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反応はんのうねつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

反応はんのうねつ(はんのうねつ、英語えいご: heat of reaction)とは化学かがく反応はんのうともない、発生はっせいもしくは吸収きゅうしゅうされるねつである(場合ばあいによってはかく反応はんのうふくまれるが本稿ほんこうでは言及げんきゅうしない)。通常つうじょう定圧ていあつ過程かていにおけるエンタルピー変化へんか反応はんのうエンタルピー ΔでるたrH, reaction)を

概要がいよう

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物質ぶっしつ構成こうせいする化学かがく結合けつごう固有こゆうのエネルギーをっており、その物質ぶっしつない結合けつごう切断せつだんされる場合ばあい分子ぶんし(あるいは原子げんし)の内部ないぶエネルギーが増大ぞうだいし、結合けつごうする場合ばあい減少げんしょうする。

ねつ力学りきがくしめすように、原子げんしあるいは分子ぶんしむすびつきの構成こうせい変化へんかするとき内部ないぶエネルギー変化へんかは、反応はんのうけいがいとのねつ授受じゅじゅあらわれる。それゆえ、反応はんのうねつとは化学かがく反応はんのう内部ないぶエネルギー変化へんか観測かんそくする指標しひょうとなる。内部ないぶエネルギー変化へんかおおきいほど結合けつごうりょくつよ安定あんていであり、むすびつきが切断せつだんされる場合ばあいけいないねつ流入りゅうにゅうし、むすびつきが形成けいせいされるとけいがいねつ放出ほうしゅつされる。通常つうじょう化学かがく反応はんのうでは反応はんのうけいないでは結合けつごう切断せつだん生成せいせい両方りょうほう進行しんこうするので、両者りょうしゃねつてき収支しゅうし結果けっかけいがいから観測かんそくされることになる。

あい転移てんいにともなう転移てんいねつΔでるたtrsH (transition); 蒸発じょうはつねつ ΔでるたvapH (vaporization)、凝縮ぎょうしゅくねつ(−ΔでるたvapH)、昇華しょうかねつ ΔでるたsubH (sublimation)、融解ゆうかいねつ ΔでるたfusH (fusion)、凝固ぎょうこねつ(−ΔでるたfusH))は化学かがく反応はんのうともなって発生はっせいしても反応はんのうねつとはべつ要因よういんであるが、反応はんのうねつ測定そくてい方法ほうほうによっては測定そくていなか転移てんいねつ寄与きよするぶんふくまれている場合ばあいもある。

測定そくていされる反応はんのうねつには反応はんのう種類しゅるいあるいは過程かていにより分類ぶんるいされ、生成せいせいねつΔでるたfH, formation)、燃焼ねんしょうねつΔでるたcH, combustion)、中和ちゅうわ[よう曖昧あいまい回避かいひ]ねつ溶解ようかいねつΔでるたsolH, solvation)、希釈きしゃくねつ混合こんごうねつΔでるたmixH, mixing)、吸着きゅうちゃくねつなどともばれる。

反応はんのうねつねつ力学りきがくてき状態じょうたいりょう考慮こうりょすると、定圧ていあつ反応はんのう場合ばあいていせき反応はんのう場合ばあいでは厳密げんみつにはことなり、前者ぜんしゃ定圧ていあつ反応はんのうねつ後者こうしゃていよう反応はんのうねつぶ。とくことわらないかぎりは反応はんのうねつ前者ぜんしゃ定圧ていあつ反応はんのうねつ利用りようされる(燃焼ねんしょう反応はんのうとうではていよう反応はんのうねつ測定そくていしやすい)。ねつ力学りきがくではていせき過程かていでは内部ないぶエネルギーが定圧ていあつ過程かていではエンタルピー使用しようされるため定圧ていあつ反応はんのうねつはエンタルピーで、ていよう反応はんのうねつ内部ないぶエネルギーで表示ひょうじされる。

定圧ていあつ反応はんのう場合ばあい反応はんのうぶつから生成せいせいぶつ変化へんかする過程かていのエンタルピー変化へんかまけ場合ばあい反応はんのうけいがいねつ放出ほうしゅつされ、発熱はつねつ反応はんのう(はつねつはんのう、exothermic reaction)となる。反対はんたいにエンタルピー変化へんかせい場合ばあいねつけいがいから吸収きゅうしゅう吸熱反応はんのう(きゅうねつはんのう、endothermic reaction)となる。

もっと一般いっぱんてき発熱はつねつ反応はんのう燃焼ねんしょうであり、水素すいそガス (H2) の燃焼ねんしょうによるみず (H2O) の生成せいせいはげしい反応はんのう過程かていである。ほかにもおだやかな反応はんのうおこなうものは、てつ (Fe) の酸化さんかなどがあり、これは使つかてカイロ使つかわれている。

