九州大学きゅうしゅうだいがく電算でんさんセンターファントム墜落ついらく事故じこ

九州大学きゅうしゅうだいがく電算でんさんセンターファントム墜落ついらく事故じこ（きゅうしゅうだいがくでんさんセンター ファントムついらくじこ）は、1968年ねん6月2日にちに、福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市し東ひがし区く箱崎はこざきの九州大学きゅうしゅうだいがく箱崎はこざき地区ちく内ないで建設けんせつ中ちゅうの九州大学きゅうしゅうだいがく大型おおがた計算けいさん機きセンターに、アメリカ空軍くうぐんのRF-4Cファントム偵察ていさつ機きが墜落ついらくした航空こうくう事故じこである。

経緯けいい

事故じこの発生はっせい

1968年ねん6月がつ2日にち22時じ48分ふん頃ごろ、アメリカ空軍くうぐん板付いたづけ飛行場ひこうじょう第だい313航空こうくう師団しだん第だい15戦術せんじゅつ偵察ていさつ飛行ひこう隊たい所属しょぞくのRF-4Cファントム偵察ていさつ機きが、当時とうじ九州大学きゅうしゅうだいがく箱崎はこざき地区ちく内ないに建設けんせつ中ちゅうであった九州大学きゅうしゅうだいがく大型おおがた計算けいさん機きセンターの屋上おくじょうに墜落ついらくした。大型おおがた計算けいさん機きセンターは5階かいと6階かいが全壊ぜんかいして炎上えんじょうし、ファントム機きの残骸ざんがいは建物たてものにぶら下さがった状態じょうたいとなった。

当日とうじつは日曜日にちようびで建設けんせつ工事こうじは行おこなわれておらず、事故じこ機きに搭乗とうじょうしていたパイロット2名めいは墜落ついらく直前ちょくぜんにパラシュートで脱出だっしゅつしていたため、人的じんてき被害ひがいはなかった。

墜落ついらくしたファントム機きが所属しょぞくする部隊ぶたいは、沖縄おきなわの嘉手納かでな飛行場ひこうじょうに駐在ちゅうざいしていたが、1968年ねん1月がつ23日にちに起おこったプエブロ号ごう事件じけんに対応たいおうするために韓国かんこくに展開てんかいし、その後ごの2月がつ16日にちに板付いたづけ飛行場ひこうじょうへ移動いどうしていた。

事故じこへの反応はんのう

事故じこ翌日よくじつの1968年ねん6月3日にち、九州大学きゅうしゅうだいがく総長そうちょう水野みずの高明こうめいが米べい軍ぐんおよび日本にっぽん政府せいふに対たいする抗議こうぎ声明せいめいを発表はっぴょうし、学生がくせいや教職員きょうしょくいん約やく4,000人にんが抗議こうぎデモを行おこなった。デモはこの後のちも連日れんじつ続つづき、翌よく6月4日にちには総長そうちょうも参加さんかした約やく6,000人にんの市内しないデモが、6月5日にちにも総長そうちょうが参加さんかし約やく4,000人にんのデモが行おこなわれた。

6月6日にちに開催かいさいされた日米にちべい合同ごうどう委員いいん会かいでは、アメリカ側がわは事故じこ原因げんいんが究明きゅうめいされるまでの間あいだ、必要ひつような場合ばあいを除のぞき夜間やかん飛行ひこうを行おこなわないことを言明げんめいした。6月8日にちには、アメリカ側がわは九州大学きゅうしゅうだいがく上空じょうくうの飛行ひこうを避さけるため、有ゆう視界しかい飛行ひこうを行おこなう米べい軍機ぐんきは板付いたづけ飛行場ひこうじょうを離陸りりくした後のちに右みぎに旋回せんかいすることを九州大学きゅうしゅうだいがく当局とうきょくに対たいして約束やくそくした。

6月がつ20日はつかの日米にちべい合同ごうどう委員いいん会かいでは、日本にっぽん側がわから板付いたづけ飛行場ひこうじょうの移転いてんを前提ぜんていとした代替だいたい地ちを検討けんとうすることが提案ていあんされ、アメリカ側がわは代替だいたい地ちが提案ていあんされれば検討けんとうすることを言明げんめいした。板付いたづけ飛行場ひこうじょうの運用うんようにはいっそうの慎重しんちょうを期きすることで両者りょうしゃが合意ごういした。

