原子核げんしかく物理ぶつり学がく

原子核げんしかく物理ぶつり学がく
放射ほうしゃ性せい崩壊ほうかい 核分裂かくぶんれつ反応はんのう 原子核げんしかく融合ゆうごう
放射ほうしゃ性せい崩壊ほうかい アルファ崩壊ほうかい ・ ベータ崩壊ほうかい ・ ガンマ崩壊ほうかい その他たの崩壊ほうかい 二に重じゅうベータ崩壊ほうかい ・ 二に重じゅう電子でんし捕獲ほかく ・ 内部ないぶ転換てんかん ・ 核かく異性いせい体たい転移てんい ・ クラスタ崩壊ほうかい ・ 自発じはつ核分裂かくぶんれつ 放出ほうしゅつ過程かてい 中性子ちゅうせいし放出ほうしゅつ ・ 陽電子ようでんし放出ほうしゅつ ・ 陽子ようし放出ほうしゅつ 捕獲ほかく 電子でんし捕獲ほかく ・ 陽子ようし捕獲ほかく ・ 中性子ちゅうせいし捕獲ほかく R ・ S ・ P ・ Rp 高こうエネルギー反応はんのう 核かく破砕はさい反応はんのう ・ 宇宙うちゅう線せんによる核かく破砕はさい ・ 光ひかり分解ぶんかい 元素げんそ合成ごうせい 恒星こうせい内ない元素げんそ合成ごうせい ビッグバン原子核げんしかく合成ごうせい 宇宙うちゅうの元素げんそ合成ごうせい 科学かがく者しゃ ベクレル ・ ベーテ ・ キュリー ・ フェルミ ・ ラザフォード ・ バーバー

原子核げんしかく物理ぶつり学がく（げんしかくぶつりがく、英語えいご：nuclear physics）とは、強つよい相互そうご作用さように従したがう粒子りゅうしの多た体からだ問題もんだいを研究けんきゅうする学問がくもん領域りょういき。主おもに原子核げんしかくの核かく構造こうぞう、核かく反応はんのう（核分裂かくぶんれつ反応はんのう、核かく融合ゆうごう反応はんのう）などを扱あつかう分野ぶんやのこと。また、核かく物質ぶっしつ・ハドロン物質ぶっしつの性質せいしつを調しらべるハドロン物理ぶつり学がくもこの分野ぶんやの一部いちぶである。

構成こうせい要素ようそが2種類しゅるい（注ちゅう・ハイパー核かくはさらに数種類すうしゅるいの構成こうせい要素ようそが加くわわる）であるにもかかわらず、陽子ようこ・中性子ちゅうせいしそれぞれの数かずや励起れいきのさせ方かたにより、様々さまざまな構造こうぞうを取とるのが特徴とくちょうである。核かく子この主要しゅような相互そうご作用さようである「強つよい相互そうご作用さよう」が未いまだ完全かんぜんに解明かいめいされていないこと、物性ぶっせい理論りろんのように構成こうせい粒子りゅうしが無限むげんであるという近似きんじが許ゆるされないこと、表面ひょうめんの効果こうかが重要じゅうようであること等とうにより、発見はっけんから1世紀せいき近ちかく経たつにもかかわらず、未知みちの部分ぶぶんが残のこされており、理論りろん実験じっけんともに盛さかんに研究けんきゅうが行おこなわれている。

原子核げんしかく物理ぶつり学がくにおける理論りろん

対象たいしょうとするエネルギー領域りょういきによって、狭義きょうぎの原子核げんしかく物理ぶつり学がく、ハドロン物理ぶつり学がくに大別たいべつされる。

低ていエネルギー領域りょういきにおける現象げんしょうを記述きじゅつする原子核げんしかく物理ぶつり学がくでは、核かく子この自由じゆう度どから原子核げんしかくの構造こうぞうを記述きじゅつする「微視的びしてき核かく構造こうぞう理論りろん」の構築こうちくに力ちからが注そそがれている。 近年きんねんファデエフの方法ほうほうやその拡張かくちょう、あるいはモンテカルログリーン関数かんすう法ほうなどによって非ひ相対そうたい論ろん的てきな核かく子こ少数しょうすう多た体系たいけいの厳密げんみつ解かいが得えられるようになった。 また、この微視的びしてき核かく構造こうぞう理論りろんを基もとにした核かく反応はんのう物理ぶつり学がくの構築こうちくにも力ちからが注そそがれている。 ここで培つちかわれた方法ほうほうはハイパー核かくの研究けんきゅうなどにも適用てきようされている。 より核かく子こ数すうの多おおい原子核げんしかくの記述きじゅつのために平均へいきん場じょう理論りろんを基もとにした集団しゅうだん運動うんどう模型もけいが整備せいびされ、着々ちゃくちゃくと精密せいみつ化かが進すすんでいる。 また大だい規模きぼな殻から模型もけい計算けいさんを数値すうち的てきに行おこなう手法しゅほうも飛躍ひやく的てきに発展はってんし、模型もけいの範囲はんい内ないでは満足まんぞくな計算けいさん結果けっかを得えられるようになった。 一方いっぽう量子りょうし分子ぶんし動力どうりょく学がくを基もとにしたAMD模型もけい等ひとしにより核かく構造こうぞうの記述きじゅつが試行しこうされているが、その理論りろん正当せいとう性せいはいまだに判然はんぜんとしない。

