戸村とむら一作いっさく

とむら いっさく 戸村とむら 一作いっさく
生誕せいたん	(1909-05-29) 1909年ねん5月29日にち 千葉ちば県けん成田なりた市し
死没しぼつ	(1979-11-02) 1979年ねん11月2日にち（70歳さい没ぼつ）
死因しいん	悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅ
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん校こう	成田なりた中学校ちゅうがっこう
職業しょくぎょう	市民しみん運動うんどう・農民のうみん運動うんどう活動かつどう家か・成田なりた市議会しぎかい議員ぎいん
著名ちょめいな実績じっせき	三里塚さんりづか芝山しばやま連合れんごう空港くうこう反対はんたい同盟どうめい代表だいひょうとして、三里塚さんりづか闘争とうそうをリードした

戸村とむら 一作いっさく（とむら いっさく、1909年ねん（明治めいじ42年ねん）5月29日にち - 1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）11月2日にち）は、市民しみん運動うんどう・農民のうみん運動うんどう活動かつどう家か、政治せいじ家か（元もと成田なりた市議会しぎかい議員ぎいん）。特とくに三里塚さんりづか芝山しばやま連合れんごう空港くうこう反対はんたい同盟どうめい委員いいん長ちょうを務つとめた三里塚さんりづか闘争とうそう（成田なりた闘争とうそう）での活動かつどうで知しられ、画家がか・彫刻ちょうこく家かでもあった。

生涯しょうがい

前ぜん半生はんせい

1909年ねん5月がつ29日にち、千葉ちば県けん印旛いんば郡ぐん遠山とおやま村むら（現げん・成田なりた市し）三里塚さんりづかに生うまれる。

1925年ねんに私立しりつ成田なりた中学校ちゅうがっこうに入学にゅうがくし、教員きょういんであった中野なかの好夫よしおや中山なかやま義秀よしひでの薫陶くんとうを受うけた。

成田なりた中学ちゅうがく卒業そつぎょう後ご、父ちちが三里塚さんりづかで営いとなんでいた鍬くわ・鋤すき・鎌かまなどの販売はんばい店てん「戸村とむら農みのり機き」で働はたらき、25歳さいの時ときに結婚けっこんした。夫人ふじんが健康けんこうを害がいして北海道ほっかいどうに帰郷ききょうすると、戸村とむらもその後ごを追おって北海道ほっかいどうで暮くらした。

ふだんから「兵隊へいたいは嫌きらいだ」と言いっていた戸村とむらは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅう非ひ戦せん活動かつどうを行おこなっており、1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）に大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんから召集しょうしゅうされるも、反戦はんせん歴れきのために即日そくじつ帰郷ききょうとなる。1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）に三里塚さんりづかに戻もどり、戦後せんごは1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）の破防法はぼうほう闘争とうそうや60年ねん安保あんぽ闘争とうそうに参加さんかした。

富里とみさと村むら（現げん・富里とみさと市し）で国際こくさい空港くうこう建設けんせつ問題もんだいが起おこると、クリスチャンである戸村とむらはその信仰しんこうに基もとづいて反対はんたい運動うんどうに参加さんかし、県内けんないのキリスト教会きょうかいを中心ちゅうしんに反対はんたい運動うんどうの支援しえんを求もとめて回まわった。店みせには自みずから結成けっせいした「富里とみさと空港くうこう反対はんたいキリスト者しゃ連盟れんめい」の看板かんばんを掲かかげた。

