助産じょさん所しょ

助産じょさん所しょ（じょさんじょ、じょさんしょ、英語えいご: Maternity home）は、助産じょさん師しが助産じょさん（分娩ぶんべんの手助てだすけ）を行おこなう場所ばしょ、又または妊にん婦ふ・褥しとね婦ふもしくは新生児しんせいじの保健ほけん指導しどうなどを行おこなう場所ばしょとして適法てきほうに設置せっちされた施設しせつをいう。日本にっぽんでは、その法的ほうてき根拠こんきょは医療いりょう法ほう第だい2条じょうにあり、「助産じょさん師しが公衆こうしゅう又または特定とくてい多数たすう人じんのためその業務ぎょうむ（病院びょういん又または診療しんりょう所しょにおいて行おこなうものを除のぞく。）を行おこなう場所ばしょをいう」と規定きていされる。一般いっぱんには助じょ産院さんいん（じょさんいん）と呼よばれることもある。児童じどう福祉ふくし法ほうに定さだめられる助産じょさん施設しせつ（じょさんしせつ）についてもここで扱あつかう。

同様どうように助産じょさんを行おこなう施設しせつとしては、病院びょういん・診療しんりょう所しょの産科さんか・産婦人科さんふじんかがある。

助産じょさん所しょで行おこなわれる業務ぎょうむ

→詳細しょうさいは「助産じょさん師し § 業務ぎょうむ」を参照さんしょう

助産じょさん所しょで行おこなわれるのは、助産じょさん師しの業務ぎょうむ、すなわち分娩ぶんべんの補助ほじょや妊産婦にんさんぷ・新生児しんせいじの保健ほけん指導しどうである。助産じょさん所しょは診療しんりょう所しょとは異ことなり、医療いりょう行為こういを目的もくてきとしない。このため、医師いしは常駐じょうちゅうしておらず、助産じょさん所しょでは医療いりょう行為こういを行おこなうことができない。したがって、診察しんさつ等とうの医療いりょう行為こういが必要ひつような場合ばあいは、助産じょさん所しょが嘱託しょくたくする医師いし・医療いりょう機関きかん（病院びょういん・診療しんりょう所しょ）によって適宜てきぎ行おこなわれることになる。

設置せっち管理かんり

名称めいしょう

「助産じょさん所しょ」の名称めいしょうは、助産じょさん師しの名称めいしょうと同様どうように、いわゆる名称めいしょう独占どくせんになっている。すなわち、助産じょさん師しがその業務ぎょうむを行おこなう場所ばしょではない施設しせつは、助産じょさん所しょもしくはこれと紛まぎらわしい名称めいしょうを用もちいることが禁きんじられている（医療いりょう法ほう第だい3条じょう）。

開設かいせつ

助産じょさん師し個人こじんによる開設かいせつ

個人こじんの助産じょさん師しが助産じょさん所しょを開設かいせつする手続てつづきは、事後じご的てきな届出とどけで制せいである。助産じょさん師しが助産じょさん所しょを開設かいせつしたときは、開設かいせつ後ご10日とおか以内いないに「開設かいせつ届とどけ」を、開設かいせつした場所ばしょを管轄かんかつする行政ぎょうせい庁ちょうあてに「開設かいせつ届とどけ」を提出ていしゅつしなければならないとされている。「届出とどけで」は開設かいせつ届とどけが窓口まどぐちで受理じゅりされることにより完了かんりょうする。すなわち、提出ていしゅつしようとする届出とどけで書面しょめんに、医療いりょう法ほうの要求ようきゅうする事項じこうを欠かくなど内容ないよう的てきな不備ふびがある場合ばあいや、形式けいしき的てきに著いちじるしい不備ふびがある場合ばあいを除のぞけば、行政ぎょうせい手続てつづき法ほう第だい37条じょうにより、助産じょさん所しょ開設かいせつの届出とどけで義務ぎむは履行りこうされたことになるのである。届出とどけでであるため、行政ぎょうせい庁ちょうによる事前じぜんの許可きょかや認可にんかを要ようする手続てつづきと異ことなり、行政ぎょうせいの審査しんさを経へて審査しんさの可否かひが決定けっていされる性質せいしつのものではない。

