中村なかむら憲吉けんきち

中村なかむら 憲吉けんきち（なかむら けんきち、1889年ねん1月がつ25日にち - 1934年ねん5月5日にち）は、広島ひろしま県けん生うまれの歌人かじん。

来歴らいれき

生おい立たち

広島ひろしま県けん尾道おのみち市しに保存ほぞんされている中村なかむら憲吉けんきち旧居きゅうきょ

1889年ねん（明治めいじ22年ねん）1月がつ25日にち、広島ひろしま県けん三次みつぎ郡ぐん上布野かみふの村むら（現げん・三次みつぎ市し）に、後のちに三さん次じ銀行ぎんこう初代しょだい頭取とうどりを務つとめた他ほかに多おおくの田畑たはた・山林さんりんを所有しょゆうし醸造じょうぞう業ぎょうも営いとなむ地元じもと名望めいぼう家かの父ちち・修一しゅういちの次男じなんとして生うまれる。

1894年ねん、布野ふの尋常じんじょう小学校しょうがっこうに入学にゅうがく。1898年ねん、布野ふの尋常じんじょう小学校しょうがっこう卒業そつぎょう、同どう高等こうとう科かに入学にゅうがく。1900年ねん、祖母そぼの異父いふ妹いもうとで、三さん次じで旅館りょかん業ぎょうを営いとなんでいた香川かがわ八重やえの養子ようしとなる。香川かがわ家かへは後のちに弟おとうとで倉田くらた百三ひゃくぞうと親交しんこうのあった三之さんの助すけが入はいり、憲吉けんきちは中村なかむら姓せいに復ふくする。9月、三さん次じ小学校しょうがっこう高等こうとう科かに転校てんこう。

1901年ねん、三さん次じ中学ちゅうがくに入学にゅうがく。四よん年ねん時じには倉田くらた百三ひゃくぞうが一いち年生ねんせいとして入学にゅうがく。校友こうゆう雑誌ざっしの『白帆しらほ』の編集へんしゅうを行おこない自身じしんも投稿とうこうするなど、創作そうさく活動かつどうを開始かいし。「香川かがわ霧きり村むら」という筆名ひつめいを使つかう。憲吉けんきちが養子ようしに入はいっていた香川かがわ旅館りょかんには憲吉けんきちの文学ぶんがく同好どうこうの友人ゆうじんが多おおく出入でいりし、中なかでも近ちかくに住すんでいた船越ふなこし象ぞう一いち（榊さかき屋や酒さけ店てん）は親友しんゆうであった。また、近所きんじょの森もり盛もり文ぶん堂どうは中学生ちゅうがくせいの交流こうりゅうの場ばにもなっていたという。

1906年ねん、三さん次じ中学校ちゅうがっこう卒業そつぎょう。4月、上京じょうきょうし正則せいそく英語えいご学校がっこうに通学つうがく。9月、鹿児島かごしまの第だい七なな高等こうとう学校がっこう造みやつこ士し館かん（七なな高だか）第だい一部いちぶ甲かぶと類るいに入学にゅうがく。

1907年ねん、在学ざいがく中ちゅうに文学ぶんがく上じょうの友ともとして堀内ほりうち卓造たくぞう、橋田はしだ東聲とうせい、岩谷いわたに莫哀ばくあいらとの交流こうりゅうがはじまる。堀内ほりうち卓造たくぞうの誘さそいにより「万葉集まんようしゅう」、正岡子規まさおかしき、伊藤いとう左千夫さちおの歌うた風ふうを知しり、作歌さっかをはじめる。兄あに・純じゅん造みやつこが早世そうせいし、家いえを継つぐために中村なかむら姓せいに復ふくする。

1908年ねん、日本にっぽん新聞しんぶんの伊藤いとう左千夫さちお選歌せんか、課題かだい「竹たけ」に応募おうぼして数すう首しゅが採用さいようされる。作歌さっかの一部いちぶ12首しゅが「アララギ」第だい1巻かん第だい3号ごうに掲載けいさいされる。

上京じょうきょうとアララギへの参加さんか

1909年ねん、上京じょうきょうし、伊藤いとう左千夫さちおを訪たずねて入門にゅうもん。「アララギ」に参加さんか、斎藤さいとう茂吉しげよしや古泉こいずみ千樫ちかしらと交流こうりゅうがはじまる。

1910年ねん7月がつ、第だい七なな高等こうとう学校がっこう造みやつこ士し館かんを卒業そつぎょう。9月、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく大学だいがく法科ほうか大学だいがく経済けいざい科かに入学にゅうがく。本郷ほんごうの追分おいわけにある富士見ふじみ軒のきに下宿げしゅく。子規しき九きゅう周忌しゅうき歌会うたかいに出席しゅっせきして石原いしはら純じゅん、土屋つちや文明ふみあき、山宮さんぐう允まことらと相そう知しる。10月、盟友めいゆう・堀内ほりうち卓造たくぞう急逝きゅうせい。

1911年ねん、「アララギ」諸しょ同人どうじんとの交流こうりゅうが深ふかまり、作歌さっかにも熱心ねっしんになる。1913年ねん島木しまき赤彦あかひことの合ごう著ちょ歌集かしゅう『馬鈴薯じゃがいもの花はな』刊行かんこう。『中村なかむら憲吉けんきち全集ぜんしゅう』がある。深川ふかがわ不動尊ふどうそん境内けいだいの下宿げしゅくに移うつる。