「反対はんたい同盟どうめい」の代表だいひょうとして

1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）6月がつになると、今度こんどは三里塚さんりづかが新しん東京とうきょう国際こくさい空港くうこう建設けんせつ予定よてい地ちとされ、これに反発はんぱつした住民じゅうみんらが結集けっしゅうして反対はんたい運動うんどうが開始かいしされる。当初とうしょ住民じゅうみんたちは地元じもとの有力ゆうりょく者しゃたちを反対はんたい組織そしきの代表だいひょうに就任しゅうにんさせようとしたが、いずれからも断ことわられたため、富里とみさとでの反対はんたい運動うんどうの経験けいけんを持もつ戸村とむらに白羽しらはの矢やが立たった。同盟どうめい内ないでは戸村とむらの代表だいひょう就任しゅうにんに反発はんぱつする者ものもおり、戸村とむら自身じしんも当初とうしょは難色なんしょくを示しめしたが、用地ようち内ないに住すむ農民のうみんの闘たたかう決意けついが固かたければ、だれが委員いいん長ちょうになっても大差たいさはないと主張しゅちょうする小川おがわ明治あきはる（のち反対はんたい同盟どうめい副ふく委員いいん長ちょう）の強つよい要請ようせいもあって、「代かわりが見みつかるまでちょっとだけ引ひき受うけることにした」と同年どうねん6月28日にちに結成けっせいされた「三里塚さんりづか空港くうこう反対はんたい同盟どうめい」の代表だいひょうとなった。同盟どうめいは間あいだもなく「芝山しばやま空港くうこう反対はんたい同盟どうめい」と合併がっぺいし「三里塚さんりづか芝山しばやま連合れんごう空港くうこう反対はんたい同盟どうめい」（以下いか、「反対はんたい同盟どうめい」）が結成けっせいされ、戸村とむらが代表だいひょうに選出せんしゅつされた。なお、戸村とむらが代表だいひょうに選出せんしゅつされたのは、反対はんたい運動うんどう開始かいし時じに三里塚さんりづか・芝山しばやま住民じゅうみんらに闘争とうそうの手てほどきをした富里とみさとの反対はんたい運動うんどう幹部かんぶらが戸村とむらと顔かおなじみであったことや富里とみさとの青年せいねん行動こうどう隊長たいちょうが戸村とむらと同おなじクリスチャンのため懇意こんいであったことも関係かんけいしているとも言いわれる。

政府せいふと「反対はんたい同盟どうめい」との衝突しょうとつがエスカレートしていく中なか、戸村とむらは代表だいひょうとして革新かくしん政党せいとうとの決別けつべつや新しん左翼さよく諸派しょはの受うけ入いれなどの難むずかしい舵取かじとりを迫せまられる。一方いっぽうで、1967年ねん4月がつ28日にちの成田なりた市議会しぎかい議員ぎいん選挙せんきょに立候補りっこうほして30名めい中ちゅう3位いで当選とうせんし、1974年ねん6月がつにも2期き目めの当選とうせんを果はたしている。しかし事態じたいは好転こうてんせず、戸村とむらは選挙せんきょ制度せいどに対たいする不信ふしんを募つのらせていった。戸村とむらは一時いちじ日本にっぽん社会党しゃかいとうに入党にゅうとうしていたが、新しん左翼さよく学生がくせいらとのつながりが深ふかまると離党りとうした。

1968年ねん頃ころから、機動きどう隊たいとの衝突しょうとつで「反対はんたい同盟どうめい」からの逮捕たいほ者しゃやけが人にんが続出ぞくしゅつするようになった。戸村とむら自身じしんも1968年ねん2月がつ26日にちに新しん左翼さよく学生がくせいらと機動きどう隊たいが初はじめて大だい規模きぼに衝突しょうとつした現場げんばで機動きどう隊員たいいんに頭部とうぶを警棒けいぼうで殴なぐられ、大だい怪我けがを負おって成田なりた赤十字せきじゅうじ病院びょういんに入院にゅういんした（第だい1次じ成田なりたデモ事件じけん）。後のちに戸村とむらはこの時ときのことを「（警察けいさつは）私わたしを殺ころしてもいいと思おもったに違ちがいない」と振ふり返かえり、「立たちはだかる機動きどう隊たいを倒たおさなくては闘争とうそうに勝かてない。一人ひとりでも二に人にんでも倒たおすのが闘争とうそうなのだ」などと過激かげきな主張しゅちょうをするようになる。3月3日にち、病室びょうしつに見舞みまいに訪おとずれた友とも納おさめ武人ぶじん千葉ちば県知事けんちじに対たいし、傷口きずぐちを見みせると「友とも納おさむさん、よく見みてくれ。これが政府せいふのやり方かただ。これからは私わたしも変かわる」と宣言せんげんした。江口えぐち榛はしばみ一いちを通つうじて以前いぜんから戸村とむらと面識めんしきがあった友とも納おさめは愕然がくぜんとする。