ねつ力学りきがくだいいち法則ほうそくしめとおり、過程かていちがい(はげしい酸化さんかおだやかな酸化さんか)と熱量ねつりょうとは関係かんけいがなく反応はんのう固有こゆうである。

化学かがく反応はんのうギブズエネルギー減少げんしょうする方向ほうこう自発じはつてき進行しんこうする。ギブズエネルギー G とエンタルピー H は、温度おんどTエントロピーS とすると

ΔでるたG = ΔでるたHTΔでるたS

関係かんけいにあるので、定温ていおん定圧ていあつ場合ばあい

  1. エンタルピー減少げんしょうおおきく
  2. エントロピー増加ぞうかおおきい

ほどはんおう進行しんこうすることを意味いみする。発熱はつねつ反応はんのう場合ばあいエンタルピー変化へんかまけため反応はんのう自発じはつてき進行しんこうする。一方いっぽう、吸熱反応はんのう場合ばあいはエントロピーの増加ぞうかがエンタルピー減少げんしょう上回うわまわらないと自発じはつてき進行しんこうしない。もちろん、自発じはつてき進行しんこうしないはんおうも、生成せいせいぶつ除去じょきょしたりル・シャトリエの原理げんりなど圧力あつりょくとう状態じょうたいりょうえて化学かがく平衡へいこうかたよらせることによって進行しんこうさせることは可能かのうである。

ねつ化学かがく方程式ほうていしき

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ヘスの法則ほうそくしめすように、化学かがく反応はんのう発生はっせいする反応はんのうねつねつ力学りきがくだいいち法則ほうそくしたがうので、化学かがく反応はんのう構成こうせいするかく段階だんかい発熱はつねつ過程かていであれ吸熱過程かていであれ、最終さいしゅうてき化学かがく反応はんのうねつ収支しゅうしかく段階だんかいねつ収支しゅうし代数だいすうてき積算せきさんすることでもとめられる。また、ねつ力学りきがくだいいち法則ほうそく過程かてい経路けいろちがいに関係かんけいすることなく出発しゅっぱつ状態じょうたい最終さいしゅう状態じょうたいのみでねつ収支しゅうし決定けっていされることを保障ほしょうする。このことは、実際じっさい反応はんのう経路けいろとはことなる化学かがく反応はんのう反応はんのうねつ代数だいすうてきわせても、反応はんのう反応はんのうぶつ出発しゅっぱつ状態じょうたい)と生成せいせいぶつ最終さいしゅう状態じょうたい)が物質ぶっしつりょうてき合致がっちしていればそれらの反応はんのうねつ代数だいすうは、目的もくてき反応はんのう反応はんのうねつ一致いっちすることを意味いみする。

この目的もくてきで、反応はんのうしき生成せいせいねつとをわせた化学かがく反応はんのうしきねつ化学かがく方程式ほうていしきび、反応はんのうしきにエンタルピーを併記へいきする:

N2 (g) + 3H2 (g) → 2NH3 (g) ; ΔでるたrH = −45.9 kJ/mol

ねつ化学かがく方程式ほうていしき表記ひょうきほうとしては生成せいせいねつ反応はんのうしき右辺うへんに ∓(反応はんのうエンタルピーとぎゃく符号ふごう記号きごう結合けつごうさせる記法きほう

N2 (g) + 3H2 (g) = 2NH3 (g) + 91.80 kJ

もあるが、反応はんのうぶつとエネルギーを等号とうごうむすぶため推奨すいしょうされない。ねつ化学かがく方程式ほうていしき(ヘスの法則ほうそく)を使用しようすれば反応はんのうねつ既知きち化学かがく反応はんのう代数だいすうてきわせることで反応はんのうねつ未知みち反応はんのうについても、反応はんのうねつもとめることができる。ねつ化学かがく方程式ほうていしき場合ばあい反応はんのうぶつあるいは生成せいせいぶつそうしょう (g), えきしょう (l), かたしょう (s) のいずれであるかによって反応はんのうねつなか転移てんいねつ相当そうとうするぶんわってくる。したがって、ねつ化学かがく方程式ほうていしきでは符号ふごう (g), (l), (s) を使用しようして反応はんのうぶつ生成せいせいぶつ状態じょうたい明示めいじする必要ひつようがある。ただしぜん反応はんのう溶液ようえきちゅう進行しんこうすることがあきらかな場合ばあい符号ふごう省略しょうりゃくされる場合ばあいもある。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • P. W. Atkins、千原ちはら秀昭ひであきわけ)、2009、『アトキンス物理ぶつり化学かがく』8、うえ東京とうきょう化学かがく同人どうじん ISBN 978-4-8079-0695-6


関連かんれん項目こうもく

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