但ただし、開設かいせつする助産じょさん所しょが入所にゅうしょ施設しせつを持もつ場合ばあいは、事前じぜんに入所にゅうしょ設備せつびの使用しよう許可きょかを申請しんせいし、その許可きょかを得えない限かぎりは、設備せつびを使用しようすることはできない。

助産じょさん所しょを休止きゅうし、再開さいかい、又または廃止はいししたときは、開設かいせつ者しゃはその日ひより10日とおか以内いないにその旨むねを行政ぎょうせい庁ちょうに届とどけ出でなければならない。

助産じょさん師しの業務ぎょうむ形態けいたいには、特定とくていの施設しせつを設もうけずに、助産じょさんのために産婦さんぷのもとに出向でむいて行おこなうものもある。助産じょさん師しがこのように出張しゅっちょう専せん門もんで業務ぎょうむを行おこなう場合ばあいには、助産じょさん師しの住所じゅうしょを助産じょさん所しょとみなされる（医療いりょう法ほう第だい5条じょう）。

助産じょさん師しでない者ものによる開設かいせつ

助産じょさん師し個人こじんでない者もの（法人ほうじん）が助産じょさん所しょを設置せっちすることも可能かのうであり通常つうじょうは医療いりょう法人ほうじん若もしくは社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんなど病院びょういん等とうの医療いりょう機関きかんによる開設かいせつが想定そうていされている。
この場合ばあいは、上記じょうきのような事後じご手続てつづきではなく、あらかじめ助産じょさん所しょの開設かいせつの許可きょかを申請しんせいし、開設かいせつ許可きょかを受うけた後のちに開設かいせつすることになる。開設かいせつ後ご、10日とおか以内いないに開設かいせつ届とどけを行政ぎょうせい庁ちょうあてに提出ていしゅつする点てんは個人こじん開設かいせつの場合ばあいと同様どうようである。

ただ、その開設かいせつ目的もくてきが営利えいり目的もくてきである場合ばあいは、行政ぎょうせい庁ちょうは助産じょさん所しょ開設かいせつを許可きょかしなくてよいとされ（医療いりょう法ほう第だい7条じょう第だい5項こう）、診療しんりょう所しょ・病院びょういんと同様どうように非ひ営利えいり性せいが貫徹かんてつされている。このため、現実げんじつには株式会社かぶしきがいしゃによる助産じょさん所しょ開設かいせつは認みとめられていない。

入所にゅうしょ設備せつびの使用しよう許可きょか、休止きゅうし、再開さいかい、廃止はいしの手続てつづきについては個人こじん開設かいせつの助産じょさん所しょと同様どうようである。

施設しせつ基準きじゅん

助産じょさん所しょは、換気かんき、採光さいこう、照明しょうめい、防湿ぼうしつ、保安ほあん、避難ひなんなどの面めんで適切てきせつさを確保かくほしていなければならない。その基準きじゅんは医療いりょう法ほう施行しこう規則きそく第だい17条じょうに定さだめられている。このほか、建築けんちく基準きじゅん法ほう等ひとしの関係かんけい諸しょ法令ほうれいに従したがう。入所にゅうしょ施設しせつ（ベッド）を設もうける助産じょさん所しょは、開設かいせつ許可きょかとともにその構造こうぞう設備せつびの使用しよう許可きょかをうける必要ひつようがある。助産じょさん所しょには妊にん婦ふ・産婦さんぷ・褥しとね婦ふの入所にゅうしょ施設しせつ（ベッド）を10以上いじょう設もうけることは禁きんじられている（緊急きんきゅう性せいのある場合ばあいには、10名めい以上いじょうを受うけ入いれることは可能かのうである）。また、社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん助産じょさん師し会かいでは、「助産じょさん所しょの安全あんぜん管理かんり基準きじゅん」を自主じしゅ的てきに制定せいていしている。

