数寄者すきしゃ

数寄者すきしゃ（すきしゃ）は、芸道げいどうに執心しゅうしんな人物じんぶつの俗称ぞくしょう。「数奇者すきしゃ」（すきもの）と書かく場合ばあいもある。

現代げんだいでは、本業ほんぎょうとは別べつに茶ちゃの湯ゆに熱心ねっしんな人物じんぶつ、特とくに名物めいぶつ級きゅうの茶道具ちゃどうぐを所有しょゆうする人物じんぶつとして用もちいられる。

歴史れきし

「数寄すき」とは本来ほんらい「好すき」の意味いみである^[1]。広ひろく風流韻事ふうりゅういんじに心しんを寄よせることを意味いみしたが、平安へいあん時代じだいには歌道かどうが諸しょ文化ぶんかの中なかで重要じゅうような地位ちいを占しめており、松永まつなが貞徳さだのりが『歌うた林りん雑話ざつわ』で「好すきと云うんふも歌人かじんの事ことなり」と述のべるなど歌人かじんのことを指さした^[2]。その後ご、茶ちゃの湯ゆが流行りゅうこうし、清巌せいがん正徹しょうてつが『正徹しょうてつ物語ものがたり』で「歌うたの数奇すき」に対たいして「茶ちゃの数奇すき」について述のべるなど相対あいたいして新あらたに用もちいられるようになった^[2]。その後ご、歌道かどうの衰おとろえとともに「数寄すき」はもっぱら茶ちゃの湯ゆでの意味いみになった^[2]。

茶事ちゃじに関連かんれんして数寄屋造すきやづくりと呼よばれる建築けんちく様式ようしきがあるが、『匠たくみ明あきら』によると「茶ちゃ之の湯座ゆざ敷じき」に「数寄屋すきや」と名付なづけたのは堺さかいの宗易そうえき（千利休せんのりきゅう）であるとする^[3]。ただし、江戸えど時代じだい中期ちゅうきになると数寄すき（数奇すうき）が俗語ぞくご化かしたため、奇き品ひんを偏愛へんあいする趣味しゅみを意味いみすると捉とらえられることを嫌きらい、茶ちゃ書しょでもこれを避さけようとする傾向けいこうがみられた^[3]。

近代きんだい以降いこうは新あらたに「数寄者すきしゃ」と呼よばれる財閥ざいばつ出身しゅっしん者しゃや個人こじん資産しさん家かが出現しゅつげんし、日本にっぽん国外こくがいに流出りゅうしゅつした美術びじゅつ品ひんや廃仏毀釈はいぶつきしゃくで破壊はかいされた建築けんちく部材ぶざいを買かい取とり、それらを利用りようして大だい規模きぼな茶会ちゃかいを開催かいさいしたり能のう舞台ぶたいなど芸能げいのうの場ばを設置せっちした^[4]。これらの者ものは「近代きんだい数寄者すきしゃ」と呼よばれ、特とくに益田ますだ鈍どん翁おきなのほか、原はら三渓さんけい、松永まつなが耳みみ庵あん、根津ねづ青山せいざん（嘉一郎かいちろう)、小林こばやし逸いつ翁おう（一いち三さん）、高橋たかはし箒ほうき庵あん、畠山はたけやま即そく翁おう（一清かずきよ）、五島ごしま慶太けいた、細川ほそかわ護立もりたつ、大原おおはら孫三郎まごさぶろう、川かわ喜田きた半はん泥どろ子こ、松下まつした幸之助こうのすけらが有名ゆうめいである。

