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てん尾羽おばちょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
かみ神話しんわ(イザナギ・イザナミがんだかみ々) SVGで表示ひょうじ対応たいおうブラウザのみ)

てん尾羽おばちょう(あめのおはばり/あまのおはばり)は、日本にっぽん神話しんわ登場とうじょうするかたなであり[1][2]、またかみ名前なまえである[3][4][5]

概要がいよう

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イザナギ所有しょゆうする神剣しんけんじゅうたばけん)で、つまイザナミ黄泉よみ原因げんいんとなったカグツチころときもちいられた[5][6]。『古事記こじき』におけるかみめいは、てん尾羽おばちょうかみ(あめのおはばりのかみ)という[4][5]別名べつめい 伊都いと尾羽おばちょう(いつのおはばり)[2][4]。 『日本書紀にほんしょき』のりょう威雄たけおはしかみ(いつのをはしり/いつのをばしりのかみ)と同一どういつしんとされる[7][8]葦原よしわら中国ちゅうごく平定へいていくにゆずり)神話しんわ活躍かつやくするたて雷神らいじん鹿島かしま神宮じんぐうおもまつかみ)は、てん尾羽おばちょうかみ伊都いと尾羽おばちょう)の子供こども古事記こじき)もしくは子孫しそん日本書紀にほんしょき)と記述きじゅつされ[9][10]同一どういつしんとみなされることもある[7]

古事記こじき日本書紀にほんしょきにおける記述きじゅつ

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かみ

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古事記こじき』のかみだんにおいてよこしま岐命(イザナギ)は、つましんたるよこしま(イザナミ)の死因しいんとなった迦具しん(カグツチ)を、びたじゅうこぶしけんをもってくびり、ころ[11][12][13]古事記こじきでは、このじゅうこぶしけん名前なまえを「天尾てんのおちょう」、別名べつめいを「伊都いと尾羽おばちょう」としる[14][15]日本書紀にほんしょきでは「じゅうにぎけん」のみとしるして、固有名詞こゆうめいしあたえていない[16][17]

おろし】

 かれりたまひしかたなたちは、てんあめこれはねちょうばりいいひ、またこれはねちょうばりいいふ。

一方いっぽうじゅうこぶしけんからこぼれちたカグツチのからはかみなりかたなかかわる八神はっしんまれるが[18][19]、そのなかたてかみなり男神おかみけんぬのしん/ゆたかぬのかみ)もあった[20][21]

葦原よしわら中国ちゅうごく平定へいてい

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古事記こじき』にける葦原よしわら中国ちゅうごく平定へいていだんでは、てんいのち(あめのほひ)・てんやや(あめわかひこ)にさん番目ばんめ葦原よしわら中国ちゅうごく派遣はけんするかみ選定せんていするさい登場とうじょうする[5][22]おもえけんかみ(おもいかね)は、伊都いと尾羽おばちょうかみもしくは[23][24]、そのかみけんかみなり男神おかみ推薦すいせんしている[25][26]天尾てんのおちょうかみてんやすかわみずぎゃくにせきげてみちふさいでおり[27]かみはそこへくことができないので、てん迦久しん[28]使者ししゃとしてつかわされた[29][30]伊都いと尾羽おばちょうかみは「こわし。つかたてまつらむ。しか(しかれ)どもこのみちには、ぼく(わ)がたて雷神らいじんはすべし」(もったいないことです。おつかえいたしましょう。ですが、この使つかいにはわたしよりも、わたし子供こども たてかみなり男神おかみつかわすのがよろしいでしょう)とこたえたため、たてかみなり男神おかみてんとりせんしんとも葦原よしわら中国ちゅうごく派遣はけんされることになった[24][31][32]

日本書紀にほんしょき』の葦原よしわら中国ちゅうごく平定へいていだん本文ほんぶんたけづちしん登場とうじょうするさい[33][34]てん石窟せっくつかみであるりょう威雄たけおはしかみ(いつのおはしりのかみ)[7]よんせいまごであるとしるされている (1.りょう威雄たけおはしかみ[35] ― 2.そくしん[36][37] ― 3.熯速いのち[36] ― 4.たけづちしん[38]りょう威雄たけおはしかみてん尾羽おばちょうかみ別名べつめいられる[7][39]。こののちたけづちしんけい主神しゅしんとも出雲いずも派遣はけんされた(けい主神しゅしん書記しょきのみ登場とうじょう[34]一説いっせつには、てん尾羽おばちょうかみ伊都いと尾羽おばちょうかみけい主神しゅしんたてかみなり男神おかみ同一どういつしんであるという[7]

