太たい行ゆき山脈さんみゃく

太たい行ゆき山脈さんみゃく

太たい行ゆき山脈さんみゃく（たいこうさんみゃく、拼音: Tàiháng Shān タイハンシャン）は中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく北部ほくぶにある山地さんち。山西さんせい省しょう、河南かなん省しょう、河北かほく省しょうの3つの省しょうの境界きょうかい部分ぶぶんに位置いちする。太たい行ゆき山脈さんみゃくは東ひがしの華北かほく平野へいやと西にしの山西さんせい高原こうげん（黄土おうど高原こうげんの最さい東ひがし端はし）の間あいだに、北東ほくとうから南西なんせいへ400kmにわたり伸のびており、平均へいきん標高ひょうこうは1,500mから2,000mである。最高峰さいこうほうは河北かほく省しょう張ちょう家か口くち市しの小しょう五台山ごだいさんで、標高ひょうこう2,882m。山脈さんみゃくの東ひがしにある標高ひょうこう1,000mほどの蒼あおい岩山いわやまは自然しぜんの奇き峰ほうや歴史れきしある楼閣ろうかくなどの多おおい風景ふうけい区くとなっている。また山脈さんみゃくの南端なんたんに近ちかい河南かなん省しょうの雲くも台山だいやまは景勝けいしょう地ちでもあり、世界せかいジオパークにも指定していされている地球ちきゅう科学かがく的てきに価値かちの高たかい地域ちいきでもある。山西さんせい省しょう・山東さんとう省しょうの地名ちめいは、この太ふと行ぎょう山脈さんみゃくの西にし・東ひがしにあることに由来ゆらいする。

太たい行ゆき山脈さんみゃく

太たい行ゆき山脈さんみゃくの北端ほくたんは北京ぺきんへ流ながれる拒こばめ馬ば河かわによって北京ぺきん市し北部ほくぶを取とり囲かこむ軍ぐん都と山やま（軍ぐん都と山脈さんみゃくはさらに東ひがしの遼りょう西にしへ伸のびる燕つばめ山さん山脈さんみゃくの一部いちぶをなす）と隔へだてられ、一方いっぽう南端なんたんは河南かなん省しょうの沁河平原へいげんで終おわっている。山脈さんみゃくの東側ひがしがわは華北かほく平野へいやからそそり立たち落差らくさが激はげしく、段差だんさ1,000m以上いじょうの断崖だんがいを形成けいせいしているところもある。山脈さんみゃくの西側にしがわは、山西さんせい省しょうの高原こうげん地帯ちたいへゆるやかにつながっている。山脈さんみゃくから多おおくの川かわが発はっし、西にしの黄河こうがや東ひがしの海うみ河かわに合流ごうりゅうする。

北部ほくぶと南部なんぶは石灰岩せっかいがん、中部ちゅうぶは片かた麻あさ岩がんからなり、地形ちけいは多数たすうの川かわにより激はげしく侵食しんしょくされ、険けわしい渓谷けいこくや切きり立たった峰々みねみねを形成けいせいしている。これらの渓谷けいこくが、山脈さんみゃくを東西とうざいに横断おうだんして華北かほく平野へいやと山西さんせい省しょうとを繋つなぐ孔あな道どうの通とおり道みちとなっており、古来こらいより娘むすめ子こ関せきや紫むらさき荊関などの関所せきしょや要塞ようさいが設置せっちされてきた。またこれらの川かわが平野へいやに出でる谷口たにぐちにあたる部分ぶぶんも、戦略せんりゃく上じょう・輸送ゆそう上じょうの要所ようしょとなっている。

太たい行ゆき山脈さんみゃく

また山脈さんみゃくは石灰岩せっかいがんのほかにも石炭せきたん資源しげんや陶土とうどが豊富ほうふであり、炭鉱たんこう、陶磁器とうじき製造せいぞう、セメント製造せいぞうなどの工業こうぎょうを支ささえている。

夏なつは、山脈さんみゃくの東側ひがしがわに水分すいぶんを多おおく含ふくんだ海うみからの風かぜが直接ちょくせつ吹ふき付つけて乗のり越こえようとするため、激はげしい雨あめに見舞みまわれ下流かりゅうでは洪水こうずいが起おこる。1963年ねんの河北かほく省しょうの大だい洪水こうずいは典型てんけい例れいである。また山脈さんみゃくが華北かほく平野へいやから隆起りゅうきしているのは断層だんそうの働はたらきでもあるため、内陸ないりく性せい地震じしんの震源しんげん帯たいにもなっている。山麓さんろくの河北かほく省しょう邢台では、1966年ねんに20世紀せいきの中国ちゅうごくの地震じしん史上しじょうでも最大さいだい級きゅうの地震じしん（邢台地震じしん）が起おこっている。

