出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
光 ひかり 路 ろ 図 ず
シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう の光 ひかり 路 ろ 図 ず 。実際 じっさい に星 ほし に向 む けた状況 じょうきょう をイメージしやすい角度 かくど になっている図 ず 。「PHOTOGRAPHICS FILM」と書 か いてある位置 いち に、フィルム(やCCDやCMOSセンサなど)を配置 はいち する。
シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう の補正 ほせい レンズ(補正 ほせい 板 ばん )の断面 だんめん の形状 けいじょう
シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう (シュミットしきぼうえんきょう、英 えい : Schmidt telescope )とは、反射 はんしゃ 屈折 くっせつ 望遠鏡 ぼうえんきょう の一 いち 形式 けいしき であり、主 おも 鏡 きょう は球面 きゅうめん 鏡 きょう で、絞 しぼ りを球心 きゅうしん 位置 いち に置 お いて非 ひ 点 てん 収差 しゅうさ とコマ収差 しゅうさ を除去 じょきょ 、(筒 つつ の先端 せんたん 側 がわ に)四 よん 次 じ 関数 かんすう で表 あらわ される非 ひ 球面 きゅうめん の薄 うす いレンズ を置 お いて球面 きゅうめん 収差 しゅうさ を除去 じょきょ し、収差 しゅうさ がほとんどないもの[2] のこと。「シュミットカメラ Schmidt camera」とも[3] 。
この望遠鏡 ぼうえんきょう は、基本 きほん 的 てき に、焦点 しょうてん の位置 いち (右 みぎ の光 ひかり 路 ろ 図 ず では赤 あか い線 せん の位置 いち )に写真 しゃしん 乾板 かんぱん 、フィルム 、CCD 、CMOSセンサ 等々 とうとう を配置 はいち して使用 しよう するものである(何 なに を配置 はいち するかは時代 じだい とともに変化 へんか してきた)。なお、像 ぞう 面 めん は主 おも 鏡 きょう の球心 きゅうしん と同一 どういつ 位置 いち に球心 きゅうしん を持 も つ凸 とつ 球面 きゅうめん になる像 ぞう 面 めん 湾曲 わんきょく があるため、写真 しゃしん 乾板 かんぱん やフィルムは湾曲 わんきょく させなければならない。
スチグマート なので(得 え られる像 ぞう が)極 きわ めてシャープである。明 あか るく広 ひろ い写 うつし 野 の を得 え られ、中心 ちゅうしん 部 ぶ から周辺 しゅうへん 部 ぶ までかっちりピントが合 あ う[5] 。1988年 ねん 時点 じてん で吉田 よしだ 正太郎 しょうたろう は「微光 びこう 天体 てんたい の掃天 に必要 ひつよう 不可欠 ふかけつ で、天体 てんたい 観測 かんそく における世紀 せいき の大 だい 発明 はつめい 」と評 ひょう している。
鏡 かがみ 筒 とう は焦点 しょうてん 距離 きょり の約 やく 2倍 ばい の長 なが さになってしまうため、かなり大 おお きめの架台 かだい が必要 ひつよう になる。また補正 ほせい 板 ばん (補正 ほせい レンズ)の口径 こうけい が大 おお きくなってくると色収差 いろしゅうさ が増大 ぞうだい しシャープな像 ぞう を得 え られる波長 はちょう 域 いき が狭 せま くなるため、口径 こうけい 1メートル(以降 いこう m)級 きゅう の大型 おおがた 望遠鏡 ぼうえんきょう では補正 ほせい 板 ばん を2枚 まい 構成 こうせい の色消 いろけ しにしてあるものもある。
望遠鏡 ぼうえんきょう という言葉 ことば には「接眼 せつがん レンズ を通 つう じて観察 かんさつ する」という印象 いんしょう があり、これは写真 しゃしん 撮影 さつえい 専用 せんよう [2] であるシュミット式 しき の実情 じつじょう には合 あ わず「シュミットカメラ」と呼 よ ばれることも多 おお いが、天文学 てんもんがく 者 しゃ は「シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう 」と呼 よ ぶ。
通常 つうじょう のカセグレン式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう では主 おも 鏡 きょう は放 ひ 物 もの 面 めん 、副 ふく 鏡 かがみ は双 そう 曲面 きょくめん と2枚 まい の非 ひ 球面 きゅうめん 鏡 きょう を研磨 けんま する必要 ひつよう があるが、右手 みぎて のないベルンハルト・シュミット は左手 ひだりて だけで扱 あつか えない主 おも 鏡 きょう を単純 たんじゅん な研磨 けんま 方式 ほうしき とするため、主 おも 鏡 きょう を球面 きゅうめん 、副 ふく 鏡 かがみ を4次 じ 以上 いじょう の項 こう を含 ふく む高次 こうじ 双 そう 曲面 きょくめん とする方式 ほうしき に設計 せっけい を変更 へんこう して、1905年 ねん にポツダム天体 てんたい 物理 ぶつり 天文台 てんもんだい に口径 こうけい 40センチメートル(以降 いこう cm)のカセグレン式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう を製作 せいさく した。これを使 つか って観測 かんそく した天文学 てんもんがく 者 しゃ はこのことに誰 だれ 一人 ひとり として気 き がつかなかったという。