井上いのうえ幾太郎いくたろう

井上いのうえ幾太郎いくたろう
生誕せいたん	1872年ねん2月がつ18日にち 山口やまぐち県けん
死没しぼつ	(1965-05-07) 1965年ねん5月7日にち（93歳さい没ぼつ）
所属しょぞく組織そしき	大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん
軍ぐん歴れき	1893 - 1933
兵科へいか	工兵こうへい科か
最終さいしゅう階級かいきゅう	陸軍りくぐん大将たいしょう
指揮しき	航空こうくう本部ほんぶ長ちょう 軍事ぐんじ参議さんぎ官かん 第だい3師団しだん長なが
戦闘せんとう	日にち清しん戦争せんそう 義和よしかず団だんの乱らん 日にち露ろ戦争せんそう *旅順りょじゅん攻囲こうい戦せん
墓所はかしょ	多磨たま霊園れいえん

井上いのうえ 幾太郎いくたろう（いのうえ いくたろう、 1872年ねん2月がつ18日にち（明治めいじ5年ねん1月がつ10日とおか） - 1965年ねん5月7日にち）は、日本にっぽんの陸軍りくぐん軍人ぐんじん。初代しょだい陸軍りくぐん航空こうくう部ぶ本部ほんぶ長ちょう、帝国ていこく在郷ざいきょう軍人ぐんじん会かい。陸士りくし4期き・陸りく大まさる14期き。最終さいしゅう階級かいきゅうは陸軍りくぐん大将たいしょう。

経歴けいれき

山口やまぐち県けん出身しゅっしん。井上いのうえ清蔵せいぞう（農業のうぎょう）の二男じなん。山口やまぐち町まち開ひらき導しるべ学校がっこうを経へて、1893年ねん（明治めいじ26年ねん）7月がつに陸軍りくぐん士官しかん学校がっこう（4期き）を卒業そつぎょうし、工兵こうへい第だい5大隊だいたい附ふ。工兵こうへい第だい5大隊だいたい長ちょう・上原うえはら勇作ゆうさく工兵こうへい少佐しょうさ（後のちに元帥げんすい陸軍りくぐん大将たいしょう）の知遇ちぐうを得える。1894年ねん（明治めいじ27年ねん）3月がつ、陸軍りくぐん工兵こうへい少尉しょういに任官にんかん。日にち清しん戦争せんそうに出征しゅっせいし、釜山ぷさん ｰ 京きょう城しろの電信でんしん線せん敷設ふせつに従事じゅうじした後のち、鴨かも緑みどり江こう渡河とか作戦さくせんに参加さんか。1895年ねん11月に陸軍りくぐん砲ほう工こう学校がっこうに入校にゅうこうし、要塞ようさい戦術せんじゅつへの関心かんしんを高たかめる。1896年ねん（明治めいじ29年ねん）11月、陸軍りくぐん砲ほう工こう学校がっこうを卒業そつぎょうし、1897年ねん（明治めいじ30年ねん）12月、陸軍りくぐん大だい学校がっこう（14期き）に入校にゅうこう。陸りく大だい在校ざいこう中ちゅうの1900年ねん（明治めいじ33年ねん）7月がつ、義和よしかず団だんの乱らんが勃発ぼっぱつすると工兵こうへい第だい5大隊だいたい中隊ちゅうたい長ちょうとして出征しゅっせいし、北京ぺきん城しろの城門じょうもんを爆破ばくはして城内じょうないへの突撃とつげき路ろを開ひらく武功ぶこうを挙あげた。同年どうねん10月がつに陸りく大だいに復ふく校こうし、12月に卒業そつぎょう。

1902年ねん（明治めいじ35年ねん）2月がつに参謀さんぼう本部ほんぶ部員ぶいんとなると、要塞ようさい戦術せんじゅつの研究けんきゅうのためにドイツ帝国ていこくへの私費しひ留学りゅうがくを志こころざし、参謀さんぼう本部ほんぶ総務そうむ部長ぶちょうの田村たむら怡与造づくり少将しょうしょうの配慮はいりょにより、3年間ねんかんの留学りゅうがく期間きかん・1年ねんにつき千せん円えんの補助ほじょ金きんを与あたえられ、同年どうねん6月がつにドイツに赴おもむき、ベルリンで築城ちくじょうを研究けんきゅう。

1904年ねん（明治めいじ37年ねん）2月がつに日にち露ろ戦争せんそうが勃発ぼっぱつすると、私費しひ留学りゅうがくを2年ねん弱じゃくで切きり上あげて同年どうねん4月がつに帰朝きちょう。第だい3軍ぐん参謀さんぼうとして出征しゅっせいし、旅順りょじゅん攻囲こうい戦せんにおいて、坑道こうどう掘ほりによる攻撃こうげきを献策けんさくした。戦後せんご、ドイツ駐在ちゅうざい、参謀さんぼう本部ほんぶ部員ぶいん（要塞ようさい課か）、工兵こうへい第だい10大隊だいたい長ちょう、陸軍りくぐん省しょう軍務ぐんむ局きょく工兵こうへい課長かちょう、軍事ぐんじ課長かちょうなどを経へて、1916年ねん8月がつ、陸軍りくぐん少将しょうしょうに進級しんきゅう。

