ユムシ動物どうぶつ

ユムシ動物どうぶつ
	スジユムシ
分類ぶんるい
英名えいめい
	Spoon worm
目め
	本文ほんぶん参照さんしょう

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ユムシ動物どうぶつ（ユムシどうぶつ、学名がくめい：Echiura）は、海産かいさんの無む脊椎動物せきついどうぶつの群ぐんである。細長ほそながい体からだで穴あなに潜もぐって生活せいかつしている。かつては一ひとつの門もんをなすと考かんがえられていたが、2018年ねん現在げんざいは環たまき形がた動物どうぶつ門もんの一部いちぶとみなされている（詳細しょうさいは環たまき形がた動物どうぶつを参照さんしょう）。

ユムシ動物どうぶつは、いわゆる蠕虫的てきな動物どうぶつの一群いちぐんである。すべて海産かいさんで、潮間しおま帯たいから深海しんかいまで分布ぶんぷする。吻を持もつものもあるが、それ以外いがいには頭部とうぶや触角しょっかく、触手しょくしゅや疣いぼ足あし等ひとしの体外たいがいの付属ふぞく物ぶつを持もたない。数かずcmから十じゅう数すうcmの中型ちゅうがたの動物どうぶつだが、最大さいだいのものは2m近ちかくに達たっするものがある。一部いちぶは食用しょくよう、あるいは釣つり餌えさなどに利用りようされるが、多おおくはほとんど人間にんげんと係かかわりなく暮くらしている。おおよそはホシムシに似にるが、ホシムシのような触手しょくしゅは持もたない。

名前なまえは日本にっぽん固有こゆう種しゅで古ふるくから知しられる種たね（ユムシ）の名なによっている。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

外部がいぶ形態けいたい[編集へんしゅう]

円筒えんとう形がたで、のっぺりとした外観がいかんの動物どうぶつで、頭部とうぶや体からだ節ぶしなどの区分くぶんはない。胴どう部ぶの先端せんたんに口くちがあり、その背中せなか側面そくめんから吻が前まえに伸のびる。吻はごく短みじかいものもあれば、胴どう部ぶより長ながく伸のびるものもある。ボネリムシではその先端せんたんが二ふたつに分わかれる。吻は口くちの側がわの面めんが粘膜ねんまくとなっており、伸のび縮ちぢみするが、ホシムシのように体内たいないに引ひき込こめられることはなく、また種たねによってはたやすく自じ切きりする。この動物どうぶつの吻は口前くちまえ葉はが起源きげんとも言いわれる。

胴どう部ぶには付属ふぞく肢しなどはなく、わずかに口くちの後方こうほうや胴体どうたいの後端こうたんに剛毛ごうもう（腹はら剛毛ごうもう、尾お剛毛ごうもう）を持もつものがある。

内部ないぶ形態けいたい[編集へんしゅう]

体内たいないのほとんどは大おおきな1つの体腔たいこうとなっている。胴どう部ぶ先端せんたんの口くちから続つづく腸ちょうは体腔たいこう内ないで曲まがりくねり、後端こうたんに開ひらく肛門こうもんへ続つづいている。肛門こうもん直前ちょくぜんの直腸ちょくちょうには一対いっついの肛門こうもん嚢が付属ふぞくする。

多おおくのものが閉鎖へいさ血管けっかん系けいを持もつ。主要しゅような血管けっかん系けいは腹はら側がわと背せ側がわを縦走じゅうそうする。神経しんけい系けいは咽頭いんとうの回まわりを囲かこむ囲かこえ咽頭いんとう神経しんけい索さくと腹はら側がわを縦たてに走はしる腹はら神経しんけい索さくがある。

腎じん管かんは胴体どうたい前方ぜんぽうに通常つうじょう1-4対つい、群ぐんによっては1-多数たすう対たいまであり、腹はら面めん前方ぜんぽうに並ならんで口くちを開ひらく。これは生殖せいしょく門もんとして働はたらく。生殖せいしょく腺せんは普通ふつう胴体どうたい後部こうぶの腹はら側がわにある。

