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ちょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくにおいて、複雑ふくざつ形状けいじょう曲線きょくせん弧状こじょう線分せんぶん)のちょう(こちょう、えい: arc length)を決定けっていする問題もんだいは、曲線きょくせんもとめちょう (rectification) ともばれ、特定とくてい曲線きょくせんたいするもとめちょうほう歴史れきしてき様々さまざまなものがかんがえられてきたが、無限むげんしょう解析かいせき到来とうらいとともに曲線きょくせんらない一般いっぱんろんみちびかれ、いくつかの場合ばあいにはそこからじたかたちしき英語えいごばんられる。

複数ふくすう線分せんぶんによる近似きんじ

平面へいめんうち曲線きょくせんは、曲線きょくせんじょう有限ゆうげんてん線分せんぶんむすんでられる折線おれせん近似きんじすることができる。かく線分せんぶんながさは、ユークリッド空間くうかんにおけるピタゴラスの定理ていりなどから直接ちょくせつもとまるので、近似きんじ折線おれせんそう延長えんちょうはそれらの線分せんぶんながさの総和そうわとして決定けっていすることができる。

かんがえている曲線きょくせんがはじめから折線おれせんなのでなければ、もちいる線分せんぶんながさをみじかくしてかずやすことによって、よりその曲線きょくせんちかかたち折線おれせん近似きんじられる。そうやってよりよい近似きんじ折線おれせん次々つぎつぎにつくっていくと、そのながさはることはなく、場合ばあいによっては無制限むせいげん増加ぞうかつづける可能かのうせいもある。しかし、ことなめらかな曲線きょくせんかぎっては、それは線分せんぶんながさを無限むげんちいさくする極限きょくげんかなら一定いってい極限きょくげん収斂しゅうれんする。このように、あるしゅ曲線きょくせんたいしては、任意にんい近似きんじ折線おれせんながさのうえかい最小さいしょう L存在そんざいする。そのとき、その曲線きょくせん有限ゆうげんちょうであるといい、 L をその曲線きょくせんちょうぶのである。

定義ていぎ

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Xユークリッド空間くうかん Rn や、より一般いっぱん距離きょり空間くうかんであるとし、C空間くうかん X うち曲線きょくせんとする。すなわち、C実数じっすう直線ちょくせんうち閉区あいだ [a, b] から X への連続れんぞく写像しゃぞう f : [a, b] → Xぞうである。

区間くかん [a, b]たいして 区間くかん分割ぶんかつ

かんがえれば、曲線きょくせん C うえ有限ゆうげんてん f (t0), f (t1), ... , f (tn-1), f (tn) をとることができる。f (ti) から f (ti+1) への距離きょりをそれぞれ d(f (ti)), d(f (ti+1))あらわせば、これはこの2てんむす線分せんぶんながさである。

曲線きょくせん Cちょう L = L(C)

あたえられる。ただし、上限じょうげん sup区間くかん [a, b]分割ぶんかつ個数こすう n をいくらでもおおきくとってできる分割ぶんかつすべてにわたってとる。

ちょう L有限ゆうげんにも無限むげんにもなりうるが、L ≠ ∞ ならば C有限ゆうげんちょうrectifiable; もとめちょう可能かのう)であるといい[ちゅう 1]、さもなくば無限むげんちょうnon-rectifiable; もとめちょう不能ふのう)であるという。このちょう定義ていぎにおいて、C微分びぶん函数かんすう f定義ていぎされている必要ひつようはない。実際じっさいのところ、一般いっぱん距離きょり空間くうかんじょうかんがえている場合ばあいには、微分びぶん可能かのうせい定義ていぎすることが一般いっぱんには期待きたいできない。

曲線きょくせん様々さまざま方法ほうほう媒介ばいかい変数へんすう表示ひょうじされうる。そこで曲線きょくせん C定義ていぎ写像しゃぞう f 以外いがい媒介ばいかい変数へんすう表示ひょうじ g: [c, d] → X をも場合ばあいかんがえる。f および gたんであるときには、連続れんぞく単調たんちょう写像しゃぞう S: [a, b] → [c, d]存在そんざいして、g(S(t)) = f (t)ち、ぎゃく写像しゃぞう S-1: [c, d] → [a, b]存在そんざいする。あきらかに、任意にんい

