小針こばり暦れき二に

小針こばり 暦れき二に（こばり れきじ、1914年ねん1月がつ1日にち - 1993年ねん11月7日にち）は、日本にっぽんの実業じつぎょう家か。福島ふくしま交通こうつうの経営けいえいに関与かんよしたことを手始てはじめに、同社どうしゃおよび福島ふくしま民みん報ほう・ラジオ福島ふくしま（rfc）を中核ちゅうかく3社しゃとするグループ10数すう社しゃのオーナーとなる。また日本債券信用銀行にっぽんさいけんしんようぎんこうを介かいして、中央ちゅうおう政界せいかいにも深ふかく関かかわり、東北とうほくの政商せいしょう、東北とうほくの小佐野おさのなどと呼よばれた。

「暦こよみ」の字じは正確せいかくには「木き」の部分ぶぶんが「禾」になっている。

前ぜん半生はんせいと福島ふくしま交通こうつうへの経営けいえい参加さんか

福島ふくしま県けん西白河にししらかわ郡ぐん矢吹やぶき町まち出身しゅっしん。旧制きゅうせい安積あさか中学ちゅうがくを中退ちゅうたい。戦時せんじ中ちゅうは背せが低ひくいため兵隊へいたいには行いかなかった。精米せいまい業ごうを経へて炭坑たんこう経営けいえいなどを手掛てがける。1953年ねんに大阪おおさかに出でて不動産ふどうさん会社かいしゃの美び福ぶくを創業そうぎょう。日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう会かいの駒村こまむら資し正ただしとの親交しんこうから河野こうの一郎いちろうと通つうじる様ようになり、その配下はいかだった中曽根なかそね康弘やすひろとも繋つながりが出来できる。1964年ねんから翌よく65年ねんにかけての栃木とちぎ県けん那須高原なすこうげんの国有こくゆう地ち払はらい下さげでは、駒村こまむらが社長しゃちょうを務つとめていた江こう商しょうのエージェントとして働はたらき、その際さい河野こうのへの政治せいじ工作こうさくが行おこなわれたとして国会こっかいで追及ついきゅうされた。

1968年ねんに、経営けいえい陣じんの内紛ないふんや相次あいつぐ労働ろうどう争議そうぎで混乱こんらんしていた福島ふくしま交通こうつうの経営けいえいに前ぜん社長しゃちょうの織田おだ大蔵たいぞうを追おい出だし後任こうにんとして関与かんよ。中曽根なかそね運輸うんゆ相しょうや中曽根なかそね派はの代議士だいぎしで地元じもと選出せんしゅつの天野あまの光晴みつはるの助力じょりょくもあって、旧きゅう経営けいえい陣じんを追おって社長しゃちょうに就任しゅうにんした。その後ご、福島ふくしま交通こうつう・福島ふくしま民みん報ほう・ラジオ福島ふくしま（rfc）を中核ちゅうかく3社しゃとするグループ10数すう社しゃのオーナーとなり、那須高原なすこうげんなどでゴルフ場じょうやホテルの建設けんせつなど観光かんこう開発かいはつを手掛てがけ不動産ふどうさん事業じぎょうを展開てんかい、グループを拡大かくだいした。

小針こばりは日本債券信用銀行にっぽんさいけんしんようぎんこうのドンとして君臨くんりんした勝田かつた龍夫たつおと密接みっせつに結むすびつき、日債銀にっさいぎんと政界せいかいを結むすびつけるパイプ役ぱいぷやくとなり、20年間ねんかんにわたり日債銀にっさいぎんから巨額きょがく資金しきんを引ひき出だした。また勝田かつたの後任こうにんとして頭取とうどりに就任しゅうにんした頴川史郎しろうも小針こばりと懇意こんいで、勝田かつた頭取とうどり時代じだいから一貫いっかんして福島ふくしま交通こうつうを担当たんとう。頴川は福島ふくしま交通こうつう向むけ融資ゆうしを表面ひょうめん上じょうは同社どうしゃや小針こばりとは無関係むかんけいなエフ・アール・イーという会社かいしゃに移うつし、帳簿ちょうぼ上うえから福島ふくしま交通こうつうへの日債銀にっさいぎんの融資ゆうしが消きえるように細工ざいくした。これが、その後ご日債銀にっさいぎんがことあるごとに使つかうことになる不良ふりょう債権さいけん飛とばしの原型げんけいとなった。