1969年ねん11月12日にちには、空港くうこう建設けんせつ工事こうじに従事じゅうじするブルドーザーの作業さぎょうを妨害ぼうがいしたとして逮捕たいほされている。

1971年ねんに行おこなわれた成田空港なりたくうこう予定よてい地ちの代だい執行しっこうでは多おおくの同盟どうめい員いんと支援しえん者しゃが負傷ふしょうしたが、その中なかで反対はんたい派はの襲撃しゅうげきを受うけて機動きどう隊員たいいんが死亡しぼうする事件じけん（東峰とうほう十字路じゅうじろ事件じけん）が発生はっせいし、これまで同情どうじょう的てきであった世論せろんやマスコミが一転いってんし、「反対はんたい同盟どうめい」は各かく方面ほうめんから批判ひはんを受うけるようになった。その後ご「反対はんたい同盟どうめい」は同盟どうめい員いんの自殺じさつや同盟どうめい員いんの大量たいりょう逮捕たいほなどの逆風ぎゃくふうに晒さらされるが、戸村とむらは常つねに反対はんたい運動うんどうをリードし続つづけた。

1972年ねんから1973年ねんにかけて東側ひがしがわ諸国しょこく（ソ連それん・中国ちゅうごく・チェコ・東ひがしドイツ）を訪問ほうもんして三里塚さんりづか闘争とうそうについて訴うったえ、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうから勲章くんしょうを授与じゅよされている。

病やまいで倒たおれた労組ろうそ委員いいん長ちょうの代役だいやくを探さがしていた三菱重工みつびしじゅうこう長崎ながさき造船ぞうせん労働ろうどう組合くみあいからの要請ようせいを受うけて、戸村とむらは1974年ねん7月がつ7日にち投票とうひょうの参議院さんぎいん議員ぎいん選挙せんきょで「成田空港なりたくうこう反対はんたい」「世直よなおし一揆いっき」を掲かかげて全国ぜんこく区くから出馬しゅつばし、戸村とむらを支援しえんする革新かくしん系けい無所属むしょぞく地方ちほう議員ぎいんらが「全国ぜんこく革新かくしん議員ぎいん会議かいぎ」を設立せつりつした。また、小田おだ実みのるなどが「三里塚さんりづか闘争とうそうと戸村とむら一作いっさく氏しに連帯れんたいする会かい」を結成けっせいし、労働ろうどう運動うんどうや反はん公害こうがい運動うんどう、婦人ふじん運動うんどう等とうと連携れんけいして地域ちいき毎ごとの「連帯れんたいする会かい」を組織そしきして戸村とむらを支援しえんした。戸村とむらは同どう選挙せんきょで23万まん票ひょうを獲得かくとくしつつも、112人にん中ちゅう75位いで落選らくせんする。その後ご、アメリカ・中国ちゅうごく・パレスチナを訪問ほうもんし、世界せかい的てきな連携れんけいを図はかっている。

代だい執行しっこう後ご、「反対はんたい同盟どうめい」は岩山いわやま鉄塔てっとうを建たてて開港かいこうを阻はばんでいたが、その鉄塔てっとうが1977年ねんに抜ぬき打うち的てきに撤去てっきょされたため、戸村とむらは「手段しゅだんを選えらばず闘たたかおう」と檄げきを飛とばした。撤去てっきょに抗議こうぎする反対はんたい派はと機動きどう隊たいが激はげしく衝突しょうとつした結果けっか、支援しえん者しゃが死亡しぼうする事件じけん（東山ひがしやま事件じけん）が発生はっせいし、戸村とむらは代表だいひょうとして強つよく抗議こうぎする。一方いっぽう、その直後ちょくごに報復ほうふくとみられる攻撃こうげきで警察官けいさつかんが死亡しぼうする事件じけんも発生はっせいしている（芝山しばやま町長ちょうちょう宅たく前ぜん臨時りんじ派出所はしゅつじょ襲撃しゅうげき事件じけん）。

新しん東京とうきょう国際こくさい空港くうこうは1978年ねん3月30日にちが開港かいこう予定よてい日びとされるが、その4日にち前まえの3月26日にちに成田空港なりたくうこう管制塔かんせいとう占拠せんきょ事件じけんが発生はっせいし、当局とうきょくは開港かいこう延期えんきを余儀よぎなくされる。政府せいふが成田なりた新法しんぽうの制定せいてい等とうの過激かげき派はへの対処たいしょに取とり組くむ一方いっぽうで、行政ぎょうせいその他た各かく本ほん面めんから「反対はんたい同盟どうめい」との話はなし合あいの機会きかいを求もとめる動うごきが現あらわれた。

