ヴィルトだい2彗星すいせい

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ヴィルトだい2彗星すいせい
81P/Wild
スターダストが撮影したヴィルト第2彗星の核とジェット。短時間露出と長時間露出の画像を合成。
スターダストが撮影さつえいしたヴィルトだい2彗星すいせいかくとジェット。短時間たんじかん露出ろしゅつ長時間ちょうじかん露出ろしゅつ画像がぞう合成ごうせい
かり符号ふごう別名べつめい 1978 A2, 1978 XI, 1978b
1983 S1, 1984 XIV, 1983s
1990 XXVIII, 1989t[1]
分類ぶんるい 周期しゅうき彗星すいせい
発見はっけん
発見はっけん 1978ねん1がつ6にち[2]
発見はっけんしゃ パウル・ヴィルト[2]
軌道きどう要素ようそ性質せいしつ
もと:TDB 2456017.5 (2012ねん3がつ31.0にち)
軌道きどうちょう半径はんけい (a) 3.4511 au[1]
近日きんじつてん距離きょり (q) 1.5975 au[1]
遠日点えんじつてん距離きょり (Q) 5.3047 au[1]
はなれしんりつ (e) 0.5371[1]
公転こうてん周期しゅうき (P) 6.41 とし[1]
軌道きどう傾斜けいしゃかく (i) 003.238 °[1]
近日きんじつてん引数ひきすう (ωおめが) 041.732 °[1]
のぼり交点こうてんけい (Ωおめが) 136.098 °[1]
平均へいきんきんてんかく (M) 117.994 °[1]
前回ぜんかい近日きんじつてん通過つうか 2016ねん7がつ20日はつか[3]
次回じかい近日きんじつてん通過つうか 2022ねん12月15にち[3]
最小さいしょう交差こうさ距離きょり 0.604 au(地球ちきゅう[1]
0.128 au(木星もくせい[1]
ティスラン・パラメータ (T jup) 2.879[1]
物理ぶつりてき性質せいしつ
さんじくみち 5.5 km×4.0 km× 3.3 km[4]
直径ちょっけい 4.0 km[1]
質量しつりょう 1.4 - 2.3×1013 kg[ちゅう 1]
平均へいきん密度みつど 0.38 - 0.6 g/cm3[5]
絶対ぜったい等級とうきゅう (H) 8.6(かく+コマ[1]
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ヴィルトだい2彗星すいせい英語えいご: 81P/Wild)は、公転こうてん周期しゅうき6.41ねんたん周期しゅうき彗星すいせい

観測かんそく[編集へんしゅう]

ヴィルトだい2彗星すいせいは1978ねん1がつ6にちパウル・ヴィルトがスイスベルン大学だいがくツィンマーヴァルト天文台てんもんだいにある口径こうけい40cmシュミットしき望遠鏡ぼうえんきょうもちいて撮影さつえいした写真しゃしんじょうから発見はっけんした[6]

その観測かんそくでヴィルトだい2彗星すいせいは1974ねん木星もくせいに0.2 auまで接近せっきんしていることがあきらかになった。この接近せっきん木星もくせい摂動せつどう影響えいきょうけて軌道きどうわり、公転こうてん周期しゅうきやく40ねんから6ねんじゃくへと減少げんしょうした[2]

物理ぶつりてき性質せいしつ[編集へんしゅう]

この彗星すいせいかく楕円だえんたいとみなすとおおきさはかくみちで5.5 km×4.0 km× 3.3 kmである[4]密度みつどは0.38 - 0.6 g/cm3[5]、これらをもとにして計算けいさんされる質量しつりょうは1.4 - 2.3×1013 kgである[ちゅう 1]

軌道きどう[編集へんしゅう]

ヴィルトだい2彗星すいせいは、近日きんじつてん火星かせい周回しゅうかい軌道きどう付近ふきん遠日点えんじつてん木星もくせい周回しゅうかい軌道きどう付近ふきんにある木星もくせいぞく彗星すいせいである[7]軌道きどう過去かこさかのぼって調しらべた結果けっか、ヴィルトだい2彗星すいせいは、かつては木星もくせい付近ふきんから天王星てんのうせい付近ふきんあいだを40ねん前後ぜんこうかけて周回しゅうかいするケンタウルスぞく軌道きどうっていたが、1974ねん9がつ9にち木星もくせいへ0.0061 auやく91まん2せん㎞)まで接近せっきんしたことから摂動せつどうけて軌道きどうわり、近日きんじつてんが4.95 auから1.49 au(当時とうじ以下いかどう)に、公転こうてん周期しゅうきが43.17ねんから6.17ねん変化へんかしたことがかった[3]