生殖せいしょくと発生はっせい[編集へんしゅう]

雌雄しゆう異体いたいで、多おおくは体外たいがい受精じゅせいを行おこなう。ただしボネリムシ類るいは非常ひじょうに特殊とくしゅで、性的せいてき二形ふたなりの著いちじるしいものとしても有名ゆうめいである。この類るいでは雄ゆうはいわゆる矮雄で、成長せいちょうしても数すうmmにしかならず、雌めすの体内たいないで寄生きせい生活せいかつを行おこない、卵たまごは体内たいない受精じゅせいする。

卵たまご割わりは螺旋らせん螺にし割わりで、トロコフォア幼生ようせいを生しょうじる。その後ごに変態へんたいし、体からだが縦たてに伸のびて繊毛せんもうを失うしない、底そこ生せい生活せいかつに入はいる。ボネリムシ類るいでは、雄ゆうは雌めすの体からだに付着ふちゃくして成体せいたいとなる。この際さい、幼生ようせいが雌めすに接触せっしょくするかどうかによって性せい決定けっていが行おこなわれるとされる。

生態せいたい[編集へんしゅう]

活動かつどう性せいの低ひくい底そこ生せい動物どうぶつで、海底かいていの泥どろや砂すな、岩いわの隙間すきまに住すむ。穴あなの中なかに住すむものが多おおく、垂直すいちょくやU字じ状じょうなどの穴あなを掘ほり、その周囲しゅういを体からだから分泌ぶんぴつした粘液ねんえきで固かためるものもある。長ながい吻を持もつものは、穴あなからその部分ぶぶんを出だし、これを海底かいていに伸のばしてその表面ひょうめんで繊毛せんもう粘液ねんえき摂食せっしょくを行おこなう。餌えさはデトリタスや底そこ質しつ表面ひょうめんの有機物ゆうきぶつ粒子りゅうしであると考かんがえられる。吻は時とき折おり伸のび縮ちぢみさせるので、海底かいていにその跡あとを残のこすことがある。吻が短みじかいものは、口くちから粘液ねんえきの網あみを出だし、これによって摂食せっしょくを行おこなうものも知しられている。

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

一部いちぶの種たねが利用りようされる。日本にっぽんではユムシが釣つり餌えさとして古ふるくから使つかわれ、また食用しょくようとされる例れいもある。ボネリムシ類るいは性せい決定けっていの研究けんきゅうに利用りようされた。

系統けいとうと分類ぶんるい[編集へんしゅう]

真ま体腔たいこうであること、トロコフォア幼生ようせいをもつことなどから環たまき形がた動物どうぶつとの関連かんれんが古ふるくから指摘してきされてきた。特とくに剛毛ごうもうを持もつことは多毛たもう類るいとの関連かんれんを想像そうぞうさせる。そのため、環たまき形がた動物どうぶつ門もんの綱つなのひとつとされたこともある。しかし、体からだ節制せっせいが存在そんざいしないこと、また発生はっせいの段階だんかいでも違ちがいがあるとの指摘してきもあり、独立どくりつの門もんとして扱あつかわれてきた。

近年きんねんの分子ぶんし系統けいとう的てき研究けんきゅうは多毛たもう類るい、特とくにイトゴカイ科かに近きん縁えんであるという結果けっかを支持しじしている^[1]^[2]。またこの結果けっかを反映はんえいし、ユムシ動物どうぶつ全体ぜんたいを環たまき形がた動物どうぶつの科かのひとつ（Thalassematidae）として扱あつかうこともある^[3]。

現在げんざい、世界せかいで37属ぞく145種しゅほどが知しられ、これを3目もく4科かに分わけるのが普通ふつうである。ボネリムシ科かに属ぞく種しゅが多おおく、深海しんかいからはさらに多おおくが発見はっけんされると想像そうぞうされている。