このころには闘争とうそうの主導しゅどう権けんを新しん左翼さよくに取とられていた「反対はんたい同盟どうめい」が、①反対はんたい運動うんどうにおける逮捕たいほ者しゃ全員ぜんいんの釈放しゃくほう、②開港かいこうの延期えんきと二に期き工事こうじの凍結とうけつ、③国会こっかい審議しんぎ中ちゅうの成田なりた新法しんぽう撤回てっかいと機動きどう隊たいの撤退てったいを前提ぜんてい条件じょうけんとして同年どうねん4月がつ17日にちに発表はっぴょうした。これを受うけて日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かい代表だいひょうの桜田さくらだ武たけし・参議院さんぎいん議員ぎいんの秦野はたの章あきら・「反対はんたい同盟どうめい」代表だいひょうの戸村とむらが会談かいだんし、同年どうねん5月がつ20日はつかに設定せっていされていた開港かいこう予定よてい日びを一いち年ねん先送さきおくりすることを条件じょうけんにその間あいだを「休戦きゅうせん」とすることを財界ざいかい側がわが政府せいふに申もうし入いれることで一致いっちした。しかし、財界ざいかいが政府せいふに申もうし入いれる前まえの同年どうねん5月がつ10日とおかに、戸村とむらが福永ふくなが健司けんじ運輸うんゆ大臣だいじんと会談かいだんし、話はなし合あいは平行へいこう線せんに終おわった。政府せいふ側がわが開港かいこう日びを譲ゆずらなかったことに加くわえて「反対はんたい同盟どうめい」が態度たいどを硬化こうかさせたことから、話はなし合あいの試こころみは絶たたれた。

成田なりた開港かいこう、晩年ばんねん

結局けっきょく、新しん東京とうきょう国際こくさい空港くうこう開港かいこうは再さい設定せっていされていた予定よてい日びである5月がつ20日はつかに実現じつげんする。これに対たいし、戸村とむらは同日どうじつ開催かいさいされた「5・20出直でなおし開港かいこう実力じつりょく阻止そし全国ぜんこく総そう決起けっき集会しゅうかい」で「われわれのゲリラ活動かつどうは、空港くうこうに送おくられる水道すいどう、電気でんきや通信つうしん施設しせつ、交通こうつう機関きかんなどに対たいし、やろうと思おもえばいつでもやれるところまで発展はってんしてきている。われわれは空港くうこうを完全かんぜんに抹殺まっさつするまで闘争とうそうを貫徹かんてつし、廃はい港こうによって再ふたたび農地のうちとして獲得かくとくする」などと宣言せんげんした。以降いこう、ジェット燃料ねんりょう輸送ゆそう（暫定ざんてい輸送ゆそう）列車れっしゃ妨害ぼうがい事件じけん、空港くうこう周辺しゅうへん電話でんわケーブル切断せつだん事件じけん、東京とうきょう航空こうくう交通こうつう管制かんせいケーブル切断せつだん事件じけん、日航にっこうホテル成田なりた・転業てんぎょう農民のうみんの関連かんれん会社かいしゃ社員しゃいん寮りょう・大韓航空だいかんこうくう社員しゃいん寮りょう・空港くうこう付属ふぞく下水道げすいどう施設しせつなどへの一連いちれんの火炎かえんビン投入とうにゅう事件じけん、東京航空局とうきょうこうくうきょく山田やまだレーダー基地きち・筑波つくばレーダー基地きち襲撃しゅうげき事件じけん、東京電力とうきょうでんりょく送電そうでん塔とう倒壊とうかい事件じけん、浄水じょうすい場じょう廃油はいゆ毒物どくぶつ投入とうにゅう事件じけんなどゲリラ事件じけんが相次あいついだ。

開港かいこうの事実じじつを前まえにしても「まだ完全かんぜんに開港かいこうしたわけじゃない。これからでも廃はい港こうに追おい込こめる」と諦あきらめない戸村とむらであったが、開港かいこう翌年よくねんである1979年ねんの春はるごろから糖尿とうにょう病びょうで通院つういんするようになり、5月には起おき上あがれなくなり、6月がつから入院にゅういんを余儀よぎなくされた。8月に娘むすめから自身じしんが悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅであることを告つげられる。9月に意識いしき不明ふめいとなり入院にゅういん先さきの国立こくりつがん研究けんきゅうセンターに搬送はんそうされ、一時いちじ小康しょうこう状態じょうたいを取とり戻もどすが、11月2日にちに「三里塚芝山連合空港反対同盟委員長」の肩書かたがきのまま死去しきょした。70歳さい没ぼつ。