かたちは、ui = S(ti) とおけば、

かたちひとしく、ぎゃくもまた同様どうようである。したがってちょうは、それが媒介ばいかい変数へんすうかたらないという意味いみで、曲線きょくせん内在ないざいする性質せいしつであることがわかる。

曲線きょくせんたいするこのちょう定義ていぎは、じつ数値すうち函数かんすうたいするぜんへんぶんぜん変動へんどう)の定義ていぎ類似るいじである。

積分せきぶんによるちょう計算けいさん

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じつ函数かんすう f (x) で、f およびしるべ函数かんすう f ’ が閉区あいだ [a, b] うえ連続れんぞく函数かんすうであるようなものをかんがえると、f のグラフの x = a から x = b までのあいだちょう s

あたえられる。

曲線きょくせんx = X(t), y = Y(t)媒介ばいかい変数へんすう表示ひょうじされている場合ばあいf ’(x) = dy/dx =  dy/dt / dx/dt  であるから

つ。これらは、十分じゅうぶんちいさな増分ぞうぶん Δでるたx, Δでるたyたいする距離きょり公式こうしきからもとめたしきで、Δでるたx, Δでるたyわりにその極限きょくげんったものとかんがえればわかりよい。

また、極座標きょくざひょうけいにおいて r = f (θしーた)定義ていぎされた函数かんすうθしーた = αあるふぁ から θしーた = βべーた までのあいだちょう s

あたえられる。

単純たんじゅん曲線きょくせんまでふくめてもおおくの場合ばあいちょうじたかたちしき英語えいごばんではられず、積分せきぶん数値すうちてきおこなわれることになる。ちょうじたかたち公式こうしき曲線きょくせんには、懸垂けんすいせんえん擺線対数たいすう螺旋らせん抛物線ほうぶつせんはん立方りっぽう抛物線ほうぶつせん英語えいごばん直線ちょくせんなどがげられる。また、楕円だえんちょうじたかたちしきみちびこうとするこころみから、楕円だえん積分せきぶん理論りろん発展はってんした。

せんもとからの導出どうしゅつ

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曲線きょくせん小片しょうへん Δでるたsピタゴラスの定理ていり使つかって近似きんじできる。

曲線きょくせんちょう近似きんじするために曲線きょくせんをたくさんの線分せんぶん分解ぶんかいするが、ちょうながさを近似きんじでなくしんとしてるには無限むげんおおくの線分せんぶん必要ひつようになる。これはつまり、かく線分せんぶん無限むげんちいさくすることを意味いみしているが、このことはのち積分せきぶんもちいるさいいてくる。

線分せんぶん代表だいひょうもとれば、そのながさ(せんもと)が微分びぶん ds であることが確認かくにんできる。この変位へんい水平すいへい成分せいぶんdx垂直すいちょく成分せいぶんdyあらわすと、ピタゴラスの定理ていりから

したがう。曲線きょくせん媒介ばいかい変数へんすう t によってあらわされているならちょうせんもと ds無限むげんしょう区間くかん dtわたって次々つぎつぎわせればよいから、積分せきぶん

によってちょう sもとめられる。yx函数かんすうならば、t = x として

る。これは y = f (x) のグラフの x = a から x = b までのちょうあたえている。

曲線きょくせん y = t5, x = t3せんもと

れいとして、曲線きょくせん

あたえられているものとし、さらに t が −1 から 1 までのをとるものとすると、ちょうあらわ積分せきぶん

となる。数値すうち計算けいさんをすれば、このちょうが 2.905 にかなりちかいことがわかる。ちょう幾何きか函数かんすうもちいてあらわせば、

になる。

折線おれせん近似きんじからの導出どうしゅつ

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複数ふくすう直角ちょっかく三角形さんかっけい斜辺しゃへん曲線きょくせん近似きんじしている。

