函館大はこだてだい経けい

函館はこだて大だい経けい（はこだてだいけい〈ひろつねと読よむこともある〉、弘ひろし化か4年ねん(1847年ねん) - 明治めいじ40年ねん(1907年ねん)）は、日本にっぽんのホースマンの始祖しそのひとりとされる人物じんぶつ。元もと大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん軍人ぐんじん、北海道ほっかいどう開拓かいたく使し職員しょくいん、北海道庁ほっかいどうちょう職員しょくいん。

日本にっぽん、とくに北海道ほっかいどうにおける馬術ばじゅつ・競馬けいば・馬うまの生産せいさんの発展はってんに大おおきく貢献こうけんし、現代げんだいでは「伝説でんせつの馬術ばじゅつ師し」ともしてい伝いつたえられる。蛯えび子こ末次郎すえじろう、深瀬ふかせ鴻ひろし堂どうとともに「函館はこだて三さん士し」のひとりに数かぞえられる。様似さまに場所ばしょ幌満ほろまん^[1]（現在げんざいの北海道ほっかいどう様似さまに郡ぐん様似さまに町まち）出身しゅっしん。出生しゅっしょう時じの氏名しめいは斎藤さいとう義三郎ぎさぶろうで、小野おの義三郎ぎさぶろう、箱はこ館たて義三郎ぎさぶろう、次ついで函館大はこだてだい経けいと改名かいめいした。

来歴らいれき

1847年ねん、斎藤さいとう源吉げんきち、ハル夫婦ふうふの四よん男おとことして生うまれる。やがて海産かいさん商しょう・小野市おのいち右みぎ衛門えもんの養子ようしとなり上京じょうきょう。昌平しょうへい坂ざか学問がくもん所しょにおいて栗本くりもと鋤雲じょううんの下したで漢学かんがくを学まなんだ。

明治めいじ政府せいふ誕生たんじょう後ごはその軍隊ぐんたい（陸軍りくぐん）に属ぞくし、1868年ねんよりフランスの軍人ぐんじんペルセルの下したで馬術ばじゅつを習得しゅうとく。陸軍りくぐん省しょう兵へい学寮がくりょうに所属しょぞくしていた1870年ねん、東京とうきょう招魂しょうこん社しゃ例れい大祭たいさいにおいて行おこなわれた天覧てんらん競馬けいばにおいて優すぐれた乗馬じょうば技術ぎじゅつを見みせ、横浜よこはまレース・クラブ所属しょぞくの外国がいこく人じん騎手きしゅとのマッチレースを制せいした。この活躍かつやくが明治天皇めいじてんのう（当時とうじ北海道ほっかいどう開拓かいたく使しの次官じかんであった黒田くろだ清隆きよたかとの説せつもある）の目めにとまったことがきっかけで、のちに開拓かいたく使し、次ついで北海道庁ほっかいどうちょうに採用さいようされ、湯地ゆち定基さだもとの下したで馬うまの生産せいさん技術ぎじゅつ向上こうじょう、馬術ばじゅつの普及ふきゅうにあたるようになった。また、この出来事できごとを境さかいに名なを「函館大はこだてだい経けい」と改あらためたという説せつがある。なお、大だい経けいと改名かいめい後ごも数すう回かい、明治天皇めいじてんのうの前まえで馬術ばじゅつを披露ひろうしている。

1881年ねん、時任ときとう為ため基もとの提案ていあんにより現在げんざいの函館はこだて市し海岸かいがん町まちで行おこなわれた競馬けいばに協力きょうりょくしたのをきっかけに定期ていき的てきな競馬けいば開催かいさいを目指めざすようになり、1883年ねん9月に北海ほっかい共同きょうどう競馬けいば会社かいしゃを筆頭ひっとう発起人ほっきにんとして設立せつりつ。北海ほっかい共同きょうどう競馬けいば会社かいしゃは海岸かいがん町まちに函館はこだて海岸かいがん町まち競馬けいば場じょうを開設かいせつし、翌よく10月がつに競馬けいばを開催かいさいした。同社どうしゃは1890年ねんに函館はこだて共同きょうどう競馬けいば会かいと名なを変かえ、1896年ねん、渡島ととう国こく亀田かめだ郡ぐん湯ノ川ゆのかわ村むら大字だいじ湯ノ川ゆのかわ字じ柏野かしの（現在げんざいの函館はこだて市し駒場こまんば町まち）に現在げんざいの函館はこだて競馬けいば場じょうを建設けんせつした。1903年ねんの函館はこだて共同きょうどう競馬けいば会かいでも役員やくいんを務つとめるなど長年ながねんにわたり函館はこだて競馬けいばの役員やくいんを務つとめる。

北海道庁ほっかいどうちょうを退官たいかん後ごは獣医じゅうい、蹄鉄ていてつ業ぎょうを営いとなみ、のちに「湯ゆの川かわ競馬けいば会社かいしゃ」に勤務きんむし、人々ひとびとに乗馬じょうば技術ぎじゅつを伝授でんじゅした。その卓抜たくばつした騎乗きじょう技術ぎじゅつは現在げんざいにも様々さまざまな逸話いつわとしてい伝いつたえられており、中なかには「糸いと乗のり伝説でんせつ」といい、絹糸けんし1本ほんで馬うまを御おしたという話はなしもある。