戸村とむらは「腹はらを立たてないやつはバカだ」という言葉ことばを死しぬ直前ちょくぜんまで繰くり返かえし言いい続つづけていたが、死しの前日ぜんじつには「三里塚さんりづか闘争とうそうは小ちいさな闘争とうそうだった」と述懐じゅっかいし、最期さいごに述のべた言葉ことばは「デモは出発しゅっぱつしたか」であったといわれる。

明確めいかくな継承けいしょうもないまま求心力きゅうしんりょくを持もつ戸村とむらを失うしなった「反対はんたい同盟どうめい」は、その後ご幹部かんぶの脱落だつらくや分裂ぶんれつを繰くり返かえすことになる。戸村とむらの墓はかは空港くうこうから1キロメートルほど離はなれた場所ばしょに置おかれ、「真理しんりはあなたに自由じゆうを与あたえる」の言葉ことばが刻きざまれている。

人物じんぶつ

家族かぞく・キリスト教きょうとの関かかわり・文化ぶんか活動かつどう

戸村とむら家かは祖父そふの代だいから続つづくクリスチャンホームであり、自身じしんも敬虔けいけんなクリスチャンであった。名前なまえの一いち作さくは旧約きゅうやく聖書せいしょに登場とうじょうするイサクに由来ゆらいする。父ちちが村議そんぎ会議かいぎ員いん選挙せんきょに立候補りっこうほした際さいのトラブルから、戸村とむら家かは近所きんじょの中なかで孤立こりつ気味ぎみであった。

1891年ねんに以来いらい当地とうちでキリスト教きりすときょうの布教ふきょう活動かつどうを続つづけていた「三里塚さんりづか伝道でんどう所しょ」に自宅じたく敷地しきちを提供ていきょうし、教会きょうかいの信者しんじゃらが普請ふしんのために募つのった寄付きふにより、吉村よしむら順三じゅんぞう設計せっけいによる木造もくぞうの教会堂きょうかいどうが1954年ねん11月25日にちに竣工しゅんこうした（翌月よくげつ「三里塚さんりづか教会きょうかい」に改称かいしょう）。

また、近所きんじょの子供こどもを集あつめて日曜にちよう学校がっこうを開ひらき、説教せっきょうの他ほかにも絵えや歌うたを教おしえたり、近隣きんりんの学校がっこうから集あつめた作品さくひんや自身じしんの作品さくひんを展示てんじするなど、「三里塚さんりづか教会きょうかい」を拠点きょてんに文化ぶんか活動かつどうをしていた。宮内庁くないちょう下総しもふさ御料ごりょう牧場ぼくじょうの絵えを好このんで描えがいていたという。

なお、成田空港なりたくうこう問題もんだいを巡めぐって戸村とむらと教会きょうかいの牧師ぼくしは対立たいりつするようになり、戸村とむらが教会きょうかいの幼稚園ようちえんの前まえに「くうこうはんたいみんなでしよう」と書かかれた立札たてふだを立たてたり、バキュームカーの立たち入いりを阻止そしして便所べんじょの汲くみ取とりをできないようにするなどしたうえ、教会きょうかいに対たいして土地とち代だいを値上ねあげしてその支払しはらいと退去たいきょを求もとめ、活動かつどう家かを引ひき連つれて教会きょうかいに押おしかけて警察けいさつを呼よばれる騒さわぎも引ひき起おこしている。1968年ねんに牧師ぼくしと教会きょうかい役員やくいんらは戸村とむららの除名じょめいを宣言せんげんして信者しんじゃらと共ともに教会堂きょうかいどうを引ひき払はらった。牧師ぼくしらは新東京国際空港公団しんとうきょうこくさいくうこうこうだんからの騒音そうおん対策たいさく事業じぎょう費ひ補助ほじょ金きん（移転いてん補償ほしょう）を受うけ取とり、新あらたに別べつの教会堂きょうかいどうを建たてることで布教ふきょう活動かつどうを継続けいぞくした。日本にっぽん基督教きりすときょう団だんはこの教会きょうかいを認みとめるスタンスを取とっている。