解説かいせつ

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日本にっぽん神話しんわは、てん尾羽おばちょう伊都いと尾羽おばちょうかみりょう威雄たけおはし)・タケミカヅチ(たて雷神らいじん)のはしらとも、けん神霊しんれいであることをあらわしている[9][40][41]。 なお「尾羽おばちょう」は「ちょう」で、ほこさき両方りょうほうした(切先きっさき幅広はばひろくなった)けん意味いみである[1]。「ゆうちょう」で、全体ぜんたい鋭利えいりであることを意味いみするとも[1]。「てん」は高天原たかまがはら関係かんけいのあるものであることをしめす。 「伊都いと」「りょう」(いつ/いづ)は、かみ威力いりょくさかんな様子ようす意味いみする[2][42]古事記こじきで「伊都いと尾羽おばちょうかみ」がてんやすかわみずめていたことから、やました尾根おね意味いみするとも[21]。 「ゆうはし」(をはしり)は「鞘走さやばしる」(さおはしる)ので、鋭利えいりのひらめきがするどはし様子ようすしめ[2][35]。 なお「はね々」(はば)で大蛇おろち意味いみする[43]

現在げんざい、タケミカヅチは鹿島かしま神宮じんぐう[44][37]全国ぜんこく鹿島かしま神社じんじゃまつられている。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 倉野くらの憲司けんじ へん古事記こじき岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ文庫ぶんこ〉、1963ねん1がつISBN 4-00-300011-0 
  • 坂本さかもと太郎たろう家永いえなが三郎さぶろう井上いのうえ光貞みつさだ大野おおのすすむこうちゅう日本書紀にほんしょきいち)』岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ文庫ぶんこ〉、1994ねん9がつISBN 4-00-300041-2 
  • 宇治谷うじたにはじめ日本書紀にほんしょきうえ) ぜん現代げんだいやく講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、1988ねん6がつISBN 4-06-158833-8 
  • 西郷さいごう信綱のぶつなだい だいはち島国しまぐにかみ々の生成せいせい」『古事記こじき注釈ちゅうしゃく だいいちかん平凡社へいぼんしゃ、1975ねん1がつ 
  • 西郷さいごう信綱のぶつなだいじゅうよん くにゆずり(つづけ)」『古事記こじき注釈ちゅうしゃく だいかん平凡社へいぼんしゃ、1975ねん1がつ 
  • 斎部広成いんべのひろなりせん西宮にしのみや一民かずたみこうちゅう古語こご拾遺しゅうい岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ文庫ぶんこ〉、1985ねん3がつISBN 4-00-300011-0 
  • 武田たけだ祐吉ゆうきち訳注やくちゅう中村なかむらあきらしんてい解説かいせつしんてい 古事記こじき づけ現代げんだいやく角川書店かどかわしょてん角川かどかわ文庫ぶんこ〉、1977ねん8がつISBN 4-04-400101-4 
  • 真幸まさき古事記こじきうえぜん訳注やくちゅう講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、1977ねん12月。ISBN 4-06-158207-0 
  • 鹿島かしま神宮じんぐうもと宮司ぐうじ東実とうじつさん 日本にっぽん神話しんわたけづちしん」『鹿島かしま神宮じんぐう <改訂かいてい新版しんぱん>』学生がくせいしゃ日本にっぽん神社じんじゃ〉、2000ねん8がつISBN 4-311-40717-3 
  • 福永ふくながよいけん日本にっぽんがたなだい百科ひゃっか事典じてんぜん5かん> だい1かん あ―かっ雄山閣ゆうざんかく出版しゅっぱん日本にっぽんがたなだい百科ひゃっか〉、1993ねん11月。ISBN 4-639-01202-0 

