濃縮のうしゅくウラン

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濃縮のうしゅくウラン(のうしゅくウラン)は、ウラン濃縮のうしゅくにより、ウラン235濃度のうど天然てんねんウランよりもたかめたものである。天然てんねんウランには、核分裂かくぶんれつせいウラン238たいして、核分裂かくぶんれつせいのウラン235がやく0.7%の割合わりあいふくまれている。濃縮のうしゅくウランはこの割合わりあい人工じんこうてきたかめたもので、濃縮のうしゅくのウラン235の割合わりあい濃縮のうしゅくという。 濃縮のうしゅくが20%以下いかのものをてい濃縮のうしゅくウラン、20%をえるものをこう濃縮のうしゅくウランという。なお、ウラン235の濃度のうど天然てんねんウランを下回したまわるものは劣化れっかウラン減損げんそんウラン)という。

てい濃縮のうしゅくウラン[編集へんしゅう]

てい濃縮のうしゅくウラン(Low Enriched Uranium; LEU)は、濃縮のうしゅくが20%未満みまん濃縮のうしゅくウランを[1]

てい濃縮のうしゅくウラン燃料ねんりょうは、おも原子力げんしりょく発電はつでんしょかく燃料ねんりょうとして利用りようされている。世界せかい原子力げんしりょく発電はつでんしょ主流しゅりゅうとなっている軽水炉けいすいろでは、軽水けいすい減速げんそくざい冷却れいきゃくざいねている。軽水けいすい核分裂かくぶんれつ連鎖れんさ必要ひつよう中性子ちゅうせいしおお吸収きゅうしゅうするため、軽水炉けいすいろ天然てんねんウランを燃料ねんりょうとして利用りようすることは困難こんなんである。軽水炉けいすいろ核分裂かくぶんれつ継続けいぞくさせるには、濃縮のうしゅく2%から5%程度ていどてい濃縮のうしゅくウランを燃料ねんりょうとして利用りようしなければならない。てい濃縮のうしゅくウラン燃料ねんりょう天然てんねんウランのかく燃料ねんりょうよりも高価こうかであるが、原子力げんしりょく発電はつでんしょ総合そうごうてき安全あんぜんせい経済けいざいせいから、軽水炉けいすいろ導入どうにゅうするくにえている。

こう濃縮のうしゅくウラン[編集へんしゅう]

こう濃縮のうしゅくウラン金属きんぞくのビレット

こう濃縮のうしゅくウラン(High Enriched Uranium; HEU)とは、核分裂かくぶんれつこすウラン235濃縮のうしゅくを20%以上いじょうたかめたウランのことであり[1][2]原子げんしばくだん[2]研究けんきゅうよう原子げんし[3]軍事ぐんじよう艦艇かんてい原子力げんしりょく推進すいしん機関きかんなどに使用しようされる。

こう濃縮のうしゅくウランは、一般いっぱんてき商用しょうよう原子げんしもちいられるてい濃縮のうしゅくウラン燃料ねんりょうたいし、相対そうたいてきかく暴走ぼうそうこしやすいため、あつかいに注意ちゅういようする。原子げんしばくだんけには最低さいてい20%以上いじょう実用じつようじょう90%以上いじょう濃縮のうしゅく必要ひつようとされている[4]。このため、90%以上いじょう濃縮のうしゅくは、兵器へいききゅう (Weapons-grade) ともばれる[5]

こう濃縮のうしゅくウランは、核兵器かくへいき転用てんようかくテロリズム可能かのうせいがあるため、それを燃料ねんりょうとしていた原子げんしてい濃縮のうしゅくウラン利用りようへの転換てんかんすすめられている[6]

また、原子力げんしりょく推進すいしん機関きかんそなえた艦艇かんていで、こう濃縮のうしゅくウランが使用しようされるのは、原子げんし稼動かどう期間きかん長期ちょうきにすることにより、燃料ねんりょう交換こうかん不要ふようにするためである。原子力げんしりょく空母くうぼ原子力げんしりょく潜水せんすいかんかく燃料ねんりょう交換こうかんには、船体せんたいおおきくひら必要ひつようがあり、多大ただい費用ひよう必要ひつようとなるが、こう濃縮のうしゅくウランを使用しようすることで、かんよわいよりなが原子げんし稼動かどう期間きかん実現じつげんし、理論りろんてき運用うんよう期間きかんちゅうにおけるかく燃料ねんりょう交換こうかん作業さぎょう不要ふようとした。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 静岡しずおかけん用語ようごしゅう (PDF)
  2. ^ a b イランのウラン濃縮のうしゅく問題もんだいをどうるか,須江すえ秀司しゅうじ,防衛ぼうえい研究所けんきゅうじょニュース 2010ねん11がつごう (PDF)
  3. ^ 中島なかじまけん,KUR運転うんてん再開さいかいけての現状げんじょう(平成へいせい20ねん京大きょうだい原子炉実験所げんしろじっけんしょ専門せんもん研究けんきゅうかい),放射ほうしゃ分析ぶんせき,2009ねん
  4. ^ 核兵器かくへいきへの転用てんようしきい,一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん 高度こうど情報じょうほう科学かがく技術ぎじゅつ研究けんきゅう機構きこう
  5. ^ (解説かいせつ)核兵器かくへいき原子げんしについて,2006ねん防衛ぼうえい白書はくしょ
  6. ^ ハーグかくセキュリティ・サミットへけたかくセキュリティ強化きょうかへの取組とりくみ,内閣ないかく原子力げんしりょく委員いいんかい,2014ねん (PDF)

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 多田ただ順一郎じゅんいちろう 『わかりやすい放射線ほうしゃせん物理ぶつりがくム社むしゃ 1997.12.20 ISBN 4-274-13123-8

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]