探査たんさ[編集へんしゅう]

NASAディスカバリー計画けいかくの4つ計画けいかくとして[8]1999ねん2がつ7にち探査たんさスターダストげられた[9]。スターダストは2004ねん1がつ2にちにヴィルトだい2彗星すいせい接近せっきんし、ほしあいだダストとともにコマからられた微粒子びりゅうし地球ちきゅうかえった。接近せっきんさいには72まいものヴィルトだい2彗星すいせいうつした画像がぞう撮影さつえいされた[10]。それらの写真しゃしんによりそこたいらな低地ていちったがけなどがあり[11]おおきいものでは2 kmにおよぶものもあることがあきらかになった[12]

2006ねん1がつ15にち午前ごぜん1010ふん(UTC)にスターダストのかえった資料しりょうがアメリカのユタしゅう着地ちゃくちした[13]。NASAの研究けんきゅうしゃらは微粒子びりゅうし採集さいしゅうするための容器ようきはいった彗星すいせいほしあいだダスト由来ゆらいつぶ除去じょきょして分析ぶんせきおこなった。除去じょきょしたほう世界中せかいじゅう研究けんきゅうしゃのもとへおくられた[14]。また、NASAは惑星わくせい協会きょうかい協力きょうりょくしてStardust@home英語えいごばんばれるオンラインで一般いっぱん人々ひとびとにもボランティアとして参加さんかできるほしあいだダストの捜索そうさくおこなった[15]

ぜん世界せかい科学かがくしゃらにより研究けんきゅうおこなわれた結果けっか、これまでに輝石きせきカンランせきてつニッケル単体たんたいおよ硫化りゅうかぶつなどが発見はっけんされており、その成分せいぶんコンドライトちかいものであった[16]に、アミノ酸あみのさんグリシン彗星すいせいからの発見はっけんはつ)が発見はっけんされており、生命せいめい誕生たんじょうもととなる物質ぶっしつ一部いちぶ宇宙うちゅう起源きげんであるというせつ立証りっしょうとなると期待きたいされている[17]。なお、グリシンはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星すいせいでも同様どうよう発見はっけんされた[18]

2008ねん9がつ19にちサイエンス誌上しじょう掲載けいさいされた論文ろんぶんでヴィルトだい2彗星すいせい採集さいしゅうされたつぶからコンドルール類似るいじする物質ぶっしつ確認かくにんされたことが報告ほうこくされた。コンドルールは高温こうおん領域りょういきでしか形成けいせいされないがヴィルトだい2彗星すいせいふくたん周期しゅうき彗星すいせい原始げんし太陽系たいようけい円盤えんばん外側そとがわ比較的ひかくてき低温ていおん領域りょういき形成けいせいされる。酸素さんそ同位どういたい小惑星しょうわくせいたい天体てんたいていたことから太陽系たいようけい形成けいせい初期しょき段階だんかい物質ぶっしつ内側うちがわから外側そとがわ移動いどうしたということがかんがえられる[19][20][21]

2011ねん4がつにはアリゾナ大学だいがく研究けんきゅうしゃらにより液体えきたいみず存在そんざいするという間接かんせつてき証拠しょうこしめされた[22]かれらは液体えきたいみず存在そんざい生成せいせいされるてつどう硫化りゅうかぶつ確認かくにんした。しかし、これは定説ていせつよごれたゆきだまモデルにはわない結果けっかである[23]研究けんきゅうしゃのひとり、Eve Bergerは天体てんたい衝突しょうとつ崩壊ほうかいエネルギーしょうじたねつによる可能かのうせい言及げんきゅうしている[23]

2014ねん8がつ14にちには超新星ちょうしんせい爆発ばくはつにより生成せいせいされた可能かのうせいもある太陽系たいようけいがいからの7つの微小びしょうほしあいだダストがNASAの研究けんきゅうしゃらにより発見はっけんされた[24]