Echiuroinea キタユムシ目め
- Echiuridae キタユムシ科か
  - Echurus キタユムシ属ぞく
  - Prashadus
  - Anelassorhynchus サビネミドリユムシ属ぞく
  - Arhynchite ドチクチユムシ属ぞく
  - Thalassema コゲミドリユムシ属ぞく
  - Lissomyema
  - Listrolobus タテジマユムシ属ぞく
  - Ochetostoma スジユムシ属ぞく - スジユムシ
  - Ikedosoma ユメユムシ属ぞく
- Bonellidae ボネリムシ科か
  - Bonellia - ボネリムシ
  - Acanthobonellia - ミヤジマボネリムシ
  - Ikedella - トゲナシボネリムシ
  - Acanthohamingia オオトゲボネリムシ属ぞく　他た22属ぞく
Xenopneusta ユムシ目め
- Urechiidae ユムシ科か
  - Urechis ユムシ属ぞく - ユムシ
Heteromyota サナダユムシ目め
- Ikedaidae サナダユムシ科か
  - Ikeda サナダユムシ属ぞく - サナダユムシ

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ Struck, Torsten H.; Paul, Christiane; Hill, Natascha; Hartmann, Stefanie; Hösel, Christoph; Kube, Michael; Lieb, Bernhard; Meyer, Achim et al. (2011-03). “Phylogenomic analyses unravel annelid evolution” (英語えいご). Nature 471 (7336): 95–98. doi:10.1038/nature09864. ISSN 0028-0836.
^ Weigert, Anne; Bleidorn, Christoph (2016-06). “Current status of annelid phylogeny” (英語えいご). Organisms Diversity & Evolution 16 (2): 345–362. doi:10.1007/s13127-016-0265-7. ISSN 1439-6092.
^ Goto, Ryutaro; Monnington, James; Sciberras, Marija; Hirabayashi, Isao; Rouse, Greg W. (2020). “Phylogeny of Echiura updated, with a revised taxonomy to reflect their placement in Annelida as sister group to Capitellidae” (英語えいご). Invertebrate Systematics 34 (1): 101. doi:10.1071/IS19020. ISSN 1445-5226.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

西村にしむら三郎さぶろう編著へんちょ『原色げんしょく検索けんさく日本にっぽん海岸かいがん動物どうぶつ図鑑ずかん I』 1992, 保育ほいく社しゃ,ISBN 4586302011
白山しろやま義久よしひさ編集へんしゅう；岩がん槻けやき邦男くにお・馬渡まわたり峻たかし輔監修かんしゅう『無む脊椎動物せきついどうぶつの多様たよう性せいと系統けいとう』 2000, 裳も華はな房ぼう,ISBN 4785358289
岡田おかだ要かなめ『新しん日本にっぽん動物どうぶつ図鑑ずかん』 1976, 図鑑ずかんの北きた隆たかし館かん

[1] Struck, Torsten H.; Paul, Christiane; Hill, Natascha; Hartmann, Stefanie; Hösel, Christoph; Kube, Michael; Lieb, Bernhard; Meyer, Achim et al. (2011-03). “Phylogenomic analyses unravel annelid evolution” (英語えいご). Nature 471 (7336): 95–98. doi:10.1038/nature09864. ISSN 0028-0836.

[2] Weigert, Anne; Bleidorn, Christoph (2016-06). “Current status of annelid phylogeny” (英語えいご). Organisms Diversity & Evolution 16 (2): 345–362. doi:10.1007/s13127-016-0265-7. ISSN 1439-6092.

[3] Goto, Ryutaro; Monnington, James; Sciberras, Marija; Hirabayashi, Isao; Rouse, Greg W. (2020). “Phylogeny of Echiura updated, with a revised taxonomy to reflect their placement in Annelida as sister group to Capitellidae” (英語えいご). Invertebrate Systematics 34 (1): 101. doi:10.1071/IS19020. ISSN 1445-5226.

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