一方いっぽう、戸村とむららも別べつの牧師ぼくしを招まねいて教会きょうかいの活動かつどうを再開さいかいしており、「三里塚さんりづか教会きょうかい」の分裂ぶんれつ状態じょうたいは現在げんざいに至いたるまで継続けいぞくしている。

青年せいねん行動こうどう隊員たいいんらが日本にっぽん幻まぼろし野の祭さいの開催かいさいを報告ほうこくしに来きたときは「若者わかものはなぜ快楽かいらく主義しゅぎに走はしるのか」と不満ふまんだった。

1978年ねんに国際こくさい絵画かいが展てんに参加さんかするためにベイルートを訪問ほうもんした。

戸村とむら夫人ふじんは戸村とむらについて「明治めいじの人ひとなので、やさしい言葉ことばをかけてくれたことはなかったけど、一いち度ども私わたしに手てを上あげたことはないし、温和おんわな人ひとだった」「闘争とうそうに勝かったらパリにのんびり絵えを描えがきに行いきたいって言いっていましたよ。空港くうこうに反対はんたいする気持きもちは私わたしも強つよかったんだけど、もともと闘争とうそう的てきな性格せいかくではないので、あの人ひとは歯はがゆく思おもっていたかもしれない」と語かたっている。

平和へいわ主義しゅぎ者しゃからの転換てんかん

反対はんたい運動うんどう開始かいし当初とうしょの戸村とむらが平和へいわ主義しゅぎ者しゃであったことは、反対はんたい派はだけでなく当時とうじ成田なりた警察けいさつ署しょ長ちょうであった飯高いいたか春吉はるきちも認みとめるところであった。

しかし、1968年ねん2月がつ26日にちの新しん左翼さよく学生がくせいと警察けいさつの衝突しょうとつに巻まき込こまれて負傷ふしょうしたことを契機けいきに、これまで「暴力ぼうりょく主義しゅぎと一線いっせんを画かくすのだ」などと学生がくせいらを諫めていた戸村とむらは一転いってんして過激かげきな主張しゅちょうをするようになり、再ふたたび新しん左翼さよく学生がくせいらと警察けいさつとの間あいだで大だい規模きぼな衝突しょうとつが起おこり多数たすうの負傷ふしょう者しゃを出だした3月がつ10日とおか（第だい2次じ成田なりたデモ事件じけん）にはそれまでのベレー帽ぼうと襷たすきのみのスタイルをヘルメットを被こうむった後年こうねんよく知しられる出いで立たちに改あらため、青年せいねん行動こうどう隊たいに「武器ぶきをとれ」と檄げきを飛とばしたとされる。

一方いっぽう、飯高いいたかは、3月がつ10日とおかの集会しゅうかいにおいても和服わふくにベレー帽ぼう姿すがたの戸村とむらが「今日きょうはその角材かくざいを控ひかえてください、得物えものをそのシンボルとして決けっして振ふり回まわしてもらいたくない」と学生がくせいらに呼よび掛かけており、戸村とむらが公おおやけに実力じつりょく闘争とうそうを主張しゅちょうをするようになったのは3月がつ31日にちの集会しゅうかい（第だい3次じ成田なりたデモ事件じけん）からだとしている。また、戸村とむらは入院にゅういん中ちゅうに飯めし高だかが見舞みまいに来きた際さいに啖呵たんかを切きったと回想かいそうしているが、飯高いいたかは実際じっさいにはそのようなやり取とりがなかったと主張しゅちょうしている。

反対はんたい同盟どうめい事務じむ局長きょくちょうであった北きた原鉱げんこう治ちは、3月がつ10日とおかに頭あたまに包帯ほうたいを巻まいた状態じょうたいで病院びょういんを抜ぬけ出だしてきた戸村とむらが武装ぶそうした学生がくせいらに対たいし「君きみたちが手てにしたゲバ棒ぼうを象徴しょうちょうとして使つかえ」と微妙びみょうな表現ひょうげんを使つかって演説えんぜつしたとしている。北原きたはらは、戸村とむらがキリスト者しゃとして若わかい学生がくせいがケガをするのは忍しのびないと苦悩くのうしていたのだろうと回想かいそうしている。そして、3月10日にち当日とうじつは北原きたはらと北きた富士ふじ忍草しのぶぐさ母ははの会かい事務じむ局長きょくちょうが全学ぜんがく連れんの部隊ぶたいに「（空港くうこう）公団こうだんに向むけて前進ぜんしんしよう」「手てにした武器ぶきを真まっ向こうから振ふり下おろせ」と"激励げきれい"したのだとしている。