ギャラリー[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 楕円だえんたい体積たいせきより4/3 × πぱい 2.75 × 2.0 × 1.65 × 密度みつど からもとめられる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 81P/Wild 2”. Small-Body Database Lookup. Jet Propulsion Laboratory. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c Kronk, Gary W.. “81P/Wild 2”. cometography.com. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c 木下きのした一男かずお (2017ねん6がつ14にち). “81P/Wild”. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  4. ^ a b Duxbury, Thomas C.; Newburn, Ray L.; Brownlee, Donald E. (2004). “Comet 81P/Wild 2 size, shape, and orientation”. Journal of Geophysical Research 109 (E12). Bibcode2004JGRE..10912S02D. doi:10.1029/2004JE002316. 
  5. ^ a b Britt, D. T.; Consolmagno, G. J.; Merline, W. J. (2006-03-17). “Small Body Density and Porosity: New Data, New Insights”. 37th Annual Lunar and Planetary Science Conference. Bibcode2006LPI....37.2214B. 
  6. ^ IAUC 3166: 1978b; 1976b; Obs OF MINOR PLANETS; Corr”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. IAU (1978ねん1がつ26にち). 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  7. ^ 81P/Wild 2 Orbit Viewer”. Small-Body Database Lookup. Jet Propulsion Laboratory. 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  8. ^ Isbell, Douglas (1995ねん11月22にち). “COMET SAMPLE RETURN MISSION PICKED AS NEXT DISCOVERY FLIGHT”. NASA. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  9. ^ Stardust/NExT”. NASA Space Science Data Coordinated Archive. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  10. ^ Tillman, Nola Taylor (2019ねん2がつ27にち). “NASA's Stardust Mission: The Space Probe That Brought Stardust to Earth”. Space.com. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  11. ^ MISSION PHOTOS”. NASA Jet Propulsion Laboratory. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  12. ^ MISSION PHOTOS Comet Wild 2 Stereo Images”. NASA Jet Propulsion Laboratory. 2022ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  13. ^ NASA's Comet Tale Draws to a Successful Close in Utah Desert”. NASA Jet Propulsion Laboratory (2006ねん1がつ15にち). 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  14. ^ Jeffs, William (2006ねん1がつ18にち). “Scientists Confirm Comet Samples, Briefing Set Thursday”. NASA Stardust-NExT. 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  15. ^ Stardust@home”. NASA (2014ねん10がつ15にち). 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  16. ^ とめおか和重かずえ; 富岡とみおかしょうたかし; 大西おおにし市朗いちろう (2007). “スターダストが回収かいしゅうしたヴィルト2彗星すいせいちり鉱物こうぶつ科学かがく透過とうか電子でんし顕微鏡けんびきょうによる研究けんきゅう (pdf). 日本にっぽん惑星わくせい学会がっかい 16 (4): 290-298. https://www.wakusei.jp/book/pp/2007/2007-4/2007-4-06.pdf 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん. 
  17. ^ 彗星すいせい宇宙塵うちゅうじんに「生命せいめい前駆ぜんく物質ぶっしつ」を確認かくにん”. WIRED (2009ねん8がつ19にち). 2022ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  18. ^ Altwegg, K.; Balsiger, H.; Bar-Nun, A. ;; Berthelier, J. -J.; Bieler, A.; Bochsler, P.; Briois, C.; Calmonte, U. et al. (2016). “Prebiotic chemicals--amino acid and phosphorus--in the coma of comet 67P/Churyumov-Gerasimenko”. Science Advances 2 (5): e1600285. Bibcode2016SciA....2E0285A. doi:10.1126/sciadv.1600285. 
  19. ^ Nakamura Tomoki; Noguchi Takaaki; Tsuchiyama Akira; Ushikubo Takayuki; Kita, Noriko T.; Valley, John W.; Zolensky, Michael E.; Kakazu Yuki et al. (2008). “Chondrulelike Objects in Short-Period Comet 81P/Wild 2”. Science 321 (5896): 1664-1667. Bibcode2008Sci...321.1664N. doi:10.1126/science.1160995. 
  20. ^ 45おくねんまえ太陽系たいようけいでおこっただい規模きぼ物質ぶっしつ移動いどう示唆しさする物的ぶってき証拠しょうこ世界せかいはじめて発見はっけん - 太陽系たいようけい外縁がいえん天体てんたいちの解明かいめいあたらしい太陽系たいようけい形成けいせいモデルへのマイルストーン -(プレスリリース)”. 九州大学きゅうしゅうだいがく. SPring-8 (2009ねん9がつ19にち). 2022ねん3がつ2にち閲覧えつらん
  21. ^ Comet Dust Reveals Unexpected Mixing of Solar System”. University of Wisconsin-Madison. news wise (2008ねん9がつ15にち). 2022ねん3がつ2にち閲覧えつらん
  22. ^ Comet Samples Reveal Surprising Signs of Liquid Water”. Space.com (2011ねん4がつ6にち). 2022ねん3がつ2にち閲覧えつらん
  23. ^ a b LeBlanc, Cecile (2011ねん4がつ7にち). “Evidence for liquid water on the surface of Comet Wild-2”. EarthSky. 2022ねん3がつ2にち閲覧えつらん
  24. ^ Stardust Discovers Potential Interstellar Space Particles”. NASA Jet Propulsion Laboratory (2014ねん8がつ14にち). 2022ねん3がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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