勢いきおい揃そろい坂ざか

勢いきおい揃そろい坂ざか

勢いきおい揃そろい坂ざか（せいぞろいざか）は、東京とうきょう都と渋谷しぶや区くにある坂さかである。渋谷しぶや区内くないに残のこる古道ふるみちのひとつ。俗ぞくに源みなもと氏し坂ざか（げんじざか）とも呼よばれた。

概要がいよう

勢いきおい揃そろい坂ざかは、現在げんざいの住所じゅうしょで渋谷しぶや区く神宮前じんぐうまえ二に丁目ちょうめの旧きゅう國學院大學幼児教育専門学校こくがくいんだいがくようじきょういくせんもんがっこう（現在げんざいは國學院高等学校こくがくいんこうとうがっこう第だい二に記念きねん館かん）とその向むかいの龍りゅう巌いわお寺てらのあいだを登のぼって、熊野くまの神社じんじゃ（青山あおやま熊野くまの神社じんじゃ）前まえに至いたる坂道さかみちである。勢いきおい揃そろい坂ざかは緩ゆるい勾配こうばいの坂さかで、渋谷しぶや区内くないに残のこる古道ふるみちのひとつである。勢いきおい揃そろい坂ざかの西側にしがわには、1964年ねん東京とうきょうオリンピックの開催かいさいに合あわせて整備せいびされた外苑がいえん西にし通どおり（キラー通どおり）が並なみ走そうしており、現在げんざいの勢いきおい揃そろい坂ざかは交通こうつうの少すくない裏通うらどおりとなっている。

この坂さかはかつて鎌倉かまくら道どう（鎌倉かまくら街道かいどう）の一部いちぶであったとの説せつもある古ふるい坂道さかみちで、勢いきおい揃そろい坂ざかの名なは後こう三さん年ねんの役やくの際さいに奥州おうしゅうへ出陣しゅつじんする八幡やはた太郎たろう義ぎ家かが永えい保たもつ3年ねん（1083年ねん）、ここで軍勢ぐんぜいを揃そろえたとのい伝いつたえによる。このときに従軍じゅうぐんした武士ぶしのなかには、桓武かんむ平たいら氏し良文よしふみの嫡流ちゃくりゅうにあたり渋谷しぶや氏しの祖そでもある秩父ちちぶ十郎じゅうろう武たけ綱つながおり、参さん陣じんして手柄てがらを立たてたという伝説でんせつもある。

勢いきおい揃そろい坂ざか沿ぞいには近衛このえ歩あゆみ兵へい第だい四よん連隊れんたい跡あとに建たつ國學院高等学校こくがくいんこうとうがっこうのほか、龍りゅう巌いわお寺てら（竜りゅう巌いわお寺てら）や慈光寺じこうじといった寺院じいんがある。また、坂さかの東側ひがしがわ一帯いったいは都営とえい原宿はらじゅくアパートであるが、一説いっせつでは現在げんざいの勢いきおい揃そろい坂ざかよりも二に・三さん丁ちょう東南とうなんにあたる青山あおやま往還おうかんに出でるあたりが元々もともとの勢いきおい揃そろい坂ざかであったともいわれる。

龍りゅう巌いわお寺てら

竜りゅう巌いわお寺てら

青山あおやま円座えんざ松まつ
葛飾かつしか北斎ほくさい 『富岳ふがく三さん十じゅう六ろく景けい』

龍りゅう巌いわお寺てら（りゅうがんじ、竜りゅう巌いわお寺てら）は、勢いきおい揃そろい坂ざかの途中とちゅうにあって古風こふうな山門さんもんを持もつ、臨済宗りんざいしゅうの寺てらである。山号さんごうを古こ碧あお山やまという。

かつて龍りゅう厳いわお寺てらには松まつの名木めいぼく、『笠松かさまつ』、またの名なを『円座えんざの松まつ』があった。この松まつは江戸えど時代じだいには葛飾かつしか北斎ほくさいの浮世絵うきよえ（「青山あおやま円座えんざ松まつ」）や歌川うたがわ広重ひろしげ（「竜りゅう巌いわお寺てら円座えんざの松まつ」）に描えがかれ、『江戸えど名所めいしょ図会ずえ』にも取とり上あげられる名所めいしょであった。

龍りゅう巌いわお寺てらの山門さんもんを入はいって右手みぎての奥おくには、八幡やはた太郎たろう義ぎ家かが腰こしを掛かけたと伝つたえられる石いし「腰掛こしかけ石せき」が残のこっている。義ぎ家かはこの寺てらの天満てんま宮みやで出陣しゅつじんの連句れんくをやって社前やしろまえに奉納ほうのうしたことがあって、この天満宮てんまんぐうは俗ぞくに句く寄よせ（くよせ）の天神てんじんとも呼よばれた。

