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半導体はんどうたい検出けんしゅつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゲルマニウム半導体はんどうたい検出けんしゅつもちいて分析ぶんせきしたAmBeのガンマ線がんませんスペクトル
こう純度じゅんどゲルマニウム検出けんしゅつ (液体えきたい窒素ちっそデュワーをはずしたもの)

半導体はんどうたい検出けんしゅつ(はんどうたいけんしゅつき, えい: semiconductor detector[注釈ちゅうしゃく 1])とは、半導体はんどうたい利用りようした放射線ほうしゃせん検出けんしゅつう。

半導体はんどうたい検出けんしゅつは、時間じかん応答おうとうせい比較的ひかくてきはやくエネルギー分解能ぶんかいのうすぐれていることからおもにエネルギー分析ぶんせきもちいられる[2]半導体はんどうたいとしては、シリコンまたはゲルマニウムおももちいられる。

概要がいよう

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半導体はんどうたいはそのままでは電気でんきとおさないが、放射線ほうしゃせん入射にゅうしゃすると電離でんり作用さようにより電子でんしせいあなたい生成せいせいされ電気でんきとおるようになる[2]。これはすなわち、放射線ほうしゃせん入射にゅうしゃ電気でんき信号しんごう変換へんかんできることを意味いみするが、この性質せいしつ利用りようした放射線ほうしゃせん検出けんしゅつ半導体はんどうたい検出けんしゅつ(semiconductor detector)とぶ。

放射線ほうしゃせん検出けんしゅつくらべて半導体はんどうたい検出けんしゅつはエネルギー分解能ぶんかいのうたか[注釈ちゅうしゃく 2]とくゲルマニウム半導体はんどうたい検出けんしゅつガンマ線がんませんのスペクトル分析ぶんせき正確せいかくおこなえることから放射ほうしゃせい核種かくしゅ同定どうてい放射能ほうしゃのう測定そくていをするにあたってひろもちいられている[4]

動作どうさ原理げんり

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バンド理論りろんによれば、普通ふつう状態じょうたいにおいて半導体はんどうたい伝導でんどうたい(conduction band)に伝導でんどう電子でんし存在そんざいしないことから電圧でんあつをかけても電流でんりゅうながれない。しかし、あたい電子でんしたい(valence band)のエネルギーレベルにある電子でんしになんらかの方法ほうほうでエネルギーをあたえることで、その電子でんし伝導でんどうたいのエネルギーレベルにバンドギャップをえて励起れいきさせることができれば、半導体はんどうたい材料ざいりょう電圧でんあつをかけることで電流でんりゅうながれるようになる[2]

放射線ほうしゃせん物質ぶっしつ入射にゅうしゃするとその相互そうご作用さようにより電子でんし発生はっせいするが、この電子でんし半導体はんどうたい材料ざいりょうちゅうあたい電子でんしたいのエネルギーレベルにある電子でんしにエネルギーをあたえることで伝導でんどうたいへの励起れいき発生はっせいする。ここで半導体はんどうたい材料ざいりょう電圧でんあつがかかっていれば放射線ほうしゃせん入射にゅうしゃ契機けいきとして電流でんりゅうながれることとなる。これは半導体はんどうたい材料ざいりょう放射線ほうしゃせん入射にゅうしゃする状況じょうきょう電気でんき信号しんごうへの変換へんかんならず[注釈ちゅうしゃく 3]半導体はんどうたい検出けんしゅつ動作どうさ原理げんりとしてこれを利用りようしている。

半導体はんどうたい材料ざいりょうちゅう吸収きゅうしゅうされる放射線ほうしゃせんのエネルギーを E、1個いっこ電子でんしせいあなたいつくるのに必要ひつよう平均へいきんエネルギーを εいぷしろん生成せいせいされる電子でんしせいあなたいかずを n とする。このとき、以下いかのような関係かんけい

つ。ここで、一定いってい入射にゅうしゃエネルギー E にたいしてしょうじる電子でんしせいあなたいかず n がおおいほどエネルギー分解能ぶんかいのうたかい。半導体はんどうたいεいぷしろんひくいため、n のおおくなり必然ひつぜんてきにエネルギー分解能ぶんかいのうたかくなることになる[注釈ちゅうしゃく 4]

