帰巣きそう本能ほんのう

帰巣きそう本能ほんのう（きそうほんのう）あるいは帰巣性きそうせい（きそうせい）とは、動物どうぶつが不慣ふなれな地域ちいきを通とおって元々もともと暮くらしている場所ばしょにたどり着つくことを可能かのうとする生来せいらいの能力のうりょくのことである。元々もともとの場所ばしょは、縄張なわばりや巣すなどである。さまざまな生物せいぶつの帰巣性きそうせいについて研究けんきゅうされているが、まだよく解明かいめいされていないことも多おおい。

帰巣きそう本能ほんのうは、渡わたりの際さいに以前いぜん暮くらした場所ばしょを見みつける際さいにも使用しようされうる。サケのように、何なん年ねんも前まえに巣すとしていた川かわに遡上そじょうする場合ばあいも帰巣きそう本能ほんのうによるとされる。また、アカハライモリなどのように、長距離ちょうきょりにわたって移動いどうした後のちに元々もともと住すんでいた縄張なわばりに戻もどる場合ばあいにも帰巣きそう本能ほんのうが使つかわれる。

犬いぬは地磁気ちじきを感知かんちしているという指摘してきをされており、帰巣きそう本能ほんのうにも利用りようしているとされる。また、帰巣きそう方法ほうほうとして、27匹ひきを使つかった622回かいの実験じっけんで元もと来きた道みちをたどるトラッキングを行おこなったパターンは399回かい、新あたらしい道みちを開拓かいたくするスカウティングを行おこなったパターンが223回かい、50回かいはトラッキングの途中とちゅうでスカウティングに変更へんこうしたパターンで、スカウティングで移動いどうした場合ばあいはショートカットされて所要しょよう時間じかんが短縮たんしゅくされた。

航法こうほうによる帰巣きそう

帰巣きそうにおいて、真しんの航法こうほうを用もちいる動物どうぶつも存在そんざいする。ここでいう航法こうほうとは、馴染なじみのある場所ばしょでは道路どうろや河川かせん、山やまなどを目印めじるしとして飛行ひこうしたり、島とうしょなどを目印めじるしとして泳およいだりするという意味いみである。しかし、このような航法こうほうは、その動物どうぶつがすでに知しっている場所ばしょでしか使つかえない。例たとえば、伝書鳩でんしょばとは主しゅとして道路どうろや建物たてものといった目印めじるしを使つかって元もといた場所ばしょに戻もどってくることが知しられている。また、ウミガメも海中かいちゅうで正ただしい方向ほうこうを判断はんだんするために目印めじるしを使用しようする。

磁覚による帰巣きそう

動物どうぶつの多おおくは、地球ちきゅうの磁気じき、つまり地磁気ちじきに基もとづいて帰巣きそうの経路けいろを見みつける（磁気じきコンパス）。この場合ばあい、地磁気ちじきと他たの方法ほうほうを併用へいようするのが普通ふつうである。具体ぐたい的てきには、鳥とりやカメの渡わたりにおける太陽たいようの方角ほうがく（太陽たいようコンパス）が知しられている。また、水中すいちゅうに棲すむロブスターや地中ちちゅうに棲すむモグラのように、磁覚以外いがいに帰巣きそうのための手段しゅだんを持もたない生物せいぶつも存在そんざいする。

天体てんたいによる帰巣きそう

天体てんたい（星ほし）を利用りようして帰巣きそうする動物どうぶつも存在そんざいする。例たとえば、マダライモリは星ほしが見みえるときにだけ帰巣きそうすることができる。

嗅覚きゅうかくによる帰巣きそう

いくつかの種たねのサンショウウオは、嗅覚きゅうかく、つまり臭においを利用りようして帰巣きそうすることが確認かくにんされている。サケも故郷こきょうの川かわに帰かえるときに嗅覚きゅうかくを必要ひつようとする。

地形ちけい学がく的てきな記憶きおくによる帰巣きそう

地形ちけい学がく的てきな記憶きおく、つまり目的もくてき地ちを取とり巻まく周囲しゅういに関かんする記憶きおくも帰巣きそうの際さいに通常つうじょう用もちいられる。この方法ほうほうによる帰巣きそうを用もちいるのは、主おもに軟体動物なんたいどうぶつなどの比較的ひかくてき下等かとうな生物せいぶつである。カサガイはこの方法ほうほうで帰巣きそうするとされているが、これについては議論ぎろんもある。

参考さんこう文献ぶんけん

• “驚おどろくべき動物どうぶつの帰巣きそう本能ほんのう”. ナショナル ジオグラフィック日本にっぽん版ばん. 2021年ねん4月がつ18日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

• 渡わたり
• 回遊かいゆう
• 縄張なわばり