運動うんどう初期しょきの戸村とむらは「問答もんどう無用むようはよくない、自分じぶんのカラにとじこもることになる。運輸省うんゆしょうや県けんとも話はなし合あうべきだ」という持論じろんを持もっていたが、次第しだいに政府せいふ側がわの人間にんげんとの接触せっしょくを避さけるようになった。「裏切うらぎり者もの」に対たいしては情なさけ容赦ようしゃがなかったが、他方たほうで条件じょうけん賛成さんせい派はとなった古村こむらの農家のうかに対たいしては反対はんたい派はの主力しゅりょくとなった戦後せんご開拓かいたく農家のうかに対たいしてよりも同情どうじょう的てきであった。

地域ちいきぐるみの生活せいかつ闘争とうそうの指導しどう者しゃであったはずの戸村とむらは、1970年代ねんだい後半こうはんには「三里塚さんりづか闘争とうそうは階級かいきゅう闘争とうそうである」と新しん左翼さよく党派とうはと同様どうようのスピーチをするようになり、反対はんたい同盟どうめい幹部かんぶらともあまり話ばなしをしなくなったが、元もと反対はんたい同盟どうめい員いんは様々さまざまな集会しゅうかいに出でかけて演説えんぜつを行おこなっていた戸村とむらがその場ばの聴衆ちょうしゅうに合あわせて言葉ことばを選えらんだのではないかと回想かいそうしている。

デイビッド・E・アプターは、「ある意味いみでは、戸村とむらは生涯しょうがい大人おとなになりきらなかった人ひとともいえるかも知しれない。しかし、だれかが筋すじの通とおらないことをした場合ばあいには、頑固がんこで融通ゆうずうのきかない態度たいどを堅持けんじすることができる人ひとでもあった」「戦略せんりゃくについてはほとんど素人しろうとで、原則げんそくと正義せいぎの闘たたかいを続つづけ、信条しんじょうを明確めいかくな言葉ことばで伝つたえる優すぐれた力ちからを発揮はっきしたが、現実げんじつと象徴しょうちょうを混同こんどうする傾向けいこうを持もち、信条しんじょうを象徴しょうちょうにい換いかえることによってあたかもそれが現実げんじつになると考かんがえているふうであった」としている。

反対はんたい運動うんどうのシンボル

反対はんたい同盟どうめい結成けっせい当初とうしょの戸村とむらは住民じゅうみんたちから「ヤソ」と呼よばれており、演壇えんだんに立たつと「なんだヤツか」と言いう者ものもいて、一部いちぶの農民のうみんからは「戸村とむらさんの話はなしは難むずかしい」という声こえがあった。

しかし、戸村とむらの演説えんぜつは当初とうしょから聴衆ちょうしゅうの心しんを揺ゆさぶるものがあった。戸村とむら自身じしんも事前じぜんに原稿げんこうを用意よういして演説えんぜつに臨のぞみ、帰路きろは自分じぶんの演説えんぜつを録音ろくおんしたテープレコーダーを聞きいて原稿げんこうと照てらし合あわせるなど、修練しゅうれんを重かさねた。そのような真摯しんしな人柄ひとがらもあり、地元じもと反対はんたい派は住民じゅうみんだけでなく新しん左翼さよく党派とうはや支援しえん者しゃらにとっても戸村とむらは三里塚さんりづか闘争とうそうの象徴しょうちょう的てき存在そんざいとなった。

その他た

• 新しん東京とうきょう国際こくさい空港くうこう（現げん・成田なりた国際こくさい空港くうこう）の反対はんたい運動うんどう（三里塚さんりづか闘争とうそう）を題材だいざいにしたフィクション漫画まんが『ぼくの村むらの話はなし』（尾瀬おせあきら作さく）では、「戸田とだ」が戸村とむらをモデルとして登場とうじょうする。