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c 日本にっぽんがたなだい百科ひゃっか事典じてん1かん52ぺーじあめのおはばりのつるぎてん尾羽おばちょうけん
  2. ^ a b c d 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくいちかん169-170ぺーじ『○《てん尾羽おばちょう伊都いとイツこれ尾羽おばちょう》』
  3. ^ 日本にっぽんがたなだい百科ひゃっか事典じてん1かん52ぺーじあめのおはばりのかみてん尾羽おばちょうかみ
  4. ^ a b c 古事記こじき(岩波いわなみ文庫ぶんこ)24-26ぺーじ『5 しんころせ
  5. ^ a b c d 神道しんとうだい辞典じてんいちかんコマ35(原本げんぽん49ぺーじ)
  6. ^ 古事記こじき(角川かどかわ文庫ぶんこ1977)213-214ぺーじ黄泉よみくに
  7. ^ a b c d e 神道しんとうだい辞典じてんいちかんコマ82(原本げんぽん133ぺーじ)
  8. ^ 日本にっぽん建国けんこく神話しんわコマ25-26(原本げんぽん28-30)
  9. ^ a b 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかんぺーじ
  10. ^ 古事記こじき(角川かどかわ文庫ぶんこ1977)244ぺーじくにゆずり』
  11. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくいちかん161-162ぺーじきゅう 迦具しんる』
  12. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう55-56ぺーじよん しん迦具しん
  13. ^ 神道しんとうだい辞典じてんいちかんコマ178(原本げんぽん302ぺーじ)
  14. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくいちかん167-168ぺーじじゅう 迦具しん死体したいかみ
  15. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう59ぺーじ『○てん尾羽おばちょう/○伊都いと尾羽おばちょう
  16. ^ 日本書紀にほんしょき1かん(岩波いわなみ文庫ぶんこ)43ぺーじ(註六)
  17. ^ 宇治谷うじたに書記しょき(うえ)25-26ぺーじいちしょ(だいろく)』
  18. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう57-58ぺーじ現代げんだいやく
  19. ^ 古事記こじき(角川かどかわ文庫ぶんこ1977)27-28ぺーじ
  20. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくいちかん164-165ぺーじ『○《たてかみなり男神おかみ》/○《けんぬのかみゆたかぬのかみ》』
  21. ^ a b 鹿島かしま神宮じんぐう(学生がくせいしゃ2000)38-41ぺーじたけづちしん誕生たんじょう
  22. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかん190-191ぺーじいち けん雷神らいじん
  23. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう161ぺーじ『○伊都いと尾羽おばちょうかみ
  24. ^ a b 鹿島かしま神宮じんぐう(学生がくせいしゃ2000)41-43ぺーじたけづちしん行動こうどう
  25. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう159-160ぺーじさん けん雷神らいじん事代ことしろ主神しゅしん
  26. ^ 古事記こじき(岩波いわなみ文庫ぶんこ)60-61ぺーじ『3 けん雷神らいじん
  27. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかん192ぺーじ『○《ぎゃくみずげて云々うんぬん》』
  28. ^ 古事記こじき(角川かどかわ文庫ぶんこ1977)60ぺーじ(かく=鹿児かことも)
  29. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかん192ぺーじ『○《てん迦久しん》』
  30. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう160-161ぺーじ現代げんだいやく
  31. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかん192-193ぺーじ『○《つかまつたてまつらむ》』
  32. ^ さんたい古事記こじきコマ61-62ぺーじ(原本げんぽん101-102ぺーじ)『大國たいこく主神しゅしんくにゆずり』
  33. ^ 日本書紀にほんしょき講義こうぎ.神代かみよコマ133(原本げんぽん18-19ぺーじ)『譯讀やくどく
  34. ^ a b 鹿島かしま神宮じんぐう(学生がくせいしゃ2000)48-49ぺーじたけづちしん出雲いずも派遣はけん
  35. ^ a b 日本書紀にほんしょき講義こうぎ.神代かみよコマ133-134(原本げんぽん19-20ぺーじ)
  36. ^ a b 日本書紀にほんしょき講義こうぎ.神代かみよコマ134(原本げんぽん20ぺーじ)
  37. ^ a b 古語こご拾遺しゅうい講義こうぎコマ19(原本げんぽん30ぺーじ)
  38. ^ 日本書紀にほんしょき1かん(岩波いわなみ文庫ぶんこ)116ぺーじ(本文ほんぶん)
  39. ^ 日本書紀にほんしょき1かん(岩波いわなみ文庫ぶんこ)117ぺーじ(註一さん)
  40. ^ 古事記こじき(うえ)ぜん訳註やくちゅう162ぺーじ解説かいせつ
  41. ^ 西郷さいごう(1975)古事記こじき注釈ちゅうしゃくかん193ぺーじ『○《此のみち》』
  42. ^ 神道しんとうだい辞典じてんいちかんコマ78(原本げんぽん127ぺーじ)
  43. ^ 古語こご拾遺しゅうい講義こうぎコマ17ぺーじ(原本げんぽん26ぺーじ)
  44. ^ 古語こご拾遺しゅうい(岩波いわなみ文庫ぶんこ)25-26『われしょうみこと

関連かんれん項目こうもく

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