マリリン・ストラザーン

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マリリン・ストラザーン (Dame Ann Marilyn Strathern, 1941ねん3月6にち - ) は、イギリス哲学てつがくしゃ人類じんるいがくものパプアニューギニアマウントハーゲンぞく中心ちゅうしん研究けんきゅうし、イギリスにおける生殖せいしょく技術ぎじゅつ問題もんだいあつかってきた[1]。 1993ねんから2008ねんまでケンブリッジ大学けんぶりっじだいがくのウィリアム・ワイズ教授きょうじゅ社会しゃかい人類じんるいがく)、1998ねんから2008ねんまでケンブリッジ大学けんぶりっじだいがくギルトン・カレッジの教員きょういんつとめた。

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マリリン・ストラザーンは1941ねん3月6にちきたウェールズでエリック・エヴァンスとジョイス・エヴァンスのあいだまれた。 最初さいしょ正式せいしき教育きょういくはクロフトン・レーン小学校しょうがっこうで、そのブロムリー高校こうこう入学にゅうがくした。ストラザーンは学業がくぎょうひいでており、教師きょうしであった母親ははおや支援しえん指導しどうのおかげもあった。 学校がっこう卒業そつぎょう考古学こうこがく人類じんるいがくまなぶためにギルトン・カレッジに入学にゅうがく。その彼女かのじょはそこで研究けんきゅうせいとなり、1968ねん博士はかせごう取得しゅとくした[2]1964ねん仲間なかま人類じんるい学者がくしゃアンドリュー・ストラザーン(Andrew Strathern)と結婚けっこんし、結婚けっこん生活せいかつえるまえに3にん子供こどもをもうけた。

経歴けいれき[編集へんしゅう]

ストラザーンは、そのキャリアのなか数々かずかず役職やくしょく歴任れきにんしてきたが、そのすべてがパプアニューギニア人々ひとびととの仕事しごととフェミニスト人類じんるいがく専門せんもん知識ちしき関係かんけいしていた。彼女かのじょのキャリアは1970ねんオーストラリア国立こくりつ大学だいがくのニューギニア研究けんきゅうユニットの研究けんきゅういんとしてスタートし、1976ねんから1983ねんまでのあいだはガートン・カレッジ、1984ねんから1985ねんまではトリニティ・カレッジで講師こうしつとめ、時折ときおり、アメリカのカリフォルニア大学だいがくバークレーこう、ヨーロッパ、オーストラリアでゲスト講義こうぎおこなった[2]

1985ねんにケンブリッジをはなれ、マンチェスター大学だいがく社会しゃかい人類じんるいがく教授きょうじゅとなる。その、1993ねん最後さいごにケンブリッジにもどり、2008 ねん引退いんたいするまでWilliam Wyse社会しゃかい人類じんるいがく教授きょうじゅしょくいた。このあいだ、1998ねんから2009ねん10がつまでは、ギルトン・カレッジの教員きょういんつとめた[3]。 ストラザーンは、ナフィールド生命せいめい倫理りんり評議ひょうぎかい共同きょうどうメンバーであると同時どうじに、2000ねんから2006ねん、2010ねんから2011ねんまで「人体じんたい医学いがく研究けんきゅうのための寄付きふ」にかんするワーキング・パーティーの議長ぎちょうつとめた[4]

パプアニューギニアでのフィールドワーク[編集へんしゅう]

1972ねん発表はっぴょうされた博士はかせ論文ろんぶん「Women in Between」から最近さいきん出版しゅっぱんぶついたるまで、ストラザーンはジェンダーの「規範きはん」の定義ていぎ社会しゃかいてき構成こうせいつね挑戦ちょうせんしている。彼女かのじょ著書ちょしょSelf-Interest and the Social Good: Some Implications of Hagen Gender Imagery』(1981)においてストラザーンは、「ジェンダーイメージは「集団しゅうだんてきな」利益りえきと「個人こじんてきな」利益りえきことなる秩序ちつじょであるようにせかける象徴しょうちょうてきなメカニズムである」と指摘してきしている[5]彼女かのじょはまた、ジェンダー「平等びょうどう」とはなにかという問題もんだい表面ひょうめんさせ、西洋せいよう世界せかい定義ていぎ実際じっさいただしいのか、あるいは家父かふちょうてき支配しはい感覚かんかくがまだあるのかどうかをいかけている[6]

パプアニューギニアの社会しゃかいなどの分野ぶんや研究けんきゅうするさいにこのようなアプローチをることで、ストラザーンはメラネシアイギリス両方りょうほう生殖せいしょく技術ぎじゅつ知的ちてき財産ざいさん、ジェンダーなどのトピックについての思考しこう境界きょうかいせんひろげることができました。

