坂本さかもと市し之の丞すすむ

坂本さかもと養川ようかわ像ぞう

坂本さかもと 市し之の丞すすむ（さかもと いちのじょう、享とおる保ほ21年ねん3月15日にち（1736年ねん4月がつ25日にち） - 文化ぶんか6年ねん3月2日にち（1809年ねん4月がつ16日にち））は、江戸えど時代じだい中期ちゅうきから後期こうきにかけての治水ちすい家いえ、新田にった開発かいはつ者しゃ。幼名ようみょうは太郎たろう。号ごうは養川ようかわ。出身しゅっしん地ちの諏訪すわ地方ちほうでは坂本さかもと養川ようかわの名なで知しられている。

経歴けいれき・人物じんぶつ

信濃しなの国こく諏訪すわ郡ぐん田沢たざわ村むら（現げん：長野ながの県けん茅野ちの市し宮川みやがわ区く）の甲州こうしゅう武田たけだ氏し旧臣きゅうしんの家いえに生うまれ、23歳さいで名主なぬしとなる。水不足みずぶそくのために争あらそいが絶たえなかった諏訪すわ地方ちほうの農民のうみん達たちを救すくうために諸国しょこくを巡めぐり新田にった開発かいはつの技術ぎじゅつを修得しゅうとく。約やく2年ねんをかけ、山浦やまうらの地理ちりを調しらべ、測量そくりょうを行おこない、北東ほくとう部ぶの河川かせんの余よ水すいを順繰じゅんぐりに南方なんぽうの原野げんやへ送おくることによって河川かせんを用水路ようすいろで結むすび、その沿岸えんがんを灌漑かんがいする「繰越くりこし堰せき（汐しお）」という形態けいたいの水路すいろを開削かいさくし、八ケ岳やつがたけの西南せいなん麓ふもとの新田しんでんを開発かいはつする計画けいかくを考案こうあん。

安永やすなが4年ねん（1775年ねん）に諏訪すわ藩はん家老がろう（二之にの丸まる家か）諏訪すわ頼よりゆき保ほに計画けいかく書しょを提出ていしゅつした。 市之いちの丞すすむの一大いちだい水利すいり事業じぎょう計画けいかくは、諏訪すわ藩はんの混乱こんらん期き（二にの丸まる騒動そうどう）でもあり、一方いっぽう、藩主はんしゅ・6代だい諏訪すわ忠ただし厚あつしは江戸城えどじょう留守居るすい役やくの役務えきむのため諏訪すわへ帰郷ききょうすることが少すくなく、藩政はんせいは家老がろう任まかせでかえりみない最悪さいあくの状態じょうたいの中なかだったので許可きょかが得えられない。

それだけではなく、水元みずもとの村むら々では、自分じぶんの水利すいりが侵おかされると、市之いちの丞すすむの暗殺あんさつ計画けいかくを図はかる者ものまで出現しゅつげんする。

藩主はんしゅ忠ちゅう厚あつが隠居いんきょしたことにより7代だい藩主はんしゅ諏訪すわ忠ただし粛の時代じだいになり、二にの丸まる騒動そうどう終息しゅうそく後ご、多年たねんの財政難ざいせいなんの上うえに、この事件じけんの失費しっぴと天明てんめい3、4年ねんの大だい凶作きょうさくで、諏訪すわ藩はんも市之いちの丞すすむの計画けいかくに期待きたいするしかなかった。 （三之丸さんのまる家か）家老がろう・千野ちの貞さだ亮あきら（千野ちの兵庫ひょうご）から許可きょかがおりたのは提出ていしゅつから10年ねん後ごの天明てんめい5年ねん（1785年ねん）2月がつ大だい見分けんぶん、7月がつ18日にち普請ふしんが開始かいしされた。 その後ご、15年ねんを掛かけ十じゅう数すう条じょうからなる用水路ようすいろが開削かいさくされ（養川ようかわの繰越くりこし堰せきと呼よばれる）、寛政かんせい12年ねん（1800年ねん）までに約やく300haの新田にった開発かいはつを成功せいこうさせた。 市之いちの丞すすむの工夫くふうは単純たんじゅんな用水路ようすいろの開削かいさくだけでなく、渋川しぶかわの流ながれに魚さかな住すまず、その水みずは稲作いなさくに適てきさない、それで幾いく度どかの繰越くりこし堰せきをへて他たの水みずと混まぜることにより水質すいしつの改良かいりょうを行おこなっている。 市之いちの丞すすむは、当初とうしょは請負人うけおいにんとして仕事しごとに当あたり、のちには汐しお役人やくにん（せぎやくにん）にとりたてられ享とおる和わ元もと(1801年ねん)、小しょう鷹匠たかじょうの藩士はんしとなり16俵ひょう2人ふたり扶持ふちと抜高（免めん祖そ地ち）15石せきを与あたえられる。