管理かんり

助産じょさん師し個人こじんが自みずから助産じょさん所しょを設置せっちした場合ばあいは、その管理かんりは当該とうがい助産じょさん師し個人こじんが行おこなうことが義務付ぎむづけられている。また、開設かいせつ者しゃが法人ほうじんの場合ばあい、助産じょさん所しょの管理かんり者しゃには助産じょさん師しを充あて、その助産じょさん師しが管理かんりをしなければならない。これは、診療しんりょう所しょ・病院びょういんと同様どうようである。また、原則げんそくとして、1管理かんり者しゃが管理かんりできる助産じょさん所しょ数すうは1か所しょに限かぎられる。例外れいがい的てきに、行政ぎょうせい庁ちょうの許可きょかを得えて2か所しょ管理かんりが認みとめられることがあるが、これは現実げんじつには僻地へきち・島嶼とうしょなどでの特殊とくしゅ事情じじょうを勘案かんあんして行政ぎょうせい裁量さいりょうで許ゆるされるもの（許可きょか）であり、常つねに認みとめられるものではない。

また、医療いりょう行為こういを嘱託しょくたくする医師いしを1名めい以上いじょう定さだめておくことが医療いりょう法ほうで要求ようきゅうされている。これは、医師いしが当該とうがい助産じょさん所しょに勤務きんむ（常勤じょうきん・非常勤ひじょうきんを問とわない）することが要求ようきゅうされているのではなく、あくまでも嘱託しょくたくでよい。

広告こうこく

→「医業いぎょうの広告こうこく規制きせい」も参照さんしょう

助産じょさん所しょの広告こうこくは医療いりょう法ほうによって規制きせいされ、文書ぶんしょその他たいかなる方法ほうほうであっても以下いかの事項じこう以外いがいを広告こうこくすることはできない（医療いりょう法ほう第だい6条じょうの７）。

• 助産じょさん師しである旨むね
• 助産じょさん所しょの名称めいしょう、電話でんわ番号ばんごう及および所在しょざいの場所ばしょを表示ひょうじする事項じこう並ならびに助産じょさん所しょの管理かんり者しゃの氏名しめい
• 就業しゅうぎょうの日時にちじ又または予約よやくによる業務ぎょうむの実施じっしの有無うむ
• 入所にゅうしょ施設しせつの有無うむ若もしくはその定員ていいん、助産じょさん師しその他たの従業じゅうぎょう者しゃの員数いんずうその他たの当該とうがい助産じょさん所しょにおける施設しせつ、設備せつび又または従業じゅうぎょう者しゃに関かんする事項じこう
• 当該とうがい助産じょさん所しょにおいて業務ぎょうむに従事じゅうじする助産じょさん師しの氏名しめい、年齢ねんれい、役職やくしょく、略歴りゃくれきその他たの助産じょさん師しに関かんする事項じこうであつて医療いりょうを受うける者ものによる医療いりょうに関かんする適切てきせつな選択せんたくに資しするものとして厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめるもの
• 患者かんじゃ又またはその家族かぞくからの医療いりょうに関かんする相談そうだんに応おうずるための措置そち、医療いりょうの安全あんぜんを確保かくほするための措置そち、個人こじん情報じょうほうの適正てきせいな取扱とりあつかいを確保かくほするための措置そちその他たの当該とうがい助産じょさん所しょの管理かんり又または運営うんえいに関かんする事項じこう
• 第だい19条じょうに規定きていする嘱託しょくたくする医師いしの氏名しめい又または病院びょういん若もしくは診療しんりょう所しょの名称めいしょうその他たの当該とうがい助産じょさん所しょの業務ぎょうむに係かかる連携れんけいに関かんする事項じこう
• 助産じょさん録ろくに係かかる情報じょうほうの提供ていきょうその他たの当該とうがい助産じょさん所しょにおける医療いりょうに関かんする情報じょうほうの提供ていきょうに関かんする事項じこう
• その他た前ぜん各号かくごうに掲かかげる事項じこうに準じゅんずるものとして厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめる事項じこう

福祉ふくし施設しせつとしての助産じょさん施設しせつ

異常いじょう分娩ぶんべんのおそれがある・住居じゅうきょ内ないが不衛生ふえいせいで出産しゅっさんの介助かいじょ者しゃもいないなど、医学いがく上じょう・保健ほけん上じょうの理由りゆうで、妊産婦にんさんぷが助産じょさんを受うける必要ひつようがある場合ばあいがある。しかし、このような状況じょうきょうにある妊産婦にんさんぷが、金銭きんせん的てきに困窮こんきゅうしている・生活せいかつ保護ほごを受給じゅきゅうしているなどの経済けいざい的てきな理由りゆうによって助産じょさん所しょで病院びょういん・診療しんりょう所しょ等とうの医療いりょう機関きかんで助産じょさんを受うけることができない場合ばあいがある。

