大西おおにし愛治あいじ郎ろう

大西おおにし愛治あいじ郎ろう（おおにし あいじろう、1881年ねん8月がつ26日にち - 1958年ねん11月29日にち）は、日本にっぽんの宗教しゅうきょう家か。ほんみち教祖きょうそ。奈良なら県けん宇陀うだ郡ぐん宇太村むら（現げん・宇陀うだ市し）出身しゅっしん。親族しんぞくに大西おおにし玉たまがいる。

生涯しょうがい

誕生たんじょうから教団きょうだん入信にゅうしんまで

1881年ねん（明治めいじ14年ねん）8月がつ26日にち（旧きゅう閏うるう7月がつ3日にち）に奈良なら県けん宇陀うだ郡ぐん宇太村むら（現げん・宇陀うだ市し）の農家のうか、岸きし岡おか吉次郎きちじろうとキサの間あいだに三男さんなんとして生うまれる。祖父そふの栄次えいじ良りょうは村むらで庄屋しょうやを勤つとめており、父親ちちおやの吉次郎きちじろうも今いまの村長そんちょうにあたる戸長こちょうを勤つとめていた。

小学校しょうがっこう卒業そつぎょうの頃ころに次兄じけいである米吉よねきちが憂鬱ゆううつ症しょう、17歳さいの時ときに長兄ちょうけいの千せん太郎たろうが眼め病びょうを、19歳さい（1899年ねん頃ころ）の頃ころには母ははキサが、子宮しきゅう内ないヨウを患わずらう。

同年どうねんの4月がつに母親ははおやの希望きぼうで奈良なら師範しはん学校がっこうに入学にゅうがくする。その頃ころに、千せん太郎たろうが天理教てんりきょうへ入信にゅうしんし天理教てんりきょうの話はなしを度々たびたび聞きいていた。

入学にゅうがくした年としの夏なつに長期ちょうき休暇きゅうかで帰省きせいした際さい、キサの容態ようだいが悪化あっかし本家ほんけで看病かんびょうをしていたが、キサの気分きぶんを変かえたいとの希望きぼうにより分家ぶんけ（次兄じけいの米吉よねきち宅たく）へと移動いどう。その日ひの夜よる、愛治あいじ郎ろう一人ひとりで看病かんびょうをしていた時ときにキサの容態ようだいが悪化あっかする。その様子ようすを見みて、愛治あいじ郎ろうは戸外こがいへと走はしり川かわで手てを清きよめ神しん(ほんみち概観がいかんでは「月日つきひ様さま」天理教てんりきょうでは「親おや神しん天理てんり王命おうめい」)に祈いのる。その際さい、祈いのった直後ちょくごはキサの容態ようだいが良よくなり、また、しばらくすると悪化あっかするということを繰くり返かえし、段々だんだんとその間隔かんかくが短みじかくなることをみて、祈いのった直後ちょくごの様子ようすは「神かみによる治癒ちゆではなく周期しゅうき的てきなものではないか」との思おもいからしばらくキサを静観せいかんするが、キサは苦くるしみ続つづけ、「神かみに祈いのってほしい」という希望きぼうより、神かみを疑うたがうことなく祈いのることにした。するとキサの苦痛くつうが止やみ、神かみの存在そんざいや天理教てんりきょうの教おしえである「借かり物ものの理り」などを理解りかいし、休やすみを終おえて奈良なら師範しはん学校がっこうへ戻もどった際さいに、奈良なら教会きょうかい（天理教てんりきょう奈良大ならだい教会きょうかい）の信徒しんととなった。

入信にゅうしんから、天理てんり研究けんきゅう会かい発足ほっそくまで

その後ご、奈良なら師範しはん学校がっこうを中退ちゅうたいし、東京とうきょうで単独たんどく布教ふきょうをしたいと考かんがえたが、東大とうだい教会きょうかいの上原うえはら会長かいちょうへ相談そうだんしたところし「東京とうきょうでの布教ふきょうには相当そうとうの金かねを用意よういして、仮令たとい、借家しゃくやにしても、教会きょうかいを或あるる程度ていど飾かざり立たてないと人ひとが信用しんようしない。」とのことであった。そこで第だい二に志望しぼうとして考かんがえていた群馬ぐんま県けん碓氷うすい郡ぐん安中あんなか町まちで単独たんどく布教ふきょうをすることとなった。群馬ぐんまでは奈良なら教会きょうかいに所属しょぞくしていた先輩せんぱいの日野ひの督ただし太郎たろうを頼たより二にか月げつ間あいだ程ほど世話ぜわとなる。その後ご、当時とうじ教会きょうかいが設立せつりつされていなかった群馬ぐんま県けん安中あんなか町まちを拠点きょてんに布教ふきょうをはじめる。上級じょうきゅう奈良なら教会きょうかいの春野はるの会長かいちょうより、教会きょうかいの信者しんじゃの大西おおにし家かへ婿養子むこようしに行いってはどうかと勧すすめられ、父親ちちおやと相談そうだんの上うえ、了承りょうしょう。大西おおにしトヲと結婚けっこんし、大西おおにし姓せいを名乗なのることとなる。結婚けっこん後ご、山口やまぐち県けんの萩はぎ、山口やまぐち、福ぶく賀がにある三さんカ所かしょの無む担任たんにんの教会きょうかいを整理せいりしてほしいことを、春野はるの会長かいちょうより話はなしを受うけ分ぶん教会きょうかいを再興さいこうさせる事ことに専念せんねんする。1906年ねん（明治めいじ39年ねん）天理教てんりきょうの教理きょうり「貧ひんに落おちきれ」の下した、全ぜん財産ざいさんを献納けんのうした。1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）に大西おおにしは、神かみ掛かかりをして我がは生いき神がみ「甘露かんろ台だい」であり、教祖きょうそ中山なかやまみきに続つづく天啓てんけい者しゃとなった（「甘露かんろ台だい人じんの理り」を保有ほゆうした）ことを悟さとったと主張しゅちょうした。大西おおにしは教きょう歌か「甘露かんろ台だい古記こき」を示しめして、これを天理教てんりきょう本部ほんぶで訴うったえると異端いたん者しゃと看做みなされ天理教てんりきょう教師きょうしを剥奪はくだつされた。奈良なら県けんに帰かえった大西おおにしは、1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）宇太村役場むらやくば職員しょくいん、1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）奈良なら県けんの税務署ぜいむしょ員いん、1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）旧制きゅうせい小学校しょうがっこう教諭きょうゆをして生計せいけいを立たてつつ、その後ごも吉田よしだ神道しんとうと関かかわりを持もち続つづける天理教てんりきょうを批判ひはん。天理教てんりきょうが本来ほんらいあるべき原点げんてん回帰かいきを訴うったえた。大西おおにしの考かんがえ方かたに共感きょうかんを持もつ天理教てんりきょう信者しんじゃも相次あいつぎ、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）に終おわりに天理教てんりきょうを追放ついほうされた。大西おおにしも旧制きゅうせい小学校しょうがっこう教諭きょうゆを辞職じしょくし、大西おおにしの考かんがえ方かたに同調どうちょうした天理教てんりきょう信者しんじゃと共ともに「おさしづ」を研究けんきゅうする「天理てんり研究けんきゅう会かい」を発足ほっそくさせた。

