周波数しゅうはすうへんうつり変調へんちょう

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バイナリFSKのれい

周波数しゅうはすうへんうつり変調へんちょう(FSK、英語えいご: frequency shift keying)とは、搬送波はんそうは信号しんごう離散りさんてき周波数しゅうはすう変化へんか利用りようして、デジタル情報じょうほう送信そうしんする周波数しゅうはすう変調へんちょうデジタル変調へんちょう方式ほうしきである。ふる規格きかくながらも、21世紀せいきになってもさまざまなデータ通信つうしん使用しようされている[1]

この技術ぎじゅつは、テレメトリ気球ききゅうラジオゾンデ電話でんわ番号ばんごう通知つうち、ガレージドア開閉かいへい装置そうちラジオテレタイプラジオファクシミリVLFおよびELF帯域たいいきでのてい周波しゅうは無線むせん送信そうしんなどの通信つうしんシステムに使用しようされる。

もっと単純たんじゅんなFSKはバイナリ周波数しゅうはすうへんうつり変調へんちょう(BFSK)である。BFSKは、離散りさん周波数しゅうはすうのペアを使用しようして、バイナリ(0と1)情報じょうほう送信そうしんする。[2]この方式ほうしきでは、「1」はマーク周波数しゅうはすうばれ、「0」はスペース周波数しゅうはすうばれる。

変調へんちょう復調ふくちょう[編集へんしゅう]

FSKモデムのリファレンス実装じっそう存在そんざいし、詳細しょうさい文書ぶんしょされている[3]。バイナリFSK信号しんごう復調ふくちょうは、てい電力でんりょくマイクロコントローラでも、Goertzelアルゴリズムを使用しようして非常ひじょう効率こうりつてき実行じっこうできる[4]

バリエーション[編集へんしゅう]

連続れんぞく位相いそう周波数しゅうはすうシフトキーイング[編集へんしゅう]

原則げんそくとして、FSKは、完全かんぜん独立どくりつしたはし発振器はっしんき使用しようし、かくシンボル期間きかん開始かいしにそれらをえることによって実装じっそうできる。一般いっぱんに、独立どくりつした発振器はっしんきおな位相いそうではないため、えの瞬間しゅんかんおな振幅しんぷくになり、送信そうしん信号しんごう突然とつぜん不連続ふれんぞくせい発生はっせいする。

実際じっさいには、おおくのFSK送信そうしん単一たんいつ発振器はっしんきのみを使用しようし、かくシンボル期間きかん開始かいしことなる周波数しゅうはすうえるプロセスによって位相いそう保持ほじされる。位相いそう不連続ふれんぞくせい排除はいじょする(したがって、振幅しんぷく突然とつぜん変化へんか排除はいじょする)と、がわ帯電たいでんりょく減少げんしょうし、隣接りんせつチャネルとの干渉かんしょう減少げんしょうする。

ガウス周波数しゅうはすうシフトキーイング[編集へんしゅう]

ガウス周波数しゅうはすうシフトキーイング(GFSK)は、デジタルデータで周波数しゅうはすう直接ちょくせつ変調へんちょうかくビット周期しゅうき開始かいし周波数しゅうはすう瞬時しゅんじ変更へんこうするのではなく、データパルスをガウスフィルターでフィルタリングして遷移せんいをスムーズにする。このフィルターには、符号ふごうあいだ干渉かんしょう増加ぞうかするわりに、がわ帯電たいでんりょく減少げんしょうし、隣接りんせつチャネルとの干渉かんしょう減少げんしょうするという利点りてんがある。これは、改良かいりょうされたレイヤー2プロトコル、DECTBluetooth、Cypress WirelessUSB、ノルディック・セミコンダクターテキサス・インスツルメンツ[5]、IEEE 802.15.4、Z-WaveおよびWavenisデバイスで使用しようされる。基本きほんデータレートBluetooth場合ばあい最小さいしょう偏差へんさは115キロヘルツである。

GFSK変調へんちょうは、ベースバンド波形なみかた(レベル-1および+1)がFSK変調へんちょうはいまえに、ガウスフィルターを通過つうかして遷移せんいなめらかにし、スペクトルはば制限せいげんするというてんで、単純たんじゅん周波数しゅうはすうシフトキーイング変調へんちょうとはことなる。ガウスフィルタリングは、スペクトルはばらすための標準ひょうじゅんてき方法ほうほうである。こういった利用りようほうでは、パルス整形せいけいばれる。

通常つうじょうのフィルタリングされていないFSKでは、-1から+1または+1から-1にジャンプすると、変調へんちょうされた波形はけい急速きゅうそく変化へんかし、おおきな帯域たいいきがいスペクトルが発生はっせいする。パルスが-1から+1に変化へんかし、-1、-0.98、-0.93、...+0.93、+0.98、+1となると、このよりなめらかなパルスを使用しようして、出力しゅつりょくされるべき搬送波はんそうは周波数しゅうはすう決定けっていされる。帯域たいいきがいスペクトルは減少げんしょうする。

最小さいしょうシフトキーイング[編集へんしゅう]

