個人こじん崇拝すうはい

スターリンの個人こじん崇拝すうはい

個人こじん崇拝すうはい（こじんすうはい、英えい: Cult of personality）とは、個人こじんを崇拝すうはいの対象たいしょうに据すえる政治せいじ的てき行為こうい、またはその様式ようしきである。

定義ていぎ

ソビエト連邦れんぽう指導しどう者しゃニキータ・フルシチョフが1956年ねんに「個人こじん崇拝すうはいとその諸しょ結果けっかについて」（ロシア語ご: О культе личности и его последствиях）と題だいされた秘密ひみつ演説えんぜつで前ぜん指導しどう者しゃヨシフ・スターリンの政治せいじ体制たいせいをこう定義ていぎしたことで広ひろく知しられるようになった。

共産きょうさん主義しゅぎの個人こじん崇拝すうはい

一般いっぱん的てきに革命かくめいを経験けいけんした体制たいせい下かで起おこりやすく、とりわけ共産きょうさん主義しゅぎが権力けんりょくを握にぎった国々くにぐにでは、スターリンを手本てほんにしたことから、顕著けんちょに見みられる。共産きょうさん主義しゅぎの創始そうし者しゃであるカール・マルクスは生前せいぜんに自身じしんへの「個人こじん崇拝すうはい」を戒いましめており、政治せいじ的てきな意味合いみあいで初はじめてこの言葉ことばを使用しようした。ソ連それん外がいの共産きょうさん主義しゅぎ国こく・共産きょうさん主義しゅぎ政党せいとうには特とくにコミンテルンを通つうじて拡散かくさんされ、中国ちゅうごくの毛沢東もうたくとう、フランス共産党きょうさんとうのトレーズ、北朝鮮きたちょうせんの金きむ日成いるそん・金きむ正日じょんいる・金きむ正ただし恩おん（北朝鮮きたちょうせんの個人こじん崇拝すうはい）、ルーマニアのニコラエ・チャウシェスクなどのスターリン自身じしんが建国けんこく・創設そうせつを支援しえんした国くにや団体だんたい、トルクメニスタンのサパルムラト・ニヤゾフなど旧きゅうソ連それん構成こうせい国こく、イラクのサッダーム・フセイン、シリアのハーフィズ・アル＝アサド、リビアのムアンマル・アル＝カッザーフィーなどのアラブ社会しゃかい主義しゅぎを掲かかげた国々くにぐにの指導しどう者しゃなどが代表だいひょう的てき事例じれいとされる。第だい三さん世界せかいにおけるカリスマ的てき指導しどう者しゃや民族みんぞく主義しゅぎ運動うんどう指導しどう者しゃたちへの英雄えいゆう崇拝すうはい、ファシズム運動うんどうにおける指導しどう者しゃ原理げんりにも指導しどう者しゃ崇拝すうはいの様式ようしきが見みられる。

1956年ねんのソ連それんのフルシチョフによるスターリン批判ひはんは、党とうと国家こっかとの癒着ゆちゃく、党内とうない民主みんしゅ主義しゅぎや官僚かんりょう制せいの問題もんだいなどの議論ぎろんを回避かいひし、もっぱらスターリン個人こじんの粗暴そぼうな人格じんかくに責任せきにんを向むけたものであり、大だい粛清しゅくせいの原因げんいんも個人こじん崇拝すうはいの蔓延まんえんにのみ原因げんいんを求もとめた。このように個人こじん崇拝すうはい批判ひはんは、制度せいどや体制たいせいの問題もんだいを個人こじんの責任せきにんにすり替かえがちであるとされる。スターリンの死後しごもブレジネフ体制たいせいやウラジーミル・プーチン政権せいけんなどソ連それん・ロシア史しの長期ちょうき政権せいけんでスターリンを模倣もほうしたと思おもわれる個人こじん崇拝すうはいが見みられる。中国ちゅうごくでは文化ぶんか大だい革命かくめいという悲惨ひさんな結末けつまつを引ひき起おこした反省はんせいから鄧小平ひらたは個人こじん崇拝すうはいを厳きびしく禁きんじ、中国ちゅうごくでは個人こじん崇拝すうはいは禁止きんしされたが、習近平ひらた体制たいせいになってから個人こじん崇拝すうはいが復活ふっかつ傾向けいこうにある。

スターリン主義しゅぎを否定ひていした新しん左翼さよくも、ひとまわりして個人こじん崇拝すうはいに至いたることがある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 志水しみず速雄はやお 訳わけ『フルシチョフ秘密ひみつ報告ほうこく「スターリン批判ひはん」』講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、1978年ねん12月がつ10日とおか。NDLJP:12242178。