1971年ねんに福島ふくしま交通こうつうと子会社こがいしゃの福島ふくしま交通こうつう不動産ふどうさんは、白河しらかわ開発かいはつ計画けいかくと呼よばれるニュータウンづくりに着手ちゃくしゅ。福島ふくしま県けん白河しらかわ市しの土地とち1000haの買収ばいしゅうに取とり掛かかる。だが、途中とちゅう、オイルショックに見舞みまわれ、計画けいかくは中断ちゅうだんしたがこの間あいだ、日債銀にっさいぎんから400億おく円えんもの資金しきんがつぎ込こまれた。その後ごも追加ついか融資ゆうしが続つづき、1984年ねん当時とうじ、福島ふくしま交通こうつうと福島ふくしま交通こうつう不動産ふどうさんへの融資ゆうし額がくは685億おく円えんに達たっした。この融資ゆうしは国会こっかいでも「過剰かじょう融資ゆうしではないか」と追及ついきゅうされた。この時期じきは佐藤さとう栄作えいさく政権せいけんの末期まっきであり、後釜あとがまを福田ふくだ赳夫たけおと田中たなか角栄かくえいが激はげしく争あらそい、票ひょう集あつめのため実弾じつだんが飛とび交かい、「角すみ福ぶく戦争せんそう」と呼よばれていた。この実弾じつだんを用意よういしたのは田中たなか陣営じんえいが小佐野おさの賢治けんじで福田ふくだ陣営じんえいは小しょう針はりであった。このため、福島ふくしま交通こうつうグループが日債銀にっさいぎんから受うけた融資ゆうしは、総裁そうさい選せんの資金しきんづくりが目的もくてきだった（自民党じみんとう関係かんけい者しゃ）が定説ていせつとなっている。

金丸かねまる信しんとは遠縁とおえんにあたりその縁えんで政財界せいざいかいとのパイプを構築こうちくした。金丸かねまるは小針こばりを「小ちいさな政商せいしょうみたいな人ひと」と称しょうした。竹下たけした登のぼる、安倍あべ晋すすむ太郎たろうをはじめ中央ちゅうおう政界せいかいの大物おおもの政治せいじ家かと幅広はばひろい交際こうさいがあり、「昭和しょうわの政商せいしょう」といわれた小佐野おさの賢治けんじになぞらえ「東北とうほくの小佐野おさの」と呼よばれた。

「政商せいしょう」として

1984年ねん3月がつには、東京とうきょう国税局こくぜいきょくより福島ふくしま交通こうつう・福島ふくしま交通こうつう不動産ふどうさんで過去かこ7年間ねんかんに約やく50億おく円えんの使途しと不明ふめい金きんが指摘してきされ、9,000万まん円えんの追徴ついちょう課税かぜいに応おうじている。これをきっかけに、同どうグループの乱脈らんみゃく経理けいりが発覚はっかくし経営けいえい危機ききに陥おちいったが、これらの不良ふりょう資産しさんを東京とうきょう佐川急便さがわきゅうびんが事実じじつ上じょう抱かかえ込こむなどして救済きゅうさいしたことから、渡辺わたなべ広ひろ康やすし社長しゃちょうとの関係かんけいが親密しんみつ化かした。後ごの東京とうきょう佐川急便さがわきゅうびん事件じけんでは、同社どうしゃ再建さいけん会議かいぎで金丸かねまる・竹下たけしたらから金融きんゆう機関きかんへの口添くちぞえを期待きたいする渡辺わたなべを補佐ほさしたほか、佐川さがわ清きよし・佐川急便さがわきゅうびん会長かいちょうが渡辺わたなべらを告訴こくそした際さいも、渡辺わたなべの意向いこうをくんで金丸かねまるに相談そうだんしている。なお、この事件じけんでは1992年ねん5月には福島ふくしま交通こうつう本社ほんしゃなどが東京とうきょう地検ちけん特捜とくそう部ぶの家宅かたく捜索そうさくを受うけている。

