保安ほあんブレーキ

保安ほあんブレーキ（ほあんブレーキ）は、日本にっぽんの鉄道てつどう車両しゃりょうに備そなえられているブレーキ装置そうちの1つで、常用じょうようのブレーキ装置そうちが故障こしょうした時ときに用もちいられる多重たじゅう化かされたバックアップ用ようのものである。

背景はいけい

1971年ねん（昭和しょうわ46年ねん）に富士急行ふじきゅうこう（当時とうじ）大月線おおつきせんで、踏切ふみきりに進入しんにゅうしてきたトラックが列車れっしゃと衝突しょうとつし、列車れっしゃの空気くうき溜だめを損壊そんかいしてブレーキが全まったく使つかえなくなったことにより、列車れっしゃが勾配こうばい区間くかんを暴走ぼうそうして脱線だっせん転覆てんぷくする事故じこが発生はっせいした。この教訓きょうくんから、通常つうじょうのブレーキ系統けいとうとは独立どくりつした保安ほあんブレーキを設もうけることになった。

機構きこう

保安ほあんブレーキの機構きこうは、常用じょうようブレーキと同様どうように空気圧くうきあつによりブレーキシリンダーを動うごかし、制せい輪わ子こを車輪しゃりんに押おし当あてて制動せいどう力りょくを得える仕組しくみとなっている。このブレーキシリンダーや制せい輪わ子こに関かんする基礎きそブレーキ装置そうちの部分ぶぶんは、常用じょうようブレーキと共用きょうようとなっている。空気圧くうきあつを蓄積ちくせきしている空気くうきだめが常用じょうようブレーキとは別べつに独立どくりつして設置せっちされており、常用じょうようブレーキ系統けいとうからの空気圧くうきあつとは逆ぎゃく止とめ弁べんによって隔離かくりする形かたちで、1つのブレーキシリンダーに空気圧くうきあつを供給きょうきゅうしている。

保安ほあんブレーキの制御せいぎょは電気でんき制御せいぎょ式しき、空気圧くうきあつ制御せいぎょ式しき、非常ひじょうブレーキの回路かいろを指令しれい回路かいろに利用りようした方式ほうしきなどがある。

JRグループにおいては、電気でんき制御せいぎょ式しきでオン電磁でんじ弁べんを用もちいた方式ほうしきのことを直通ちょくつう予備よびブレーキ（ちょくつうよびブレーキ）と称しょうしている。

法制ほうせい

鉄道てつどうに関かんする技術ぎじゅつ上じょうの基準きじゅんを定さだめる省令しょうれいの解釈かいしゃく基準きじゅんにおいては、電車でんしゃや気動車きどうしゃなど、動力どうりょく分散ぶんさん方式ほうしきの車両しゃりょうに関かんして保安ほあんブレーキの装備そうびを求もとめている。一方いっぽう、機関きかん車しゃや客車きゃくしゃ、貨車かしゃなど動力どうりょく集中しゅうちゅう方式ほうしきの車両しゃりょうにはこの義務ぎむはない。また保安ほあんブレーキを装備そうびしていて、これにより留置りゅうち中ちゅうの車両しゃりょうの転てん動どうを防止ぼうしできる車両しゃりょうは、留置とめおきブレーキの設置せっちを免除めんじょされている。

新幹線しんかんせんの補助ほじょブレーキ

新幹線しんかんせん車両しゃりょうでは常用じょうようブレーキ、非常ひじょうブレーキとも故障こしょうが発生はっせいした際さい、電圧でんあつ指令しれいを直接ちょくせつ電でん空そら変換へんかん弁べんに与あたえることで、空気くうきブレーキを制御せいぎょする機能きのうを補助ほじょブレーキと呼よぶ。保安ほあんブレーキとは異ことなり、4段階だんかい（200系けい）または3段階だんかい（100系けい）のブレーキ力りょくを制御せいぎょすることで、ごく低速ていそくでの走行そうこうが可能かのうとなる。

ただし、N700系けい以降いこうの東海道とうかいどう・山陽新幹線さんようしんかんせん車両しゃりょうでは　バックアップ用ように予備よび指令しれい回路かいろを新設しんせつすることで補助ほじょブレーキは廃止はいししている。東北とうほく・上越新幹線じょうえつしんかんせん車両しゃりょうではE5系けい、E6系けい以降いこうでは補助ほじょブレーキは廃止はいししている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 電気でんき鉄道てつどうハンドブック編集へんしゅう委員いいん会かい 編へん『電気でんき鉄道てつどうハンドブック』コロナ社しゃ、2007年ねん。ISBN 978-4-339-00787-9。  pp.191 - 192