更始こうし帝みかど

更始こうし帝みかど 劉りゅう玄げん
漢かん
皇帝こうてい
王朝おうちょう	漢かん
在位ざいい期間きかん	23年ねん2月がつ - 25年ねん9月
都城みやこのじょう	洛陽らくよう→長安ながやす
姓せい・諱いみな	劉りゅう玄げん
字じ	聖ひじり公こう
生年せいねん	不ふ詳しょう
没年ぼつねん	25年ねん12月
父ちち	劉りゅう子こ張ちょう
母はは	何なに氏し
陵墓りょうぼ	覇は陵りょう
年号ねんごう	更始こうし : 23年ねん - 25年ねん

更始こうし帝みかど（こうしてい）は、新しん末すえ後ご漢かん初はつの緑林りょくりん軍ぐんによる更始こうし政権せいけんの皇帝こうてい。姓せいは劉りゅう、諱いみなは玄げん、字じは聖ひじり公こう。荊州南陽なんよう郡ぐん蔡陽県けん（湖北こほく省しょう棗なつめ陽よう市し）の人ひと。元来がんらいは前漢ぜんかんの宗室そうしつである。曽そ祖父そふは舂うす陵りょう侯こう劉りゅう熊くま渠みぞ。祖父そふは劉りゅう利とし。父ちちは劉りゅう子こ張ちょう。母ははは何なに氏し。後こう漢かんの光武みつたけ帝みかど（劉りゅう秀しげる）の曽そ祖父そふの劉りゅう外がいは劉りゅう熊くま渠みぞの弟おとうとにあたるため、光武みつたけ帝みかどの族ぞく兄けいにあたる。夫人ふじんは趙ちょう萌もえの娘むすめと平林ひらばやし軍ぐんの豪族ごうぞくの娘むすめの韓かん氏し。弟おとうとは劉りゅう騫。従兄弟いとこは劉りゅう顕あらわ・劉りゅう賜たまもの。子こは劉りゅう求もとむ（成なり陽ひ侯こう）・劉りゅう歆（穀こく熟じゅく侯こう）・劉りゅう鯉こい（寿光としみつ侯こう）。孫まごは劉りゅう巡じゅん（劉りゅう求もとむの子こ）。曽そ孫まごは劉りゅう姚（劉りゅう巡じゅんの子こ）。

生涯しょうがい

『後こう漢書かんしょ』劉りゅう賜たまもの伝でん註の『続ぞく漢書かんしょ』の引用いんようによれば、まず酔よっ払ぱらった釜がま亭てい侯こう長ちょうが、劉りゅう玄げんの父ちちの劉りゅう子こ張はりを罵ののしり、劉りゅう子こ張はりは怒おこってこの釜がま亭てい侯こう長ちょうを刺殺さしころした。次つぎに十じゅう余よ年ねん後ご、この釜がま亭てい侯こう長ちょうの子こが復仇ふっきゅうとして劉りゅう玄げんの弟おとうとの劉りゅう騫を殺害さつがいした。劉りゅう玄げんはこの仇かたきを報むくいんと賓客ひんきゃくと結託けったくしたが、あろうことか賓客ひんきゃくが法ほうを犯おかし劉りゅう玄げんも平林ひらばやしに逃のがれた。役人やくにんは劉りゅう子こ張はりを獄ごくに繋つなぎ、劉りゅう玄げんは死しせる真似まねをし、喪もを行おこなわせて舂うす陵りょうに帰かえり、役人やくにんに劉りゅう子こ張はりを出ださせ、世間せけんから隠かくれた。