晩年ばんねん、馬うまに蹴けられた右足みぎあしが思おもうように動うごかなくなった（一説いっせつでは、牛うしに右足みぎあしを蹴けられて切断せつだんしたとも伝つたえられる）が、その後ごも技術ぎじゅつは健在けんざいで、難なんなく馬うまを乗のりこなしたという。

1907年ねんに死去しきょ。函館はこだて市内しないに墓所はかしょはある。

名前なまえの由来ゆらい

函館大はこだてだい経けいを名乗なのった経緯けいいについては諸説しょせつあるとのことであるが、2001年ねん『北海道ほっかいどう開拓かいたく記念きねん館かん調査ちょうさ報告ほうこく第だい40号ごう三浦みうら泰之やすゆき「函館大はこだてだい経けい氏しノ談話だんわ」－河野こうの常吉つねきちのき取きとりから』によると明治めいじ39年ねんのき取きとりとして、大だい経けい本人ほんにんが「慶喜よしのぶ公こうが江戸えどへお帰かえりになつて上野うえのに謹慎きんしんせられてゐる時とき、私わたしは護衛ごえいの一人ひとりとなつて仕つかまつへましたが、慶喜よしのぶ公おおやけハ私わたしが函館はこだて出身しゅっしんの故ゆえを以もって私わたしを函館はこだて、々々と御呼およびになりましたので、遂とげひ私わたしも改姓かいせいする気きになり母方ははかたの縁故えんこなと申立もうしたてて、函館はこだてと改あらためました。」と語かたったとのことであり、時期じきと動機どうきが示しめされている。

出典しゅってん不明ふめいながら、諸説しょせつも示しめす。

明治天皇めいじてんのうからの下賜かし品ひんを辞退じたいした際さい、代かわりに函館はこだて姓せいを与あたえられた。
北海道ほっかいどうを視察しさつ中ちゅうの明治天皇めいじてんのうの目めにとまり、函館はこだて姓せいを与あたえられた。
前出ぜんしゅつ天覧てんらん競馬けいばにおいて明治天皇めいじてんのう（もしくは黒田くろだ清隆きよたか）の目めにとまり、大だい経けい（当時とうじは小野おの義三郎ぎさぶろう）について尋たずねた。側近そっきんが「あれは函館はこだての小野おの（斎藤さいとうと言いったという説せつもあり)と申もうします」と答こたえたところ、「函館はこだてか。大慶たいけい至極しごくである。」と言いったエピソードを誉ほまれに思おもった義三郎ぎさぶろうが自みずから改名かいめいした。

函館大はこだてだい経けいの系譜けいふ

親族しんぞく

第だい1回かい東京とうきょう優ゆう駿しゅん大だい競走きょうそう（現在げんざいの日本にほんダービー）をワカタカ号ごうで騎手きしゅとして制せいした函館はこだて孫作まごさくは、大だい経けいの養子ようし（血縁けつえんでは大だい経けいの実弟じってい）である函館大はこだてだい次じの婿養子むこようしである。

なお、競馬けいば界かいにおいて著名ちょめいな門弟もんていとその系統けいとうの多おおくは中央ちゅうおう競馬けいばの組織そしきに属ぞくしているが、中央ちゅうおう競馬けいばの騎手きしゅおよび調教ちょうきょう師しには函館はこだて姓せいを持もつ者ものは2013年ねん現在げんざいいない。函館はこだて孫まご作さくや孫作まごさくの婿養子むこようしの政せい一いちなどが戦後せんごは地方ちほう競馬けいばの船橋競馬場ふなばしけいばじょうで厩舎きゅうしゃを開業かいぎょうしていた事こともあり、現在げんざいは船橋競馬場ふなばしけいばじょうに孫まご作さくの養子ようし（血縁けつえんでは孫まご）である函館はこだて一昭かずあき調教ちょうきょう師しがいるのみとなっている（2004年ねんまでは同おなじく船橋競馬場ふなばしけいばじょうに函館はこだて喜弘よしひろ調教ちょうきょう師し〈孫作まごさくの養子ようし、血縁けつえんでは孫まご〉がいたが、2004年ねん6月がつ7日にちに管理かんり馬ばに腹部ふくぶを蹴けられる事故じこに遭あい死去しきょ）。

一門いちもん

大だい経けいの門下生もんかせいからは、日本にっぽんの近代きんだい競馬けいばを支ささえたホースマンが数多かずおおく育そだった。現在げんざいもその流ながれを汲くむホースマンは中央ちゅうおう競馬けいば、地方ちほう競馬けいば、生産せいさん者しゃなどに数多かずおおく存在そんざいしており、日本にっぽん国内こくないでも最古さいこかつ最大さいだい級きゅうのホースマンの系譜けいふのひとつである。

たとえば武たけ豊ゆたかは武たけ彦七ひこしちの、大久保おおくぼ正ただし陽ひ、大久保おおくぼ龍りゅう志こころざしは大久保おおくぼ福松ふくまつの子孫しそんである。また、戦後せんごの地方ちほう競馬けいばにも大だい経由けいゆ来らいの系譜けいふは存在そんざいし、たとえば石崎いしざき隆之たかゆきは師弟してい関係かんけいの系譜けいふを辿たどれば出川でがわ己代みよ造づくり、谷口たにぐち源はじめ吾われ、大久保おおくぼ房松ふさまつ、函館大はこだてだい次じと遡さかのぼり、大だい経けいに辿たどり着つく。