1993年ねんに発覚はっかくした金丸かねまる信しん脱税だつぜい事件じけんでは、1985年ねん頃ころより金丸かねまるに、日債銀にっさいぎんの割引わりびき金融きんゆう債さい（ワリシン）の購入こうにゅうを指南しなんしていたことが判明はんめいしている。またゼネコン汚職おしょく事件じけんでは、1990年ねん2月がつ頃ごろ、本田ほんだ茂しげるハザマ会長かいちょう（当時とうじ）に5億おく円えんを資金しきん提供ていきょう、これは石井いしい亨とおる仙台せんだい市し長ちょう（当時とうじ）に対たいしての賄賂わいろとして贈おくられることが判明はんめいしている。

“政商せいしょう”小針こばりに対たいしては、日債銀にっさいぎんの500億おく円えんはじめ、石川銀行いしかわぎんこうなどの金融きんゆう機関きかんが乱脈らんみゃく融資ゆうしを続つづけていた。これらは後のちに不良ふりょう債権さいけんとして経営けいえいを揺ゆさぶり、破綻はたんの原因げんいんとなる。

死去しきょとグループの解体かいたい

1993年ねん3月がつ11日にち、金丸かねまる信しん巨額きょがく脱税だつぜい事件じけんで衆議院しゅうぎいん予算よさん委員いいん会かいの臨床りんしょう尋問じんもんを受うけた直後ちょくご、心臓しんぞう病びょう治療ちりょうのため渡米とべい。間あいだもなく帰国きこくしたが、その後ご再ふたたび体調たいちょうを崩くずし、東京医科大学とうきょういかだいがく病院びょういんに入院にゅういんする。そして、同年どうねん11月がつ7日にち、急性きゅうせい心肺しんぱい機能きのう不全ふぜんのため同どう病院びょういんで死去しきょ。79歳さいだった。

小針こばりの遺産いさん相続そうぞくにあたって行おこなわれた1993年ねん所得しょとく申告しんこくは、前年ぜんねんの約やく12倍ばいとなる14億おく8千せん万まん円えんに膨ふくれ上あがり、番付ばんづけでも全国ぜんこく7位いにランクされた。これは、小針こばりの死亡しぼう時じには少すくなくとも100億おく円えんを超こす借金しゃっきんがあったため、遺族いぞく側がわが相続そうぞく財産ざいさんを限度げんどに債務さいむを返済へんさいする「限定げんてい承認しょうにん」という相続そうぞくの方式ほうしきを選択せんたくし、株式かぶしき譲渡じょうと所得しょとく31億おく円えん、土地とち譲渡じょうと所得しょとく9億おく円えんを「みなし所得しょとく」として申告しんこくしたためであった。この結果けっか、遺族いぞくには遺産いさんが一いち銭ぜにも残のこらなかったという。

小針こばりが死去しきょすると、グループの後継こうけい者しゃには長男ちょうなんの小針こばり美雄よしお（2008年ねん1月がつ3日にち死去しきょ）が就任しゅうにんした。しかし、バブル崩壊ほうかい後ご、観光かんこう開発かいはつなどが難航なんこうし、1997年ねんには那須なすカントリー倶楽部くらぶを所有しょゆうする日本にっぽんロイヤルクラブがゴルフ場じょうの競売きょうばいを申もうし立たてられるなど経営けいえい危機ききが表面ひょうめん化かした。この状況じょうきょう下かで、美雄よしおは新あらたにパチンコ事業じぎょうに進出しんしゅつするなど、無理むりな多角たかく化かとワンマン経営けいえいが目立めだっていた。こうしたリゾート事業じぎょうがグループ中核ちゅうかく3社しゃの事業じぎょうに影響えいきょうしかねないと判断はんだんした各社かくしゃ取締役とりしまりやく会かいは、同年どうねん12月がつ、取締役とりしまりやく会かいの緊急きんきゅう動議どうぎにて美雄よしおとその義弟ぎていで3社しゃ副ふく社長しゃちょう・山田やまだ克かつ爾なんじの解任かいにんを決議けつぎし、小針こばり一族いちぞくをグループから放逐ほうちくした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 有森ありもり隆たかし『銀行ぎんこうの墓碑銘ぼひめい』 講談社こうだんしゃ、2009年ねん。ISBN 4062152703

外部がいぶリンク

• 小針こばり暦れき二にとは - コトバンク