陸軍りくぐん運輸うんゆ部ぶ本部ほんぶ長ちょう、交通こうつう兵団へいだん司令しれい部ぶ付づけ（臨時りんじ軍用ぐんよう気球ききゅう研究けんきゅう会かい幹事かんじ）、初代しょだい航空こうくう部ぶ本部ほんぶ長ちょうを歴任れきにん。1920年ねん8月がつ、陸軍りくぐん中将ちゅうじょうに進級しんきゅうし、第だい3師団しだん長ちょう、軍事ぐんじ参議さんぎ官かん、航空こうくう本部ほんぶ長ちょうを経へて、1927年ねん2月がつ、陸軍りくぐん大将たいしょうに親任しんにんされ、1933年ねん3月、予備よび役やくに編入へんにゅうされた。

1937年ねん2月がつ、帝国ていこく在郷ざいきょう軍人ぐんじん会かいの最後さいごの会長かいちょうとなった。1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）11月28日にち、公職こうしょく追放ついほう仮かり指定していを受うけた。

人物じんぶつ

空軍くうぐん独立どくりつ論ろん

井上いのうえは空軍くうぐん独立どくりつ論ろん者しゃであった。陸軍りくぐんの航空こうくう専門せんもん家かとして初代しょだい陸軍りくぐん航空こうくう部ぶ本部ほんぶ長ちょう（後ごの陸軍りくぐん航空こうくう本部ほんぶ長ちょう）に就任しゅうにんし、本部ほんぶ長ちょう時代じだいには政府せいふに陸海りくかい軍ぐん共同きょうどうの空軍くうぐん建設けんせつを上申じょうしんしたが、却下きゃっかされた。

工兵こうへい科か出身しゅっしんの陸軍りくぐん大将たいしょう

井上いのうえは山口やまぐち県けん出身しゅっしんであったが、工兵こうへい科かの先輩せんぱいである上原うえはら勇作ゆうさくから高たかく評価ひょうかされ、上原うえはら閥ばつ（工兵こうへい閥ばつ）の一員いちいんとして重用じゅうようされた。ドイツ留学りゅうがく中ちゅう、駐ちゅう在中ざいちゅうは頻繁ひんぱんに上原うえはらとやり取とりし、その後ご工兵こうへい操典そうてんの編纂へんさん委員いいん長ちょうに起用きようされた。この時とき、上原うえはら（工兵こうへい班長はんちょう）と工兵こうへい監かんの落合おちあい豊三郎とよさぶろう（交通こうつう兵へい班長はんちょう）は意見いけんが合あわず、上原うえはらが頼たよりとしたのは井上いのうえであった。田中たなか義一ぎいちが陸相りくしょう候補こうほ問題もんだいを起おこした後のちも上原うえはら閥ばつと長州ちょうしゅう閥ばつの間あいだで上手うまく立たち回まわることに成功せいこうした。航空こうくう戦力せんりょくなどの思想しそうが上原うえはらと共通きょうつうしていることやそれまでの功績こうせきもあり、他たの山口やまぐち県けん出身しゅっしん者しゃ（大庭おおば二郎じろう、森岡もりおか守成しゅせい、菅野かんの尚一しょういちら）が次々つぎつぎと予備よび役やく入いりさせられる中なか、工兵こうへい科か出身しゅっしんでは3名めい（鮫島さめしま重雄しげお、上原うえはら勇作ゆうさく、井上いのうえ。士官しかん候補こうほ生せい出身しゅっしんでは井上いのうえのみ）しかいない陸軍りくぐん大将たいしょうの一人ひとりとなった。

栄典えいてん

位階いかい

• 1894年ねん（明治めいじ27年ねん）5月1日にち - 正せい八はち位い
• 1912年ねん（明治めいじ45年ねん）1月がつ31日にち - 従したがえ五ご位い
• 1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）9月11日にち - 正せい五ご位い
• 1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）9月がつ10日とおか - 従したがえ四よん位い
• 1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）4月がつ10日とおか - 正せい四よん位い
• 1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）5月1日にち - 従したがえ三さん位い
• 1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）5月15日にち - 正せい三さん位い

勲章くんしょう

• 1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）3月23日にち - 旭日大綬章あさひだいじゅしょう
• 1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）8月がつ15日にち - 紀元きげん二に千せん六ろく百ひゃく年ねん祝典しゅくてん記念きねん章あきら

親族しんぞく

• 養嗣子ようしし 井上いのうえ官一かんいち（陸士りくし29期き、陸軍りくぐん少将しょうしょう、戦病死せんびょうし）

参考さんこう文献ぶんけん

• 秦はた郁いく彦編へん『日本にっぽん陸海りくかい軍ぐん総合そうごう事典じてん』第だい2版はん、東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい、2005年ねん。
• 半藤はんどう一利かずとし　他た『歴代れきだい陸軍りくぐん大将たいしょう全ぜん覧らん 昭和しょうわ編へん／満州まんしゅう事変じへん・支ささえ那な事変じへん期き』（Amazon Kindle）中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ、2013年ねん。 
• 藤井ふじい非ひ三さん四よん『昭和しょうわの陸軍りくぐん人事じんじ』潮しお書房しょぼう光人みつひと社しゃ〈光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ〉、2015年ねん。