昭和しょうわ3年ねんの打うち出だし

1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）に病気びょうきがちな長男ちょうなんの体調たいちょうがすぐれず、これを神かみの警告けいこくとした大西おおにしは、三重みえ県けんに隠棲いんせい。ここで『岩戸いわと古記こき』を執筆しっぴつし天理てんり研究けんきゅう会かいに送おくり、信者しんじゃの育成いくせいに励はげんだ。1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）に、大西おおにしがまとめさせた大戦たいせんと国家こっか滅亡めつぼうの危機ききを予言よげん警告けいこくし天皇てんのうの神格しんかくを否定ひていする『研究けんきゅう資料しりょう』の各界かくかいの要人ようじんに配布はいふを信者しんじゃに命めいじた。

第だい1次じほんみち不敬ふけい事件じけん

1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）の打うち出だしによって、大西おおにしを筆頭ひっとうに500人にんが不敬ふけい罪ざいで検挙けんきょされ、起訴きそされた。大西おおにしは、下級かきゅう審しんでは懲役ちょうえき刑けいをい渡いわたされたものの、精神せいしんに異常いじょうをきたした心神喪失しんしんそうしつ者しゃとして大審院だいしんいんは無罪むざい判決はんけつをい渡いわたした。

第だい2次じほんみち不敬ふけい事件じけん

第だい1次じほんみち不敬ふけい事件じけんの後のち、1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）布教ふきょう活動かつどう展開てんかいすべく「天理てんり本道ほんどう」と教団きょうだん名めいを改あらため、1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）に妻つまの病気びょうきに対たいし神かみの意思いしを感かんじ取とった大西おおにしは、再ふたたび大戦たいせんと国家こっか滅亡めつぼうの危機ききを予言よげん警告けいこくし天皇てんのうの神格しんかくを否定ひていする小しょう冊子さっし『書信しょしん』全ぜん7信しんを配布はいふさせ、治安ちあん維持いじ法ほう違反いはん及および不敬ふけい罪ざい違反いはんで大西おおにしを筆頭ひっとうに400人にんが検挙けんきょ、起訴きそされ無期むき懲役ちょうえきの判決はんけつを受うけ、教団きょうだんの結社けっしゃ禁止きんし命令めいれいも下くだされた。

敗戦はいせん後ご

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの敗戦はいせんにより釈放しゃくほうされ、免訴めんそとなった。1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）、大阪おおさか府ふ高石たかいし市しで教団きょうだんを再建さいけん。1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）、教団きょうだん名めいを「ほんみち」と改あらため、残のこりの人生じんせいすべてをほんみち振興しんこうと布教ふきょう活動かつどうに奉たてまつげた。

甘露かんろ台だい人じんの理り

天理教てんりきょうでは甘露かんろ台だいは天理てんり市しの教団きょうだん中心ちゅうしん部ぶにあるとしているが、大西おおにしは天理てんり市しにあるのは土地とちの甘露かんろ台だいであり、大西おおにし自身じしんが「人ひとの甘露かんろ台だい」であると主張しゅちょうした。

参考さんこう文献ぶんけん

• ほんみち教義きょうぎ部ぶ編へん『ほんみち概観がいかん』
• 村上むらかみ重良しげよし｢ほんみち｣『日本にっぽん宗教しゅうきょう事典じてん』（講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、1988年ねん）
• 井上いのうえ順じゅん孝こうほか編へん「大西おおにし愛治あいじ郎ろう」『新しん宗教しゅうきょう教団きょうだん人物じんぶつ事典じてん』（弘文社こうぶんしゃ、1996年ねん）
• 松本まつもと清張せいちょう「天理てんり研究けんきゅう会かい事件じけん」『昭和しょうわ史し発掘はっくつ４』（文芸春秋ぶんげいしゅんじゅう、1966年ねん）
• 秦はた郁いく彦『日本にっぽん近きん現代げんだい人物じんぶつ履歴りれき事典じてん（第だい2版はん）』（東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい、2013年ねん）

外部がいぶリンク

• 大西おおにし愛治あいじ郎ろう とは - コトバンク