最小さいしょう周波数しゅうはすうシフトキーイングまたは最小さいしょうシフトキーイング(MSK)は、コヒーレントFSKの特定とくていのスペクトル効率こうりつたか形式けいしきである。MSKでは、たか周波数しゅうはすうひく周波数しゅうはすうはビットレートの半分はんぶんおなじである。その結果けっか、0ビットと1ビットをあらわ波形はけいは、キャリア周期しゅうきのちょうど半分はんぶんだけことなる。最大さいだい周波数しゅうはすう偏差へんさδでるた)は0.25fmである(fm最大さいだい変調へんちょう周波数しゅうはすう)。その結果けっか変調へんちょう指数しすうmは0.5になる。これは、0と1の波形はけい直交ちょっこうするように選択せんたくできる最小さいしょうのFSK変調へんちょう指数しすうである。

ガウス最小さいしょうシフトキーイング[編集へんしゅう]

GSM携帯けいたい電話でんわ規格きかくでは、ガウス最小さいしょうへんうつり変調へんちょう(GMSK)とばれるMSKの変形へんけい使用しようされている。

音声おんせい周波数しゅうはすうシフトキーイング[編集へんしゅう]

音声おんせい周波数しゅうはすうシフトキーイング(AFSK)は、デジタルデータをトーン音声おんせい周波数しゅうはすうピッチ)の変化へんかあらわ変調へんちょう技術ぎじゅつであり、ラジオ電話でんわでの送信そうしんてきしたエンコードされた信号しんごう生成せいせいする。通常つうじょう送信そうしんされるオーディオは2つのトーンを交互こうごかえする。1つは「マーク」で、二進法にしんほうの1をあらわす。もう1つの「スペース」は、二進法にしんほうのゼロをあらわす。

AFSKは、ベースバンド周波数しゅうはすう変調へんちょう実行じっこうするてん通常つうじょう周波数しゅうはすうシフトキーイングとはことなる。無線むせん利用りようでは、AFSK変調へんちょう信号しんごう通常つうじょう送信そうしんようRFキャリアを変調へんちょうするために使用しようされる(AMFMなどの従来じゅうらい技術ぎじゅつ使用しよう)。

AFSKは、のほとんどの変調へんちょうモードよりも電力でんりょく帯域たいいきはば両方りょうほうではるかに効率こうりつひくいため、高速こうそくデータ通信つうしんつね使用しようされるとはかぎらない[よう出典しゅってん]。ただし、AFSKには、その単純たんじゅんさにくわえて、音楽おんがく音声おんせい伝送でんそうするように設計せっけいされたほとんどの機器ききふくめ、エンコードされた信号しんごうAC結合けつごうリンクを通過つうかするという利点りてんがある。

AFSKは、米国べいこく拠点きょてんとする緊急きんきゅう警報けいほうシステムで使用しようされ、警報けいほうのテキストを実際じっさいくことなく、緊急きんきゅう事態じたい種類しゅるい影響えいきょうける場所ばしょ、および問題もんだい時刻じこくをステーションに通知つうちする。

連続れんぞく4レベル変調へんちょう[編集へんしゅう]

Project 25システムのフェーズ1無線むせんは、連続れんぞく4レベルFM(C4FM)変調へんちょう使用しようする。

おも利用りようほう[編集へんしゅう]

1910ねんレジナルド・フェッセンデンはモールス信号しんごう送信そうしんする2トーン方式ほうしき発明はつめいした。ドットとダッシュは、おなながさのことなるトーンにえられた。その意図いとは、送信そうしん時間じかん最小限さいしょうげんおさえることであった。

初期しょきのCW送信そうしんなかには、便利べんりキー入力にゅうりょくができないアークコンバーターを採用さいようしているものがあった。アークをオン/オフするわりに、キーは「補償ほしょうほう」としてられている技術ぎじゅつ送信そうしん周波数しゅうはすうをわずかに変更へんこうした。補償ほしょう受信じゅしんでは使用しようされなかった。この方法ほうほう使用しようされる火花ひばな送信そうしんは、おおくの帯域たいいきはば消費しょうひし、干渉かんしょうこしたため、1921ねんまで推奨すいしょうされなかった。

大半たいはん初期しょき電話でんわ回線かいせんモデムは、音声おんせい周波数しゅうはすうシフトキーイング(AFSK)を使用しようして、最大さいだいやく1200bps通信つうしん速度そくどでデータを送受信そうじゅしんしていた。ベル103とベル202モデムは、この技術ぎじゅつ使用しようしていた。今日きょうでも、北米ほくべい発信はっしんしゃIDはボーAFSKベル202標準ひょうじゅん規格きかくで1200bpsを使用しようしている。初期しょきマイクロコンピューターなかには、カンサスシティ標準ひょうじゅんである特定とくてい形式けいしきのAFSK変調へんちょう使用しようして、カセットテープデータを保存ほぞんするものがあった[よう出典しゅってん]。AFSKは、変調へんちょうされていない音声おんせい帯域たいいき機器ききかいしたデータ送信そうしん可能かのうにするため、アマチュア無線むせんいまでもひろ使用しようされている。