1914年ねん（大正たいしょう３年ねん）、本郷ほんごうの菊きく富士本ふじもと店てんに下宿げしゅく。

1915年ねん（大正たいしょう4年ねん）、東京帝大とうきょうていだいを卒業そつぎょう。11月、帰郷ききょうし、広島ひろしま県けん福山ふくやま市しの倉田くらた岩太郎いわたろうの長女ちょうじょ・倉田くらた静子しずこと結婚けっこん。静子しずこの母はは・きくは福山ふくやま郊外こうがい深津ふかづの石井いしい英太郎えいたろうの娘むすめ。石井いしい英太郎えいたろうは広島ひろしま県議会けんぎかい議員ぎいんや福山ふくやま誠之せいし館かん中学校ちゅうがっこうの初代しょだい校長こうちょうを勤つとめ、きくの妹いもうと・大原おおはら寿恵子すえこは大原おおはら孫三郎まごさぶろうの妻つまとなり、後のちに和歌わかに興味きょうみを持もち1925年ねんには憲吉けんきちに師事しじする。

1916年ねん1月がつ、上京じょうきょうして新居しんきょを構かまえるが、10月に帰郷ききょうして家いえ務つとむに就つく。11月、第だい二に歌集かしゅう『林泉りんせん集しゅう』（アララギ発行はっこう所しょ）刊行かんこう。

1920年ねん4月がつ、兵庫ひょうご県けん西宮にしのみや市しに居きょを定さだめる。1921年ねん、大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶんの経済けいざい部ぶ記者きしゃとなる。1923年ねん11月、京都きょうとへ行いき桂かつら離宮りきゅう、修学院しゅうがくいん離宮りきゅうを拝観はいかん。1924年ねん7月がつ、第だい三さん歌集かしゅう『しがらみ』（岩波書店いわなみしょてん）刊行かんこう。1926年ねん4月がつ、大阪おおさか毎日新聞社まいにちしんぶんしゃを退社たいしゃ。6月帰郷ききょうし、家督かとくを相続そうぞくして実家じっかの酒造しゅぞう業ぎょうに携たずさわる。実家じっかの大だい資産しさんを、惜おしみなく「アララギ」への精神せいしん的てき・物質ぶっしつ的てき支援しえんに注つぎ込こんだ。また、広大こうだいな山林さんりんに目めを向むけ、檜ひのき、杉すぎの植林しょくりんにも取とり組くむ。1928年ねん2月がつ、岡山おかやま医科いか大学だいがく附属ふぞく病院びょういんを訪おとずれる夫人ふじんに同道どうどうして岡山おかやまへ。その際さいに弟子でしで助教授じょきょうじゅの上代じょうだい皓あきら三さんの案内あんないで後楽園こうらくえんを廻まわる。

晩年ばんねん

1930年ねん11月、『現代げんだい短歌たんか全集ぜんしゅう「中村なかむら憲吉けんきち集しゅう・土屋つちや文明ふみあき集しゅう」』刊行かんこう。肋膜ろくまくの病気びょうきに罹かかる。1931年ねん7月がつ、第だい四よん歌集かしゅう『軽けい雷かみなり集しゅう』（古今ここん書院しょいん）刊行かんこう。1932年ねん、広島ひろしま市し郊外こうがいの五日市いつかいちで病気びょうき療養りょうよう。

1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）5月がつ5日にち、肺結核はいけっかくと急性きゅうせい感冒かんぼうのため尾道おのみち市しの仮寓かぐうで死去しきょ。享年きょうねん46歳さい。墓所はかしょは三次みつぎ市し布野ふの町まち上布野かみふのにある。戒名かいみょうは林泉りんせん院いん釈しゃく浄きよし信しん憲吉けんきち居士こじ。なお、妻つま・静子しずこは1973年ねんまで生いき、長女ちょうじょ・良子りょうこ、四よん女じょ・裕子ゆうこ（-2018年ねん）、五ご女じょ・礼子あやこ（-2013年ねん）がいる。また、生家せいかは現在げんざい、中村なかむら憲吉けんきち文芸ぶんげい記念きねん館かん（2012年ねん開館かいかん）となっている。

著書ちょしょ

• 馬鈴薯じゃがいもの花はな 久保田くぼた柿かき人じん（島木しまき赤彦あかひこ） 東雲しののめ堂どう書店しょてん, 1913
• 林泉りんせん集しゅう アララギ発行はっこう所しょ, 1916、春陽しゅんよう堂どう, 1925
• 中村なかむら憲吉けんきち選集せんしゅう アルス, 1921
• しがらみ 岩波書店いわなみしょてん, 1924、短歌新聞社たんかしんぶんしゃ文庫ぶんこ, 1994
• 松まつの芽め 改造かいぞう社しゃ, 1925
• 軽けい雷かみなり集しゅう 古今ここん書院しょいん, 1931
• 軽けい雷かみなり集しゅう以後いご 岩波書店いわなみしょてん, 1934
• 中村なかむら憲吉けんきち全集ぜんしゅう 全ぜん4巻かん 岩波書店いわなみしょてん, 1937-1938、復刊ふっかん1982
• 中村なかむら憲吉けんきち歌集かしゅう 岩波いわなみ文庫ぶんこ, 1941、復刊ふっかん1989ほか
• 中村なかむら憲吉けんきち全ぜん歌集かしゅう 白玉しらたま書房しょぼう, 1966

関連かんれん項目こうもく

• おのみち文学ぶんがくの館かん - 晩年ばんねん過すごした旧居きゅうきょの離はなれが公開こうかいされている。

外部がいぶリンク

• 中村なかむら 憲吉けんきち：作家さっか別べつ作品さくひんリスト - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 中村なかむら憲吉けんきち - 吉備路文学館きびじぶんがくかん