残のこされたファントム機きの残骸ざんがいについては、学内がくないでは大学だいがく自治じちの観点かんてんから米べい軍ぐんによる撤去てっきょを拒こばむことでは一致いっちしていたものの、自主じしゅ的てきに引ひき降おろすか、反戦はんせんのシンボルとして残のこすかで意見いけんが割われていた。7月がつ9日にちに評議ひょうぎ会かいが自主じしゅ引ひき降おろしを決定けっていすると、引ひき降おろし反対はんたい派はの学生がくせいらは作業さぎょうを実力じつりょくで阻止そしし、8月がつ1日にちには大型おおがた計算けいさん機きセンターの残骸ざんがいをバリケードで囲かこって占拠せんきょした。

8月がつ23日にちには、九州大学きゅうしゅうだいがくが残骸ざんがいを保管ほかんするために機体きたい保管ほかん庫この建設けんせつを開始かいししようとしたが、反対はんたいする学生がくせいと衝突しょうとつして21名めいの負傷ふしょう者しゃを出だし、建設けんせつ作業さぎょうは中止ちゅうしされた。

11月15日にちには、日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎ会長かいちょうの朝永あさなが振一郎しんいちろうから内閣ないかく総理そうり大臣だいじん佐藤さとう栄作えいさくに宛あてた文書ぶんしょにより、騒音そうおんや振動しんどうによる研究けんきゅうや教育きょういくへの悪影響あくえいきょうに加くわえ、大学だいがく構内こうないには放射ほうしゃ性せいコバルト照射しょうしゃ実験じっけん室しつなどが存在そんざいしており、墜落ついらく地点ちてんによっては放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの飛散ひさんによって広範囲こうはんいに重大じゅうだいな被害ひがいをもたらす恐おそれがあったことを挙あげ、抜本ばっぽん策さくとしての板付いたづけ飛行場ひこうじょうの移転いてんと当面とうめんの安全あんぜん対策たいさくの徹底てっていが申もうし入いれられた。

残骸ざんがいの除去じょきょ

その後ご、大型おおがた計算けいさん機きセンターの占拠せんきょは膠着こうちゃく状態じょうたいに陥おちいったが、1969年ねん1月がつ5日にち2時じ頃ごろ、ファントム機きの残骸ざんがいが何者なにものかによって引ひき降おろされるという事件じけんが発生はっせいした。事件じけん当時とうじ、理学部りがくぶ中門ちゅうもんに駐在ちゅうざいしていた警務けいむ員いんは、1時じ50分ふん頃ごろにヘルメットをかぶり顔がおをタオルで隠かくした男おとこ達たちに脅おどされて中門ちゅうもんを開あけたこと、門外もんがいに待機たいきしていた十じゅう数すう名めいの男おとこがブルドーザーで学内がくないに入はいり、ファントム機きにロープを掛かけてブルドーザーで引ひきずり降おろしたことを証言しょうげんしている。

総長そうちょうの水野みずのは同日どうじつ中ちゅうに辞意じいを表明ひょうめいし、1969年ねん1月がつ23日にちに辞任じにんを了承りょうしょうされた。九州大学きゅうしゅうだいがくは事件じけん調査ちょうさ委員いいん会かいを設置せっちして調査ちょうさを行おこなったが、5月2日にちに提出ていしゅつされた調査ちょうさ報告ほうこくでは、学内がくないの関与かんよの疑うたがいが指摘してきされたものの、実行じっこう者しゃは特定とくていされないままとなった。

ファントム機きは同年どうねん10月14日にち、約やく4,000名めいの機動きどう隊たいが反対はんたいする学生がくせいを排除はいじょする中なか、九州大学きゅうしゅうだいがくから搬出はんしゅつされ、板付いたづけ飛行場ひこうじょうに移うつされた。

事件じけん後ご

九州大学きゅうしゅうだいがくでは学生がくせい運動うんどうが活発かっぱつ化かし、1969年ねん3月がつに予定よていされていた1968年度ねんどの卒業そつぎょう式しきは中止ちゅうしとなった。同年どうねん5月がつ20日はつかには各かく学部がくぶ自治じち会かいが全学ぜんがく規模きぼでの無む期限きげんストおよび建物たてもののバリケード封鎖ふうさを行おこない、10月14日にちには機動きどう隊たい約やく4,400人にんが導入どうにゅうされて封鎖ふうさを解除かいじょする事態じたいとなった。