AFSKは、警告けいこく情報じょうほう送信そうしんするために日本にっぽんにおいて緊急きんきゅう警報けいほう放送ほうそう使用しようされているほか、米国べいこく緊急きんきゅう警報けいほうシステムでも使用しようされている[よう出典しゅってん]。これは、米国べいこくNOAAによってWeatheradioで使用しようされるWeathercopyのよりたかビットレート使用しようされる。

カナダオンタリオしゅうオタワにあるCHU短波たんぱラジオきょくは、AFSK変調へんちょう使用しようしてエンコードされた専用せんようのデジタル時報じほう放送ほうそうしている[よう出典しゅってん]

電話でんわ番号ばんごう通知つうち[編集へんしゅう]

周波数しゅうはすうへんうつり変調へんちょう(FSK)は、電話でんわ回線かいせんかいしてナンバーディスプレイおよびリモートメータリングアプリケーションに一般いっぱんてき使用しようされる。この技術ぎじゅつにはいくつかのバリエーションがある。

欧州おうしゅう電気でんき通信つうしん標準ひょうじゅん機構きこう[編集へんしゅう]

ヨーロッパのいくつかのくにでは、欧州おうしゅう電気でんき通信つうしん標準ひょうじゅん機構きこう(ETSI)が標準ひょうじゅん規格きかく200 778-1と200 778-2、変換へんかん規格きかく300 778-1と300 778-2を許可きょかし、3つの物理ぶつりトランスポートそう、テルコーディア・テクノロジーズ(きゅう:Bellcore)、ブリティッシュテレコム(BT)およびCableCommunications Association (CCA))、2つのデータ形式けいしきMultiple Data Message Format(MDMF)およびSingle Data Message Format(SDMF)、さらにDual-tone multi-frequency(DTMF)システムおよびメーターようのノーリングモードとわせて統一とういつされた通信つうしん規格きかく定義ていぎしようとするよりも、さまざまな規格きかく存在そんざいしているという認識にんしきのほうが重要じゅうようである。

テルコーディア・テクノロジーズ[編集へんしゅう]

テルコーディア・テクノロジーズ(きゅう:Bellcore)規格きかくは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく、カナダ、オーストラリア中国ちゅうごく香港ほんこんシンガポール使用しようされている。最初さいしょ着信ちゃくしんおんのちにデータを送信そうしんし、1200bpsのベル202によるトーン変調へんちょう使用しようする。日付ひづけ時間じかん、そして数字すうじふくむSDMFまたはNAMEフィールドを追加ついかするMDMFで送信そうしんすることができる。

ブリティッシュテレコム[編集へんしゅう]

イギリスブリティッシュテレコム(BT)では、データを送信そうしんし、ライン反転はんてん表示ひょうじ起動きどうさせMDMFと同様どうよう形式けいしきCCITTV.23モデムトーンを送信そうしんする独自どくじ基準きじゅん開発かいはつした。BTおよび近年きんねんのIonicaのようなワイヤレスネットワークおよび、一部いちぶのケーブル会社かいしゃ使用しようされている。詳細しょうさいは、BTサプライヤー情報じょうほうノート(SIN) 227 および 242記載きさいされている。もう1つの有用ゆうようなドキュメントは、EXARWebサイトの BTようXR-2211を使用しようした発信はっしんしゃ識別しきべつ配信はいしん設計せっけい である。

ケーブル通信つうしん協会きょうかい[編集へんしゅう]

イギリスのケーブル通信つうしん協会きょうかい(CCA)は、ベル202またはV.23トーンのいずれかとして、みじか最初さいしょおんのち情報じょうほう送信そうしんする独自どくじ標準ひょうじゅん開発かいはつした。かれらは、BT標準ひょうじゅん対応たいおうできないいくつかの「ストリートボックス」(マルチプレクサ)を変更へんこうするのではなく、あたらしい標準ひょうじゅん開発かいはつした。英国えいこくのケーブル業界ぎょうかいでは、さまざまなスイッチが使用しようされている。ほとんどがNortelDMS-100で、一部いちぶはシステムX、システムY、そしてノキアDX220である。これらの一部いちぶは、CCA標準ひょうじゅんではなくBT標準ひょうじゅん使用しようしていることに注意ちゅういされたい。データ形式けいしきはBTのものにているが、トランスポートそうはTelcordia Technologiesにているため、北米ほくべいまたはヨーロッパの機器ききがそれを検出けんしゅつする可能かのうせいたかくなる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Kennedy, G.; Davis, B. (1992). Electronic Communication Systems (4th ed.). McGraw-Hill International. ISBN 978-0-07-112672-4 , p 509
  2. ^ FSK: Signals and Demodulation (B. Watson)
  3. ^ Teaching DSP through the Practical Case Study of an FSK Modem (TI)
  4. ^ FSK Modulation and Demodulation With the MSP430 Microcontroller (TI)Archived 2012-04-06 at the Wayback Machine.
  5. ^ LPRF

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]