児童じどう福祉ふくし法ほうでは、こうした環境かんきょうにある女性じょせいが医学いがく上じょう・保健ほけん上じょう安全あんぜんに出産しゅっさんできるように、出産しゅっさんを援助えんじょする施設しせつとして、「助産じょさん施設しせつ」を設もうけており（同どう法ほう第だい36条じょう）、同どう法ほう第だい22条じょうで、必要ひつような妊産婦にんさんぷから申もうし出でがあったときには助産じょさん施設しせつに入所にゅうしょさせる制度せいどを定さだめている。したがって、この制度せいどの利用りようが必要ひつようだと考かんがえる妊産婦にんさんぷは、この制度せいどの実施じっし主体しゅたいである都道府県とどうふけん、市し及および福祉ふくし事務所じむしょを設置せっちする町村ちょうそんに対たいし申もうし出でて、助産じょさん施設しせつに入所にゅうしょすることができる。制度せいどの利用りようは申請しんせい主義しゅぎ、つまり妊産婦にんさんぷからの申請しんせいがあって初はじめて自治体じちたいが入所にゅうしょ措置そちを行おこなうものである。

助産じょさん施設しせつは、助産じょさん所しょ（で入所にゅうしょ可能かのうなベッドのあるもの）や病院びょういん（医療いりょう法ほう上じょうの病院びょういん。病床びょうしょう数すう20床しょう以上いじょう）と異ことなる独立どくりつした施設しせつではなく、一般いっぱんには、病院びょういんの産科さんか病棟びょうとうの病床びょうしょうの一部いちぶ、及および助産じょさん所しょの一部いちぶが助産じょさん施設しせつとされている。児童じどう福祉ふくし施設しせつ最低さいてい基準きじゅん第だい15条じょうによって、助産じょさん施設しせつは、病院びょういんであるものを第だい一種いっしゅ助産じょさん施設しせつ、助産じょさん所しょであるものを第だい二に種しゅ助産じょさん施設しせつという。

助産じょさん施設しせつになっている病床びょうしょうや助産じょさん所しょは、一般いっぱんの妊産婦にんさんぷよりも、児童じどう福祉ふくし法ほう22条じょうによる入所にゅうしょ措置そちを受うけた妊産婦にんさんぷを優先ゆうせんして入所にゅうしょさせなければならない。とはいっても、第だい一種いっしゅ助産じょさん施設しせつは通常つうじょうは一般いっぱんの産婦人科さんふじんか病棟びょうとうの一部いちぶであり、助産じょさん施設しせつとしての専従せんじゅう職員しょくいん（医師いし、助産じょさん師し、看護かんご師しなど）が配置はいちされているわけではなく、入所にゅうしょ後ごは一般いっぱんの入院にゅういん者しゃと同様どうように処遇しょぐうされる。

第だい二に種しゅ助産じょさん施設しせつは、助産じょさん所しょがあてられるが、児童じどう福祉ふくし施設しせつ最低さいてい基準きじゅん第だい17条じょうにより、

• 一人ひとり以上いじょうの専任せんにん又または嘱託しょくたくの助産じょさん師しを置おかなければならない。
• 嘱託しょくたく医いは、産婦人科さんふじんかの診療しんりょうに相当そうとうの経験けいけんを有ゆうする者ものでなければならない。

と、医療いりょう法ほうにおける基準きじゅんよりも厳きびしい基準きじゅんが定さだめられている。

関連かんれん項目こうもく

• 看護かんご師し・保健ほけん師し
• 保健ほけん師し助産じょさん師し看護かんご師し法ほう
• 妊娠にんしん・出産しゅっさん・分娩ぶんべん
• 生活せいかつ保護ほご

外部がいぶリンク

• 医療いりょう法ほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
• 日本にっぽん助産じょさん師し会かい
• 大阪おおさか府ふぴぴっとねっと - 助産じょさん所しょの開設かいせつ手続てつづきの解説かいせつ