生涯しょうがいを用水路ようすいろ造づくりに身みを捧ささげ、文化ぶんか6年ねん、3月2日にち、（1809年ねん4月がつ16日にち）没ぼっする。享年きょうねん74歳さい。

市之いちの丞すすむ死後しご

大正たいしょう4年ねん（1915年ねん）11月の御ご大典たいてんに、贈おく従したがえ五ご位いを追贈ついぞうされる。歴代れきだい諏訪すわ藩主はんしゅと同位どうい階かいである。 祝しゅくして頌徳碑ひが建たてられた。 長野ながの県けん知事ちじ大坪おおつぼ保雄やすお書しょ（茅野ちの市し・田沢たざわ地区ちく健けん之のす）

平成へいせい6年ねん（1994年ねん）茅野ちの市し尖とんが石いし考古こうこ館かん（現げん茅野ちの市し尖とんが石いし縄文じょうもん考古こうこ館かん）に濱平はまひら（ミハマ製作所せいさくしょ）より銅像どうぞう「坂本さかもと養川ようかわ翁おきな」（西森にしもり方ほう昭あきら制作せいさく）寄贈きぞう　

滝之湯たきのゆ堰せき用水ようすい

平成へいせい28年ねん（2016年ねん）11月、繰越くりこし堰せきの中なかの滝之湯たきのゆ堰せき（たきのゆせぎ）と大河原おおかわら堰せき（おおかわらせぎ）が、かんがい施設しせつ遺産いさんとして登録とうろくされ、県内けんないでは初はつの登録とうろくとなった。

大河原おおかわら堰せき用水ようすい

参考さんこう文献ぶんけん

• 『諏訪すわの農業のうぎょう用水ようすいと坂本さかもと養川ようかわ』諏訪すわの農業のうぎょう用水ようすいと坂本さかもと養川ようかわ刊行かんこう委員いいん、浅川あさがわ清栄きよえ著ちょ　中央ちゅうおう企画きかく1998年ねん発行はっこう. NCID BA41817740 
• 『くりこしの水みず・小説しょうせつ・坂本さかもと養川ようかわの生涯しょうがい』早坂はやさか義よし征ただし著ちょ長野ながの日報にっぽう2008年ねん発行はっこうISBN 978-4861250675　
• 小説しょうせつ『諏訪すわ二にの丸まる騒動そうどう』（新田にった次郎じろう全集ぜんしゅう第だい20巻かん収録しゅうろく）新田にった次郎じろう著ちょ1976年ねん発行はっこうISBN 978-4106418204　(坂本さかもと養よう川かわも登場とうじょうする。)
• 『からかご大名だいみょう』短たん編集へんしゅう(諏訪すわ二にの丸まる騒動そうどうや同どう時代じだいの諏訪すわ地方ちほうの出来事できごと、駒ケ岳こまがたけ開山かいさん(小尾こび権けん三郎さぶろうの甲斐かい駒ヶ岳こまがだけ開山かいさんを描えがいた。)も収録しゅうろく)新潮しんちょう文庫ぶんこ　1985年ねんISBN 978-4101122267

関連かんれん項目こうもく

• 宮川みやがわ村むら (長野ながの県けん)
• 北山きたやま村むら (長野ながの県けん)#滝之湯たきのゆ堰せき・大河原おおかわら堰せき
• 杖突峠つえつきとうげ
• 八ヶ岳やつがだけ総合そうごう博物館はくぶつかん、坂本さかもと養川ようかわの偉業いぎょうを紹介しょうかいした、常設じょうせつ展示てんじコーナーがある。

外部がいぶリンク

• 茅野ちの市し 八ヶ岳やつがだけ総合そうごう博物館はくぶつかん　
• 長野ながの県けん博物館はくぶつかん協議きょうぎ会かいホームページ　信州しんしゅうミュージアムガイド