この間あいだ、1969年ねん8月がつには大学だいがくの運営うんえいに関かんする臨時りんじ措置そち法ほう（いわゆる大学だいがく立法りっぽう）が制定せいていされた。

大型おおがた計算けいさん機きセンターの建築けんちく工事こうじは1969年ねん12月25日にちに再開さいかいされ、1970年ねん3月がつに竣工しゅんこう。同年どうねん5月8日にちに開所かいしょ式しきが行おこなわれた。

板付いたづけ飛行場ひこうじょうは1972年ねんに返還へんかんされ、福岡空港ふくおかくうこうとなった。

九州大学きゅうしゅうだいがくは、箱崎はこざき地区ちくの狭隘きょうあいさや老朽ろうきゅう化か、福岡空港ふくおかくうこうの滑走かっそう路ろの延長線えんちょうせん上じょうに位置いちすることによる騒音そうおんや高たかさ制限せいげんの問題もんだい、さらにはこのような航空機こうくうき墜落ついらくの再発さいはつの懸念けねんから、伊都いと地区ちくに移転いてんすることとなった。

九州大学きゅうしゅうだいがく大型おおがた計算けいさん機きセンターは2004年ねん4月がつに九州大学きゅうしゅうだいがく情報じょうほう基盤きばんセンターに改組かいそされ、2007年ねん4月がつには九州大学きゅうしゅうだいがく情報じょうほう基盤きばん研究けんきゅう開発かいはつセンターとなり、2016年ねん10月に伊都いと地区ちくに移転いてんした。なお、箱崎はこざき地区ちくに残のこった旧きゅう大型おおがた計算けいさん機きセンターの施設しせつは、2018年ねん9月がつの箱崎はこざき地区ちくの移転いてん完了かんりょう後ごに解体かいたいされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 九州大学きゅうしゅうだいがく七なな十じゅう五ご年ねん史し編集へんしゅう委員いいん会かい, 九州大学きゅうしゅうだいがく『九州大学きゅうしゅうだいがく七なな十じゅう五ご年ねん史し』九州大学きゅうしゅうだいがく出版しゅっぱん会かい〈全ぜん4冊さつ〉、1989.5-1992.3。hdl:2324/1001225742。https://hdl.handle.net/2324/1001225742。 

関連かんれん文献ぶんけん

• 九州大学きゅうしゅうだいがく百ひゃく年ねん史し編集へんしゅう委員いいん会かい「九きゅう編へん 第だい一いち章しょう エンタープライズ寄港きこう問題もんだいと米べい軍機ぐんき墜落ついらく事件じけん」『九州大学きゅうしゅうだいがく百ひゃく年ねん史し 第だい9巻かん : 資料しりょう編へんⅡ』（PDF）九州大学きゅうしゅうだいがく百ひゃく年ねん史し編集へんしゅう委員いいん会かい〈九州大学きゅうしゅうだいがく百ひゃく年ねん史し〉、2015年ねん8月がつ31日にち。doi:10.15017/1524115。hdl:2324/1524115。https://cataog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1524115/p447.pdf。2023年ねん10月がつ25日にち閲覧えつらん。 

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんにおけるアメリカ軍機ぐんき事故じこの一覧いちらん
• 厚木あつぎ海軍かいぐん飛行場ひこうじょう#事故じこ
• 町田まちだ米べい軍機ぐんき墜落ついらく事故じこ
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外部がいぶリンク

• 九州大学きゅうしゅうだいがく年表ねんぴょう (昭和しょうわ40年ねん〜昭和しょうわ44年ねん) - 九州大学きゅうしゅうだいがく・大学だいがく文書ぶんしょ館かん
• 防衛施設庁ぼうえいしせつちょう史し 第だい1部ぶ第だい2章しょう第だい1節せつ 九州大学きゅうしゅうだいがくへの米べい軍機ぐんき墜落ついらく事故じこへの取組とりくみ（昭和しょうわ43年ねん6月がつ2日にち） (PDF) - 防衛施設庁ぼうえいしせつちょう
• ファントム墜落ついらく事件じけん - ウェイバックマシン（1999年ねん10月がつ13日にちアーカイブ分ぶん）