このような球面 きゅうめん 主 ぬし 鏡 きょう のカセグレン式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう を何 なん 台 だい か製作 せいさく して成功 せいこう したシュミットは、「非 ひ 球面 きゅうめん は移転 いてん することができる」という確信 かくしん を得 え た。球面 きゅうめん 収差 しゅうさ を除去 じょきょ するには「光 ひかり 路 ろ 長 ちょう 一定 いってい の条件 じょうけん 」を満 み たす必要 ひつよう があるが、これを理論 りろん でなく研磨 けんま 経験 けいけん から知 し ったのである。さらにシュミットは左手 ひだりて だけで扱 あつか える軽 かる い平行 へいこう 平面 へいめん 板 ばん を研磨 けんま して非 ひ 球面 きゅうめん とし主 ぬし 鏡 きょう の前 まえ に入 い れる方式 ほうしき とし、これには透過 とうか 面 めん であるため要求 ようきゅう される精度 せいど が低 ひく くなる利点 りてん もあったが、光線 こうせん が補正 ほせい 板 ばん を往復 おうふく して通過 つうか するためレンズコーティングの技術 ぎじゅつ がなかった当時 とうじ 20% の減 げん 光 こう になってしまった。
そこでシュミットは次 つぎ に補正 ほせい 板 ばん をずっと前 まえ に出 だ し、球面 きゅうめん 主 ぬし 鏡 きょう の曲 きょく 率 りつ 中心 ちゅうしん に置 お いてみたところ、焦点 しょうてん 面 めん が球面 きゅうめん になるとともに広 ひろ い視野 しや にわたりコマ収差 しゅうさ も消 き えることが分 わ かったので、『明 あか るい、コマのない反射 はんしゃ 鏡 きょう 系 けい 』という論文 ろんぶん を1932年 ねん ハンブルク天文台 てんもんだい 報告 ほうこく (Mitteilungen der Hamburger Sternwarte in Bergedolf )で発表 はっぴょう した。これが後 こう のシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう に関 かん する世界 せかい 最初 さいしょ の論文 ろんぶん である。
1935年 ねん にユルィヨ・バイサラ はシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう の優秀 ゆうしゅう 性 せい を説 と く『トゥルク大学 だいがく 天文台 てんもんだい のアナスチグマート 反射 はんしゃ 望遠鏡 ぼうえんきょう 』という報告 ほうこく をA.N.254に発表 はっぴょう 、これでシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう は国外 こくがい に有力 ゆうりょく な支持 しじ 者 しゃ を得 え た。ユルィヨ・バイサラはこの後 のち 像 ぞう 面 めん 湾曲 わんきょく の低減 ていげん を企図 きと しライトシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう を開発 かいはつ した。
代表 だいひょう 的 てき なシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう [ 編集 へんしゅう ]
カール・シュヴァルツシルト天文台 てんもんだい 、134cm (1960年 ねん 完成 かんせい ) - 有効 ゆうこう 口径 こうけい 134cm、F3、主 おも 鏡 きょう 径 みち φ ふぁい 200cm、焦点 しょうてん 距離 きょり 400cm。シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう では世界 せかい 最大 さいだい 。ドイツ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく (東 ひがし ドイツ)タウテンブルクのカール・シュヴァルツシルト天文台 てんもんだい (Karl Schwarzschild Observatory )にあって、1988年 ねん 当時 とうじ は50cm×50cmの大型 おおがた 写真 しゃしん 乾板 かんぱん を使用 しよう してBTA-6 に観測 かんそく 目標 もくひょう を提供 ていきょう していた。焦点 しょうてん 距離 きょり 21mF10.5のカセグレン式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう 、焦点 しょうてん 距離 きょり 92mF46のクーデ式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう としても使用 しよう でき、対物 たいぶつ プリズムも装着 そうちゃく できる。カセグレン式 しき 、クーデ式 しき の副 ふく 鏡 かがみ は双 そう 曲面 きょくめん に近 ちか い高次 こうじ 非 ひ 球面 きゅうめん で、ベルンハルト・シュミットが若 わか い頃 ころ に製作 せいさく していた球面 きゅうめん 主 ぬし 鏡 きょう のカセグレン式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう そのものである。カール・ツァイス 製 せい 。
サミュエル・オシン望遠鏡 ぼうえんきょう (1949年 ねん 完成 かんせい ) - パロマー天文台 てんもんだい にある。有効 ゆうこう 口径 こうけい 126cm、F2.4。シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう として世界 せかい 第 だい 2位 い 。
UKシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう (UK Schmidt Telescope ) - オーストラリア のサイディング・スプリング天文台 てんもんだい にある。有効 ゆうこう 口径 こうけい 124cm、F2.5。シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう として世界 せかい 第 だい 3位 い 。
105cmシュミット望遠鏡 ぼうえんきょう (1974年 ねん 完成 かんせい ) - 東京大学 とうきょうだいがく 木曽 きそ 観測 かんそく 所 しょ にある。有効 ゆうこう 口径 こうけい 105cm、F3.1。シュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう として世界 せかい 第 だい 4位 い 、日本 にっぽん 最大 さいだい 。日本 にっぽん 光学 こうがく 工業 こうぎょう (現 げん ニコン )製 せい 。
100/135/300cmシュミットカメラ (1964年 ねん 完成 かんせい ) - スウェーデン のウプサラ大学 だいがく 、ウプサラ天文台 てんもんだい クビスタベリ観測 かんそく 所 しょ にある。有効 ゆうこう 口径 こうけい 100cm、F3、主 おも 鏡 きょう 直径 ちょっけい φ ふぁい 135cm、焦点 しょうてん 距離 きょり 300cm。建設 けんせつ 当時 とうじ はシュミット式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう として世界 せかい 第 だい 3位 い の大 おお きさ、1988年 ねん 当時 とうじ で第 だい 5位 い 。主 しゅ 鏡 かがみ 材 ざい はピルキントン 製 せい の厚 あつ さ23cmの低 てい 膨脹 ぼうちょう 硼珪ガラス 、主 おも 鏡 きょう 重量 じゅうりょう は650キログラム。補正 ほせい 板材 いたざい はショット 製 せい BK7で、直径 ちょっけい 101cm、厚 あつ さ3.2cm、F線 せん に対 たい し球面 きゅうめん 収差 しゅうさ 0になるよう設計 せっけい されている。研磨 けんま は主 おも 鏡 きょう ・補正 ほせい 板 いた ともトゥルク大学 だいがく のユルィヨ・バイサラ とリイシ・オテルマ が担当 たんとう した。UBK7ガラスで製作 せいさく した口径 こうけい 80cm、頂 いただき 角 かく 7度 ど の対物 たいぶつ プリズムも脱着 だっちゃく 可能 かのう 。晴天 せいてん 日数 にっすう が少 すく なく夏 なつ は白夜 はくや になる悪条件 あくじょうけん にもかかわらず1973年 ねん に『ニュージェネラルカタログ 』(NGC)にない微光 びこう 銀河 ぎんが の目録 もくろく 『ウプサラ銀河 ぎんが カタログ 』(UGC)を作成 さくせい した。
アマチュア用 よう としては日本 にっぽん 特殊 とくしゅ 光学 こうがく [7] [8] が有効 ゆうこう 口径 こうけい 16cm[7] [8] 、F2.5[8] 、主 おも 鏡 きょう 直径 ちょっけい 18cm[7] 、焦点 しょうてん 距離 きょり 400mm[7] [8] のNTP-16B [7] [8] を販売 はんばい していた。またセレストロン もアマチュア向 む けに数 すう 種 しゅ 販売 はんばい していた。
上 うえ で
説明 せつめい した、
世界 せかい 最大 さいだい のシュミット
式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう である、カール・シュヴァルツシルト
天文台 てんもんだい (
Karl Schwarzschild Observatory )のシュミット
式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう 。
デンマークにある
ブロルフェルド天文台 てんもんだい の77cmシュミット
式 しき 望遠鏡 ぼうえんきょう 。1966
年 ねん から
使 つか われ、もともとは
写真 しゃしん フィルムを
使 つか っていたが、その
後 ご に2048x2048
ピクセル のCCDに
置 お き
換 か えられた。この
天文台 てんもんだい はもともとはコペンハーゲン
大学 だいがく 天文台 てんもんだい が
運用 うんよう していたが、
現在 げんざい はアマチュアによる
運用 うんよう であり、この
写真 しゃしん は、
天文台 てんもんだい の
見学 けんがく 者 しゃ たち(
左下 ひだりした )のために
右 みぎ 下 か の
人物 じんぶつ が、かつて
使用 しよう していた
写真 しゃしん フィルムの
箱 はこ (かつて
望遠鏡 ぼうえんきょう 内 ない の
焦点 しょうてん 位置 いち に
配置 はいち したもの)を
見 み せつつ
説明 せつめい しているところ。
^ a b 『天体 てんたい 望遠鏡 ぼうえんきょう ガイドブック』pp.194-195「天体 てんたい 用 よう ビジュアルシステム」。
^ Encyclopedia Britannica. "Schmidt telescope"
^ 『増補 ぞうほ 天体 てんたい 写真 しゃしん テクニック』pp.54-55。
^ a b c d e 『天体 てんたい 望遠鏡 ぼうえんきょう のすべて'85年版 ねんばん 』p.33。
^ a b c d e 『天体 てんたい 望遠鏡 ぼうえんきょう のすべて'85年版 ねんばん 』p.166。