ゲルマニウム半導体はんどうたい検出けんしゅつ

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Ge半導体はんどうたい検出けんしゅつはバンドギャップのはばちいさいため、常温じょうおんではねつエネルギーによりバンドギャップをえて電子でんし存在そんざいするので電気でんき抵抗ていこうひくすぎて検出けんしゅつとしては使つかいものにならない。液体えきたい窒素ちっそにより冷却れいきゃくすることによってバンドギャップをえる電子でんしがなくなるので抵抗ていこう実用じつようレベルになって検出けんしゅつとしてもちいることができる[3]使用しようしないときは常温じょうおん保管ほかん可能かのうである。Ge半導体はんどうたい検出けんしゅつでは結晶けっしょう不感ふかんにより吸収きゅうしゅうされてしまうので測定そくてい可能かのうエネルギー下限かげんはせいぜい50 keV程度ていどである[3]

放射線ほうしゃせんスペクトルの解析かいせきおこなうには上述じょうじゅつとお増幅器ぞうふくきによって電気でんきパルスを増幅ぞうふくし、これを多重たじゅう波高はこう分析ぶんせき (MCA) で解析かいせきする。検出けんしゅつ分解能ぶんかいのうたかいため、性能せいのう存分ぞんぶん発揮はっきするためにはNaIシンチレーション検出けんしゅつもちいたスペクトル解析かいせきとはちが安定あんていせいたか増幅器ぞうふくき・チャンネルすうおおいMCA (通常つうじょう 4096 ch) をもちいる必要ひつようせいがある。

シリコン半導体はんどうたい検出けんしゅつ

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Si(Li)半導体はんどうたい検出けんしゅつシリコンドリフト検出けんしゅつがある。おもに、エネルギー分散ぶんさんがたXせん分析ぶんせきもちいられることがおおい。放射線ほうしゃせん分野ぶんやでは、分解能ぶんかいのうすぐれているので核種かくしゅ同定どうていなどに威力いりょく発揮はっきし、とくていエネルギー領域りょういき測定そくていもちいられる。測定そくてい方法ほうほうはGe半導体はんどうたい検出けんしゅつわらない。

Si (Li) 半導体はんどうたい検出けんしゅつ略称りゃくしょう:SSD)
Siの結晶けっしょうLiをドリフトした検出けんしゅつで、こちらは100eV程度ていどから20 keV程度ていどまでのXせん分解能ぶんかいのうすぐれ、検出けんしゅつ効率こうりつはほぼ100%である[3]。しかしGe半導体はんどうたい検出けんしゅつちがいSiは原子げんし番号ばんごうちいさいため、最大さいだい50 keV程度ていどまでのXせん測定そくてい限界げんかいである[3]
目的もくてき性能せいのう使用しようするためには、液体えきたい窒素ちっそ温度おんどまで冷却れいきゃくする必要ひつようがある。
シリコンドリフト検出けんしゅつ(略称りゃくしょう:SDD)
Siにドリフト電圧でんあつ印加いんかした検出けんしゅつである。Si(Li)にくらべ、こうエネルギーがわ感度かんどわるいが、たかいエネルギー分解能ぶんかいのう維持いじしたまま、おおくのX線えっくすせん計数けいすうすることが可能かのうである。近年きんねんエネルギー分散ぶんさんがたXせん分析ぶんせきでは、SDDが主流しゅりゅうとなってきている。液体えきたい窒素ちっそ温度おんどまで冷却れいきゃくする必要ひつようがなく、ペルチィエ冷却れいきゃく使用しようできるため、小型こがたかつ軽量けいりょうとなっている。

その半導体はんどうたい検出けんしゅつ

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このように使用しよう保存ほぞんともに低温ていおん冷却れいきゃくする必要ひつようせいがある検出けんしゅつおおいが、最近さいきんでは電気でんき冷却れいきゃく可能かのうなものや、室温しつおん程度ていど動作どうさするCdTeなどをもちいた検出けんしゅつ研究けんきゅうすすめられており、分解能ぶんかいのうはGe半導体はんどうたい検出けんしゅつなどにはおとるもののシンチレーション検出けんしゅつくらべれば10ばい程度ていど十分じゅうぶんたか分解能ぶんかいのうゆうするので[3]医学いがくこうエネルギー天文学てんもんがく環境かんきょう放射線ほうしゃせん計測けいそくなどへの応用おうよう期待きたいされている。