函数かんすう y = f (x)あたえられる曲線きょくせんもとめちょう可能かのうであるものと仮定かていする。曲線きょくせんじょうてん a から b までの f沿ったちょう S近似きんじするために、斜辺しゃへん連結れんけつして曲線きょくせんを「被覆ひふく」できるような直角ちょっかく三角形さんかっけいれつ構成こうせいする。簡単かんたんのため、すべての三角形さんかっけい底辺ていへんひとしく Δでるたx であるものとすると、その各々おのおの三角形さんかっけいたいしてたかΔでるたy対応たいおうづけられて、斜辺しゃへんながさがピタゴラスの定理ていりにより

あたえられる。S近似きんじする n 斜辺しゃへんながさの

けるが、Δでるたxちいさくるにつれて近似きんじ精度せいどがり、Δでるたx0ちかづける極限きょくげんSひとしくなる。すなわち、

られる。

円弧えんこちょう

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円弧えんこながさは中心ちゅうしんかくしゅうかくったものをしゅうちょうにかけたものに一致いっちする。半径はんけいr, 直径ちょっけいd とすると、えんしゅうちょうC = 2πぱいr または C = πぱいd である。角度かくどラジアンはかれば、半径はんけい r, 見込みこまれるかくθしーた であるようなちょうs = rθしーたあたえられる(ちょうsあらわすのは、かくを「見込みこむ」(subtend) ことに由来ゆらいする)。とく半円はんえんちょうs = πぱいr である。s単位たんい半径はんけい単位たんいおなじになる。

歴史れきしてき方法ほうほうろん

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古代こだい

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数学すうがく大半たいはん時期じきにおいては、偉大いだい思想家しそうかですらも、特異とくいながさを計算けいさんすることは不可能ふかのうかんがえられた。窄出ほうせきつきほう)とばれる独自どくじ方法ほうほうもちいて、曲線きょくせんかこまれる領域りょういき面積めんせきもとめた先駆せんくしゃであったアルキメデスでさえも、直線ちょくせんつのと同様どうようたしかなながさを曲線きょくせんつことが可能かのうであるとはほとんどしんじていなかった。しばしば微分びぶん積分せきぶんがく起源きげんかんがえられるこの分野ぶんや開拓かいたくされる最初さいしょ足掛あしがかりは、近似きんじほうもちいることであった。人々ひとびとは、曲線きょくせん内接ないせつする多角たかくがたかんがえ、そのあたりながさを曲線きょくせん幾分いくぶん精密せいみつながさをるために計算けいさんするということをはじめるのである。線分せんぶんかずやしてかく線分せんぶんながさを記述きじゅつすることによって、どんどん精密せいみつ近似きんじることができた。とくに、えん内接ないせつする多角たかくがたあたりかずやすことによって、円周えんしゅうりつ πぱい近似きんじもとめられた。

17世紀せいき

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17世紀せいきには、窄出ほうもとにして様々さまざま超越ちょうえつ曲線きょくせんかんする幾何きかがくてき方法ほうほうによるもとめちょうほうみちびかれた。たとえば、対数たいすう螺旋らせんは1645ねんトリチェリによって(文献ぶんけんによっては1650年代ねんだいウォリスによって)、擺線は1658ねんレンによって、懸垂けんすいせんは1691ねんライプニッツによって、それぞれもとめちょうされている。

1659ねんには、ウォリスがウィリアム・ニールによる自明じめい代数だいすう曲線きょくせん最初さいしょもとめちょうほう発見はっけんみとめる、はん立方りっぽう抛物線ほうぶつせんもとめちょうされた。

積分せきぶん公式こうしき

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微分びぶん積分せきぶんがく完全かんぜん厳密げんみつ展開てんかいされる以前いぜんに、ちょうたいする現代げんだいてき積分せきぶん公式こうしき基礎きそは、ファン・ヘラートオランダばんフェルマーによって独立どくりつ発見はっけんされる。1659ねんにファン・ヘラートは、曲線きょくせんかこ面積めんせき(これは実質じっしつてき積分せきぶん)としてちょう解釈かいしゃくできることをしめ構成こうせいほう公表こうひょうし、それを放物線ほうぶつせん適用てきようした。一方いっぽう、1660ねんにフェルマーは、ヘラートとおな結果けっかふくむより一般いっぱん理論りろんを、著書ちょしょDe linearum curvarum cum lineis rectis comparatione dissertatio geometrica』(曲線きょくせん直線ちょくせんとの比較ひかくについての幾何きかがくてき論述ろんじゅつ)として出版しゅっぱんした。

