塩しお析

塩しお析（えんせき、英語えいご：salting out）は、タンパク質たんぱくしつや低てい分子ぶんし有機ゆうき化合かごう物ぶつなどの溶質ようしつが高こう濃度のうどの塩しおの溶液ようえきには溶解ようかいしないという性質せいしつを利用りようし、それらを分離ぶんり・精製せいせいする方法ほうほうである。タンパク質たんぱくしつが沈殿ちんでんする塩しお濃度のうどはタンパク質たんぱくしつの種類しゅるいによって異ことなる。また、この方法ほうほうはタンパク質たんぱくしつの希釈きしゃく溶液ようえきを濃縮のうしゅくするのにも使つかわれる。

タンパク質たんぱくしつの場合ばあい

原理げんり

タンパク質たんぱくしつ分子ぶんし中ちゅうには疎水そすい性せいアミノ酸あみのさんと親水しんすい性せいアミノ酸あみのさんがある。水溶液すいようえき中ちゅうでは疎水そすい性せいアミノ酸あみのさんは通常つうじょう、親水しんすい性せいアミノ酸あみのさんによって保護ほごされた疎水そすい域いきを作つくり、周囲しゅういを取とり囲かこむ水分すいぶん子ことの相互そうご作用さよう（溶媒ようばい和わと水素すいそ結合けつごう）によって折おり畳たたまれる。タンパク質たんぱくしつの表面ひょうめんが十分じゅうぶんに親水しんすい性せいならばそのタンパク質たんぱくしつは水みずに溶解ようかいする。

塩しお濃度のうどを大おおきくしたとき水分すいぶん子このいくつかは塩しおのイオンによって引ひきつけられ、タンパク質たんぱくしつの帯電たいでんした部分ぶぶんとの相互そうご作用さように割さかれる水分すいぶん子この量りょうが減少げんしょうする。この結果けっか、タンパク質たんぱくしつ-タンパク質たんぱくしつ相互そうご作用さようは溶媒ようばい-溶質ようしつ相互そうご作用さようより強つよくなり、タンパク質たんぱくしつ分子ぶんしは疎水そすい性せいの相互そうご作用さようによって凝結ぎょうけつする。

応用おうよう

タンパク質たんぱくしつの種類しゅるいによって沈殿ちんでんする塩しお濃度のうどが異ことなるため、ろ過か、遠心えんしん分離ぶんりで分離ぶんりできないタンパク質たんぱくしつの分離ぶんりにも使つかうことができる。豆腐とうふの製造せいぞう過程かていはにがりを使つかった、塩しお析の典型てんけい例れいである。

注意ちゅうい

イオンによっては濃度のうどが増加ぞうかすることによりタンパク質たんぱくしつの溶解ようかい度どを増加ぞうかさせることがある。また、タンパク質たんぱくしつの特性とくせいを抑制よくせいするイオンもあるため、タンパク質たんぱくしつの機能きのうを分析ぶんせきするときは別べつのイオンを用もちいるか、イオンの除去じょきょを行おこなう必要ひつようがある。

低てい分子ぶんし有機ゆうき化合かごう物ぶつの場合ばあい

低てい分子ぶんし有機ゆうき化合かごう物ぶつの場合ばあいの塩しお析は塩類えんるいの水みず和わによって説明せつめいできる。塩類えんるいを水溶液すいようえきに加くわえるとその強つよい水みず和わ力りょくによって水分すいぶん子こを水みず和水わすいとして固定こていする。そのため、低てい分子ぶんし有機ゆうき化合かごう物ぶつの水みず和わに必要ひつような水分すいぶん子この量りょうが減少げんしょうし、析出せきしゅつ（沈殿ちんでんや浮遊ふゆう）を起おこす。

これは石鹸せっけんの製造せいぞうにも使つかわれている。石鹸せっけんの溶液ようえきに食塩しょくえんまたは水酸化すいさんかナトリウムを添加てんかすると石鹸せっけんが析出せきしゅつし上層じょうそうに浮遊ふゆうする。一回いっかいの塩しお析では精製せいせいが不十分ふじゅうぶんであるため、さらに水みず、希釈きしゃく食しょく塩水えんすい、水酸化すいさんかナトリウム溶液ようえきなどに加熱かねつ溶解ようかいさせ純度じゅんどを上あげていく。

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