関連かんれん書籍しょせき

著書ちょしょ

• 『わが十字架じゅうじか・三里塚さんりづか -自己じこ変革へんかく論ろん-』 教きょう文ぶん館かん 1974年ねん
• 『野のに立たつ』 三さん一いち新書しんしょ 1974年ねん
• 『わが三里塚さんりづか 風ふうと炎ほのおの記録きろく』 田畑たばた書房しょぼう 1980年ねん

登場とうじょう書籍しょせき

• 『回想かいそうの戸村とむら一作いっさく』 鎌田かまた慧とし 柘植つげ書房しょぼう 1981年ねん12月 ISBN 978-480680174-0（4-8068-0174-7）
• 『実存じつぞんの戸村とむら一作いっさく―私わたしの中なかに生いきる 』 日本にっぽんキリスト教団きょうだん三里塚さんりづか教会きょうかい れんが書房しょぼう新しん社しゃ 1999年ねん11月 ISBN 978-4846202279

参考さんこう文献ぶんけん

• 戸村とむら一作いっさく『野のに立たつ』三さん一いち新書しんしょ、1974年ねん2月がつ。ISBN 9784380740015。 
• 飯高いいたか春吉はるきち『北きた総そうの朝あさあけ 成田空港なりたくうこう闘争とうそうと警備けいびの記録きろく』千葉ちば日報にっぽう社しゃ出版しゅっぱん局きょく、1976年ねん8月がつ25日にち。ASIN B000J8VURA。 
• 大坪おおつぼ景けい章あきら 著しる、東京とうきょう新聞しんぶん千葉ちば支局しきょく 編へん『ドキュメント成田空港なりたくうこう 傷きずだらけの15年ねん』東京とうきょう新聞しんぶん出版しゅっぱん局きょく、1978年ねん4月がつ5日にち。 
• 針生はりゅう一郎いちろう 編へん『シンポジウム三里塚さんりづかの思想しそう』柘植つげ書店しょてん、東京とうきょう、1980年ねん3月がつ。 
• アプターデイビッド 著しる、澤さわ良りょう世よ 訳やく『三里塚さんりづか もうひとつの日本にっぽん』岩波書店いわなみしょてん、東京とうきょう、1986年ねん6月がつ。ISBN 9784000008778。 
• 公安調査庁こうあんちょうさちょう 編へん『成田なりた闘争とうそうの概要がいよう』1993年ねん4月がつ。 
• 北きた原鉱げんこう治ち『大地だいちの乱らん 成田なりた闘争とうそう 三里塚さんりづか反対はんたい同盟どうめい事務じむ局長きょくちょうの30年ねん』お茶ちゃの水みず書房しょぼう、1996年ねん5月がつ。ISBN 978-4275016294。 
• 隅谷すみや三喜男みきお『成田なりたの空そらと大地だいち』岩波書店いわなみしょてん、1996年ねん10月がつ18日にち。ISBN 978-4000015462。 
• 三里塚さんりづか教会きょうかい問題もんだいを担になう会かい 編へん『教会きょうかいと宣教せんきょうを問とい直なおす 三里塚さんりづか教会きょうかい問題もんだい』「三里塚さんりづか教会きょうかい問題もんだい史し」刊行かんこう委員いいん会かい、1996年ねん11月。 
• 原口はらぐち和久かずひさ『成田空港なりたくうこう365日にち 1965-2000』崙書房しょぼう、2000年ねん5月がつ10日とおか。ISBN 978-4845510672。 
• 前田まえだ伸夫のぶお『特命とくめい交渉こうしょう人じん用地ようち屋や 1965-2000』アスコム、2005年ねん8月がつ5日にち。ISBN 978-4776202592。 
• 桑折くわおり勇一ゆういち『ノーサイド 成田なりた闘争とうそう 最後さいごになった社会党しゃかいとうオルグ』崙書房しょぼう、2013年ねん12月1日にち。ISBN 978-4845502073。 
• 伊藤いとう睦あつし 編へん『三里塚さんりづか燃もえゆ 北きた総そう台地だいちの農民のうみん魂たましい』平原へいげん社しゃ、2017年ねん5月がつ。ISBN 978-4938391607。 

外部がいぶリンク

• 1974年ねん参院さんいん選せん全国ぜんこく区く選挙せんきょ公報こうほう　戸村とむら一作いっさく