脚注きゃくちゅう

^ 『世界せかいのなかの日本にっぽん十じゅう六ろく世紀せいきまで遡さかのぼって見みる』司馬しば遼りょう太郎たろうドナルド・キーン中公ちゅうこう文庫ぶんこ ISBN 4-12-202510-9 pp.120 - 122。1996年ねん初版しょはん（単行本たんこうぼんは1992年刊ねんかん）の第だい6刷さつ（2007年ねん）によれば、林屋はやしや辰三郎たつさぶろうの説せつという。室町むろまち時代ときよ、「好すき（数寄すき）」は身みを滅ほろぼす怖こわいものと恐おそれられつつ、「好すき（数寄すき）」をする者ものを周囲しゅういはうらやんだ。江戸えど時代じだいになると、その「好すき（数寄すき）」という心しんは「道楽どうらく」というい方いかたになり、戒いましめられたという。
^ ^a ^b ^c 青山あおやま俊しゅん董ただし「初期しょき茶道さどう史しに見みられる「数寄すき」の変遷へんせん」『駒沢こまざわ国文こくぶん』第だい2巻かん、駒沢大学こまざわだいがく、1963年ねん6月がつ、42-49頁ぺーじ。
^ ^a ^b 高田たかだ克巳かつみ「近世きんせいにおける規矩きくの展開てんかい(第だい二に報ほう) : 数奇屋すきやについて」『大阪市立大学おおさかいちりつだいがく家政学部かせいがくぶ紀要きよう』第だい4巻かん第だい2号ごう、大阪市立大学おおさかいちりつだいがく家政学部かせいがくぶ、1957年ねん3月がつ、15-21頁ぺーじ。
^ 澤田さわだ和華子わかね「近きん・現代げんだい数寄屋すきや建築けんちくに関かんする考察こうさつ」『Keio SFC journal』第だい3巻かん第だい1号ごう、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく湘南しょうなん藤沢ふじさわ学会がっかい、2004年ねん3月がつ、10-33頁ぺーじ。

参考さんこう文献ぶんけん

輪島わじま梢こずえ子こ「近代きんだい数寄者すきしゃの邸宅ていたく造営ぞうえいに関かんする研究けんきゅう : 私的してき領域りょういきに開花かいかする東京とうきょうの和風わふう空間くうかん」『法政大学ほうせいだいがく大学院だいがくいん紀要きよう. デザイン工学こうがく研究けんきゅう科か編へん= 法政大学ほうせいだいがく大学院だいがくいん紀要きよう. デザイン工学こうがく研究けんきゅう科か編へん』第だい2巻かん、法政大学ほうせいだいがく大学院だいがくいんデザイン工学こうがく研究けんきゅう科か、2013年ねん、1-8頁ぺーじ、doi:10.15002/00009287、hdl:10114/8506、ISSN 2186-7240。
「評価ひょうかする９人にんの数寄者すきしゃ」／『長谷川はせがわ清きよしの地域ちいき探さがせ見み（９）数寄者すきしゃ評論ひょうろん家か大塚おおつか融とおる氏しに聞きく』（URL 2022.07.04) https://tojoshinbun.com/sukisya

外部がいぶリンク

[1] 『世界せかいのなかの日本にっぽん十じゅう六ろく世紀せいきまで遡さかのぼって見みる』司馬しば遼りょう太郎たろうドナルド・キーン中公ちゅうこう文庫ぶんこ ISBN 4-12-202510-9 pp.120 - 122。1996年ねん初版しょはん（単行本たんこうぼんは1992年刊ねんかん）の第だい6刷さつ（2007年ねん）によれば、林屋はやしや辰三郎たつさぶろうの説せつという。室町むろまち時代ときよ、「好すき（数寄すき）」は身みを滅ほろぼす怖こわいものと恐おそれられつつ、「好すき（数寄すき）」をする者ものを周囲しゅういはうらやんだ。江戸えど時代じだいになると、その「好すき（数寄すき）」という心しんは「道楽どうらく」というい方いかたになり、戒いましめられたという。

[aoyama-2] 青山あおやま俊しゅん董ただし「初期しょき茶道さどう史しに見みられる「数寄すき」の変遷へんせん」『駒沢こまざわ国文こくぶん』第だい2巻かん、駒沢大学こまざわだいがく、1963年ねん6月がつ、42-49頁ぺーじ。

[takada-3] 高田たかだ克巳かつみ「近世きんせいにおける規矩きくの展開てんかい(第だい二に報ほう) : 数奇屋すきやについて」『大阪市立大学おおさかいちりつだいがく家政学部かせいがくぶ紀要きよう』第だい4巻かん第だい2号ごう、大阪市立大学おおさかいちりつだいがく家政学部かせいがくぶ、1957年ねん3月がつ、15-21頁ぺーじ。

[4] 澤田さわだ和華子わかね「近きん・現代げんだい数寄屋すきや建築けんちくに関かんする考察こうさつ」『Keio SFC journal』第だい3巻かん第だい1号ごう、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく湘南しょうなん藤沢ふじさわ学会がっかい、2004年ねん3月がつ、10-33頁ぺーじ。

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歴史れきし

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

関連かんれん項目こうもく

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