また、最近さいきんもちいられている個人こじん被曝ひばくりょう測定そくていする線量せんりょうけいなどはシリコン半導体はんどうたい検出けんしゅつ採用さいようしたものもおお[3]。これは冷却れいきゃくしなくても常温じょうおん使用しようできる。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 固体こたい検出けんしゅつ(こたいけんしゅつき, えい: solid state detector, SSD)ともばれる[1]
  2. ^ 分解能ぶんかいのう非常ひじょうすぐれているためていレベル放射線ほうしゃせんでも感度かんどよく計測けいそくできる。しかし特定とくてい試料しりょうていレベル放射線ほうしゃせん計測けいそくしたい場合ばあい、バックグラウンドレベルの放射能ほうしゃのうでもノイズとなる。このため、試料しりょう放射線ほうしゃせん測定そくていするには遮蔽しゃへいたい検出けんしゅつおお必要ひつようがある。とくあつさ10 cm程度ていどなまり検出けんしゅつおおい、さら内部ないぶに1 mm程度ていどカドミウム、さらにはその内側うちがわに1 mm程度ていどどうおおうことによって、ほとんどのノイズ放射線ほうしゃせん除去じょきょできる。なまり同位どういたいからの放射線ほうしゃせんや80 keVのなまり特性とくせいXせんはカドミウムによって遮蔽しゃへいされ、どうはカドミウムの23 keVの特性とくせいXせん遮蔽しゃへいするのにもちいる。しかしカドミウムの特性とくせいXせんレベルの放射線ほうしゃせんたいしてはGe半導体はんどうたい検出けんしゅつ感度かんど皆無かいむであるので、測定そくてい可能かのうエネルギー領域りょういきひろ検出けんしゅつたいしては有効ゆうこうである。検出けんしゅつすうmm程度ていどアクリルなどのプラスチックキャップをかぶせることがあるが、これはタ線たせんなどの電子でんし遮蔽しゃへいすることと、制動せいどう放射ほうしゃ抑制よくせい目的もくてきである。[3]
  3. ^ こうしてられた電気でんき信号しんごう電荷でんか総量そうりょう比例ひれいした信号しんごう出力しゅつりょくする増幅器ぞうふくきかいして増幅ぞうふく測定そくていすることにより、そらあな内部ないぶうしなわれたエネルギーがわかる。
  4. ^ 電子でんし-せいあなたい1個いっこつくすのに必要ひつようなエネルギーは、ゲルマニウム半導体はんどうたい検出けんしゅつで2.96 eV、シリコン半導体はんどうたい検出けんしゅつで3.62 eVである。一方いっぽうで、たとえばシンチレータ信号しんごうひとつくすのに必要ひつよう最低さいていエネルギーはすうひゃくeVである。[5]

出典しゅってん

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  1. ^ 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん「Xせん
  2. ^ a b c 計測けいそくがく(2003) p.41
  3. ^ a b c d e f g 放射線ほうしゃせん概論がいろん
  4. ^ 計測けいそくがく(2003) p.102
  5. ^ 計測けいそくがく(2003) p.43

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 飯田いいだ博美ひろみ へん放射線ほうしゃせん概論がいろん通商つうしょう産業さんぎょう研究けんきゅうしゃ、2005ねんISBN 4-86045-101-5 
  • 西谷にしたに はじめてん, 山田やまだ 勝彦かつひこ, ぜんこし ひさ(共編きょうへん) ちょ日本にっぽん放射線ほうしゃせん技術ぎじゅつ学会がっかい(監修かんしゅう) へん放射線ほうしゃせん計測けいそくがく』(かぶ)ム社むしゃ放射線ほうしゃせん技術ぎじゅつがくシリーズ〉。 
  • 日本にっぽんアイソトープ協会きょうかい(へん) へん放射線ほうしゃせん・アイソトープ 講義こうぎ実習じっしゅう丸善まるぜん、1992ねん 
  • 川村かわむら はじめ半導体はんどうたい物理ぶつりまき書店しょてんしん物理ぶつりがく進歩しんぽシリーズ3〉、1966ねん 

関連かんれん項目こうもく

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