また、龍りゅう巌いわお寺てらの境内けいだいには松尾まつお芭蕉ばしょうの句碑くひ「春はるもやや けしきととのふ 月がつと梅うめ」もあるが、この句碑くひの上部じょうぶはアメリカ軍ぐんによる空襲くうしゅうによって破壊はかいされたことから欠損けっそんしている。

本堂ほんどう前まえの墓地ぼちには安芸あき広島ひろしま藩主はんしゅであった浅野あさの家かの墓所はかしょがあり、浅野あさの長ちょう勲いさおなど円えん墳ふん型がたの4基きの墓はかが建たっている。また、この墓地ぼちには蘭学らんがく者しゃの湊みなと長安ながやす、蛮社の獄ごくに関連かんれんして自害じがいした蘭学らんがく者しゃ・小関おぜき三さん英えい（戒名かいみょうは黄き雲くも院いん俊しゅん峰ほう三さん居士こじ）の墓はかもある。

• 住所じゅうしょ: 東京とうきょう都と渋谷しぶや区く神宮前じんぐうまえ二に丁目ちょうめ3-8（北緯ほくい35度ど40分ふん24.8秒びょう 東経とうけい139度ど42分ふん47.4秒びょう）

詳細しょうさいは「龍りゅう巌いわお寺てら (渋谷しぶや区く)」を参照さんしょう

慈光寺じこうじ

慈光寺じこうじ（2019年ねん4月がつ21日にち撮影さつえい）

慈光寺じこうじ（じこうじ）は、龍りゅう巌いわお寺てらの並ならび、勢いきおい揃そろい坂ざかの上あがり口ぐち付近ふきんにある寺てらである。山号さんごうを青野山あおのやまという。

寺てらは元和がんわ元年がんねん（1615年ねん）、徳川とくがわ家康いえやすの遠縁とおえんにあたる智さとし鏡きょうによって赤坂あかさか・一ツ木ひとつぎに建立こんりゅうされ、元禄げんろく8年ねん（1695年ねん）に現在地げんざいちに移うつった。現在げんざい、本堂ほんどうをはじめ境内けいだいの建物たてものは2009年ねん（平成へいせい21年ねん）に改築かいちくされた近代きんだい的てきなものに代かわっている。

• 住所じゅうしょ: 東京とうきょう都と渋谷しぶや区く神宮前じんぐうまえ二に丁目ちょうめ3-2（北緯ほくい35度ど40分ふん27.2秒びょう 東経とうけい139度ど42分ふん47.6秒びょう）

詳細しょうさいは「慈光寺じこうじ (渋谷しぶや区く)」を参照さんしょう

新編しんぺん武蔵むさし風土記ふどき稿こうの記述きじゅつ

「原宿はらじゅく村むら（中略ちゅうりゃく）当所とうしょは古いにしえへ相模さがみ国こく鎌倉かまくらより奥州おうしゅう筋すじの往還おうかん係がかりて宿駅しゅくえきを置おけし所しょ故こ此名ありと、又村またむら内ない竜りゅう岩がん寺てらの伝つてに、往昔おうせき源義家みなもとのよしいえ奥州おうしゅう下向げこうの時とき、渋谷しぶや城じょうに滞留たいりゅうし当所とうしょにて軍勢ぐんぜい着き到いたせし故ゆえ、今いまに門前もんぜんの小しょう坂さかを勢いきおい揃そろい坂ざかと唱ふと云うん、当時とうじ街道かいどうなりし事こと証あかすへし、村むらの東ひがし青山あおやま五十人ごじゅうにん町まちの通つう衛まもるは今いまも相模さがみ国こく矢倉沢やぐらざわに達たっする往還おうかんなり」

参考さんこう文献ぶんけん

• 「原宿はらじゅく村むら」『新編しんぺん武蔵むさし風土記ふどき稿こう』 巻まきノ10豊島としま郡ぐんノ2、内務省ないむしょう地理ちり局きょく、1884年ねん6月がつ。NDLJP:763976/89。 
• 芳賀はが善次郎ぜんじろう『旧きゅう鎌倉かまくら街道かいどう探索たんさくの旅たび』 中道ちゅうどう編へん、さきたま出版会しゅっぱんかい〈さきたま双書そうしょ〉、1981年ねん1月がつ31日にち。 
• 斎藤さいとう長ちょう秋あき 編へん「巻まき之の三さん 天てん璣之部ぶ 新しん日暮里にっぽり/竜りゅう岩いわ寺てら」『江戸えど名所めいしょ図会ずえ』 2巻かん、有朋ありとも堂どう書店しょてん〈有朋ありとも堂どう文庫ぶんこ〉、1927年ねん、279,284-285,288頁ぺーじ。NDLJP:1174144/144。 

関連かんれん項目こうもく

• 霞ヶ丘かすみがおか団地だんち - 勢いきおい揃そろい坂ざかの坂下さかしたにある都営とえい団地だんち（新宿しんじゅく区く霞かすみ丘おか町まち）