地ち皇すめらぎ3年ねん（22年ねん）、緑林りょくりんの乱らんが発生はっせいすると陳ちん牧まきが率ひきいる平林ひらばやし軍ぐんに参加さんかする。緑林りょくりん兵へいは疫病えきびょうのため新市しんいち軍ぐんと下江しもえ軍ぐんに分わかれるが、新市しんいち軍ぐんと平林ひらばやし軍ぐん、更さらに劉りゅう縯の舂うす陵りょう軍ぐんは連合れんごうし、また下江しもえ軍ぐんも加くわわった農民のうみん豪族ごうぞく連合れんごう軍ぐんとなった。23年ねん正月しょうがつ、連合れんごう軍ぐんは新しんの前ぜん隊たい大夫たいふ（新制しんせいの南陽なんよう太守たいしゅ）甄阜・前ぜん隊たい属ぞく正ただし（新制しんせいの南陽なんよう都と尉じょう）梁りょう丘たかし賜たまものを打うち破やぶり、この時点じてんで劉りゅう玄げんは更始こうし将軍しょうぐんを自称じしょうした。更さらに2月がつ、実績じっせきのある有能ゆうのうな劉りゅう縯を擁立ようりつすると自みずからの勢力せいりょくが弱体じゃくたい化かすることを恐おそれた新市しんいち・平林ひらばやし軍ぐんの部将ぶしょうらにより、平林ひらばやし軍ぐん出身しゅっしんの劉りゅう玄げんが更始こうし帝みかどとして擁立ようりつされ、更始こうしの元号げんごうを建たてた。

6月がつ、連合れんごう軍ぐん・漢かん軍ぐんが昆陽こやの戦たたかいで劉りゅう縯の弟おとうとの劉りゅう秀しげるによる大だい勝利しょうりを収おさめた後のち、更始こうし帝みかどは劉りゅう縯によって降くだされた宛あて城じょうに入はいり、宗室そうしつ諸しょ将しょうに対たいする冊さつ封ふうを行おこなった。この月つき、更始こうし帝みかどは威名いめいを恐おそれ劉りゅう縯らを騙だまし誅殺ちゅうさつした。

また、更始こうし帝みかどは王おう匡ただしを派遣はけんして洛陽らくようを、申さる屠ほふ建けん・李り松まつを派遣はけんして武たけ関せきを攻せめ長安ながやすを目指めざし、一方いっぽう汝なんじ南みなみで天子てんしを称しょうした劉りゅう望のぞむには劉りゅう賜たまものを派遣はけんした。新しん朝あさの滅亡めつぼうを実感じっかんした地方ちほう勢力せいりょくは王おう莽の派遣はけんした牧まき守まもるを殺害さつがいし、更始こうしの元号げんごうを使用しようするようになった。9月、更始こうし帝みかど陣営じんえいがついに長安ながやす・洛陽らくようを陥落かんらくさせ、王おう莽の首級しゅきゅうを得えている。10月には劉りゅう信しんが劉りゅう望のぞむを破やぶり、更始こうし帝みかどは洛陽らくよう遷都せんとを行おこない更始こうし2年ねん（24年ねん）2月がつに長安ながやす遷都せんとを行おこなった。

長安ながやす遷都せんと後ごの更始こうし帝みかどは奢侈しゃしな宮廷きゅうてい生活せいかつに染そまり、即位そくいの朝政ちょうせいを夫人ふじんの父ちちの趙ちょう萌もえに一任いちにんしてその専権せんけんを放任ほうにんした。赤あか眉まゆ軍ぐんが長安ながやすに迫せまった際さいに、張ちょう卬・廖湛・胡えびす殷いん・申さる屠ほふ建けんと隗囂は謀議ぼうぎし、更始こうし帝みかどを脅おどして南陽なんように還かえることを謀たばかる。これが更始こうし帝みかどの耳みみに入はいり、5人にんは召めされた。隗囂は事ことが漏もれたと悟さとって館かんに籠こもり、召めされた4人にんのうち3人にんは異常いじょうに気付きづき脱出だっしゅつし、それでも残のこった申さる屠ほふ建けんは斬きられた。隗囂は天水てんすいに逃走とうそう、残のこり3人にん（三さん王おう：淮陽王おう張ちょう卬・穣みのる王おう廖湛・隨ずい王おう胡えびす殷いん）は長安ながやすで謀反むほんを起おこして、逆ぎゃくに更始こうし帝みかどを長安ながやすから逃走とうそうさせた。