中間ちゅうかんエネルギー領域りょういきの現象げんしょうを記述きじゅつするハドロン物理ぶつり学がくでは量子りょうし色しょく力学りきがく(QCD)に基もとづく記述きじゅつが目標もくひょうとされている。 理論りろん的てきに疑問ぎもん点てんの少すくない摂動せつどう論ろんを用もちいた現象げんしょうの記述きじゅつは、摂動せつどう的てきに記述きじゅつできる部分ぶぶんと非ひ摂動せつどう的てきに記述きじゅつしなければならない部分ぶぶんとの因子いんし化か分離ぶんりが可能かのうな場合ばあいにはよく理解りかいされている。 しかし非ひ摂動せつどう領域りょういきでの有効ゆうこう模型もけいやQCD和則かずのりによる研究けんきゅうは、永年えいねん月がつにわたる多大ただいな努力どりょくにもかかわらず芳かんばしい進展しんてんを見みない。 一方いっぽうで模型もけいに依よらない格子こうしQCD数値すうち計算けいさんの方法ほうほうは急激きゅうげきかつ長足ちょうそくの進歩しんぽを見みせている。 現在げんざい主おもな研究けんきゅう内容ないようとしては、相対そうたい論ろん的てき高だかエネルギー重じゅうイオン衝突しょうとつ時じ等とうにおけるQGP（クォークグルーオンプラズマ）生成せいせいの機構きこうやその性質せいしつ、高密度こうみつど核かく物質ぶっしつにおけるカラー超ちょう伝導でんどう状態じょうたいの記述きじゅつ、またカラー超ちょう伝導でんどう相しょうからダイ・クォーク凝縮ぎょうしゅく相しょうへのBCS-BECクロスオーバー、更さらに中性子星ちゅうせいしせい内部ないぶにおける中間子ちゅうかんし凝縮ぎょうしゅく等ひとしが挙あげられ、広ひろい温度おんど・密度みつど領域りょういきにおける核かく物質ぶっしつの多様たよう性せいに関かんする研究けんきゅうを相あい転移てんい（カイラル相しょう転移てんい、クォークの閉とじ込こめ・非ひ閉とじ込こめ相しょう転移てんい）という概念がいねんの下した、活発かっぱつに行おこなわれている。

原子核げんしかく物理ぶつり学がくにおける実験じっけん

現代げんだいの原子核げんしかくに関かんする実験じっけんには大雑把おおざっぱに言いって原子核げんしかくをくっつけて（核かく融合ゆうごう反応はんのう）自然しぜんに存在そんざいしないより大おおきな原子核げんしかくを作つくる実験じっけん（超ちょう重じゅう核かくの探索たんさくなど）、ぶつけて壊こわす（核かく破砕はさい反応はんのう）事ごとによって天然てんねんに存在そんざいしない核かくを作つくり性質せいしつを調しらべる実験じっけん（中性子ちゅうせいし過剰かじょう核かくや陽子ようし過剰かじょう核かくの実験じっけん）、陽子ようこ・中性子ちゅうせいし以外いがいにストレンジネスを持もつバリオンであるハイペロンを混入こんにゅうしてその振ふる舞まいを調しらべる実験じっけん（ハイパー核かく）、重おもい原子核げんしかく同士どうしを高こうエネルギーで衝突しょうとつさせて新あたらしい物質ぶっしつ状態じょうたいを探索たんさくする実験じっけん（相対そうたい論ろん的てき重じゅうイオン衝突しょうとつ）などがある。

測定そくていの手法しゅほうとしては励起れいき状態じょうたいから基底きてい状態じょうたいへ移うつる際さいに放出ほうしゅつされるγ線がんませんのエネルギーとその揺ゆらぎを測定そくていする実験じっけん（原子核げんしかく分光ぶんこう）、原子核げんしかく崩壊ほうかいの生成せいせい物ぶつのエネルギーとその揺ゆらぎを測定そくていする実験じっけん、原子核げんしかくに高こうエネルギーの光子こうしや電子でんしを入射にゅうしゃしてその変化へんかを調しらべる実験じっけん、その他た原子核げんしかくから放出ほうしゅつされる種々しゅじゅの粒子りゅうしを測定そくていする実験じっけんがある。

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