文化ぶんか戦争せんそう

2017年ねん8月がつにバージニア州しゅうシャーロッツビルで開催かいさいされたユナイト・ザ・ライト・ラリーは、オルタナ右翼うよくによる文化ぶんか戦争せんそうの戦たたかいと見みなされる。

文化ぶんか戦争せんそう（ぶんかせんそう、英えい: culture war）とは、伝統でんとう主義しゅぎ者もの・保守ほしゅ主義しゅぎ者ものと進歩しんぽ主義しゅぎ者もの・自由じゆう主義しゅぎ者ものの間あいだにおける、価値かち観かんの衝突しょうとつである。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは1990年代ねんだい以降いこう、公立こうりつ学校がっこうの歴史れきしおよび科学かがくのカリキュラムをめぐる議論ぎろんなど多おおくの問題もんだいに、文化ぶんか戦争せんそうが影響えいきょうしている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの政治せいじに「文化ぶんか戦争せんそう」という表現ひょうげんが使つかわれるようになったのは、1991年ねんにジェームズ・デイビッド・ハンターの『文化ぶんか戦争せんそう: アメリカを定義ていぎするための争あらそい』（Culture Wars: The Struggle to Define America）が出版しゅっぱんされたことがきっかけだった。ハンターはこの本ほんで、妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ、銃じゅう規制きせい、地球ちきゅう温暖おんだん化か、移民いみん、政教せいきょう分離ぶんり、プライバシー、娯楽ごらく薬やく、同性愛どうせいあい、検閲けんえつなどの問題もんだいをめぐり、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの政治せいじと文化ぶんかが分裂ぶんれつし、再編さいへんされ、劇的げきてきに変容へんようしていると論ろんじた。

カナダにおいては、保守ほしゅ主義しゅぎと自由じゆう主義しゅぎの対立たいりつだけでなく、カナダ国内こくないにおける西部せいぶと東部とうぶの対立たいりつや、都市としと田舎いなかの対立たいりつにも「文化ぶんか戦争せんそう」が使つかわれる。

語源ごげん

英語えいごにおける「culture war」（文化ぶんか戦争せんそう）は、ドイツ語ごの「Kulturkampf」（文化ぶんか闘争とうそう）の翻訳ほんやく借用しゃくようである。ドイツ語ごにおける「Kulturkampf」（文化ぶんか闘争とうそう）は、ローマ・カトリック教会きょうかいの影響えいきょうに対抗たいこうする政策せいさくを1871年ねんから1878年ねんにかけてとった宰相さいしょうオットー・フォン・ビスマルクの政権せいけん下かで起おきた、ドイツ帝国ていこくにおける文化ぶんか的てきおよび宗教しゅうきょう的てきグループ間あいだの衝突しょうとつを指さす。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける用法ようほうと歴史れきし

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいては、文化ぶんか戦争せんそうとは一般いっぱんに伝統でんとう主義しゅぎ者もの・保守ほしゅ主義しゅぎ者ものと進歩しんぽ主義しゅぎ者もの・自由じゆう主義しゅぎ者ものの価値かち観かんの衝突しょうとつを指さす。

こうした衝突しょうとつは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける都市としと田舎いなかの価値かち観かんの対立たいりつが鮮明せんめいになった1920年代ねんだいまで遡さかのぼる。こうした対立たいりつの背景はいけいには、ヨーロッパからの初期しょきの移住いじゅう者しゃたちが「エイリアン」と見みなした人々ひとびとの移住いじゅうが、数すう十じゅう年ねんにわたり続つづいていたことがある。また、「狂騒きょうそうの20年代ねんだい」と呼よばれた1920年代ねんだいの文化ぶんか的てきな変動へんどうと近代きんだい化かの潮流ちょうりゅうも、こうした対立たいりつの一因いちいんであった。1920年代ねんだいに始はじまったこうした価値かち観かんの対立たいりつは、アル・スミスの1928年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょキャンペーンで頂点ちょうてんに達たっした。

1991年ねんにジェームズ・デイビッド・ハンターの『文化ぶんか戦争せんそう: アメリカを定義ていぎするための争あらそい』（Culture Wars: The Struggle to Define America）が出版しゅっぱんされたことで、「文化ぶんか戦争せんそう」はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいて再さい定義ていぎされた。ハンターは、文化ぶんか戦争せんそうの概念がいねんは1960年代ねんだいまで遡さかのぼることができるとした。以来いらい、ハンターが焦点しょうてんを当あてたアメリカ的てき文化ぶんか戦争せんそうとその定義ていぎは、さまざまな形かたちを取とり続つづけている。

2014年ねんから現在げんざい

ゲーマーゲート集団しゅうだん嫌いやがらせ事件じけん、コミックスゲート、サッド・パピーズなど、2010年代ねんだいに発生はっせいした大衆たいしゅう文化ぶんかの多様たよう性せいに関かんする多おおくの対立たいりつは、文化ぶんか戦争せんそうの例れいとしてメディアで言及げんきゅうされた。ジャーナリストのケイトリン・デューイは、ゲーマーゲートを、女性じょせいやマイノリティを文化ぶんか組織そしきにもっと受うけ入いれたいと願ねがう人々ひとびとと、そうではない反はんフェミニストや伝統でんとう主義しゅぎ者しゃとの間あいだの、より大おおきな文化ぶんか戦争せんそうのための「代理だいり戦争せんそう」と表現ひょうげんした。2015年ねんに作家さっかのジャック・メザーブは、文化ぶんか戦争せんそうの対立たいりつが選挙せんきょ政治せいじだけでなく大衆たいしゅう文化ぶんかに及およんだという認識にんしきから、映画えいが、ゲーム、作品さくひんを「文化ぶんか戦争せんそうの最後さいごの前線ぜんせん」と呼よんだ。

大衆たいしゅう文化ぶんかにおける表現ひょうげんに関かんするこれらの対立たいりつは、オルタナ右翼うよくとAlt-liteという形かたちで選挙せんきょ政治せいじに再ふたたび現あらわれた。メディア学者がくしゃのホイットニー・フィリップスによると、ゲーマーゲートはハラスメントや物議ぶつぎを醸かもす戦略せんりゃくの「プロトタイプ」を作つくり出だし、政治せいじ戦略せんりゃくに役立やくだつことが証明しょうめいされた。例たとえば、共和党きょうわとうの政治せいじ戦略せんりゃく家かであるスティーブン・バノンは、ドナルド・トランプの2016年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょ期間きかん中ちゅうに大衆たいしゅう文化ぶんかの論争ろんそうを宣伝せんでんし、若年じゃくねん層そうに「ゲーマーゲートか何なにかを通とおして政治せいじに参入さんにゅうし、トランプに目めを向むける」ように勧すすめた。

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