フェルマーのもとめちょうほう

フェルマーはそれまでの自身じしんによる接線せっせんもちいる方法ほうほうもとづいて、曲線きょくせん

もちいた。これは x = a における接線せっせんかたむ

つから、接線せっせん方程式ほうていしき

あたえられる。ここで aa + εいぷしろん変更へんこうして、線分せんぶん ACA から D までの曲線きょくせんちょう比較的ひかくてきよい近似きんじになるようにする。線分せんぶん ACながさをもとめるためにピタゴラスの定理ていりもちい、

から、両辺りょうへん平方根へいほうこんをとって

る。ちょう近似きんじするために、フェルマーはこのようなしょう線分せんぶんれつげたのである。

無限むげんちょう曲線きょくせん

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コッホ曲線きょくせん
x sin(1/x) のグラフ

すでべたように、曲線きょくせんなかにはもとめちょう不能ふのうな、すなわち折線おれせん近似きんじながさにうえかいがない(ながさをいくらでもおおきくできる)ものが存在そんざいする。すこくだけた表現ひょうげんでは、そのような曲線きょくせんながさが無限むげんだいであるなどという。曲線きょくせんじょうの(すくなくともてん以上いじょうふくむ)任意にんい無限むげんちょうつような連続れんぞく曲線きょくせん存在そんざいする。そのような曲線きょくせんれいとしてコッホ曲線きょくせんや、0 をいずれかの端点たんてんとする任意にんいひらき区間くかんじょうf (x) = xsin(1/x) および f (0) = 0定義ていぎされる函数かんすうのグラフなどがある。無限むげんちょう曲線きょくせんおおきさを「はかる」のには、ハウスドルフ次元じげんハウスドルフ測度そくど英語えいごばんもちいられることもある。

リーマン幾何きか場合ばあい

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Mなずらえ)リーマン多様たようたいとし、γがんま: [0, 1] → MM うち曲線きょくせんg を(なずらえ)リーマン計量けいりょうテンソルとすると、曲線きょくせん γがんまながさは

定義ていぎされる。ただし、γがんま’(t) ∈ Tγがんま(t)Mγがんまt におけるせっベクトルであり、根号こんごうない符号ふごうあたえられた曲線きょくせんごとに正方せいほう実数じっすうになることが保証ほしょうされるほうをえらぶものとする。つまり、空間くうかんさまきょくせんたいしてはせい符号ふごうを、なずらえリーマン多様たようたい時間じかんさまきょくせんたいしてはまけ符号ふごうえらぶことになる。

相対性理論そうたいせいりろんにおける時間じかんさま曲線きょくせん世界せかいせん)のちょうは、世界せかいせん沿って経過けいかする固有こゆうである。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ このような曲線きょくせんながさをもつ曲線きょくせん (rectifiable curve) ということがある[1]

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ 一松いちまつ しん解析かいせきがく序説じょせつ 上巻じょうかんはなぼう、1981ねん2がつ1にち、244ぺーじ
  • Farouki, Rida T. (1999). Curves from motion, motion from curves. In P-J. Laurent, P. Sablonniere, and L. L. Schumaker (Eds.), Curve and Surface Design: Saint-Malo 1999, pp.63–90, Vanderbilt Univ. Press. ISBN 0-8265-1356-5.


関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • Math Before Calculus
  • The History of Curvature
  • Weisstein, Eric W. "Arc Length". mathworld.wolfram.com (英語えいご).
  • Arc Length by Ed Pegg, Jr., The Wolfram Demonstrations Project, 2007.
  • Calculus Study Guide – Arc Length (Rectification)
  • Famous Curves Index The MacTutor History of Mathematics archive
  • Arc Length Approximation by Chad Pierson, Josh Fritz, and Angela Sharp, The Wolfram Demonstrations Project.
  • Length of a Curve Experiment Illustrates numerical solution of finding length of a curve.