ストラザーンはパプアニューギニアのハーゲンのあいだおおくの時間じかんごしてきた[5] 。 ここから彼女かのじょは、世界せかい存在そんざいろんてき複数ふくすうであるという、彼女かのじょ作品さくひん全体ぜんたい発生はっせいする主要しゅようなテーマのひとつを展開てんかいしてきた[5][6][7][8]世界せかい識別しきべつ可能かのう部分ぶぶんから構成こうせいされているが、これらの部分ぶぶんたがいに分離ぶんりしているわけではない。彼女かのじょ社会しゃかい具体ぐたいてきあつかうのではなく、むしろ社会しゃかいてき構築こうちくされた複数ふくすう現実げんじつ注目ちゅうもくしており、それらはたがいに依存いぞんしながら存在そんざいしている[8]

生殖せいしょく技術ぎじゅつ[編集へんしゅう]

1990年代ねんだいのストラザーンの研究けんきゅうは、体外たいがい受精じゅせいなどのあたらしい生殖せいしょく技術ぎじゅつあつか人類じんるいがくあたらしい分野ぶんや基礎きそとなった。1992ねん出版しゅっぱんされた2さつ著書ちょしょAfter Nature: English Kinship in the Late 20th Century』と『Reproducing the Future: Essays on Anthropology, Kinship and the New Reproductive Technologies』においてストラザーンは、自然しぜん文化ぶんか既存きそんのモデルが、生殖せいしょく達成たっせいするための技術ぎじゅつ明示めいじてき使用しようによって変容へんようしたと主張しゅちょうした。共著きょうちょ研究けんきゅうTechnologies of Procreation: Kinship in the Age of Assisted Conception』では、「アッシステッドの時代じだいのキンシップ」とだいして、自然しぜん文化ぶんか既存きそんモデルが、生殖せいしょく達成たっせいするためのテクノロジーの明示めいじてき使用しようによって変容へんようしたと主張しゅちょうしている。彼女かのじょ彼女かのじょ同僚どうりょうたちは、あたらしい生殖せいしょく技術ぎじゅつ拡大かくだい結果けっかとして、親族しんぞく関係かんけい子孫しそんあたらしい定義ていぎあらわれるだろうと提案ていあんした。これらの研究けんきゅうは、そのあたらしい親族しんぞく関係かんけい研究けんきゅうとしてられるようになった[9][10]

おも出版しゅっぱんぶつ[編集へんしゅう]

ストラザーンは、44のたんちょ雑誌ざっし記事きじ、57のほんあきら、15さつ以上いじょうたんしるまたは著者ちょしゃとの共著きょうちょふく多数たすう出版しゅっぱんぶつ著者ちょしゃである。メラネシア文化ぶんかかんするストラザーンの出版しゅっぱんぶつは、ジェンダー関係かんけい法律ほうりつ人類じんるいがくフェミニズム研究けんきゅう焦点しょうてんてているが、イギリス文化ぶんかかんする彼女かのじょ出版しゅっぱんぶつは、親族しんぞく関係かんけい監査かんさ文化ぶんか生殖せいしょく技術ぎじゅつ遺伝子いでんし技術ぎじゅつかたむいている[3]。 2011ねんのアメリカ人類じんるいがく協会きょうかいのインタビューによると、彼女かのじょもっとたのしんで執筆しっぴつしたほんは、1991ねんかれた『Partial Connections』である。しかし、彼女かのじょもっと有名ゆうめいほんは、1988ねん出版しゅっぱんされた『The Gender of Gift』である[2]

The Gender of Gift』では、彼女かのじょあたらしい方法ほうほうでフェミニストのアプローチをもちいて、パプアの女性じょせい搾取さくしゅされているのではなく、むしろ定義ていぎことなっていると主張しゅちょうしている。ジェンダーはイギリスとは定義ていぎちがうと彼女かのじょ指摘してきしている[11]。ストラザーンはまた、理論りろんがそれ自身じしん支配しはいしているという事実じじつ表面ひょうめんさせ、彼女かのじょ人類じんるい学者がくしゃとして、それらから自分じぶん自身じしんはなすことができないことをっているが、彼女かのじょ状況じょうきょう分析ぶんせきよりも「物語ものがたりせい」を提供ていきょうしているとべている[11]

その著作ちょさくぶつ[編集へんしゅう]

  • Self-Decoration in Mount Hagen (1971)
  • Women in Between (1972)
  • No Money on Our Skins: Hagen Migrants in Port Moresby (1975) ISBN 0-85818-027-8
  • (ed. with C. MacCormack) Nature, Culture and Gender (1980) ISBN 978-0-521-28001-3
  • Kinship at the Core: an Anthropology of Elmdon, Essex (1981) ISBN 0-521-23360-7
  • The Gender of the Gift: Problems with Women and Problems with Society in Melanesia (1988) ISBN 0-520-07202-2
  • Partial connections. Savage, Maryland: Rowman and Littlefield (1991). Re-issued by AltaMira Press, Walnut Creek, CA. (2004)
  • After Nature: English Kinship in the Late Twentieth Century (1992) ISBN 978-0-521-42680-0
  • Reproducing the Future: Essays on Anthropology, Kinship and the New Reproductive Technologies (1992) ISBN 978-0-719-03674-3
  • (with Jeanette Edwards, Sarah Franklin, Eric Hirsch and Frances Price) Technologies of Procreation: Kinship in the Age of Assisted Conception(1993) ISBN 9780415170567
  • Property, substance and effect. Anthropological essays on persons and things. London: Athlone Press (1999) Collected essays, 1992-98 ISBN 0-485-12149-2
  • Commons and borderlands: working papers on interdisciplinarity, accountability and the flow of knowledge (2004) ISBN 0-9545572-2-0
  • (ed. with Eric Hirsch) Transactions and creations: property debates and the stimulus of Melanesia (2004), Oxford: Berghahn.
  • (ed) Audit Cultures. Anthropological studies in accountability, ethics and the academy. (2000) London: Routledge.
  • Kinship, law and the unexpected: Relatives are always a surprise. Cambridge: Cambridge University Press (2005) ISBN 0-521-61509-7
  • Relations: An Anthropological Account. Durham: Duke University Press (2020) ISBN 978-1-4780-0835-4