太たい行ゆき八はち陘

太たい行ゆき山脈さんみゃくには河北かわきた平原へいげんから山西さんせいに通つうずる8つの峠とうげ道どうがあり、中国ちゅうごくでは太たい行ゆき八はち陘（たいこうはっけい）と呼よばれている。「陘」とは谷たにや峠とうげ道どうを指さす。

• 軹関陘（しかんけい） - 最もっとも南みなみにある峠とうげ道どうが軹関陘で王おう屋山ややま（おうおくさん）に通つうじている。紀元前きげんぜん約やく2,500年ねん前まえ、黄き帝みかどが王おう屋山ややまに登頂とうちょうしたと伝つたえられている。
• 太たい行ゆき陘 - 軹関陘から東ひがしには太たい行ゆき陘があり、春秋しゅんじゅう時代じだいの孔子こうしは弟子でしを引ひき連つれて晋すすむを訪おとずれた。標高ひょうこうの比較的ひかくてき高たかいところにいくつかの村むらがあるが、当時とうじの晋すすむの国くにの外はずれにある攔車村むらや天性てんせい関村せきむらがある。
• 白しろ陘（はくけい） - 太たい行ゆき陘のさらにその東ひがしには白しろ陘があり、8つの峠とうげ道どうの中なかで最もっとも厳きびしい。切きり立たつ崖がけに道みちがあり、その先さきには上うえ党とうと呼よばれる肥沃ひよくな土地とちの盆地ぼんちがありトウモロコシの段々畑だんだんばたけが広ひろがっている。上うえ党とうを収おさめていた当時とうじの趙ちょうは、長平ながだいの戦たたかいによって秦はたに滅ほろぼされるが、骸骨がいこつ廟びょうには趙ちょう括くくとその妻つまが祭まつられている。高平たかひら市しでは敵てきの秦はたの白しろ起おこり将軍しょうぐんの白しろと豆腐とうふの白しろを掛かけ合あわせて、豆腐とうふを切きって焼やいて食たべる「高平たかひら焼やき豆腐どうふ」を生産せいさんしている。
• 滏口陘（ふこうけい） - 上記じょうき3つの道みちがほぼ南北なんぼくであるのに対たいし、この滏口陘は邯鄲かんたん市しから西にしへと続つづく東西とうざいの道みちである。
• 井い陘（せいけい） - 滏口陘より北きたのほぼ太ふとし行ぎょう山脈さんみゃくの中央ちゅうおうにある峠とうげ道どう。太たい行ゆき山脈さんみゃくを横断おうだんしており、鉄道てつどうも走はしっている。この道みちを作つくったのは始皇帝しこうていである。「背水はいすいの陣じん」で有名ゆうめいな井い陘の戦たたかいの舞台ぶたいになった。
• 蒲かば陰かげ陘（ほいんけい） - 井い陘より北きたにある。太たい行ゆき山脈さんみゃくは中国ちゅうごく屈指くっしの石炭せきたんが取とれる場所ばしょで、この道みちではトラックが多おおくみられる。
• 飛ひ狐きつね陘（ひこけい） - 蒲かば陰かげ陘と軍ぐん都と陘の間あいだにある峠とうげ道どうで、最もっとも北きたにある軍ぐん都と陘が万里ばんりの長城ちょうじょうにより攻せめ入はいることが難むずかしいと悟さとったチンギス・カンは、同おなじく万里ばんりの長城ちょうじょうがあるも軍ぐん都と陘よりも低ひくい飛ひ狐きつね陘の関所せきしょを突破とっぱした。軍ぐん都と陘の万里ばんりの長城ちょうじょうにいた敵てき軍ぐんを南みなみと北きたから挟はさみ撃うちした。
• 軍ぐん都と陘（ぐんとけい） - 北京ぺきんの北西ほくせいにある一番いちばん北きたにある峠とうげ道どう。居きょ庸いさお関せきは太たい行ゆき八はち陘のなかで最もっとも有名ゆうめいである。万里ばんりの長城ちょうじょうがある。

また、太たい行ゆき山脈さんみゃくには太たい行ゆき八はち陘以外がいにも名なも知しられない峠とうげ道どうがいくつもある。その1つの山西さんせい省しょう大河おおかわ村むらの大河たいが関せきは曹操そうそうが通とおった道みちである。