人にん
労働省ろうどうしょう 山本やまもとまゆみ 旧きゅう修行しゅぎょう班はん、出家しゅっけ信者しんじゃの生活せいかつ指導しどうを担当たんとう[25][26] 約やく30人にん
郵政省ゆうせいしょう 松本まつもと知子ともこ 旧きゅう印刷いんさつ班はん、教団きょうだんの出版しゅっぱん物ぶつ・ビデオ・オウム真理教おうむしんりきょう放送ほうそう等ひとしの編集へんしゅうを担当たんとう[27][26] 約やく90人にん
流通りゅうつう監視かんし省しょう 麻原あさはらの長女ちょうじょ 旧きゅうお供物くもつ班はんと旧きゅう被服ひふく班はん、教団きょうだんの食事しょくじ分配ぶんぱいを担当たんとう[28][26] 約やく50人にん
車両しゃりょう省しょう 野田のだ成人しげと 教団きょうだんの車両しゃりょうの運転うんてんや整備せいびを担当たんとう[29] 約やく20人にん
防衛庁ぼうえいちょう 岐部きべ哲也てつや 教団きょうだんの空気くうき清浄せいじょう機き「コスモクリーナー」の保守ほしゅ管理かんりを担当たんとう[8] 約やく30人にん
東ひがし信徒しんと庁ちょう 飯田いいだエリ子こ 東日本ひがしにっぽん地区ちくの信徒しんとの管理かんりを担当たんとう[30] 約やく60人にん
西にし信徒しんと庁ちょう 都沢みやこざわ和子かずこ 西日本にしにほん地区ちくの信徒しんとの管理かんりを担当たんとう[31] 約やく55人にん
新しん信徒しんと庁ちょう 大内おおうち早苗さなえ 白しろい愛あいの戦士せんしの管理かんりを担当たんとう[32] 約やく20人にん

その他た[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ビラ配くばり、勧誘かんゆうを担当たんとう - ●「戦たたかい」の意味いみするもの オウム真理教おうむしんりきょう公式こうしきサイト（Internet Archive）
  2. ^ 日本にっぽんの国務大臣こくむだいじんのように「○○大臣だいじん」ではなく「○○省しょう大臣だいじん」と呼よばれていた。ただし、朝日新聞社あさひしんぶんしゃ系けいのマスメディアは「○○省しょうトップ」と呼よんだ。また上祐じょうゆう史浩ふみひろは「外務省がいむしょう大臣だいじん」ではなく「外報がいほう部長ぶちょう」、青山あおやま吉伸よしのぶは「法務省ほうむしょう大臣だいじん」ではなく「顧問こもん弁護士べんごし」、遠藤えんどう誠一せいいちは「厚生省こうせいしょう大臣だいじん」、土谷つちたに正実まさみは「化学かがく班はんキャップ」と呼よばれていた。
  3. ^ 真理しんり科学かがく研究所けんきゅうじょ/コスミック・サイエンス・インスティテュートの略りゃく[10]
  4. ^ コスミック・メディカル・インスティテュートの略りゃく[12]
  5. ^ 尊師そんしパーソナルスタッフの略りゃく[15]
  6. ^ 当初とうしょ麻原あさはらは諜報ちょうほう省しょうと名付なづけようとしたが、直球ちょっきゅうすぎてまずいと考かんがえCHS（Chou Hou Shou）と呼よばれることとなった[17]
  7. ^ アストラル・ホスピタル・インスティテュートの略りゃく[19]
  8. ^ コスミック・ビルディング・インスティテュートの略りゃく[12]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 島田しまだ、p.201
  2. ^ 林はやし、p.120-121
  3. ^ 江川えがわ紹子『救世主きゅうせいしゅの野望やぼう』 p.101
  4. ^ 林はやし、p.261-263
  5. ^ 降くだ幡はた賢一けんいち『オウム法廷ほうてい グルのしもべたち上じょう』 p.66
  6. ^ 「省庁しょうちょう制せい」発足ほっそく式しきの実態じったい オウム真理教おうむしんりきょう公式こうしきサイト（Internet Archive）
  7. ^ 降くだ幡はた賢一けんいち『オウム法廷ほうてい グルのしもべたち 上じょう』 p.37
  8. ^ a b c d 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 119.
  9. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 43.
  10. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 63.
  11. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 33、 p.51.
  12. ^ a b 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 64.
  13. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 83.
  14. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 84.
  15. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 23.
  16. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 65.
  17. ^ 降くだ幡はた賢一けんいち『オウム法廷ほうてい9』 p.21
  18. ^ a b 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 93.
  19. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 22.
  20. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 32.
  21. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 72.
  22. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 29.
  23. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 50.
  24. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 133.
  25. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 139.
  26. ^ a b c - ●各かく省庁しょうちょうの実態じったい オウム真理教おうむしんりきょう公式こうしきサイト（Internet Archive）
  27. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 134.
  28. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 138.
  29. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 68.
  30. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 113.
  31. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 104.
  32. ^ 東京とうきょうキララ社しゃ 2003, p. 74.
  33. ^ 『ヴァジラヤーナ・サッチャ no.9』オウム出版しゅっぱん、1995年ねん　 p.78
  34. ^ 「オウム問題もんだい 閣僚かくりょうピリピリ」 朝日新聞あさひしんぶん 1995年ねん4月がつ4日にち

参照さんしょう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 林はやし郁夫いくお『オウムと私わたし』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう〈文春ぶんしゅん文庫ぶんこ〉、2001年ねん、ISBN 978-4167656171
  • 島田しまだ裕巳ひろみ『オウム』トランスビュー、2001年ねん、ISBN 978-4901510004
  • 東京とうきょうキララ社しゃ編集へんしゅう部ぶ『オウム真理教おうむしんりきょう大だい辞典じてん』三さん一いち書房しょぼう、2003年ねん11月。ISBN 978-4380032097。 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

教団きょうだんの人物じんぶつ
関連かんれんの事件じけん
（教団きょうだん史し・ 年表ねんぴょう）
1993年ねん以前いぜん
1996年ねん以降いこう
関与かんよ疑惑ぎわく・
模倣もほう犯はん・愉快ゆかい犯はん
組織そしき・施設しせつ
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