栄誉えいよ[編集へんしゅう]

1987ねんには英国えいこくアカデミー(FBA)のフェローに選出せんしゅつされた[12]

  • Foreign Honorary Member, American Academy of Arts & Sciences (1996)[3]
  • Dame Commander of the Order of the British Empire for services to Social Anthropology (2001)[3]
  • Rivers Memorial Medal, Royal Anthropologist Inst. (1976)[3]
  • Viking Fund Medal, Wenner-Gren Foundation for Anthropological Research (2003) (last awarded in 1972.)
  • Huxley Medal (2004)[3]
  • 30th Anniversary Independence Medal, Papua New Guinea (2005)[3]

2000ねん、ダフネ・トッドはケンブリッジのギルトン・カレッジからマリリン・ストラザーンの肖像しょうぞう依頼いらいされた。別々べつべつのパネルに2つの頭部とうぶつマリリンをえがいたこの作品さくひんにより、トッドは2001ねん肖像しょうぞう画家がか協会きょうかい肖像しょうぞう部門ぶもんでオンダージュしょう受賞じゅしょうした[2][13]

名誉めいよ学位がくい[編集へんしゅう]

  • Honorary Degree Sc. Edinburgh (1993)
  • Honorary Degree Sc. Copenhagen (1994)
  • Honorary Degree Lit, Oxford (2004)
  • Honorary Degree Pol., Helsinki (2006)
  • Honorary Degree, Panteion University, Athens (2006)
  • Honorary Degree Sc., Durham (2007)
  • Honorary Degree Philosophy, University Papua New Guinea (2009)
  • Honorary Degree Social Sciences, Belfast (2009)
  • Honorary Doctorate, Australian National University (2015)

出典しゅってん参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Video & Audio: Marilyn Strathern - Metadata”. sms.cam.ac.uk. 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d Marilyn Strathern”. web.archive.org (2013ねん3がつ15にち). 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d e f g Past Mistresses - Girton College”. www.girton.cam.ac.uk. 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  4. ^ Past Council Members | Nuffield Council on Bioethics”. web.archive.org (2012ねん6がつ17にち). 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c Daryan, Nika (2014-07-28). “Erickson, Paul A. & Liam D. Murphy. A history of anthropological theory (Fourth edition). xxi, 273 pp., illus., figs, bibliogr. Toronto: Univ. Press, 2013. $34.95 (paper)”. Journal of the Royal Anthropological Institute 20 (3): 574–575. doi:10.1111/1467-9655.12124. ISSN 1359-0987. https://doi.org/10.1111/1467-9655.12124. 
  6. ^ a b Lederman, Rena; Strathern, Marilyn (1990-03). “Dealing with Inequality: Analysing Gender Relations in Melanesia and Beyond.”. Man 25 (1): 176. doi:10.2307/2804158. ISSN 0025-1496. https://doi.org/10.2307/2804158. 
  7. ^ Marilyn Strathern, ontological multiplicity and partial connections” (英語えいご). Mikalas Klumme (2008ねん2がつ8にち). 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  8. ^ a b Strathern, Marilyn. (2005). Kinship, law and the unexpected : relatives are always a surprise. Cambridge University Press. ISBN 0-521-84992-6. OCLC 451440994. http://worldcat.org/oclc/451440994 
  9. ^ Carsten, Janet (2003-11-24). After Kinship. Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-66570-4. https://doi.org/10.1017/cbo9780511800382 
  10. ^ Franklin, Sarah; McKinnon, Susan (2002-02-22). Relative Values. Duke University Press. pp. 1–26. ISBN 978-0-8223-8322-2. https://doi.org/10.2307/j.ctv11cw885.5 
  11. ^ a b Douglas, Mary (1989ねん5がつ4にち). “Mary Douglas · A Gentle Deconstruction · LRB 4 May 1989” (英語えいご). London Review of Books. 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  12. ^ Fellows of the British Academy. UK Learned Society for Humanities and…”. archive.is (2014ねん6がつ22にち). 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん
  13. ^ Capturing a two-headed creature” (英語えいご). Times Higher Education (THE) (2001ねん8がつ10日とおか). 2020ねん8がつ16にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]