新豊しんゆたかに逃にげた劉りゅう玄げんは次第しだいに疑心暗鬼ぎしんあんきへと陥おちいり王おう匡ただし・陳ちん牧まき・成なり丹にをも逆臣ぎゃくしんと疑うたがい、陳ちん牧まきと成なり丹にを斬きり、逃にげた王おう匡ただしは長安ながやすの張ちょう卬らと連合れんごうした。更始こうし帝みかどと李り松まつ・趙ちょう萌もえは長安ながやすを襲おそい、王おう匡ただし・張ちょう卬らは脱出だっしゅつして赤あか眉まゆ軍ぐんに入はいった。

更始こうし3年ねん（25年ねん）9月がつ、赤あか眉まゆ軍ぐんが長安ながやすに侵入しんにゅうすると、更始こうし帝みかどはまたも長安ながやすを脱出だっしゅつする羽目はめになり、一いち騎きだけで高陵こうりょうに逃のがれた。翌月よくげつ、降伏ごうぶくすれば長ちょう沙すな王おうに封ふうじるという赤あか眉まゆ軍ぐんに投降とうこうし、璽綬を赤あか眉まゆ軍ぐんが擁立ようりつした皇帝こうてい劉りゅう盆ぼん子こに譲ゆずった。赤あか眉まゆの総帥そうすい樊崇らは劉りゅう玄げんの殺害さつがいを企くわだてていたが、劉りゅう盆ぼん子この兄あにの劉りゅう恭きょうが命乞いのちごいをして畏かしこ威い侯こうに、さらに長ちょう沙すな王おうに封ふうじられた。しかし、後難こうなんを恐おそれた降くだ将しょうの張ちょう卬が赤あか眉まゆ軍ぐんの武将ぶしょう謝しゃ禄ろくを唆そそのかし、12月に劉りゅう玄げんは謝しゃ禄ろくに殺害さつがいされた。その屍かばねは劉りゅう恭きょうが収容しゅうようした。

死後しご、光武みつたけ帝みかどによって淮陽王おうを追贈ついぞうされ、光武みつたけ帝みかどの大だい司つかさ徒と鄧禹に覇は陵りょう（現在げんざいの陝西せんせい省しょう西安しーあん市し灞橋区く）に埋葬まいそうされた。3人にんの息子むすこは列侯れっこうに封ふうじられた。

人柄ひとがら・逸話いつわ

史書ししょによれば劉りゅう玄げんは平たいら庸いさお（凡庸ぼんよう）であり、その性格せいかくも懦弱だじゃくであったという。

注釈ちゅうしゃく

【新しん末すえ後ご漢かん初はつの劉りゅう氏し】（編集へんしゅう）

高祖こうそ 劉邦りゅうほう

斉ひとし王おう 劉りゅう肥こえ

恵めぐみ帝みかど 劉りゅう盈みつる

文ぶん帝みかど 劉りゅう恒ひさし

城陽じょうよう王おう 劉りゅう章あきら

景けい帝みかど 劉りゅう啓あきら

梁はり王おう 劉りゅう武たけし

長ちょう沙すな王おう 劉りゅう発はつ

武たけ帝みかど 劉りゅう徹とおる

長ちょう沙すな王おう 劉りゅう庸いさお

舂うす陵りょう侯こう 劉りゅう買かい

宣せん帝みかど 劉りゅう詢

舂うす陵りょう侯こう 劉りゅう熊くま渠みぞ

鬱うつ林りん太守たいしゅ 劉りゅう外がい

元もと帝みかど 劉りゅう奭

成なり帝みかど 劉りゅう驁

(赤あか眉まゆ)皇帝こうてい 劉りゅう盆ぼん子こ

鍾武侯こう 劉りゅう望のぞむ

更始こうし帝みかど 劉りゅう玄げん

(追おい)斉ひとし王おう 劉りゅう縯

(後ご1)光武みつたけ帝みかど 劉りゅう秀しげる

王おう郎ろう？

*孺子じゅし 劉りゅう嬰

厳いむ郷さと侯こう 劉りゅう信しん

梁はり王おう 劉りゅう永ひさし

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